【この素晴らしい世界に祝福を!】カズマはのんびりと魔王討伐を志す様です。 作:よるくろ
〜アクセルの町・近郊の平原〜
アクセルの街から少し離れた平原、そこでは大きな土煙を上げながら、“巨大なカエル”に追いかけられる男女二人の姿が見受けられた。片方は、若干男に見えなくもないが。
「いぃぃやぁぁぁぁ!!!」
「でっかぁ…どうやって倒すのあれ」
先程意気揚々とクエストを受けたのは良いが、カズマたちには金銭が一銭もない。
それ故に防具や武器も買えず、己の身一つでクエストに挑もうと、アクセルの町付近の平原に赴いたのだが…。
討伐対象である巨大なカエル、ジャイアントトードの体長は少なくとも3m近くあり、跳躍力が凄まじい。だがそのカエルたちは何故かアクアを追いかけていき、それに怖気づいたアクアに、カズマは腕を掴まれ引きずられて一緒に逃げている。カズマのアクアを見る目に心なしか殺意が含まれているようだ。
その後、なんとかカエルから逃れた2人はカエルから遠く離れたところで息を整えていた。
「はぁ…はぁ…。な、なんで私ばっかり追いかけてくるのよぉぉ!!!」
「俺巻き込まれたんだけど」
不服の表情を浮かべて、アクアに文句を言うカズマ。長年運動をしていなかったせいか、それとも筋力のステータスが低いせいか、カズマはかなり疲弊していた。そして疲れた体を休めるために、微風に揺られる草の上で寝そべっている。
「問題はあの巨体だよなぁ…」
アクアも頷く。地球の四トントラックよりも重そうな巨体、それを支える手足の筋力は相当なものだろう。それにスピードは遅いが、それを補うほどの跳躍力。駆け出しクエストのはずだが、これは少々難易度が高いのではないかとカズマは思う。
だが、これは駆け出しクエストだ。ということは”最低限”装備を揃えれば十分クリアできる難易度なのだ。だが忘れてはならない、カズマたちは、先ほど冒険者登録をした際に金銭を使い果たしたのだ。
故に、装備などを買い揃えることができるはずもなく、結局は拳で戦うしかない。
「…ん?」
そう決意した先に、カズマは近くにきらりと光るものを見つけた。スッと立ち上がり、それの近くに歩いていく。”それ”は、地面に突き刺さっていた。
銀入りに輝く鋭利な刃、西洋剣のようなフォルムの柄。それは剣だった、アクセルを出る際に、道中でカズマが視界の端でみた武器屋に飾られていた武器と同じような。
カズマは柄をもって力を入れると、驚くほど何の抵抗もなくするりと抜け、そして軽い。生まれて初めて武器の類に触れるはずなのに、その剣はカズマの手に馴染んだ。
「これは…いいな」
ヒュンヒュンと風を切る音を鳴らしながら、剣を振る。試しに近くに生えていた背の高い草を切ってみると、音もなくスパッと切れた。そして、アクアに報告しようと先ほどまでいた場所に目を向けるが、そこにアクアはいなかった。
あたりを探すとアクアは遠くにいるカエルに輝く拳を振りかぶりながら接近していっていた。
「カエルの分際でこの私に楯突くなんて万死に値するわ!喰らいなさい!『ゴッドブロー』!!!」
「おっ」
カエルへ突撃するアクアは固く拳を握り、魔力らしき光を拳に込めてカエルの腹にぶつける。だが、そんな叫びと雄叫びを発しながら放った拳は虚しくカエルの肉厚な腹によって威力は消され、腹にめり込む。
慌てて拳を抜こうと必死になっていたアクアは、そのままカエルによってパックリ食べられた。のっそり起き上がりもごもごと口を動かすカエルは不味そうな表情をしている。
カズマはその隙にカエルへと接近し、出来るだけ多く持った乾燥した土をカエルの背中にぶつける。するとカエルの体から分泌された粘液によって土は引っ付き、粘液は乾燥した土によって吸収された。登っても問題なくなった背中を駆け上がり、剣を脳天に突き刺す。
その一撃でカエルは絶命し、倒れた拍子に口の中からヌルヌルになったアクアが、ベシャっと飛び出てきた。
「うえっえぐっ…うわぁぁぁあああん」
「こ、こっちに来るなー!」
カエルの臭い粘液だらけになったアクアは子供の様に泣き、そのヌルヌルまみれの体を起こしてカズマの方へ駆け出した。カズマは逃げた。全力で、生涯に二度とない全力で逃げた。だがそんな疾走虚しく、全力で逃げるがやはりステータスの差ですぐに追いつかれ、後ろから抱きつかれる形で捕まった。しかも走っている最中なため、勢いよく転んでカズマもヌルヌルになった。あと臭いが強烈である。
それに、ここは平原で、カエルの住処ともいえる場所。当然転んだら近くにいるカエルに食べられるわけで、2人まとめて捕食された。
カエルの腹の中は丁度いい温度であったかく、臭いが居心地が良かった。まるで学校のトイレを思い出す。だが、このまま消化される訳にもいかないので、カズマは剣で中から腹を突き破って脱出した。
二人の体は更にヌルヌルになり、その感触に不快感を隠せない表情を出しながらカズマは駆け出す。早く終わらせたいのだろう。
「…行くぞ、駄女神」
「駄女神って言わないでー!!!」
アクアはそう言って、駆け出すカズマの後を追っていった…。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
残りのジャイアントトードの討伐は順調(アクアを囮にして)に終わり、ギルドへ向かう途中、町中の視線はヌルヌルになったカズマらを捉えていた。
「ふぐっ…うぇえ…」
「あーもう泣くな泣くな、報酬半分やるから…ハァ」
「うぅ…お酒奢って…」
「はいはい…」
女神のくせに情けなく泣くアクア、そのアクアの背中を撫でながら慰めるカズマ。何も知らぬ者からすれば髪色の違う、仲の良い姉妹に見えなくもない。
カズマは今回のクエストで学んだ事はいくつもあった。自身の力の無さ、仲間との連携、そして何より…
コイツ使えねぇ…と。
「クエスト達成です!素材の状態が良質だったため、報酬金額を増額しました!」
ヌルヌルになったカズマとアクアは、ギルドでクエストの達成報告をしていた。受付の女性…否、ルナさんはヌルヌルになった二人を見ても表情をピクリとも動かさずに作業をこなしていく。きっと、この二人のような状態になった者を何人も見てきたのだろう。
報酬金を受け取った後、カズマはありがとうございます、と言いながらルナさんに体や服を洗う場所は無いかと聞いた。
「でしたら、冒険者専用の大浴場がございます!金額は無料、浴場内には体を洗うタオルや石鹸などが設置されていますので、道具の心配はございません!それと服を洗う場所でしたら大浴場の中に設備されたクリーニング師に服をお渡しください!そちらも無料で服を修繕してくださいますので、是非行ってみてはいかがでしょう!」
「カズマカズマ!早く行きましょう!」
ルナさんの話を聞いたアクアがカズマの服の袖を引っ張って催促する。分かった分かったとげんなりしたようにカズマはルナさんに説明された道順を行き、大浴場へと赴いた。
大浴場でヌルヌルを洗い流し、広い湯船で体を休めて、次は装備を整えていこうと、次はアクアをもう少し使いこなそうと、カズマはそう決意した。
『クエスト【巨大蛙《ジャイアントトード》】を討伐せよ!
難易度★☆☆☆☆
報酬:1体5000エリス(なお、対象の魔物の素材が採れない場合、報酬は減少します)
討伐数:5/5(討伐数を過ぎた場合、比例して報酬は増加します)
期間:7日間(期間をすぎた場合、罰金支払いの罰則が命ぜられます)』
クエストclear!
最後が少し適当になりましたが、修正完了です。
次話も少しづつ修正しますので、もうしばらくお待ち下さい。