【この素晴らしい世界に祝福を!】カズマはのんびりと魔王討伐を志す様です。 作:よるくろ
やっぱカズマといったら冒険者でしょう。
では、どうぞ
手に持っていた硬貨をアクアに返し、ベンチの背もたれに体を預けだらんと脱力するカズマ。そんな能天気なカズマをみてアクアは溜息を吐き、神妙な顔でつぶやく。
「早いうちに冒険者ギルドに行った方が良いわね」
冒険者ギルド。ゲームで言えばプレイヤーの集まりや、冒険者達がクエストを受けるために集う場所。カズマは培ったゲーム知識を引っ張り出して、解釈する。
そして、そんなことをいきなり言い出したアクアに、疑問を問いかける。
「なんで?」
「収入があるからよ、冒険者カード作ってもらって、モンスター倒して強くなって!一刻も早く魔王を倒して私のダラダライフを取り戻して見せるわ!」
勢いよく立ち上がり、拳を固く握って決意する。心なしか、背後に燃え盛る炎が見える気がする。
だがそんなアクアとは裏腹に、冷静に冷めた目でアクアを見上げるカズマは一言。
「…で、その冒険者ギルドは何処だ?」
「え?」
「そもそもこの街は何処だ?この街以外の街はあるのか?首都は?国籍は?冒険者になって何ができる?俺は戦闘経験がないんだぞ?特典であるお前が強くても俺が弱いままではどうにもならないだろ?」
次々とカズマの口から放たれる口撃。その言葉一つ一つがアクアにのしかかり、呆然と聞いていたアクアだが次第に目尻に涙を溜めていき…。
「う、うわぁぁぁ!そんなに言わなくてもいいじゃない!そもそも私を連れてきたのは貴方でしょ!?」
「それを言われると何も言えない」
とりあえず、このままでは生活できないどころか飢死するか衰弱死してしまう、と危険視したカズマは、泣いて暴れるアクアを立ち上がらせ、そこら辺を歩いている冒険者らしき男に、道を尋ねようと声をかけた。
「あの、すいません。道を尋ねたいんですが」
「ん?どうした嬢ちゃん達。見たところ冒険者じゃねえようだが…女二人じゃ危ねえぞ?」
「いえ、俺は男ですが…。えっと、冒険者ギルドって何処にあるんでしょうか」
「おぉスマン、どうしても女に見えちまってな。それはそうと冒険者になりにきたのか?ギルドならあの通りを曲がれば直ぐだぜ」
男が指差す方向に顔を向けると、やけに人通りが多く、そのほとんどは腰や背中に様々な武器を携えていた。つまり、あそこは冒険者達が集う場所、冒険者ギルドがあるのだろう。
「すいません、ありがとうございます」
「おう、坊主達も頑張れよ」
最後にカズマとアクアの頭の上にポンと手を乗せてから、男はカズマ達から離れていった。触れられた頭にカズマは変な新鮮味を覚えるが、そんな感情を振り払って歩き出す。アクアもカズマについて行き、冒険者ギルドへと歩みを進めた…。
「確か…こっちか」
言われた通り角を曲がり、少し小走りで遠くに見えるギルドに向かう。やはり異世界に来たと言うことで浮かれてるのかもしれない。ふとカズマは、隣で並走するアクアの顔を見る。アクアもどこかウキウキしたような顔を浮かべている、やはり女神といえど、心に秘める冒険心は存在するのかもしれない。
そして、ギルドの扉の前へと辿り着く。遠くではあまりわからなかったが、まるで西部劇に出てくる酒場のような扉、中から漂ってくる酒や料理の匂い、それら全てが新鮮に思い、心なしか重い扉を力を入れて押し出す。
カランカランとベルの音が中に鳴り響く。だがそんな音は騒がしい音とともに消え去ってしまい、カズマ達の存在に気づくものは少ししかいなかった。少しの緊張と不安、そして期待感を胸に秘めながらカズマはアクアの手を引いて奥に見える受付へと歩き、辿り着く。
するとカズマとアクア二人に気づいた受付の女性が、ハキハキとした声と声量で挨拶をする。
「ようこそ冒険者ギルドへ!お食事の方なら席にお座りください!冒険者登録の方はここのカウンターです!」
「冒険者登録したいんですけど…」
「かしこまりました!それではこちらに記入と登録料1000エリスをお支払いください!」
受付の女性から二枚の紙を渡され、アクアは硬貨四枚を取り出して、受付台にある皿の上にカチャっと置く。受付の女性は置かれた硬貨を数えて、言葉を紡ぐ。
「合計二千エリス、お二人分の冒険者登録を確認しました!それでは記入を、ペンはこちらです!」
「終わりました」
「はい!サトウカズマ様ですね?それではこちらをどうぞ!」
カズマとアクアは、何やらカードのようなものを渡された。それの上の方には名前、年齢、性別などが書かれており、その下に筋力、生命力、魔力、知力、器用度、俊敏性、幸運の文字が刻まれている。
そして、更に受付の女性は言葉を続ける。
「それは冒険者カードと言い、貴方の身体能力などを数値化する物です!かなり貴重なものですので、無くしたりすると少々の賠償金の支払いがありますのでご注意を!それでは、冒険者カードに手を翳してください!」
カズマは言われた通りに手をかざす、するとカードが少し光り、ステータスの欄に数字が現れた。受付の女性はカードを手に取って、ステータスと、ステータスカードに不備がないか確認する。
「少々拝借します…ふむ、生命力や筋力、俊敏性は平均以下ですが知力、魔力、器用度、そして幸運の数値がかなり高いですね…。この数値でしたら初級職の手品師《マジシャン》や中級職の魔法師《ウィザード》をお勧めします!」
手品師と魔法師。RPGゲームなどでは魔法に弱い敵などに有効なキャラだが、物理攻撃が強い敵から攻撃を受けると、最悪一撃で倒されることで有名だ。カズマはそういう魔法使いには防御力を上げる装備などを与えてステータスを調整していたが、この世界は現実。装備などでステータスが上がるという概念はないのだ。
だからカズマは、この二つの職業には特に魅力を感じなかった。むしろ、変えて欲しいまであった。
「えっと…他に何かありますか?」
「えーと…あとは役職の方の『冒険者』しかありませんね…」
カズマは頭の上に
「冒険者は初級職ですが、職業に捉われず色々なスキルを取得できます。が、スキルポイントが通常の2倍かかり、尚且つその取得したスキルの効果も本職より劣ってしまうというリスクがありまして、誰も選ばない職業なんです」
つまり初級職の『冒険者』は、少々のリスクを負ってしまう代わりに、魔法や剣術など、どのような戦況にも戦い方を変えられるオールラウンダータイプの職業ということだ。それに回復魔法も覚えれば、魔力が続く限り戦い続けることができる。まさにソロとマルチ戦法のどちらでも戦うことができる、ある意味最強の職業。
カズマはようやく自分に合う職業が出てきたと目を瞑り、少し思考した後目を開く。
「じゃあ、冒険者でお願いします」
「え?は、はい………良いのですか?中級職になることができますが…」
「まぁ、そんな強くなりたいわけじゃありませんから」
「は、はぁ…では改めまして。冒険者ギルドへようこそ!我々スタッフ一同は貴方のこれからの冒険者としての活躍をお祈りしております!」
これでカズマの、冒険者である第一歩が踏み出された…。
アクアも冒険者登録を済ませ、ステータスカードに手を翳すと、一部を除いて全てのステータスが平均よりかなり高いらしく、上級職の
何はともあれこれから冒険者生活が始まる。カズマは早速、ギルドの掲示板に貼ってある駆け出しクエストの
『クエスト【巨大蛙《ジャイアントトード》】を討伐せよ!
難易度:★☆☆☆☆
報酬:1体5000エリス(なお、対象の魔物の素材が採れない場合、報酬は減少します)
討伐数:5/0(討伐数を過ぎた場合、比例して報酬は増加します)
期間:7日間(期間を過ぎた場合、罰金支払いの罰則が命ぜられます)』
というか気づけばお気に入り数が49件もある…。本当にありがとうございます。それだけで執筆の励みになります。がんばります…。