【この素晴らしい世界に祝福を!】カズマはのんびりと魔王討伐を志す様です。   作:よるくろ

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 カズマ死亡シーンの一角である雪精討伐の回です。
 


【閑話休題】冬将軍
【26】 将軍


 

 

 

 パチリと、カズマが一つ瞬きして眼を丸くした。

 

 目線の先にはカズマの膝の上に頭を乗せて寝転ぶ“エリス”がおり、少し満足げな顔をしている。

 

 

「むふー……」

 

「…なんだこれ」

 

 

 カズマはなぜこんな状況になったのか、カズマは“貫かれたはずの心臓”の上に手を置いて、先程までの状況を思い出し始めた…。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「雪精討伐…ねぇ」

 

 

 カズマは少し胡散臭そうな顔でクエスト用紙を摘みながら内容を確認して、呟いた。

 

 

「そう!この冬になって、モンスターとかが冬眠し始めて姿を表さなくなったでしょう?だから収入が少なくなってお金がなくなるかもしれないから、まだ寒く無い今から早く稼ごうかと思ったんだけど…」

 

「ンー………というか、早いとこ定住する家を探したいんだけど、ダクネスなんかいいとこ知らないか?」

 

「ふむ…近い内に不動産屋に掛け合ってみようか。意外といい物件が見つかるかもしれないな」

 

「じゃよろしく…んで雪精の討伐だっけ?行こうか」

 

「本当に!?やったわ!これでキンッキンのシュワシュワが飲めるわ!」

 

 

 アクアの動機はともかく、カズマはアクアの述べた理由の一つである財政問題についてで引き受けた。たしかにこの冬が始まってから、冬眠をし始めたモンスターが多々いる。筆頭がカズマパーティの収入源の一つであるジャイアントトードであり、冬季になって早々に冬眠し始めたため討伐できなくなったのだ。

 

 カエル全般の特性なので仕方ないが。

 

 

「とりあえず服と装備かな、雪精は小さいって聞くし…大剣の腹でかっ飛ばすしか無いかなぁ」

 

「それならば私の大剣を貸そう。冬季になったら帰ってくる約束をしているのでな、しばらくの間預かっててくれないか」

 

「いいのか?じゃあそうするわ。…一応『大剣スキル』教えてもらいにいくか」

 

 

 「よっ」と掛け声を掛けながら立ち上がり、カズマはテーブルを後にする。

 

 こうして、カズマとダクネスを除いたカズマパーティは雪精討伐へと赴くのだった___。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「はああああ!!まちなさーい!」

 

「おいアクア、あまり遠くへ行くなよ……って、聞こえてないか」

 

 

 雪山。

 

 雪精が唯一現れる生息地であり、そこにはとある“特別指定モンスター”が住う冒険者の中ではかなり危険な場所だと噂されている狩場だ。

 

 斜面となる地面は分厚い雪の層で覆われており、木は一本も生えていない。それはそうだ、ここには草も木も生えていないし、種を運ぶ鳥なども近寄らない過酷な環境下なのだから。

 

 気温は温度にしてマイナス三十度。地球の北極と大差ない氷点下温度であり、生物もあまり住まないのだ。

 

 

「寒いな…それに空気も薄い」

 

 

 それに加えて標高は4000m程あり、富士山より少し高い。その上空気が薄く、ここでは呼吸が乱れやすく、そしてその冷たい空気で肺がやられる冒険者も少なくはない。

 

 カズマは簡易的なマスクで肺に傷付くことを防止して、念のためパーティメンバー全員にも簡易マスクを配っている。

 

 

「…これすごいですね、吸い込む空気があったかくて、それで冷たくなっても息を吐いたらあったかくなります」

 

「分厚い布を使ってるからな、保温性は高い。分解して洗うこともできるから、日持ちも大分長く改良できた」

 

「すごいですね!これ売ったら大儲けできそうです!」

 

「でも売る場所が無いからな……あ、ウィズの店で取り扱ってくれないかな」

 

「カズマー!雪精十二匹捕まえたわ!」

 

 

 誇らしげにカズマに瓶詰めにした雪精を見せつけるアクア。

 

 カズマもちょくちょくダクネスから借りている大剣を振り回して雪精を倒して、たったさっき倒した雪精で計八匹の雪精を倒した。一つレベルアップもしており、めぐみんとゆんゆんもある程度倒しているため結構な額になるだろう。

 

 カズマはそろそろ切り上げようと声を上げようとしたところ___山頂の方角から、なにやら音が聞こえた。

 

 

 “ヒュオオオオオオオ…”と、吹雪が次第に吹いてくる。吹雪は次第に強くなっていき、やがてカズマの視界から仲間の姿が薄れていった。

 

 

「一塊になって手を繋げ!逸れるなよ!」

 

「も、もう見えません!どこですかカズマさん!」

 

「こっちだ!___くそ、こう視界を塞がれたら何も…」

 

 

 吹雪は止まず、仲間の声が消えた。恐らくやたらに走り回って逸れた可能性が高いが…カズマは下手に動けば仲間の二の舞になるため、下手に動けなかった。

 

 すると、カズマの真正面から___氷で造形された刀が矛先を真正面に飛んできた。

 

 

「はっ、うぉおぅ!?」

 

 

 カズマはそれを咄嗟に“マトリックス避け”で回避して、『ワープ』で距離をとった。

 

 そして刀が飛んできた方向を睨みつけて、“刀身の黒い”剣を抜いて警戒する。

 

 そして吹雪の中から…特別指定モンスターの一角“冬将軍”が現れた。

 

 

「…やる気みたいだな」

 

「………」

 

 

 冬将軍は無言で刀を抜いた。

 

 ベルディアに負けず劣らずの殺気をカズマに放つ。カズマは“ギチ…”と柄を握り…『ワープ』した。

 

 “キィン!“という甲高い金属音が鳴り響いた。冬将軍とカズマの剣がぶつかり合った音であり、カズマの奇襲が防がれた証拠でもあった。

 

 

「くっ!」

 

「…」

 

 

 カズマはすぐさま『ワープ』で距離を離し、ベルディア戦からひっそりと試行錯誤して作った”秘密兵器“をポケットから取り出した。

 

 カズマは”ピン“を抜いて、それに魔力を流す。するとそれは不安定に点滅し出し、カズマは力一杯冬将軍に向かってぶん投げた。

 

 

 刹那、轟音。

 

 

 『爆裂魔法』よりは劣るものの、音と爆風を辺りに撒き散らす衝撃は冬将軍に多大なダメージを与えた。証拠に冬将軍の片腕が吹き飛んでおり、片膝を付いていた。

 

 カズマが開発した擬似現代兵器”マナタイト内蔵魔力式手榴弾a.k.a.魔榴弾“。ギリギリまで魔力を流し込んで爆発寸前のマナタイトを火薬でコーティングし、更にその外側を小石などで包み、殺傷力と破壊力に秀でた戦略兵器である。

 

 威力範囲は爆裂魔法未満であるが、発動速度が早いのと持ち運びが楽なため、複数個もてるという利点があるのだ。

 

 

「…」

 

「…はっ、流石に距離を取るか…でも…!」

 

 

 カズマはもう一度魔榴弾を次々と取り出して、魔力を流す。そして少しいやらしい笑みを浮かべながら魔榴弾を冬将軍の足元に『ワープ』させた。

 

 連続で鳴り響く轟音は着実に冬将軍にダメージを与えていた。火薬の燃焼によって発生した黒煙で冬将軍の姿が見えなくなり、最後の一つを『ワープ』させると、カズマは冒険者カードを取り出して討伐証明を確認する。

 

 

___ない。

 

 

 ということは冬将軍はまだ生きており、カズマが顔を上げて冬将軍のいたところに眼を向けると、黒煙の中から冬将軍が姿を現した。

 

 …空中で氷の道を作り、滑走しながら。

 

 

「はぁっ!?」

 

 

 それはさながら立体機動を習得したアイススケート選手のようで、冬将軍は滑らかなフォームでカズマに接近して、刀を振りかぶった。

 

 カズマは『ワープ』で避けながら、冬将軍を斬りつけるも大したダメージは無かった。

 

 素早い滑走による連撃は『ワープ』を発動させる隙も与えてはくれずに、カズマに次々と傷をつけていく。

 

 そんな中、カズマはある一点を注視しながら呟いた。

 

 

「……なるほど、そう作るのか」

 

 

 カズマは冬将軍の足元を見ながら、魔法を発動させた。

 

 『クリエイト・ウォーター』を撒き散らし、『フリーズ』を水に掛ける。だがまばらに凍るだけで道にはならなかった。

 

 発動方法が違う。そう思ったカズマは『ワープ』で距離を取りながら試行錯誤をして魔法を発動させて…

 

 

「…『クリエイト・ウォーター』+『フリーズ』…『氷結歩行(アイスウォーク)』…!」

 

 

 完成させた。冬将軍が扱う技術をスキルへと変化させて、カズマは冬将軍と同じ土台に立つことができた。

 

 まだまだ荒削りではある氷の道を滑走しながらカズマは剣を振り、冬将軍と斬り合う。

 

 そしてその果てに………カズマは敗れた。

 

 

「おごふぅっ…かはっ」

 

 

 フェイントを入れた心臓への一突きがカズマを貫いた。カズマの片手からは冬将軍の右肩を貫いた剣が離れ、胸の刀が抜かれ、カズマは雪の上に倒れ伏した。

 

 冬将軍は肩の剣を抜き、カズマの隣に刺した。そして去り際に、

 

 

「………見事」

 

 

 そう呟き、吹雪と共に去った。

 

 

「………クソが」

 

 

 ボヤける視界の中、カズマはそう呟いて…意識を黒く染めた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 そこまでの経緯を思い出し、カズマは自分の膝で寝るエリスに声をかける。

 

 

「それで…何をしてるんですかね貴女は」

 

「むふぅ……何って、貴方の膝を拝借しています」

 

「無断で拝借しないでもらえますかね?」

 

 

 そう言いながらもエリスの頭を撫でる手は止まらない。いつ撫で始めたのかは分からないが、カズマの手が勝手に動いていたようだ。

 

 どこか初めて会う顔ではない雰囲気を醸し出すエリスに、カズマは話しかけた。

 

 

「それで…俺はどうなるんですか?」

 

「何がです?……あぁ、天界規定ですとこのまま輪廻の輪に戻し、来世へと行ってもらいます」

 

「…そうですか」

 

 

 カズマは顔を伏せる。

 

 エリスは慌てて言葉を紡いだ。

 

 

「で、ですがカズマさんはこのままアクア先ぱ…アクア様に蘇生してもらいます。えっと…何故かカズマさんの魂が、この世界に適応してしまったので輪廻の輪に戻れなくなったと言いますか…」

 

「…本当ですか?」

 

「は、はい…まぁまだカズマさんの遺体が見つかっていないので蘇生ができていませんが、時間次第で蘇生できると思います」

 

「そうですか…それは、良かった………あれ、それって一生見つからない可能性もありますよね」

 

「…あ」

 

「……どうします?」

 

「………とりあえず、ゆっくりしましょう」

 

「…ですね」

 

 

 カズマはエリスの頭を撫で続け、エリスはカズマの膝の上でリラックスしていた。

 

 いつのまにか、エリスがカズマの膝の上に何故いるのかという疑問は、既に消え去っていた…。

 

 





 満を辞してエリス登場(膝枕状態)
 初登場がこれでいいのかと思う読者様もいるかと思いますが…エリス様にもたまには休暇を与えましょう^^
 神器回収やら転生者の案内やら先輩からのパワハラやら、原作ではかなりの苦労人ポジとして登場してましたし…この世界線ではゆっくりさせてあげましょう…。



 ※雪将軍が喋るのはこの小説の仕様です。
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