【この素晴らしい世界に祝福を!】カズマはのんびりと魔王討伐を志す様です。   作:よるくろ

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 アルカンレティアに行く道中のお話…




【39】 降り続く最悪

 未だに憤慨するアクアの頭を膝に乗せながら、ゆんゆんと結託しているめぐみんといつかのボードゲームをするカズマ。

 

 思考力的に二対一だというのに、カズマが優勢であり、めぐみんとゆんゆんは揃って苦悶の表情を浮かべながら戦力を出し合っており、それでも戦略の隙間を縫うような攻めに苦難し、防御に徹することしか出来なくなってしまう。

 

 ダクネスはそれを横目に小説を読んでおり、不定期に来る馬車の揺れを感じながら、王族が使うような大きな馬車から外を眺める。

 

 

「…チェック、アークウィザードは退場」

 

「ぬがあああ!!!また負けました!なんなんですかカズマは!紅魔族より知能が高いってどういうことですかゆんゆん!」

 

「えっ!?私?!」

 

 

 カズマの読めない手数に連敗しためぐみんは憤慨し、何も悪くないゆんゆんに八つ当たりする。にやにやとトドメを刺した冒険者の駒を手の上で弄びながら、カズマは二人を見ている。

 

 現在、カズマ一行はアルカンレティア行きの馬車と共に、自分たちでレンタルした馬車でアルカンレティアを目指していた。理由は勿論、逃亡兼旅行だ。

 

 いつ戻れるかは分からないが、資金は十分にある。10年でも100年でも、普通に暮らしていけば老後も心配ない。アルダープが執念深く追わなければ、だが。

 

 

「…それにしても、快適だな。“王族の馬車”をレンタルして良かったよ」

 

「お前だったから借りれたのだろうな…所謂、英雄特権という奴だ。並の冒険者ならば、大金を払っても貸さないだろうな。王族は」

 

「なるほどな…ま、一応借り物だし汚さないようにするか。…くぁ」

 

「…眠いのか?」

 

「あぁ…二日くらい徹夜して完成させた礼装だからな…あ、そうだ。俺荷台で着替えて寝てくるから、その間三人の相手頼んで良いか」

 

「分かった。ゆっくり休んでこい」

 

「あい…」

 

 

 目を擦りながら荷台へと行くカズマを見て、ダクネスはもう一度外を見る。

 

 すると…遠くから、土煙が上がっているのが見えた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「…」

 

「ま、まぁ…落ち着け、カズマ。そんなにムスッとするんじゃない」

 

 

 走り鷹鳶の肉を頬張りながら不機嫌にダクネスの肩に頭を乗せるカズマ。距離感と伝わってくるカズマの不機嫌オーラにドギマギしながらカズマを宥めるダクネスは、先程までの光景を思い返した。主にカズマの。

 

 

『おいカズマ大変だ!モンスターが突っ込んできて…って、かかかカズマ!なんて格好で寝ているんだ!』

 

『…ん……まだ、あと5分…』

 

『ま、まずズボンと服を…あぁ待て起き上がるな!立ち上がろうとするな!ほ、ほらここにズボンがあるからとにかく履け着ろ外に出ろ!』

 

『…ん』

 

 

 モンスター襲撃時にカズマを起こしに行った時のハプニングや、

 

 

『…眠い…』

 

『ちょ、ちょっとカズマ、ここで寝ないでくださいって。…え、なんですかそれ、冬将軍の時に使った武器?そんな小さい球で何が___』

 

 

 チュドォォオオオンッッ!!

 

 

『…か、カズマぁーっ!なんですかそれは!爆裂魔法要らなくなってしまうではないですか!捨ててくださいそんな物!』

 

 

 めぐみんがいらない子になってしまいそうになった時や、

 

 

『ちょ、か、カズマ!助けてぇーっ!襲われてるーっ!』

 

『…ダクネス、ごー』

 

『私か!?し、仕方ない!行くぞアクア!衝撃にそなっ___なっ、飛び越えっ!?』

 

『カズマあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……………』

 

 

 アクアが走り鷹鳶に連れ去られてしまった時。珍しく積極的に動かなかったカズマを動かしながら現場の指揮をしていたダクネスの苦労は計り知れないものだった。

 

 だがそんな疲れも、癒やされる相手(カズマ)によって吹き飛ぶ。

 

 肩に伝わる温もりが温泉のように染み渡るような気がして、ダクネスはもっと温もりを得たいとカズマの肩を抱き寄せる。必然的に顔がちかくなってしまうが、それはそれで役得であり___。

 

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

「…な、なんだ、三人とも」

 

「「「ダクネス(さん)ばかりずるい(です)!」」」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「はっ、私のテントで寝るだと?」

 

「うん。ダメか?」

 

 

 就寝時間。

 

 各々がテントを立てて、自分の寝床を作り終え、転々とテントの中からの明かりが消えていく時間帯に、カズマはダクネスのテントを訪れた。

 

 そして一言目は、『ここで寝たいんだけど…いい?』だった。

 

 

「いや、ダメとかではなく…何故私の所に?」

 

「なんか嫌な予感がして…」

 

 

 ダクネスは「あぁ、あの三人か?」と心の中で納得していたが、カズマが感じる予感は他の事であった。特にあの三人からは嫌な予感も感じず、隣のテントで自分のテントを立てていた時も何もなく、ただ、就寝に入る所で嫌な予感がしたのだ。

 

 

___この辺は、ヤバい。

 

 

 そう感じたカズマは枕を持ってテントを出て、ダクネスのテントへとやってきたのだ。

 

 

「…ふむ、まぁいいだろう」

 

「うん…今日はあまり寝てないから、ゆっくり寝たかったから…」

 

「…まぁ、あれだけ騒ぎが起こればな。しかも徹夜続きだろう?何があっても起こさせはしないから、ゆっくり眠れ」

 

「…」

 

 

 寝たか、とダクネスは背後のカズマが眠ったことを気配で感じる。

 

 どうも最近は“クソ領主(アルダープ)の事で気を張っていたようで、ダクネスもカズマもドッと疲れている。

 

 夜中に夜襲(夜這い)を考えていた三人(中二人はロリっ子に誘われ)もぐっすりと眠っているようで、静かな夜になりそうだとダクネスは思った。

 

 

___………ァ

 

 

「?」

 

 

 突然ではあるが、このキャラバン隊の休息場所である、この森についてとある噂がある。

 

 それは、大昔の戦争で、この森が戦場地帯に含まれていたという噂だ。

 

 

___……アァ

 

 

 双方の軍の内、片方はこの森を本拠地にしていたようで、この森の何処かには戦争時に使われていた要塞が何処かにあるとか。

 

 そして…戦争終了時、森にある死体は、敵国に殺されたまま放置されているらしい。

 

 

___うああああああああああああ!!!!!!!!

 

 

「ッ!敵襲か!」

 

「ふぁっ」

 

 

 ダクネスが大剣を引っ掴む後ろでカズマが飛び起きる。

 

 

「カズマ!敵襲だ!」

 

「…ふ」

 

「武器がなくても魔法は使えるだろう!それと非常用のあの爆弾も___」

 

 

「…ふふふふふ」

 

 

「か、カズマっ?」

 

 

 今、ここに…眠を妨げられた鬼が誕生する。

 

 眠気の所為で顔から表情がなくなり、その上睡眠不足による貧血のせいで顔に血の気が少なくなっている。その顔は正に虚無の表情(チベットスナギツネ)であり、そして両手に『セイクリッド・ターンアンデッド』(対アンデッド特効魔法陣)と『ティンダー』を展開して脚に力を込めた。

 

 どこかの漫画で、こう言っていた。

 

 握力×体重×スピード(イコール)破壊力と。

 

 だが、この世界、この佐藤カズマは違う。

 

 

「『セイクリッド___』」

 

 

 技量×発想×魔力(イコール)___、

 

 

「『クレメイション』」

 

 

 ___殺傷力、利便力、破壊力…ありとあらゆる可能性を生み出す。

 

 刹那にして空に放たれた神聖を纏う炎は空中で分裂し、外で大量に、“空を見上げるアンデッド”達に寸分狂わず“堕ちた”。

 

 呻き声も、暴れることもなくアンデッド達は大人しく燃え、その中から魂が姿を現す。

 

 その魂は天へと還り、天界へと行くのだろう。

 

 少なくとも、その光景を呆然と見ていたダクネスと、襲われていた冒険者はそう思った。

 

 今カズマが使ったスキルと魔法は、『セイクリッド・ターンアンデッド』と『ティンダー』。そして、『敵感知』、『狙撃』の四つの同時併用。

 

 複合魔法である『セイクリッド・クレメイション』は炎を用いたアンデッド用の魔法であり、それに『敵感知』でアンデッドの位置を探り、『狙撃』で探ったアンデッドを魔法で焼き尽くすという技術であり、アンデッドを一度に葬るという利便性がある。

 

 さらっとスキルと魔法を含めた高等技術を行使したカズマはテントに戻り、倒れ込む。そこはダクネスが使っていた毛布の上であり、カズマは安心し切った顔で微睡へと意識を沈めた…。

 

 

 

 

 





 如何でしたか?
 最近は就職試験やらで忙しくて執筆できませんでした。遅れて申し訳ありません。
 無事合格したので、これからはモチベを上げて執筆に取り組もうと思います。
 では、次回もお楽しみに…
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