【この素晴らしい世界に祝福を!】カズマはのんびりと魔王討伐を志す様です。 作:よるくろ
一日開けて&深夜投稿失礼します。
屋敷を手に入れてからのカズマさんの一日の中編というわけですが、皆さんは日常をどうお過ごしでしょうか?
私は適度(重度)にゲームをし、親の手伝いなどもしながらこの小説をちょくちょく書いています。
一日空いてしまい申し訳ありません。それでは、どうぞ…
正午を過ぎた午後の始め、ちょむすけと戯れ合いをしていたカズマは遊び疲れて眠ったちょむすけを、暖炉の横にある寝床に連れて行き、毛布を掛けてちょむすけを眠らせた。
すやすやと眠る黒い塊を一撫でして、カズマは『裁縫スキル』で自己制作した簡易コートを服掛けから取り寄せながら、袖を通す。
「ん、解れと劣化はまだないな」
『初心者狩り』の毛皮を使っているだけあり、耐久性は高く、このコートを作ってから一週間は経つが、劣化や解れなどは一切ない。物資と生産ラインが安定するなら商品にしても良いだろうとカズマは考えながら、作業用の革手袋を嵌めて、玄関へ行く。
玄関のドアを開ければ、寒い風が吹いてくる。コートに顔を埋めながら急いで外に出て扉を閉めて、庭の方へ歩いて行った。
「…よ、アンナ」
庭にたどり着けば、端に真新しい墓が鎮座している。この墓石には【アンナ=フィランテ=エステロイド ここに眠る】と掘られており、カズマはこの寒風で飛んできた落ち葉や土汚れを墓石から払い落とした。
この下に、アンナの骨は眠っている。前まではこの屋敷に存在する地下室に放置されていたのだが、墓石が完成してからカズマが丁寧に運び出し、この墓の中へと収納したのだ。
骨の軽さから、どれだけ衰弱していたのか、当時のカズマは腕の中に感じる重みで分かっていた。
その重さは今でも思い出す。羽のように軽いのに、巨大な鉛のように重たいような、まるで命そのものを抱えているような、あの重み。
「…」
手を合わせながら、黙祷を捧げるカズマ。忙しい日以外で暇ができた時には必ずやっており、そんなカズマを見倣ってパーティメンバーも時折このようにお参りにやってきている。
「…生きていた頃と違って、寂しくないだろ?」
そう言葉をアンナの墓に投げ掛けて、カズマは踵を返す。すると、後ろから声が聞こえた気がした。
『___ありがとう、お兄様』
カズマは足を止め、少し振り返って、足を進める。いつの日か成仏していたアンナの声は、いつまでもカズマの耳に残り続けた…。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
さて、アンナの墓参りが終わり、カズマも屋敷の中へ帰った頃、数時間の時を経てようやく掃除を終わらせためぐみんとゆんゆんが暖炉部屋のソファに腰を下ろした。
「はぁー…疲れました…」
「さ、寒い…」
「耐寒性が無いですねゆんゆんは…実家の冬じゃこの倍の寒さはありますよ」
「めぐみんのお家って相当ボロボロじゃない、あれじゃ寒さを凌げないわよ…」
「……今も家族はあの家で冬を耐えてるんですよね…わたしだけこんなに良い生活をして良いのでしょうか」
申し訳無さそうに俯きがちになるめぐみんに、ゆんゆんは心配そうな表情を浮かべる。掛ける言葉は見つからない、が、どうにか慰めようと口を開き掛けた瞬間、頬に伝わる暖かな温度に驚いて、
「わっ!?」
「な、何事!?」
どうやらめぐみんもやられたようで、ソファから飛び上がった。突然の事で硬直したゆんゆんが背後を振り返ると、そこには湯気を出すマグカップ二つを両手に持ったカズマが立っていた。
「か、カズマさん!びっくりさせないでください!」
「こ、この私の背後を取るとは…!中々やりますねカズマ!」
「ふふ、二人とも、寒い場所での作業ご苦労。おっちゃんから分けてもらったコーンスープ温めておいたから、これで身体あっためな」
“おっちゃんから分けてもらったコーンスープ”と聞いて真っ先にめぐみんが受け取り、それに続いて、ゆんゆんがおずおずと受け取る。ソファに座り直し、コーンスープに口をつけると、暖かな甘い味が口いっぱいに広がり、冷えた身体にジワリと温かみを与える。
暖炉の中で弱々しく燃える火に、カズマは薪を焚べて火力を上げる。昼の間で薪が足りなくなっていたようで、カズマはアンナの墓参りの帰りに薪を幾つか持って帰っていたのだ。
もう既に飲み干したコーンスープのマグカップを机に置き、めぐみんはカズマの方に顔を向ける。カズマは燃え尽きて炭となった薪を、鉄の棒で火の下から穿り出しており、その炭を袋に詰めていた。
「…それで、めぐみんの家族がボロボロの家で暮らしてるって話だっけ?」
「…へっ?え、えぇ、そうです。…聞いてたんですね」
「俺が丁度入ってきた時に話してたから」
「そうですか……」
めぐみんがまた俯く。コーンスープに夢中なゆんゆんは気付いていないが、めぐみんの声のトーンで察したカズマは背中を向けたまま、話を続けた。
「大丈夫だろ、めぐみんのお父さんとお母さんなんだし、人生経験豊富な大人二人なんだから。それに仕送りもしてるんだろ?普通逆だけど」
「お義父さんお義母さん…!?ま、まだそういうのは早いのでは…!」
「え?」
「な、なんでもありません…。…そうですね、一応仕送りはしてます。ですが…」
めぐみんは思い出す。高額な素材を使う、無駄な魔道具を作る自分の父を。いくら自分と母が注意しても、“ロマン”と言ってやめない、父の姿を。そして母にボコボコにされている父の姿を。
記憶の中でボロ雑巾になっている父の姿を思い出し、思わずめぐみんは溜息を吐く。そんなめぐみんにカズマは苦笑を浮かべ、炭の入っている袋の口を縛った。
「ま、近いうちに様子を見てみると良いじゃないか。実はパーティに内緒で旅行計画を建てているんだが…まだダクネスとアクアには内緒な」
「へぇ…旅行___」
「旅行ですか!」
“旅行”という二文字に、めぐみんは興奮の感情を露わにして声を出す。慌ててカズマが口を塞ぎ、めぐみんは「きゅむっ」と変な声を出して口を塞がれた。
「声出すなって、内緒なんだから」
「む、むぐぐむぐぐ」
口を抑えられながら謝罪するめぐみんの口を離し、カズマはめぐみんの頭に軽くチョップを入れる。少し呻きを漏らしためぐみんは、そのまま炭の片付けに行こうとするカズマの腰に抱きつき、カズマを引き留めた。
「…どうした?」
「ゆんゆんと二人じゃつまらないですから、カズマも残ってください」
「ちょっと!つまらないって何よ!」
ゆんゆんがめぐみんに掴みかかりながら怒るが、めぐみんはカズマの腰から離れず、むしろ抵抗して力を込めているため、顔がもっとカズマの腰に押し付けられている。
突然己の腰を巻き込んだ喧嘩に戸惑いを隠せないカズマだが、引き剥がすことはせずに、ゆんゆんとめぐみんを諌める。
ゆんゆんは大人しく引き下がるが、めぐみんは腰にしがみついたまま離れない。どうやら近代稀に見ない、丁度よく腕の長さにフィットする抱き心地の様で、離れたくても離れられないと、カズマにとって戯言を抜かす。
しばらくカズマとめぐみんの引っ張り合いが続いたのだが、最終的にカズマが折れ(そうになり)、ソファに大人しく座る。三人とはいえ、それでも十分なスペースがあり、めぐみんとゆんゆんの間に収まったカズマは今夜の献立は何にしようかと考える。
「…なぁ、晩御飯何が良い?」
「なんでも良いですよ」
「えっと…カズマさんのご飯なんでも美味しいので…」
「…ンー」
一番困る返答だ。晩御飯の献立を聞いてくる母親の気持ちが、立場的によく分かる。
生態系や見た目がごちゃごちゃな世界とはいえ、大体は日本にある食材と一緒…丁度いい日本料理がないかと記憶の中を模索していると、カズマの中である料理が思い浮かんだ。
「…鍋、か」
冬季にはうってつけの料理、鍋料理。幸い固形燃料や土鍋は屋敷に引っ越す際に買ってあるので、それ自体はどうにかなっている。だが問題は、具材だ。
キャベツやニンジンなどの野菜類は冷蔵庫の中に眠っている。問題は肉であり、ここの冷蔵庫の中には脂身の多いカエル肉が大量にある。よくめぐみんが唐揚げを要求してくるため、大量に買い置きしていたのだ。
流石に鍋の中に脂身が多い物を突っ込むわけにもいかず、だが肉を入れないわけにもいかないし、他の肉を買おうにも先にカエル肉を消費しなければならない。
どうしたものかとカズマは悩むと、ある一つの案を思いついた。
「めぐみん、今日は少し料理を手伝ってくれないか?ゆんゆんも」
「珍しいですね、カズマが手伝いを頼むのは」
「や、やります!少しでもカズマさんの負担を減らしたいので…!」
「ありがとな、まぁ難しい作業じゃないから。四時になったら台所に行くから、それまでゆっくりしていいぞ」
そう言って、カズマはソファの下から擬似兵器を作るための工具と部品を取り出す。机の上に展開して、晩御飯の支度を始める時間まで時間を潰した…。
如何でしたでしょうか?
このカズマさんは抱き心地が良いようですね。最近抱き枕が壊れたので代わりになって欲しいです()
次回はようやく日常の下編ですね…晩御飯何にしようかな…
それでは、次回もお楽しみに…