【この素晴らしい世界に祝福を!】カズマはのんびりと魔王討伐を志す様です。 作:よるくろ
今回は戦闘もない日常回です。
数話ほど前に出たセリフの要素を入れました。
「それでは、私はこれで。ご購入、ありがとうございました」
「はい、それでは。………よし、ようやくだ」
幽霊屋敷…いや、“元”幽霊屋敷の前でカズマと不動産屋の店員がやりとりをして、別れた。その内容は俗に言うお金のやりとりというものであり、カズマは、ベルディア討伐報酬の三分の二を使って屋敷を不動産屋から購入したのだ。
三分の二という金額は少し痛手だが、その痛手を上回るほどのリターンが手に入った。カズマはルンルン気分で屋敷を見上げて、引っ越しの意を決めたが…
「………うん、まずは掃除だな」
屋敷の窓から見える室内の大量の埃を見て、カズマはそう決意した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「カズマー!ほ、埃が膝まであるぞ!」
「水掛けてちぎって袋の中にぶち込んどいて」
「(パリーン!)カズマぁぁ!また窓割っちゃったー!」
「お前は大人しくしててくれ」
「爆裂魔法を撃てば早く無いですかこれ」
「気持ちは分かるが落ち着け……はぁ」
カズマは重苦しい溜息を吐いた。
目の前では埃に足を取られて転ぶダクネスや、割れた窓ガラスの前であたふたとするアクアや、埃の鬱陶しさに爆裂魔法を撃とうとするめぐみんの姿が映っている。出だしは順調だが、後半になって色々とやらかすいつもと変わらないメンバーに、カズマはもう一度「はぁ…」と溜息を吐いた。
まだ、“一部屋目“なのだ。
パーティメンバーが集まり、掃除をし始めたのは二時間前。そして現在に至るまでに掃除した部屋数は一部屋であり、その一部屋でさえも今掃除している最中なのだ。
ダクネスが埃を集めても、アクアが割った窓の隙間風で埃が散る。そして割れた窓を塞いでまた埃を集めても、またアクアが別の窓を割って埃を散らす。
これが3回続き、段々とイライラしてきためぐみんが爆裂魔法を放とうとして、カズマが止めている。今まで他の部屋で掃除をしていたカズマだったが、この惨状を目の当たりにして、こめかみを圧縮する勢いで皺寄せしていた。
「……とりあえず、アクアを大人しくさせるか」
「そうですね…アクアー!休憩時間ですよー!」
めぐみんが声を掛けると、アクアはパッと嬉しそうな顔をして袋を放り出して部屋を出た。恐らくカズマが片付けた居間で付けている暖炉の前に行くのだろう。たしかにこの部屋は窓ガラスが割れたせいで隙間風が入りまくっているため、かなり寒い。証拠にダクネスが寒さによって“興奮”を覚えており、頬を赤く染めながら埃に水を掛けていた。
そんなダクネスを手伝う形で掃除を再開したカズマは、水を被って舞うことのなくなった埃を次々と袋に中に詰め込み、部屋の外へ叩き出す。アクアが割った窓からの風のせいで早くも指先が悴み、少し不衛生ながらも口を両手で覆いながら息を吐いた。
「寒いな…」
「あぁ、堪らないな…肌を刺すようなこの寒さは!」
「興奮するより手を動かしてくれ…」
そして、カズマとダクネスは部屋の掃除を終わらせた。時間は一時間も経っていなかった。
「…アイツの寝具の中身全部埃にしてやろうかな」
「案外『柔らかーい!』とか言いながら喜びそうだがな…私から見ても、アクアはかなりタフな方だと思うぞ」
「お前にそう言わせるって相当だろ…」
だが、カズマはそんなアクアの姿を安易に想像できた。そして少し出た笑いを堪えて、ダクネスの手から埃の入った袋を取った。
「よし…次の部屋を掃除しに行くか」
「あぁ…そうだな」
早く終わらせてやると息巻きながら、カズマは先の遠い、屋敷全体の片付けという目標を目指しながら掃除を再開した…。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
居間。
昼を抜いてまで屋敷に掃除をしていたカズマは、居間のソファーの上でグロッキーになりながらダウンしていた。そのカズマに膝枕をしながら同じくダウンしているダクネスは、疲れを取るために仮眠し始めたカズマの髪を弄っていた。
「…やはり、綺麗な髪だな」
根元から毛先まで、男とは思えないほどの綺麗な栗毛はダクネスの手をスルリと抜け、パサリと落ちる。それをまた持ち上げて落とすという動作をしていると、暖炉の前の絨毯の上で寝転んでいたアクアがそれを見て髪を弄りながらダクネスに話しかけた。
「ねぇダクネス、カズマってお風呂好きよね」
「ん?あぁ、よく大浴場で姿を見掛けるな…。それがどうかしたのか?」
「んーん、カズマの髪が綺麗なのってそれが原因かと思って。ほら、私達って結構早風呂でしょ?それに比べてカズマは結構長風呂だから」
「あぁ…長い時は二時間は入っている時もあるからな、綺麗好きなんだろう。こんなになってまで掃除をするくらいだしな」
「よねぇ…」
事実、カズマは長風呂で綺麗好きある。それはパーティーでもよく知られていることで、更にはアクセルの冒険者達の間でも周知の事実である。
クエストから帰ると直ぐに大浴場へ直行するあたり、カズマは汚れを嫌っており、いつも着ているジャージを浴場の中で洗う程だ。勿論周りに迷惑をかけない所でだが。
カズマは汚れを嫌い、清潔を最低限最高に保つ。そのため、ギルドの大雑把な男性冒険者を苦手とする女性冒険者からはかなりの好印象であった。
「…さてと、そろそろご飯にしよう。確かそろそろめぐみんが買い出しから戻ってくるはずだからな」
「そうね、じゃあカズマを起こしましょ」
「あぁ…カズマ、起きろ。晩御飯の支度をするぞ」
「う…ん………」
ゆさゆさとダクネスがカズマを揺さぶると、今まで安らかだった寝顔が崩れて瞼が開かれる。膝の上で目を擦りながら起きようとするカズマだが、睡魔に中々勝てないのか全然起き上がらず、やがてにはまた寝てしまった。
これにはダクネスも困り果てて、揺さぶり続ける。だが振動に耐性がついたのか、なかなか起きなかった。
「ふぅむ………」
「あー、こうなったら中々起きないわよ?カズマは」
「どうすべきか…」
「…私もう先行ってるわね〜」
と、アクアがダクネスを置いて部屋を出た。
ダクネスが「え、ちょ!?」と言いながら慌てるが、カズマが膝の上にいるため立ち上がれず、手をアクアに伸ばすがアクアは無常にも扉を閉めた。
行き先の失った手はカズマの顔の上に置かれ、カズマは「んむぅ…」と声を漏らしながら、ダクネスの手を顔から退ける。ダクネスはそれに何となく腹が立ち、指を一本立て…
「…そいっ」
「にぁんっ…!?」
脇腹に突き立てた。
それによって意外と可愛らしい悲鳴を上げたカズマはダクネスの膝から転げ落ちてソファーから落下し、「ぅんっ!?」と呻き声を上げた。
そのままダクネスは追撃し、人差し指で床で呻くカズマの脇腹を突く。
悲鳴を上げながらダクネスの攻撃を我武者羅に腕で防ぐカズマは、集中力も定まらないまま、ダクネスの追撃から逃れるために、
「わっ、ゃ、『ワープ』!」
「あっ!」
『ワープ』で扉の前に出ようとしたが…カズマは、前にウィズから忠告された言葉を思い出した。
『壁が近くにある場所での使用はお勧めしません。大きく精度がブレてしまうと壁に埋まってしまう危険性があります』
『壁に埋まってしまう危険性があります』
思い出した時にはもう遅かった。
スキルを発動させたカズマの姿が消え、扉のすぐ側の___壁から現れる。
腰回りに隙間なく壁があり、カズマは壁に取り込まれている。
上半身は部屋の中にあり、ソファーの上で呆然としているダクネスと目が合った。
「…助けはいるか?」
「お願いします」
カズマは上半身をダランと下げて、ダクネスに頭を下げた。
助けられる中
よくお父さんにやられてたなぁ…としみじみ思い出しながら書いてました。
次回は章タイトルの題名通り、デストロイヤーを出したいと思います。
では、次回もお楽しみに…