【この素晴らしい世界に祝福を!】カズマはのんびりと魔王討伐を志す様です。   作:よるくろ

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 デストロイヤー戦、最後の話です。

 それでは、どうぞ。


【32】 機動要塞デストロイヤー【下】

 

 

 突然脚を失った機動要塞が、とんでもない地響き、轟音と共に、平原の只中に墜落し、そのまま慣性の法則に従って街の方へと地を滑る。

 

 その滑る巨体は街の前のバリケードに届く事はなく、最前線で立ち塞がるダクネスの、ほんの目と鼻の先で動きを止めた。

 

 轟音と共に爆砕した巨大な脚が、破片となって冒険者達の頭上に降り注ぐ。めぐみんが脚を吹き飛ばしたカズマ側は、殆ど欠片は降ってこない。だが、ウィズの側からは、なんだか聞き慣れた悲鳴が聞こえていた。

 

 

「あんた、もうちょっとちゃんと破壊しなさいよ痛っ!? 破片が、破片が降ってきていだいっ!?」

 

 

 向こう側は大丈夫そうだ。

 

 しかし、カズマ側は殆ど破片が降ってこないと言う事は……。

 

「フフフ……今日の魔法は会心の出来です。脚が、欠片も残さず粉々ですよ……」

 

「良くやった」

 

 

 カズマの足元で倒れ伏すめぐみんを抱き起こし、『ワープ』で後方に避難させる。

 

 そして戻り、他の冒険者達が未だ降り注ぐ破片から頭を守る中、アクアとウィズがカズマの元へとやって来た。

 

 ダクネスはと言えば、降り注ぐ破片を気にもせず、目を閉じる事すらなく、一歩もその場から動かずにいる。

 

 カズマは改めてデストロイヤーの巨体を見上げると、脚を失った巨大要塞は沈黙を保っていた。

 

 降り注ぐ破片の雨があらかた収まり、落ち着いて状況を把握出来る様になってきた冒険者達から、おお……、と感嘆の声が上がり出す。だが、こんな簡単に終わってくれるのだろうか。

 

 

「やったわ!何よ、機動要塞デストロイヤーなんて大げさな名前しといて、期待外れもいい所だわ。さあ、帰ってお酒でも飲みましょうか!なんたって一国を亡ぼす原因になった賞金首よ、一体報酬はお幾らかしらね!!」

 

「…あー、アクア。フラグって知ってるか?」

 

「…?なんでしょう、この地響き」

 

 

 ウィズが不安そうに機動要塞の巨体を見上げた。

 

 大地が震えるようなこの振動は、明らかにデストロイヤーを震源としている。

 

 冒険者達が不安げにその巨体を見上げる中、それは唐突に。

 

 

『この機体は、機動を停止致しました。この機体は、機動を停止致しました。排熱、及び機動エネルギーの消費が出来なくなっています。搭乗員は速やかに、この機体から離れ、避難して下さい。この機体は……』

 

 

 機動要塞の内部から、その機械的な音声は唐突に、繰り返し何度も流された。

 

 

「…ふふ、それ見たことか」

 

「えっとカズマ…、これって私が悪いの?まだ何もやらかしてないわよね?」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 カズマが『ワープ』でデストロイヤーに乗り込むのを皮切りに、狙撃スキル持ちのアーチャー達が、次々とデストロイヤーに向けて矢を放つ。

 

 スキルによって飛距離を強化された矢は、重い矢じりとロープを物ともせず、巨大なデストロイヤーの甲板にも楽に届いた。

 

 フック状の矢の部分がデストロイヤーの甲板部分の障害物に引っ掛かる。矢の後ろに付いたロープを引くと、それがピンと張られた。

 

 張られたロープに冒険者達が次々取り付き、それらを伝い、上って行く。

 

 鎧を着たままでロープを上るだとか、人間離れし過ぎだろとか、どこからそんな体力がとか、きっと今の彼らには言うだけ無粋な事だろう。

 

 彼らはこう言ったのだ。

 

 

『…やるぞ。俺は』

 

『……俺も。レベル30越えてるのに、未だにこの駆け出しの街にいる理由を思い出した』

 

『むしろ、今まで安くお世話になって来た分、ここで恩返し出来なきゃ終わってるだろ……』

 

 

 と。

 

 町への恩を返すべく、乗り込んでいく彼らの目は決意に満ち溢れている。そして登り切った先で目の当たりにしたのは…破壊された、大量のゴーレムの先でゴーレムを蹂躙していくカズマの姿だった。

 

 拳で、蹴りで、鋭い剣捌きで蹂躙していくカズマの猛撃に立ち向かうゴーレムは悉く打ち倒される。冒険者達はそんな光景を見て…

 

 

「カズマへ続けええええええっっっ!!!」

 

『おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっっ!!』

 

 

 ハンマーや大剣を持ってゴーレムへと突撃して、ロープを駆使しながらゴーレムの動きを妨害して撃ち倒す。そんな後列にいる冒険者を一瞥したカズマは更に奥へと突き進み、奥へと向かった…。

 

 

「ふぅ…!」

 

 

 横から飛び出してきたゴーレムの腕をしゃがみ込んで交わし、床に手を付いて脚でゴーレムの頭を蹴り飛ばし、止めに剣を突き出す。

 

 別個体のゴーレムがカズマに攻撃を仕掛けるが、胴体を蹴り飛ばして距離を取ったカズマが『ワープ』で更に奥へ行き、敵を無視しながら最奥を目指している。

 

 

「…お、扉発見」

 

 

 ゴーレムを撃破しながら進むこと三分。ついに操縦席へ繋がっていそうな扉を発見したカズマはそのままのスピードで扉へ“ドロップキック”。急停止も兼ねていたそのキックは扉を破壊まではいかなくとも、扉に靴の裏の跡を付けた。

 

 

「結構頑丈だな…」

 

 

 “こんこんっ”とノックで強度を確かめ、殴ってみる。助走をつけて蹴った痕には及ばないものの、扉は少しへこんだ。痛そうに手を振りながら、カズマは赤くなった手をポケットに入れる。

 

 そして魔榴弾に似て非なるもの、丸い形状ではなく、円柱状のそれをカズマは扉に押しつけた。

 

 

 ___バチュンッ!!!

 

 

 

 魔力を流した瞬間、静かに音が鳴る。その数瞬後に扉の向こうから轟音が聞こえた。

 

 円柱状のそれを退けると、扉には穴が開いていた。

 

 

「“魔貫弾“…徹甲弾を模擬して作ったが、かなり効果は高いな」

 

 

 “マナタイト内蔵魔力式AP貫通弾a.k.a.魔貫弾”。鋼鉄の器の底にマナタイト、火薬、弾の順番で詰め込み、魔力を流せばマナタイトの爆発と火薬の火力により弾が超速で飛び出し、一点集中の破壊力で対象を貫通するという効果を持つ擬似現代兵器だ。

 

 反動対策として鋼鉄の器は二重層になっており、層と層の間に綿を詰め込んでいる。

 

 それでも少し手は痛くなるが、カズマはそれを気にせず開けた穴を覗き込み、中を確認した。見たところ外敵はおらず、カズマは視認できている範囲の床を見て『ワープ』を発動し、中へと入った。

 

 

「…白骨死体?」

 

 

 まず目に入ったのが、古びた日記帳を片手に持つ白骨死体だった。それはボロボロの白衣を着ており、恐らくデストロイヤーに乗っていた操縦員なのだろう。

 

 ただ…カズマが使用した魔貫弾によって、頭部が粉々なのだが。

 

 

「あっちゃー…」

 

 

 「開いたぞーっ!」と、やらかしたカズマの後ろで扉が倒れる。次々と冒険者がなだれ込んできて、白骨死体を見つけて…

 

 

「や、やべえ!カズマ怒ってるぞ!白骨死体のド頭容赦なくぶち抜いてやがる!」

 

「やっば!」

 

 

 カズマに畏怖の視線を向けて、カズマから遠のいた。

 

 カズマは慌てて弁解しようとするも、この死体について苛立っていたのは否めないので、言い訳ができなかった。

 

 そして、カズマは諦めて白骨死体の手から日記をぶんどり、ページを開いた。

 

 叩きつけた。

 

 

「お、おい!何があった!というか大事なもん叩きつけんな!」

 

「舐めたこと書いてやがるから燃やしていいよな?なんだ俺でしたって舐めてんのか!」

 

「お、おい!抑えろー!重要なもん燃やされるぞー!」

 

 

 『ティンダー』で日記を燃やそうとするカズマを屈強な冒険者達が抑えにかかる。が、ベルディアを倒し、冬将軍と渡り合ったカズマを駆け出しの冒険者が抑えられるはずもなく、三人がかりで抑えているはずなのに振り解いてしまった。

 

 

「なんてパワーだ!」

 

「落ち着けっカズマ!」

 

 

 たった今到着したダクネスがカズマを後ろから抱きしめ、動きを止める。「うぶっ」とカズマが呻いたことに気付かずにダクネスは更に力を込める。

 

 

「お前が何を怒って日記を燃やそうとしているのかは分からん!だが、目先の怒りに囚われて行動を起こすな!」

 

「ちょ、ダクネスさん」

 

「頭を冷やして落ち着け!そうだ、読書でもしよう!丁度そこに日記帳があるし本を読んで心を!」

 

「だ、ダクネスさん!」

 

「む、なんだ。今私はカズマを落ち着かせようと…」

 

「いえ、あの…カズマさん死にそうです」

 

 

 ダクネスに声を掛けた冒険者が、カズマに指を刺す。

 

 ダクネスは視線をカズマに向けた。すると、カズマは…ダクネスの腕の中で血を口から垂らしながら、青い顔で気絶していた。

 

 

「か、か…カズマァァァァァァァァァァァーーーっっ!!!」

 

「え、えっと…じゃあ私が朗読するわね?カズマに代わって」

 

「あ、あぁ、よろしく」

 

 

 アクアが日記帳を拾って、読み始めた。

 

 

 

「……。○月×日。国のお偉いさんが無茶言い出した。こんな予算で機動兵器を作れと言う。無茶だ。それを抗議しても聞く耳持たない。泣いて謝ったり拝み倒してみたが、ダメだった。辞めさせて下さいと言っても辞職願いを受理されない。バカになったフリをしてパンツ一枚で走り回ってみたが、女性研究者に早くそれも脱げよと言われた。この国はもうダメかも知れない」

 

 

 思わず、皆の視線が白骨化した骨に集まった。

 

 

「○月×日。設計図の期限が今日までだ。どうしよう、まだ白紙ですとか今更言えない。だってヤケクソになって、貰った報酬の前金、もう全部飲んじゃった。どうしようと白紙の設計図を前に悩んでいると、突然紙の上に俺の嫌いなクモが出た。悲鳴を上げながら、手近にあった物で叩き潰した。叩き潰してしまった。用紙の上に。……このご時勢、こんなに上質な紙は大変高価なのに、弁償しろとか言われても金が無い。……知るか。もうこのまま出しちまえ」

 

 

 微妙な空気になってきた中、アクアが尚も手記を読む。

 

 

「○月×日。あの設計図が予想外の好評だ。それクモ叩いた汁ですけど、そんな物よく触れますねなんて絶対言えない。て言うか、ドンドン計画が進んでる。どうしよう、俺のやった事って、クモを一匹退治しただけ。……でも、こんな俺が所長です。ひゃっほう!」

 

「○月×日。俺何もしてないのにどんどん勝手に出来ていく。これ、俺いらなかったじゃん。何なの?もういいや、勝手にしてくれ。俺は俺らしく好きに生きる。……なんか動力源をどうこう言われたけど知るか。俺最初から無理って言ったじゃん。そんなの、永遠に燃え続けるって言われている、超レア鉱石、コロナタイトでも持って来いと言ってやった。言ってやった言ってやった!持って来れるもんなら持って来い」

 

「○月×日。持って来ちゃった。どうしよう、本当に持って来た。なんか動力炉に設置を始めた。どうしよう、マジでどうしよう、持って来れる訳無いと思って適当に言ったのに、本当に持って来た。これで動かなかったらどうすんだ。俺どうなるんだ。えっ、死刑?これで動かなかったら死刑じゃないの?動いてください、お願いします!」

 

「○月×日。明日が機動実験と言われたが、正直俺何にもしてねえ。やったのはクモ叩いただけ。この椅子にふんぞり返っていられるのも今日までか……。そう思うと、無性に腹が立ってきた。もういい、飲もう。今日は最後の晩餐だ。思いっきり飲もう!機動兵器の中には、今日は誰も残っていない。どんだけ飲んでバカ騒ぎしても、咎められる事は無いだろう。とりあえず、一番高い酒から飲んでいこう!」

 

「○月×日。目が覚めたら、なんか酷い揺れだった。何だろう。何だろうこれ。俺どれだけ飲んだっけ。覚えてない。いや、昨日の記憶が無い。あるのは、動力源のある中枢部分に行って、コロナタイトに向かって説教してた所までしか覚えてない。いや待てよ。その後、お前に根性焼きしてやるとか言って、コロナタイトに煙草の火を…………」

 

「○月×日。現状を把握。そして、終わった。現在只今暴走中。どうしよう、これ間違いなく俺がやったと思われてる。俺、絶対指名手配されてるよ。今更泣いて謝ったって許してもらえないだろうな……。やだな……。このまま機動兵器ぶっ壊されて、引きずりおろされて死刑だろうか。畜生、国のお偉いさんも国王も、俺のパンツ脱がして鼻で笑った女研究者も、みんなみんなクソッタレだ!こんな国滅んじゃえばいいのに。もういい、酒飲んで寝よう。幸い食料と酒には困らない。寝て起きてから考えよう」

 

「○月×日。国滅んだ。やべえ、滅んだよ、滅んじゃったよ!国民とかお偉いさんとか、人はみんな逃げたみたいだけど。でも俺、国滅ぼしちゃった。ヤバイ、何かスカッとした!満足だ。俺、もう満足。よし、決めた。もうこの機動兵器から降りずに、ここで余生を暮らすとしよう。だって降りれないしな。止められないしな。これ作った奴、絶対バカだろ。おっと、これ作った責任者、俺でした!」

 

 

 ここでアクアが「…終わり」を締めくくり、日記を閉じ、床に叩きつけた。

 

 その事を咎める者など居らず、皆拳を力一杯、怒りを込めて握りしめている。

 

 そして、アクアと、ダウンしているカズマと、慌てながらカズマを介抱しているダクネスを除いて、冒険者達は目一杯息を吸い込み、

 

 

「「「なめんなッッ!!」」」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「それで?これがコロナタイトか…」

 

 

 腹を抑えながらアクアに肩を抱えてもらいながら、要塞中心部へとやってきたカズマが鉄格子に囲まれて紅々と燃えている動力源、コロナタイトへと近づいた。

 

 …暑い。隣でカズマを抱えるアクアの体温も合わさって蒸し暑く、カズマはフラフラになりながらもアクアから離れる。大人数で来ることもないだろうとカズマ含めた少数精鋭でここに来たことが幸いで、この空間がもっと蒸し暑くなることは無さそうだ。

 

 頭が中々回らないカズマは、ふとこんな事を思いついた。

 

 ___あ、これスティールで盗れるじゃん。

 

 そう考えついたカズマは早速『スティール』でコロナタイトを取った。紅々と燃えているコロナタイトを。

 

 

「あっづぁ!?」

 

「ちょ、カズマさん!?『フリーズ』!『フリーズ』!」

 

「ばかなの?カズマバカなの!?『ヒール』!『ヒール』!」

 

 

 “ジュンッ…”を一瞬にして大火傷を負った右手を回復してもらいながらカズマは手を振り、コロナタイトを落とす。爆発するかと思ったが、『フリーズ』による一時的な消沈によって爆発とはならなかった。

 

 だが、流石は伝説と呼ばれる鉱石であり、すぐに熱を持ち始めて燃え始めた。

 

 

「あっちー…やっべ、どうするよこれ」

 

「でも動力源は断ちましたね、放送も聞こえなくなりましたし」

 

「でも爆発しそうよね、そこら辺どうするの?」

 

「…カズマさん、魔力とか残ってますか?本当にちょっとでいいんですけど」

 

「滅茶苦茶残ってるけど…何か打開策でも?」

 

「はい、結構運が重要になりますけど」

 

「ンー…まぁ、いや、嫌な予感がするなぁ…そうだ、『テレポート』でベルディアの城に送ろう。万が一修理費が発生してもギリギリ出せるかもしれない」

 

「…えっと、無理です。登録してないので」

 

「ね、ねぇ!なんかチカチカしてるんだけど!なんかボンっ!てなりそうなんだけど!」

 

「…っく、仕方ない。ウィズ頼む」

 

「分かりました、では…いただきます」

 

 

 『ドレインタッチ』でウィズがカズマから魔力を吸い取る。ちょっとでいいとか言っていたのに、カズマの顔色が悪くなっている。

 

 

「ちょ、ちょっと!それ以上は干物になっちゃう!カズマ!大丈夫?しっかりして!」

 

「…あ、ウィズの手…冷たい」

 

「カズマーっっ!!!」

 

 

 






 新兵器、魔貫弾です。

 魔榴弾という範囲系の爆発兵器ときたら、次は一点集中型の爆発兵器でしょう。因みにイメージはヒロアカの爆豪の“APショット”です。

 原作にあったダクネスの弄りは本作にはありませんが…そこは勘弁してください。

 それでは、次回もお楽しみに…
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