【この素晴らしい世界に祝福を!】カズマはのんびりと魔王討伐を志す様です。 作:よるくろ
最近ネタが浮かんできて筆(指)が進みます。
今話はカズマパーティの拠点となる幽霊屋敷の回です。
【27】 泣く子も黙る幽霊屋敷
「…くしゅっ!……冷えるな、ここ最近」
「本格的に冬が始まりましたからね。最低気温だったらあの雪山に劣らず……うぷっ」
「おい吐くなよ?」
カズマが“
最悪の可能性は回避でき、遺体を見つけられたカズマはアクアに『リザレクション』という蘇生魔法をかけてくれたことによって、またこの世界で冒険をすることができたのだ。
…まぁ、目を覚ました瞬間
それはともかくとし、無事にクエストをクリアしてギルドへ帰ると、めぐみんとゆんゆんはこれ以上ないほどカズマにべったりしている。無理もないだろう、目の前で大事なパーティメンバーが胸から血を出して死んでいたのだから。
「カズマさん、何か手伝えることはありませんか?」
ゆんゆんがカズマの肩にそっと手を添えながら問い掛ける。少しゆんゆんの方に引き寄せられているため、カズマはゆんゆんの腹部に頭を預ける形の体勢となっている。
カズマは少し頭を上げ、ゆんゆんの顔を見る。
ゆんゆんを小首を傾げながらカズマの顔を見つめて、ニコリと微笑んだ。
カズマは何故か背筋が凍る感覚を感じた。
二日前からこの調子だ。カズマは何か話題を振ろうと、口を開いた。
「……いや、特にない…。あ、そういえばここにくる途中で聞いたんだが…幽霊屋敷ってなんだ?」
「幽霊屋敷ですか?えっと確か…」
曰く、夜中に誰も住んでいないはずの屋敷の中から物音がする。
曰く、こっそり入っていった子供達が顔を青くして帰ってくる。
曰く、取り壊そうとすると不幸が訪れる。
他にも噂が多々あるが、有名な噂としてはこの三点が挙げられる。
昔からある貴族の館で、よく子供に対する脅し文句として使われるようだ。「良い子にしないと、幽霊屋敷に連れていくぞ」と。
最近になって教会のプリーストに担当している不動産屋が依頼し始めたようだが、位の高い怨念や悪霊が住み着いているらしく、とても祓えないらしい。
「へぇ…なるほど」
だがカズマはその話を聞いた瞬間、ピキーンと何かが閃いた。もし頭の上に電球が浮かべば、太陽よりも輝いていることだろう。
「うぅ………けぷっ」
向こう側に呑んだくれているアクアに目を向ける。教会のプリーストでは祓えない、ならば、“女神”が祓えばどうなるのだろう。
「…よし、それじゃあその幽霊屋敷とやらを拝んでみようか。ゆんゆん、アクアを呼んできてくれ」
「は、はい。…本当に行くんですか?」
「正直怖いが、幽霊に関してはうちにスペシャリストがいるからな。もしかすれば…拠点が手に入るかもしれない」
カズマはその幽霊屋敷を手に入れる算段が天啓的に脳内に迸り、パーティメンバーを連れて件の幽霊屋敷へと足を運んだ___。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「雰囲気あるな…いかにも出そうって感じだ…」
「ほ、本当に来ちゃった…」
「怖がりすぎでは?」
白い外壁、這う蔦、ひび割れていない埃を被っただけのガラス、何一つ欠けていないテラス、申し訳程度に庭に配置されている小さな水のない噴水。
見てくれはそんなに悪くはない。だがそれを帳消しにするような暗い雰囲気が屋敷全体を覆っており、ゆんゆんはそれに怯え、カズマは圧倒されていた。
唯一平然なめぐみんはゆんゆんの怖がりように少し面白がっており、縮こまっているゆんゆんの脇腹を突ついて驚かせていた。「ひゃあ〜!」という恐怖に満ちた甲高い声が周辺に響く。
「…一応不動産屋に侵入の許可は貰ったが、ってかアクアは?」
「一足先に屋敷へ入りましたよ。カズマが不動産屋で交渉してる間に視察に来たアクアが『ちょっと気になる事があるから先に入ってるわ!』って」
めぐみんの少し上手なアクアの真似を聞いて、カズマは顎に手を当てて考えた。仮にもアクアは女神、もしかしたら霊的な何かを察知して、先に駆除に行ったのかもれない。
となると話は早く、カズマは霊などを気にせずに間取りとかを見れるかもしれないと、門に手を掛け開門した。
「一応『“悪霊”を祓ってくれるなら屋敷は譲りましょう』と言質は取った、アクアがこの手に関しての仕事を失敗するとは思えないし、俺達は間取りを調べることを中心に屋敷を探索しよう」
「悪霊…ですか、霊ではなく?」
「うん?あぁ、念を押されて悪霊とな」
「そうですか。………少し調べたい事ができたので、二人で行ってもらって良いですか?不動産屋に行ってきます」
訝しげな顔をしていためぐみんは二人にそう告げて、踵を返して二人から離れた。不動産屋に行くと言っていたが、何か気になることでもできたのだろうか。
カズマは怖がるゆんゆんと顔を合わせて、門の中へと入っていった。
自動で閉まらない門が、勝手に閉じたことを知らぬままに…。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「中は思ったより綺麗だな」
何処かで聞いたことのあるフレーズを口にするカズマ。
「ね、ねぇ…もう帰りましょうよ…」
偶然なのか、またまた聞いたことのあるフレーズを口に出してカズマにしがみつくゆんゆん。めぐみん経由で過去にゆんゆんが悪魔を召喚した事があることを知っていたカズマは霊より悪魔の方が怖いだろ、と思ったが、やはり怖い怖くないのフィルターや悪霊的なもののジャンルの違いなのもあるため、霊の方が怖いのか、とゆんゆんの頭を撫でながら思った。
ふむ、と周りを見渡す。最初に口にした通り、館の中は小綺麗で、少し掃除をすれば住み込みできそうな清潔さを保っている。
だが外から見た通り暗い雰囲気があり、心なしか呼吸がし辛い。カズマは一度深く息を吸って吐いて、肺をリフレッシュさせてから歩き出した。
「俺の住んでた所なら幽霊なんて馬鹿馬鹿しいって満場一致でなる所なんだが…こっちじゃ当たり前なんだよな…」
「カズマさんの故郷にはアンデッドがいないんですか?」
「ンー…俺の故郷じゃ死体の処理の仕方が違うんだよな。“火葬”って言って、棺桶に遺棄した死体を燃やして骨にするんだ」
「へぇー…え、でもそれって死んだ人への冒涜にならないんですか?死体蹴りみたいじゃないですか」
「死人に口なしって意味もあるんだろうけど、やっぱり俺の故郷は狭く人が多いからな。死体を埋める場所の縮小も兼ねて、骨壺っていう入れ物に死体の骨を詰めて埋葬する。だから故郷じゃ死体が動き出すことなんてないし、アンデッドになることなんてないよ」
「そうなんですか……」
ゆんゆんはようやく慣れてきたのか、カズマの腰から離れて隣で歩く。しかし恐怖心はまだ消え去っていないのかカズマの服の裾を指先で摘んでおり、猫背気味になりながら周囲を警戒している。
カズマは間取りの確認ついでにアクアを探すが、ドアの音はしないどころかカズマ達の足音以外の物音が聞こえない。アクアは本当に先に屋敷へと入ったのだろうか。
女神が幽霊に遅れを取るなんてことはないと思うが…カズマはどこか嫌な予感がしてたまらなかった。そしてその嫌な予感が、近くにいる気がしてやまなかった。
「『…ふふっ』」
突然、笑い声が聞こえた。と、当時にカズマは舌打ちした。
戦闘はないと思い剣を置いてきたのだ。つまり今のカズマは丸腰であり、スキル練度的にも低い『拳術スキル』での徒手空拳で戦わなければならない。そもそも霊相手に物理が効くのか分からないが、とにかくカズマは拳を握って構えた。
相手は何処かと、目を動かして周囲を見渡すと、突然の事で意識を逸らしていたゆんゆんがカズマの腰に抱きつく。
怖くなったのだろうか。だが今は戦闘中なため離れてもらおうと口を開くと___
「『捕まえた…♪』」
___刹那、浮遊感。
ゆんゆんに持ち上げられたカズマは突然の事で硬直し、ゆんゆんはカズマを持ち上げたまま“浮遊”し、高所から投げ落とそうとするが、
「『ワープ』!」
状況を理解したカズマが『ワープ』で脱出し、距離をとってゆんゆんを見る。明らかに浮遊しており、カズマを捕まえていた腕の形を解き残念そうな顔を浮かべた。
「『逃げられちゃった…』」
「お前…誰だ…!」
「『うふふ……もっと遊びましョォォ?』」
カズマの問いに答えず、ゆんゆんは片手に”蒼白の刀”を持ち、滑空するようにカズマへと斬りかかった。
太刀筋は雑で、剣戟の隙間もガラ空きで反撃は容易にできるが、いかんせん相手がゆんゆんだ、彼女の身体に傷をつけることができず、カズマは攻めあぐねるどころか攻撃すらできない状況に陥った。
だが、彼女の戦い方はどこか既視感がある。それは見ていると胸に痛みが入る感覚がして、冷たい戦い方。それはまるで…
「___冬将軍」
遠く及んでいないが、今彼女が行っている戦い方は冬将軍の立ち回りだ。カズマは一体何故彼女が冬将軍の戦い方を知っているのかと疑問を浮かべた。
記憶を探られたのか、はたまた実物を見たのか。後者ならあり得そうだが…と言ったところでカズマは何かに気づき、体勢を整えて『ワープ』で大幅に距離を取った。
「『逃げないでヨオオォォ!』」
「お前、あの場所にいたな?ゆんゆんに取り憑いたな?」
ゆんゆんに違和感を感じ始めたのは二日前。カズマ達が雪山から帰って翌日のことだ。恐らくゆんゆんに取り憑いている霊は、雪山にいたゆんゆんに取り憑いたのだ。
二日間なりを顰めてゆんゆんの中で着々と待っていたのだ、カズマと二人っきりになれるこの今を、誰にも邪魔されずにカズマと入れるこの瞬間を。
二日間待ってようやくきた瞬間を逃すわけにはいかない。だからゆんゆんに取り憑いていた霊は己の中にある力を全開に解放し___
「『もっと…もっと、モットモットモット遊びましょうよォ!戦ッテル貴方ヲモットモットモット見セテ!私ノ為ニ、アノ日ミタイナ戦イヲ、私ニダケエエエ!!!』」
「くっ…!?」
自らの狂気とゆんゆんの中にある魔力を無理矢理引き出し、霊は攻撃を繰り出す。高レベル冒険者の魔力による攻撃は攻撃一つ一つに衝撃波が生み出され、カズマの行動を制限する。
『ワープ』を使おうとしてもここは壁が多く、集中力を切らせば壁に埋まってしまう。それだけは避けないといけないため、中々カズマは『ワープ』を連発できないでいた。
「『『クリエイト・ウォーター』+『フリーズ』…『
「ちっ、やっぱりな!」
あの場にいたのだから、カズマが使っていた魔法ぐらい知っているだろう。だがこんなに早く手札を切ってくるとは思わずにカズマは思わず舌を打った。
剣は甘いが、それを帳消しにするほど素早さが上がった。ついにかすり始めてきた彼女の剣を避けるのに必死になって身体を動かしていた。
右下からの剣を左に避け、左からの横払いをしゃがんで避け、突きを半身になって避ける。剣を持ってきていないことが完全に痛手となっていた。
カズマの体力はまだある。このまま避け続けるのは得策ではないが、相手の体力が無尽蔵ではないことを祈るしかない。剣を無力化できればなんとかなりそうなのだが…とカズマが『ワープ』の準備をしていると、救世主が現れた。
「『ターンアンデッド』!」
「『ア“ア”ア“ア”ア“ァ”ァ“ァ”ァ“ァ”ッッッ!!!!!』」
苦悶の声が館を揺らすほどの声量で響き、天井からパラパラと木屑が落ちてくる。退魔魔法を繰り出した犯人___アクアはもう一度魔法を繰り出そうとして悶え苦しむ霊に手を向け、トドメを刺した。
「『セイクリッド・ターンアンデッド』!」
「『ア“ア”ア“ア”ア“ァ”ァ“ァ”ァ“ァ”…………………」
ゆんゆんの身体から黒い瘴気が噴き出し、アクアの放つ光によって浄化された。霊の力によって浮いていたゆんゆんは浮力をなくし、落下した。ゆんゆんと床の間にカズマが咄嗟に滑り込み、ギリギリでキャッチできたようだ。
「ふぅ……助かった、せんきゅ」
「えぇ、当然よ。……幼い子を脅かす悪霊は、退治しなきゃだしね」
「幼い子?」
「この家には、冒険譚が好きな女の子がいるの。カズマ達が…というより、ゆんゆんが来てから怯えて隠れてたけど、カズマが時間を稼いでくれたおかげでゆっくりお話しする事ができたわ」
ゆんゆんを抱えながらアクアを見るカズマに、アクアは事情を説明した…。
少し納得いかない文章になりましたけど、この際目を瞑っていただけると幸いです。
『謎の幽霊』(雪山)
↓ 冬将軍に殺された女性冒険者。
カズマの戦闘を見て惚れる
↓ この時はまとも。
カズマパーティであるゆんゆんの精神へダイナミックエントリー
↓ おや、女性冒険者(霊)の様子が…?
悪霊の住う屋敷へ侵入
↓ 屋敷内の悪霊の怨念により悪霊化。
ヒャッハアアアァァァァアア!!!
分かりにくい本編での地の文の説明を簡潔にまとめるとこんな感じですね。『おや、女性冒険者(霊)の様子が…?』のところは次回説明します。