【この素晴らしい世界に祝福を!】カズマはのんびりと魔王討伐を志す様です。   作:よるくろ

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 今回は閑話休題の日常回です。

 どうぞ、ごゆっくりお楽しみください。

 では、どうぞ…


【閑話休題】日常
【33】 カズマの一日【上】


 とある早朝、真冬の朝。

 

 いつもの如く徹夜で擬似兵器の開発に勤しんでいたカズマは、作業部屋として使っていた暖炉部屋のソファで目が覚めた。

 

 

「ん……ぅ」

 

 

 少し艶かしい声を出しながら、目を開けたカズマは目に掛かる前髪を眠気で覚束ない手で払い、天井を眺める。パチパチと燃える暖炉の音が部屋の中で響き、手をほぐすように握ったり開いたりしながら心臓の上に手を置いた。

 

 “トクン…トクン…”と鼓動を手のひらで感じ取り、カズマは深く息を吸って吐く。いくらかハッキリした意識の中、カズマはソファの背もたれを掴んで起き上がり、脚をソファから投げ出した。

 

 視界に映る、ほつれだらけのジャージ。そろそろ修繕しても保たないなとカズマが裾を引っ張ったりしていると、暖炉部屋のドアがガチャリと開いた。

 

 

「ふわ……はれ、カズマ、起きてたの」

 

「おはよう、アクア。…服はちゃんと着ろ」

 

 

 入ってきたのは、水の女神であるアクアだ。彼女はだらしなく腹を掻きながら欠伸をして、カズマの隣に座り、カズマにパジャマを整えてもらう。少し満悦な顔をするアクア、ソファから投げ出している足を伸ばし、ゆらゆらと揺らしながらぼーっと暖炉の火を見る。

 

 

「…カズマ、飲み物ない?」

 

「…自分で取ってこいよ、全く」

 

 

 少ししてアクアがソファの背もたれに頭を預け、飲み物を要求した。カズマはそんなアクアに文句を言いながらもソファから立ち上がり、隙間風の吹く窓際に置いてある、冷えたお茶を取ってソファに戻る。

 

 最初の一口はアクアに譲り、アクアはカズマにコップを渡す。間接キスなど、そういう概念など早朝の思考にはなく、カズマはアクアが口を付けた場所で水を飲む。

 

 喉を冷やす水の冷たさで意識が更に覚醒してきて、寝起き上がりの身体に力が入る。カズマはコップを見たまま動かないアクアを置いて、机の上に展開した擬似兵器の部品を丁寧に整理しながら集め、工具を工具箱に収納していく。

 

 それらをソファの下に押し込んで、背もたれに背を預ける。

 

 

「…まだ皆が起きてくる気配はないな」

 

「えぇ…私も早く起きすぎたわ、こんなに眠いのに」

 

 

 そう言いながら欠伸をするアクアを見て、カズマは苦笑する。実際、カズマも“早く起き過ぎた“という時間帯で起きてしまい、今も出来ることが終わったことで、眠気が襲ってきていた。

 

 だが今寝ると変な時間に起きてしまいそうで、寝るに寝れない。ニート生活以降この世界で正してきていた生活バランスを崩すのは少し怖く、また昼夜逆転生活に逆戻りしないかと心配なのだ。

 

 そんな危惧を感じているカズマの横でアクアはうつらうつらと船を漕いでおり、今にも寝そうだ。

 

 

「…アクア、寝るなら横になって寝ろ。今退くから…」

 

「んー…はーい」

 

「え、ちょ」

 

 

 カズマがソファから立ち上がろうと背もたれに手をかけると、その瞬間アクアの頭がカズマの膝に倒れ込んできた。立ち上がろうと膝に力を込めていたカズマはすぐに力を抜いて、突然膝枕をさせてきたアクアに困惑の表情を浮かべる。

 

 だが手は既にアクアの頭に置かれており、毛先に沿って優しく手櫛している。カズマの手のひらの感触が心地よいのか、「にへへー…」とだらしない笑顔を浮かべながら寝息を立てており、カズマの腰にしがみついた。

 

 

「ふふ…全く、しょうがないヤツだな」

 

 

 それを解こうともせず、慈愛の笑みを浮かべて、撫でやすいアクアの髪を撫で、アクアの寝顔を眺める。

 

 気付けば、カズマはアクアの頬を手で包みながら、眠りに入っていた…。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 それから二時間が経ち、カズマはもう一度目を覚ました。

 

 膝の上には頬を包むカズマの手を抱きしめながら眠るアクアがおり、カズマはそっと手を引き抜いてソファから立ち上がる。その際アクアがいやいやと言わんばかりに腰に抱きつくが、カズマはそれを優しく解きながらアクアの手をソファに置いた。

 

 欠伸をしながら背伸びをして、パキパキと鳴る骨を解す。そろそろ朝食を作る時間かと、時計を見ながらカズマは厨房へ向かい、冷蔵保存箱の魔道具から食材をいくつか取り出した。

 

 “トントントン”と一定リズムで野菜を切る音が響く。紺色のエプロンを身に付けたカズマは脂の敷いたフライパンを火にかけながら卵を取り出し、薄く広いベーコンを俎板の上で均等に切っていく。

 

 

 ___ジュウウゥゥゥ………

 

 

 卵の白身が鮮やかに白くなり、その上に薄いベーコンを敷く。安物のはずのベーコンは良い色味を出し、その上から胡椒を振りかけると力強いペッパーの匂いが鼻の奥を刺激する。

 

 皿の上には既にカリカリに焼けた食パン。茶色い焦げ目の上にベーコンを乗せた目玉焼きを被せ、その隣に千切りにした温キャベツを少量の塩と共に盛り付ける。

 

 人数分の朝食を用意したカズマはテーブル敷きを人数分敷き、その上に皿を置く。先日に買っておいた牛乳をコップに注ぎ、朝食の準備を済ませたカズマは皆を起こしにダイニングを出た。

 

 めぐみん、ゆんゆん、ダクネスの順番で部屋を巡り、最後にソファで寝るアクアを起こす。覚束ない足取りでダイニングへと進むアクアを支えながら、カズマはダイニングへと戻った。

 

 

「「「「おはよう(ございます)、カズマ(さん)」」」」

 

「ほはよー…ふわ」

 

「あぁ、おはよう」

 

 

 既に三人は席についており、カズマはアクアを椅子に座らせる。

 

 カズマもエプロンを着けたまま椅子に座り、手を合わせた。他四人もカズマに倣い手を合わせて、カズマが音頭を取った。

 

 

「いただきます」

 

「「「「いただきます」」」」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 シャワシャワと洗剤の泡を水に流しながら、皿を洗う。スポンジを強く持ちながら汚れを落とすカズマを、食卓に未だ座っているダクネスが見つめていた。

 

 

「朝からご苦労だな、カズマ」

 

「めんどくさいけど、この中じゃ『料理スキル』持ってる俺がやらないといけない仕事だからな。それにリーダーとしてメンバーの体調管理もしっかりしなきゃいけないし」

 

「なるほど、それは大変だな…何か、手伝えることはないか?」

 

「ンー、先週の事を覚えててその言葉が吐けるのだったら一度頭に『ヒール』を掛けてもらった方がいいと思う」

 

「んんっ…そ、それは…」

 

 

 そう、このダクネスは先週カズマの家事の手伝いをしようとして盛大にやらかしまくっている。その失敗の原因がダクネスの器用度の低さからくるのだが、力加減を間違えて窓を割ったり皿を割ったり、料理の盛り付けすら不器用に盛り付けるばかりで逆にカズマの手間を増やしていた。

 

 それからダクネスは、手伝い禁止令といった制約をカズマから推され、カズマの家事をする姿を眺めることだけしかしなくなったのだ。

 

 

「…それに、家事は得意な方だしな。手伝いがなくても多少は掃除は行き届く。ほら、コーヒー」

 

「あ、ありがとう…。たしかに、最初の時と比べて綺麗になったな、ここは」

 

 

 隅から隅まで掃除の行き届いているダイニングを眺めながら、カズマから受け取ったコーヒーを啜る。酸味の効いた暖かいブラックは、朝の眠気を飛ばし、身体を温めてくれる。

 

 木を燃やしにくくする特殊な液体を塗った木製のケトルをコンロの上から退かし、コンロ周りの掃除を始める。せっせと掃除をするエプロン姿のカズマは家事育児に勤しむ母親のようで…

 

 

「っは!だ、ダメだ!私は女でカズマは男で…!」

 

「何を言ってんだ?」

 

「い、いや、なんでもない」

 

 

 思わず妄想を捗らせてしまったダクネスが頭を勢いよく振りながら頭の中のイメージを掻き消し、ぶつぶつと自分を諌めるような声色で独り言ちる。

 

 そんなダクネスにカズマは訝しげな表情を向けるが、頑固な汚れを発見したのか、次はそっちに集中し出した。

 

 

「そういえばカズマ、掃除をしている時その長い髪は邪魔にならないのか?」

 

「ンー…後ろに流してるからあんまり問題はない…かな」

 

「だが邪魔というときはあるだろう、少しこっちにきてくれ」

 

「ん…」

 

 

 ダクネスの言う通りにカズマはダクネスの元へ行くと、ダクネスはしゃがみ込むようにカズマへ言う。言う通りにしゃがみ込むカズマの髪を持ち上げて、ダクネスは予備の髪留めを取り出してカズマの髪をまとめ始めた。

 

 簡易的なポニーテールといった具合だが、若干スッキリしたカズマの髪の毛をポンポンと揺らし、ダクネスは「いいぞ」とカズマを立ち上がらせる。

 

 

「おぉ…」

 

「どうだ、少しはマシになっただろう?」

 

「あぁ、ありがとう。…ダクネスとお揃いだな」

 

「んっ、あぁ」

 

 

 「さて、続きを…」と掃除に戻るカズマの後ろ姿を見て、ダクネスは自分のポニーテールに触れる。長年付き合ってきたこの髪型だが、今これほどこの髪型に感謝した日はないだろう。

 

 笑みを浮かべながらコーヒーを口にするダクネス。まるで夫婦の朝のようなこの光景は、争いあってダイニングまで追いかけっこをしていためぐみんとゆんゆんが突撃するまで続いた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「全く…」

 

 

 ダクネスからしてもらったポニーテールがカズマの感情を表すように揺れ、それを興味深そうに見る“ちょむすけ”がてしてしと戯れている。

 

 カズマの前にはめぐみんとゆんゆんが正座をしており、申し訳なさそうな顔をしてカズマの顔を見る。その二人の前に、割れたコーヒーカップを置かれた状態で。

 

 

「…一応、弁解を聞こうじゃないか」

 

「ゆんゆんが悪いです。ゆんゆんが私を追いかけなかったらこんなことにはなってませんでした」

 

「はぁ!?めぐみんが私の昔の事を言うからでしょ!?」

 

「大体、友達ができないからって悪魔を召喚するって言うのがそもそもおかしいのです。悪魔の手を借りず、自分の力で友達を作ったほうが…」

 

「わあああああ!!!ダメ!言っちゃダメったら!」

 

「ん、だいたいわかった」

 

 

 カズマの言葉で二人の言い合いがピタリと止み、カズマの顔を伺う。

 

 終始無表情であったカズマだが、ニコリと笑顔を浮かべ、二人に安堵の表情を浮かべさせた。だが、

 

 

「めぐみんは床掃除、ゆんゆんは窓拭きを頼もうかな」

 

「「えっ!」」

 

 

 “な、何故だ!”と言わんばかりの表情をカズマに向ける二人に、カズマは笑顔を向けてじっと見る。すると二人の顔はみるみるうちに青くなり、「い、行ってきまーす!」とダイニングを勢いよく飛び出しながらカズマの命令したそれぞれの掃除場所へと行った。

 

 カズマは溜息を吐きながら割れたコーヒーカップを片付けて、ちょむすけを肩に乗せる。小さい子猫のようだが、カズマの肩の上でうまくバランスをとっており、カズマの首筋に顔を擦り付ける。

 

 くすぐったそうにしながらもカズマはコーヒーカップの残骸を込み袋の中に入れ、袋を縛る。そして、ちょむすけの頭を撫でながら、袋を持ち上げ、台所にある裏口からゴミ袋を投げ捨て、寒い空気が入らないように素早く扉を閉めた。

 

 肩の上ではちょむすけが寒そうにしており、丁度家事も一段落したカズマは暖炉部屋に向かった。

 

 扉を開けると、暖炉部屋には誰もいない。ちょむすけを肩から下ろし、ソファに座り、膝に置いたちょむすけを撫でながらカズマは水場での家事で冷えた手をちょむすけに押し付けた。

 

 するとちょむすけは「いやーっ」という風に仰向けに転がり、カズマの手を前足で掴んで甘噛みする。後ろ足でパタパタとカズマの手を蹴るが、カズマはそれを気にせずちょむすけの腹をくすぐって戯れていた。

 

 

「ほら、ここだろ、ここがくすぐったいんだろ?」

 

「うにゃー!にゃにゃ!」

 

 

 パッと手を広げると、同じように手を大きく広げて硬直する。そしてまたくすぐると同じように抵抗するが、またパッと手を広げると大きく手を広げて硬直する。

 

 そんな戯れ合いを続けて、カズマの朝はちょむすけと共に終わった…。






 カズママは怒らせると怖いです()

 そんなこんなで、カズマの一日【上】は終わりましたが、みなさんいかがでしたでしょうか?

 私は料理シーンを書いている途中お腹が鳴りました(笑)

 皆さん朝ごはんはご飯派ですか?パン派ですか?私は紛う事なきご飯派です。米は日本人の国宝だと思うのです。

 今回こんな深夜投稿になりましたが、次回はもう少し早く投稿したいと思います。

 では、次回もお楽しみに…
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