【この素晴らしい世界に祝福を!】カズマはのんびりと魔王討伐を志す様です。   作:よるくろ

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 なんか強引な終わり方になりましたけど、そこはご勘弁願います。

 カズマの一日最終話、日常系は気が向いたらまた投稿しますので、どうぞおたのしみに、

 それでは、どうぞ…


【35】 カズマの一日【下】

 

 

 午後三時五十分。カズマが言っていた時間には十分早いが、台所にはエプロンを身につけたカズマとめぐみんとゆんゆんの三人が立っている。

 

 台の上には、大量のカエル肉。脂の量が凄まじく、光の反射でテカテカと輝いている。

 

 見るだけで胸焼けしそうだが、良い加減見慣れたカズマはそれをじっと見ながら口を開く。

 

 

「さて…まずは脂をどうするか、だな」

 

「うーん……鍋料理なんですよね?こんな脂脂してるもの材料になるんですか?」

 

「あぁ、俺の国で代表的なのがすき焼きとか、しゃぶしゃぶとかある。まぁタレとか肉の質的に無理だけどな」

 

「じゃあ何を?」

 

「まずはカエル肉茹でるか」

 

 

 魔力で点火するコンロに魔力を流し、火をつける。火に掛けられる水の入った土鍋はしばらくすると沸騰し、カズマはその中にカエル肉を入れた。

 

 瞬く間に白くなった身から滲み出る脂を掬い、別の容器に移し替える。この脂は捨てるのではなく、別の料理の材料として使うのだ。

 

 とはいえ、カズマが想定している脂の量は少し多い。料理に使う分を取り分けし、残りは火器用に保存しておく。

 

 さて、脂がほとんど抜けて、憔悴した雰囲気を出すカエル肉。味気ない鍋の中を彩りをだすために、多種の野菜を放り込む。グツグツと音だけで暖かく感じさせる鍋に蓋をして、放置する。

 

 

「さて、これで鍋は“完成”だな」

 

「…結局、脂を抜いただけですか。どんな工夫があるのかと思ったんですが…」

 

「ん、まぁ鍋自体は完成だし…後は鍋用のソースなんだよな」

 

「ソース…ですか」

 

 

 ゆんゆんが顎に手を当てて考える。

 

 脂を使ったソースといえば焼肉用のタレなどが基本形で、アクセルなどで安価で売られている。だが鍋に焼肉用のタレを使うとは思えず、ゆんゆんはこれから何を作るのだろうかと、故郷にいる時代、友達に振る舞う為に料理を練習してきたゆんゆんの、料理人としての疑問が興味へと変わる。

 

 

「まず、用意するのはこれ」

 

 

 カズマが足元にある袋から、商人から取り寄せた醤油、マヨネーズ、酢、砂糖。普通の店などで売られているごま油とごまを取り出す。

 

 

「ここに俺が作った摺鉢があるから、二人でゴマを細かく砕いてくれ」

 

「は、はい!」

 

「…ふむ、これは…ポーション作りに使えそうですね」

 

「…成る程、作り方が分かれば作ってみるのも悪くないかも」

 

 

 それはそうとして、だ。

 

 摺棒と摺鉢でゴマを細かく砕き始めた二人を置いて、カズマは残りの調味料で調理を始める。

 

 調理といっても大さじと小さじで分量を測り、混ぜるだけだ。

 

 当然胡麻を摺る二人よりも早く終わるわけで、いち早く終わらせたカズマは鍋の様子を見る。蓋を開けると、煮え切ってはいないが、沸騰している泡に混じって灰汁が浮かび上がっている為、お玉で掬い取り除きながら、その分水を足す。

 

 台所は鍋の熱気により暖かくなっており、カズマはエプロンを一旦脱いで、ジャージの上を脱ぐ。前にダクネスに勧められた、耐久性の高い長袖のインナーがジャージの下から姿を現し、インナーの袖を捲った。

 

 

「…わぉ」

 

 

 ゆんゆんは集中していて気づいていないが、めぐみんは突然エプロンを脱いだカズマに意識が逸れ、顔を向けていた為その姿を目に入れていた。

 

 華奢であるが、ヒョロガリと感じさせないその肉付きはインナー越しでも分かる。レベルが上がる前は常に貧相なイメージであったが、今ではレベルの恩恵により身体が引き締まっている。

 

 女性は男性の筋肉に惹かれると言うが、めぐみんは今初めてその意味がわかった気がする、と故郷に住む占い師の言葉に今更ながら同感した。

 

 

「…めぐみん、手が止まってるぞ」

 

「っは!?す、すいません!」

 

 

 不思議と腕に力が入る。少し心臓がドキドキしている気がすることに気付かないめぐみんは、摺鉢の櫛目が擦り減るまでゴマを擦っていることに気づかなかった…。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「後はこれに、すりごまを入れる…これで、カエル脂ゴマドレッシングの完成だ」

 

 

 カズマが作っておいたものにすりごまを入れて、掻き混ぜると、日本でよく見たゴマドレッシングとなった。

 

 優しいゴマの香りとマッチする微弱な酢の匂いが食欲をそそり、ただでさえ空腹なめぐみんの空腹感を加速させる。

 

 

「か、カズマ!は、早く夕食の準備しましょう!」

 

「ん、そう…だな。鍋も煮えてるし、時間もちょうど良い。ゆんゆん、ミトンで鍋を食卓に、めぐみんは箸とかレンゲを配っといて」

 

「了解です!」

 

「分かりました!」

 

 

 いそいそと二人が準備を始める間に、カズマは部屋にいるダクネスを呼ぼうとダクネスの部屋へと赴く。廊下に出ると一気に寒くなるが、暑さで体温が高くなっているカズマは、特に服装を整えることなく、足を運んだ。

 

 扉を三回ノックし、呼び掛ける。中から息切れした様子のダクネスの声が聞こえ、カズマはドアを開けた。

 

 

「ダクネスー、そろそろ晩御飯だぞー」

 

「もうか、今日は少し早い…な」

 

 

 時計を見ながらダクネスはそう言い、片手に持っていたダンベルを床に置く。どうやら筋トレをしていたようで、運動のしやすいハーフパンツとスポーツブラを身に付け、額には汗をかいていた。

 

 前衛職だからか、ダクネスの外見的な筋肉は凄まじい。カズマのように無駄な肉質はなく、その身体は極限にまで鍛え上げられていた。

 

 尤も、筋トレの理由としては自分を痛めつけたいという理由なのだが、たったそれだけの理由でここまで肉体を昇華させるのは、きっと難しいことだろう。簡単に言えば、それだけ欲望に忠実だと言うことなのだが。

 

 

「…そういえば、カズマもかなり筋肉が付いてきた…というより、引き締まったな?」

 

 

 捲ったインナーから覗く二の腕を触って、ダクネスが言う。握ったり押したりすると、筋肉の着き方が手のひらで感じ取れる。筋トレのような地道な努力ではなく、戦闘を繰り返して得た野生的な筋肉の着き方だ。

 

 

「…レベルアップの恩恵…かもな。さ、めぐみんが待ちきれないって言ってたし、早く行こうぜ」

 

「む、あぁ。…じゃあ、行こうか」

 

 

 ダイニングへと戻れば、既に箸と鍋を準備し終えた二人と、たった今帰ってきたアクアの三人が席に座っている。

 

 “待て”をされている犬のようになっているめぐみんを見て二人はやや急いで席に座り、カズマが手を合わせ、皆も手を合わせる。

 

 

「さて…少し早い時間だが、いただきます」

 

「「「いただきます(っ!)」」」

 

 

 まず最初に箸が鍋へ伸ばしたのは、言わずもがなめぐみんであった。

 

 鍋の底に眠る、淡白なカエル肉を一つ取り出し、ゴマドレッシングへと漬ける。ドレッシングが絡み付いた肉を口に運び、咀嚼する。

 

 「あふあふっ」と熱い鶏肉に口内を攻撃されるが、それを上回る肉の素朴さとドレッシングの脂っこさが絶妙にマッチし、そしてゴマのあっさりとした味が食感をコーティングしている。

 

 あまりの美味さに目を紅く輝かせためぐみんが箸のスピードを加速させる。

 

 

「カズマさんカズマさん!これ美味しいわ!」

 

「これ、美味しいですね!」

 

「あぁ。あ、あと小さいじゃがいもは皮付きのまま入れたから、食べるときは皮を剥がして食べな」

 

「あぁわかった。…それにしても、鍋の方も味付けがしっかりされているな、何か手を加えたのか?」

 

「塩大さじ二杯と胡椒小さじ二杯。カエル肉の味が染み込んだものあるだろうな」

 

「なるほど…出汁か」

 

 

 ペロンとじゃがいもの皮を剥きながら、ダクネスはドレッシングに漬けて食べる。初めて食べる新しい味と食感に思わず「美味い」と言葉を溢した。

 

 カズマの足元でカズマ自作のペットフードを食べているちょむすけも、嬉しそうに鳴く。カズマはそんなちょむすけを撫でながら、自分も鍋に箸を向けた…。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 午後八時頃。晩御飯も食べ終え、お風呂にも入ったカズマは首に掛けたタオルをそのままに、擬似兵器の開発を進めていた。

 

 カチャカチャと工具で部品を組み立てては崩し、少し修正して組み立てては次の工程へ移り、また一から組み立てる。

 

 そんな様子を見ているゆんゆんは、カズマの手元を見ながらカズマに話しかけた。

 

 

「…カズマさんって、出来ないことあるんですか?」

 

「ん?どうした藪から棒に」

 

「いえ…こうやって道具を作ってたり、料理してたり、戦ったりしているところを見ると、カズマさんってなんでもできるなぁ…って思って」

 

「いや…。ンー…」

 

 

 なんでもできはしない。否定の言葉から入ろうとしたカズマだが、すぐに言葉を止めた。

 

 

「何でもは出来ないよ。スキルが適応できない事はできないし、そのスキルだって他人から教わらないと習得できない。ゆんゆんが言うなんでもできるは、最も俺から離れてる言葉だよ」

 

「でも、スキルは持ってるだけじゃ使いこなせません。ちゃんと状況に応じてきちんと使いこなすカズマさんはすごいと思います」

 

 

 その言葉にカズマは手を止める。怒らせてしまったかとゆんゆんは恐る恐る顔を上げようとするが、カズマに頭に手を置かれてしまったせいで顔は上げられなかった。

 

 

「ふふ、ありがとな」

 

「………お母さん」

 

「おっとゆんゆん、それは心にダメージが行くぞ」

 

「あっ!わ、はわ、すいません!」

 

 

 顔を赤くして、慌てて謝罪するゆんゆんにカズマは苦笑する。

 

 「そ、そろそろ寝ますね!」と顔を赤くしたまま暖炉部屋を出て、自室へと帰ったゆんゆん。カズマも作業に戻ろうかと手元に目を落としたが…不意に片腕で顔を隠した。

 

 少し見える頬は、少し赤い。

 

 

「…素直は良い事だけど…真っ直ぐ褒めすぎだよ…」

 

 

 なんとかゆんゆんの前ではポーカーフェイスを保てていたが、出て行った事で表に出てきてしまったようだ。

 

 これでは集中できないなと一旦部品と工具を一まとめにして、ソファの下に入れる。

 

 ソファに寝転んで精神統一を謀るが、いかんせん賞賛された事はあれど、真っ直ぐな声で褒められた事はなかったため耐性がない。未だに赤が引かない頬をむにむにとマッサージして、腕をダランと下げる。

 

 すると、寝床で眠っていたちょむすけがカズマの側へ来た。「にゃー」と鳴き、ソファから垂れるカズマの手を舐めると、ソファの上へジャンプして、背もたれとカズマの身体の間に挟まる。

 

 満足げな顔をしているため、かなり居心地が良いのだろう。カズマもちょむすけから伝わる体温がちょうど良いのか、柔らかな笑みを浮かべて目を閉じる。

 

 変わらない日常だが、飽きない日常。

 

 この世界にやってきて良かったと、カズマは改めて、そう思ったのであった…。

 

 





 今日の昼くらいに、日間ランキング調べたらこの小説があってびっくりしました…。

 それはそうとして、日常回が終わりましたね…次回はどうしましょうか(未定)

 頑張ってネタを捻り出しますので、どうぞご期待して待っていてください。

 それでは、次回もお楽しみに…
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