【この素晴らしい世界に祝福を!】カズマはのんびりと魔王討伐を志す様です。   作:よるくろ

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 遅くなってすいません!少し休憩期間を設けたかったもので…次回はなるはやで投稿します!

 それでは、どうぞ…


【38】 アルダープ

 

 

 廊下と変わらぬ赤い絨毯、天井から吊り下がる煌びやかなシャンデリア、窓際に飾られている色鮮やかな壺、腰が丸ごと沈むほどの柔らかなソファ。

 

 そして、そんな美しい家具を台無しにするような、肥満体の男、アルダープ。ソファをギシギシと鳴らしながら、その脂肪を蓄えた腹を揺らして、目の前にいるダクネス達へと賞賛の拍手を送った。

 

 

「ぐっふっふ、いやはや、魔王軍幹部やデストロイヤーを撃ち倒したパーティがこんなにも秀麗揃いだとは…貴方方のリーダーが羨ましい限りですぞ」

 

「あぁ、私達のリーダーは私達の欠点や弱みを全て把握し、それでも引っ張って行ってくれる最高のリーダーだ。きっとアルダープ殿も会えばすぐに気にいるさ」

 

「なるほど…それは楽しみですなぁ」

 

 

 ダクネスと会話を交わしながらも、ダクネス達に絡みつくような視線を送るのをやめない。めぐみんやゆんゆんは既に怯え切っているが、アクアは緊張感に少し慣れたのか紅茶を飲む余裕を見せている。

 

 不規則に漏れ出る「ぐふっ」という気色悪い笑い声に、めぐみんとゆんゆんは短い悲鳴をか細く上げる。その度ダクネスは睨みを効かせるが、アルダープは受け流すだけだ。

 

 その後、アルダープとダクネスの他愛無い世間話や冒険話などの会話が交わされるが、突然、アルダープが話を切り出した。

 

 

「それで、ダクネス殿…“貴方のお父様のご容態が悪くなったとお聞きしました”が、今も息災でありますかな?」

 

「…いいや、今は寝込んでいる。アークプリーストにも診せたが…“原因不明”だそうだ」

 

「なるほど、それはそれは…」

 

 

 この時、めぐみんはこの会話に違和感を持った。一回聞いただけでは違和感を見つけ出せなかったが、それでもこの会話の何処かに違和感があったのは絶対だ。

 

 そして、考え込むめぐみんを置いて話は進む。

 

 

「…もし、貴方のお父様の“病気”が治せる術があるとすれば、どうなさいます?」

 

「っ、あるのか?治療法が…!」

 

「えぇ…ダスティネス卿は私にとって最も尊敬に値するお方なのでね。必死に“特効薬”になる薬草を探しておりました」

 

 

 そう言って、アルダープは胸ポケットから一つの試験管を取り出す。中身の赤い液体が光に反射しながら、揺れていた。

 

 その赤い液体を見て、ダクネスは身を乗り出した。

 

 

「それが…!」

 

「火蜥蜴の爪、満月草の根、一角熊の肝臓…その他数種類の素材を組み合わせて製作させた物です」

 

 

 「ほぅ…」とめぐみんが内心で嘆息する。目の前ある“魔力を放つ液体”を構成する、アルダープから放たれた素材名は、めぐみんの故郷でも中々手に入らない代物ばかりだ。

 

 そんな素材をふんだんに使った薬…めぐみんは少し興味を沸かせた。

 

 

「…ですが、この薬を作るまでに多額な金を使ってしまいましてなぁ…それで、対価と言ってはなんですが…」

 

「なんだ、私にできることが有れば可能な限り尽くそう」

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、アルダープはこれ以上ない程の嫌らしい笑みを浮かべた。途端に脂汗が吹き出し、興奮を抑えられないというような鼻息が荒ぶる。

 

 言葉の違和感の調査も吹っ飛び、アルダープの気色悪さに引くめぐみん。ダクネスもその変化に引き気味になり、乗り上げていた身体を即座にソファへ沈めた。

 

 そして、アルダープが口を開く…。

 

 

「私と…婚約を___」

 

 

 

「 悪い、遅くなった 」

 

 

 

 ふわりと、アルダープの背後で黒い布…マントが翻る。

 

 緑と黒で染められたマントは地に向き、黒い軍服のような制服が露わになる。所謂“カラビニエリ”と呼ばれる礼装を纏うカズマは、膝まである長い皮のブーツをツカツカと足音を鳴らしながらアルダープの正面へと回り込み、ダクネス達の姿を隠した。

 

 それまで呆然としていたアルダープが、口調を荒げる。

 

 

「だ、誰だ貴様は!」

 

「御紹介が遅れて申し訳ない…俺はコイツらのリーダー、サトウカズマだ。この度は領主との謁見にお呼びいただき、感謝する」

 

 

 胸に手を、地面に膝を着いて跪く。

 

 呆然と見ていたアルダープであったが、次第に気を取り戻して上っ面だけの笑みを取り戻した。

 

 

「おぉ…それは申し訳ない。貴方が英雄サトウカズマ殿でございますか!いやはや、凛々しいお顔立ちで!男性では“ない”のが悔やまれますな!」

 

「「ぶふっ!」」

 

 

 カズマの背後でめぐみんとアクアは吹き出す。同時にカズマは眉間に皺を寄せた。反射的に手が出そうになったが、そこは密かに拳を握りしめることで心を落ち着かせた。

 

 “ギチ…”という音が、ダクネスやアルダープにも聞こえた。アルダープは不思議そうな顔をして辺りを見渡していたが、音の発生源を察したダクネスは慌ててアルダープの失言を繕った。

 

 

「あ、アルダープ殿…カズマは男です」

 

「…な、な、なんと…そ、それは失礼致しました」

 

「いえいえ…『“気にしていませんとも”』」

 

「「ひっ!」」

 

 

 カズマの怒気を感じ取っためぐみんとゆんゆんの二人が身を抱き寄せあって悲鳴を上げる。日常的にカズマの怒りを受け取る二人は、自分に向けられた怒りでなくとも、カズマの怒気を感じ取れるようになっていた。無論、怒りのボルテージの高さも。

 

 二人が顔を青くして怖がる程の怒り…つまり、カズマはかなりブチ切れていた。だが男と間違えられたからでは“ない”。

 

 補足すると、カズマは部屋に入ってくる前の数秒間、ダクネス達の会話を扉の外で聞いていた。話が一段落してから入室しようと思っていたのだが、部屋の中からとんでもない話が聞こえたため、慌てて飛び込んだのだ。

 

 

『なんだ、私にできることが有れば可能な限り尽くそう』

 

『私と、婚約を___』

 

 

 ダクネスの言葉の時点で、悪い予感は的中していた。

 

 これはまずいと思ったカズマは、『ワープ』で部屋に侵入。流れるような挨拶を得て、不法侵入の件を有耶無耶にしたカズマの腕を褒めるべきだろうか。

 

 それはともかくとして、アルダープに席を勧められたカズマはソファに腰を沈め、アルダープを相見える。

 

 

「それで…冒険譚とかはダクネスから聞いたでしょうから、何を話しましょうか」

 

「…実はですな、たった今ダクネス殿の御父上について話していたのですが…」

 

「あぁ、大丈夫です。扉の外から聞いていましたから…それで、ダクネスへの対価は何をお求めで?」

 

「ぬ…」

 

 

 流石のアルダープも、この流れでダクネスへ婚約を迫る事はできないようだ。相手は魔王軍幹部や機動要塞を墜とした強者、“切り札”があるからとはいえ、アルダープは中々この話に勝利を持ち込めないでいる。

 

 対して、カズマは最大限アルダープを警戒していた。

 

 相手は悪徳領主。根も葉もありそうな噂が流れども国に罰せられないこの者は、国に匹敵する”何か”を持っているという事。そんなものが自分に向けられてはたまったものではないため、当たり障りのない言葉を返してアルダープの動向を探っている。

 

 アルダープの目的は“カズマを出し抜いてのダクネスへの婚約”、カズマの目的は“アルダープが切り札を出さぬよう、ダクネスを連れてこの場を乗り切る”事。

 

 攻守常に緊張した面持ちで、ダクネスら含めて会話を交わす。

 

 

「そういえば、カズマ殿。ダクネス殿の父親の件なのですが…」

 

 

 と、ここでアルダープが勝負に乗り出す。“切り札”とまではいかないが、今自分自身が繰り出せる最大の攻撃の準備をする。

 

 

「…何か?」

 

 

 内心で舌を打ち、返事を返す。アルダープは机に置かれる件の試験管をつまみ上げて、中身を揺らした。

 

 

「此方が特攻“薬”なのです。先程材料は申したので割愛しますが、大変貴重な物で調合いたしまして…こちらとしてもタダでお譲りするわけにはいかんのです」

 

「…なるほど、つまりアルダープ殿は私達“パーティ”に対価をお求めであると」

 

「その通りです。まぁ厳密に言いますとダクネス殿なのですが…」

 

「一つ言わせてもらいます」

 

 

 ゆっくりとカズマが立ち上がり、ソファに立て掛けてある剣を手に持つ。漆黒の刀身が姿を現し、アルダープは慌てた様子でソファから飛び上がった。

 

 

「お、お前何を!?」

 

「俺はこの場に“交渉”ではなく、“警告”をしに来た。お前が悪徳領主で、どんなに偉い立場に立とうとも関係ない。例えお前が王族だろうと、俺は同じ行動をとっているだろう」

 

「カズマ…」

 

 

 ダクネスが目を見張るようにカズマを見る。その他もカズマの突然の行動に固まっているが、カズマは刀身に“魔力”を流し、刀身を魔力で包んだ。

 

 

「俺が言いたいことはただ一つ…ダクネスが欲しいなら、俺を通した上で、その腐った性根を治してから来るんだな」

 

 

 ノーモーションから剣を振り…試験管を真っ二つにする。“ビチャリ”と中身が絨毯に染み込み、アルダープは慌てて絨毯に染み込んだ中身を取り戻そうとするが、カズマが剣をアルダープの足元に突き立てたため身体が硬直した。

 

 

「あぁ、あともう一つあるんだ」

 

「ぐ…ぐ…!“マクスウェ___」

 

「…!『ターン___」

 

 

 何かに気づいたアクアがスキルを発動させようとするが、その前にカズマが行動を起こした。

 

 

「よくも俺を女だと言いやがったなって事…だっ」

 

「ぐぶぇっっ!!」

 

 

 カエルが潰れたような声が、何か黄ばんだ液体とともに吐き出され、顔面にめり込んだカズマのブーツからアルダープが吹き飛ぶ。

 

 ソファを飛び過ぎ、床へと叩きつけられたアルダープはその一撃で気絶したのかピクリとも動かなくなった。

 

 

「よし、逃げるぞ」

 

「…あっ、旅行ってそういう」

 

「そういうことだ。馬車は手配してある、荷物もまとめてあるから早く行くぞ、この騒ぎで衛兵が駆け付けてる」

 

 

 「え?え?」と状況を理解できていないゆんゆんとアクアの腕を、ダクネスとめぐみんが掴み、カズマが窓に駆け出す。二人を抱えたダクネスとめぐみんもそれについて行き、カズマは窓をぶち破って外に出た。

 

 

「それで!どこにいくんですか!?」

 

「ま、待て!どういうことだ!聞いてないぞ!」

 

「そりゃ言ってないからな」

 

 

 皆が着地して、カズマを先頭に走り出す。屋敷の中からは「あの者を捕まえろーっ!」とアルダープの声。どうやら気絶したのは短い間だったようで、もう少し強めに蹴ればよかったかとカズマは反省する。

 

 やがて、不思議そうな顔をした冒険者達を抜け、馬車が集う駅のようなところに到着する。肩で息をしている魔法使い組は座り込んで、息を整える。

 

 

「ふぅ…ふぅ……それで、どこにいくつもりだ?まさか自分探しの旅とは言わないだろう」

 

「んなわけない。これからいくのは…悪名名高い“水と信仰の都、アルカンレティア”だよ」

 

 

 

「アルカンレティア行きの馬車、まもなく出発しまーす!ご予約のカズマパーティ様はいらっしゃいますかー!」

 

 

 

「お、呼ばれたっぽいな。んじゃあ行こうぜ」

 

「あ、あぁ…」

 

 

 魔法使い組の手を引いて、カズマは馬車へ向かう。

 

 ダクネスはここまで周到に用意された逃走ルートと、あそこまで貴族に喧嘩を売ったカズマの胆力に呆然としながらも…それ以上の頼もしさを感じて、笑みを浮かべてカズマについて行った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、今さっき悪名名高いって言わなかった?私の子の街を悪名名高いって言った?」

 

 

 






 まぁ悪質教ですので。

 いかがでしたでしょうか?正直逃走からの文が無理矢理過ぎて蕁麻疹起こしそうです。

 正直もう少しボコボコにしても良かったのですが、接触するだけでカズマさんが汚れそうでしたので一発で留めました。

 やっぱり綺麗が一番ですよね。

 それでは、次回もお楽しみに…
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