【この素晴らしい世界に祝福を!】カズマはのんびりと魔王討伐を志す様です。   作:よるくろ

20 / 46
 20話目です。まさか4話くらいで迷宮入りになると思っていた私が二桁の話数を投稿できるとは…。
 目標は50話ですね…。


【20】 覚悟

 『死の宣告』___受けた相手には死が訪れるスキル。それはどのような死に方をするのか、いつ死ぬのかは使用者次第。

 

 カズマはギルドの中で教えてもらっためぐみんの受けたスキルの詳細を思い出しながら、隣で顔を伏せて体を抱えるめぐみんの背中を撫で続ける。

 

 

「…」

「…まぁ、なんだ。一週間もあればなんとかなるさ、駆け出しといえどこっちには頼れる仲間が…」

「…しばらく…一人にしてもらえませんか…」

「………わかった。心が落ち着いたら、話そう」

 

 

 俯かせた顔を更に下げて頷くめぐみんの隣から立ち上がって、遠くで見守っているパーティメンバー達の元へ行く。

 

 

「…どうだった?」

「精神的なダメージが凄い。…まぁ無理もない、熟練のプリーストに寿命が後一週間って言われたようなもんだからな」

「大丈夫でしょうか…めぐみん」

「…ねぇ、皆、私のスキルの中に『セイクリッド・ブレイクスペル』っていう魔法があるのは知ってるわよね」

「あぁ、毒とかを受けた時に掛けてもらったな…使ったのか?」

「えぇ、2、3回くらい。…でも効かなかったわ、というより、めぐみんに当たらないの」

「当たらない?」

 

 

 ダクネスがアクアに聞き返す。

 

 

「そう…めぐみんの前で“消えて、後ろから現れる”の。まるで転移したみたいに私のスキルが効かなくって…多分、めぐみんにはスキルが“悪い意味で”通用しなくなってるのかも」

「…つまり、バフ系とか、回復とかの魔法が効かないってことか…」

「そうだろうな、私もこの街に住んでいて長いが、このような事態は初めてだ」

「「「「…」」」」

 

 

 皆が一斉に黙る。

 

 その後めぐみんはメンバーの元に戻る事なくギルドを出ていき、それに合わせてカズマ達も解散した。

 

 カズマは一人きりで少し静かな街路を、星空を眺めて歩いていた。

 

 

「………」

 

 

 やがて辿り着いた先はただのベンチ。カズマはそこに腰掛けると、後ろで垂れている長髪を前に持ってきて弄りながら、現実から目を背けるように、じっと毛先を見つめながらぼーっとしていた。

 

 そこを、ある一人の人物が発見した。

 

 

「…えっと、どうしたんですか?」

 

「…“ウィズ”さん…」

 

 

 心配そうにカズマを見るウィズはカズマの座るベンチの横に立って、カズマと一緒に星空を眺める。

 

 暗い静寂の中で、カズマが話を切り出した。

 

 

「…何も、聞かないんですね」

 

「…ベルディアさんの襲撃で、めぐみんさんが『死の宣告』を受けたのは、聞きました」

 

「…そですか」

 

「…行くんですか?」

 

 

 その言葉に、カズマはピクリと肩を揺らす。

 

 バツが悪そうに顔をウィズから背け、指を組んだ両手を強く握った。

 

 

「…はい」

 

 

 ウィズは心配そうな顔を向けて、立ち上がる。

 

 そしてカズマの前に回り込んで、しゃがんでカズマに目線を合わせながらカズマの手を握った。

 

 

「…」

 

「震えていますね…恐怖からくる震えですか?それとも、武者震いに似た感情の影響ですか?」

 

「……怖い、死ぬのが」

 

 

 カズマが思い出すのは、ベルディアから向けられた濃密な殺意。

 

 敵意を向けられたことはあれど、殺意を向けられたことのないカズマにとってはカエルにとってのヘビ同然であり、同時に、自分が井の中の蛙だということを自分自身で知らしめていた。

 

 殺意を向けられたことで思い出させる“死”。

 

 異世界を順調に生きてきた、カズマにとって、冒険者にとって最初の試練である。

 

 

「…怖いのならば、逃げれば良いのではないでしょうか」

 

「…!」

 

「だってそうでしょう?カズマさんにとって、めぐみんさんはパーティメンバーなだけのはずです。血のつながりはなく、種族も違います。そんな人のために、何故命を、“死”に向かうのですか?」

 

「それは…」

 

 

 続きは、言えなかった。

 

 たしかにめぐみんとカズマは、元々は赤の他人であり、知らない人物だ。

 

 命を張る義理もないし、ましてや知らない人物のために死ぬというのは理解できない。そういうのは、物語の主人公のような奴がやることだ。

 

 だが、カズマにとってめぐみんはパーティーメンバー。仲間である。

 

 

「…仲間だから」

 

 

 ポツリと、つぶやいた。

 

 

「仲間助けるのに…理由は必要かよ」

 

 

 ぶっきらぼうにそう呟くカズマに、ウィズは微笑んだ。

 

 カズマの頭に手を置いて撫でながら、あるスキルを密かに発動した。

 

 

「…なら、助けましょう」

 

「…あぁ」

 

 

 カズマは立ち上がり、ベンチを後にした。

 

 ウィズはその後ろ姿に微笑みながら手を振り…片目を隠す髪を少し退け、“紅瞳”を晒した。

 

 

「カズマさん、御武運を祈っております。…魔王様の、幹部として」

 

 

 その言葉にどんな意味が込められていたのかは分からない。

 

 ただ一つわかるのは、ウィズはカズマの無事を祈っているというだけである…。




 備考

 ウィズ
 “ウィズの魔法具店”というぼったくり店を営むリッチー。リッチーというだけありアンデッドに関しての知識は深く、数少ない冒険者はウィズの知識を目当てに店に立ち寄ることが多い。対価として店の商品を一つ買わなければならないが…。

 “魔王軍幹部として”
 どういう意味かは、後々にわかると思います。
 ただ一つ言えることは、ウィズはリッチーとしてとか、店長としてとかではなく、ただ魔王軍幹部としてカズマを心配しています。つまり…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。