【この素晴らしい世界に祝福を!】カズマはのんびりと魔王討伐を志す様です。 作:よるくろ
カズマが衰弱していた少女を助けて翌日。あの少女のことが気になり翌朝まで眠れなかったカズマと、一足先に馬小屋に帰ってぐっすり寝たアクアがギルドのテーブルで食事をとっていた。
「もぐ…
「飲み込んでから喋ってくれ…まぁ、そうだな」
はぐはぐと食べることに専念し始めたアクアを意識の外に追い出し、カズマは昨夜の少女の事で思案していた。
一番気になることは、少女の衰弱だ。いくら金がないと言っても、少女は冒険者。自力で稼ぐほどのステータスはある筈だ。なのにあんなところで瀕死状態になっていたのはなぜか…、それは昨日の店主の話から分かることだ。
曰く、『威力は絶大だが消費魔力が多すぎて、一発限りしか放てない究極のネタ魔法、『爆裂魔法』をアクセル近辺でぶっ放してる危険人物』。一発限りということは二発目が撃てない、つまり魔力が底を尽くということだ。
この世界では、魔力が底を尽いた者は身動きできなくなる。故に魔法使いは自身の魔力を計算しながら魔法を行使するのだが、『爆裂魔法』はそうもいかない。何せ、文字通り“全魔力を消費して発動”する魔法なのだから。
カズマは更に思案する。『爆裂魔法』を使っただけで、あんなに衰弱するものなのかと。カズマが考えている線は、『生命力を使って爆裂魔法を使った』だ。だが『爆裂魔法』ほどの消費魔力の激しい魔法を、『生命力』で肩代わりして生きていられるのだろうか。否、そんなはずはない。
では何故少女は『衰弱』で済んでいるのだろうかとカズマが思考している他で、隣の席から話し声が聞こえた。
「おい、またマジックポーションが値上がりしたらしいぜ。なんでも魔王軍がそこら辺彷徨いてて迂闊に素材が取りにいけないんだとよ」
「うぉ、マジか。魔法職の俺としてはかなり辛いんだが」
「まぁ『魔力を回復する』んだしな、お前にとっちゃ死活問題だろうよ」
そこでカズマはハッとなる。『魔力を回復する』、つまりあの少女は魔力の回復した分と生命力で___、
「すいません、メンバー募集をしているパーティーはここでしょうか」
と、カズマが真相に辿り着いたと同時に、カズマは何処かで聞き覚えのある声に反応して声の方向に顔を向ける。
そこにいたのは、黒い魔女帽子をかぶった、全体を赤と黒で彩ったコートやブーツを着込む少女の姿だった。
「あぁ、それよりも回復したんだな。昨日より血色が良くなってる」
「えぇ、あなたのお陰で一命を取り止めました。ありがとうございます」
綺麗なお辞儀で一礼、そして姿勢を戻して、言葉を紡ぐ。
「あなたは命の恩人です、見捨てられ…いえ、行き倒れていた私に美味しいスープを、そして宿まで取ってくれました。だからその恩返しとして、私が出来る限りの戦果をこのパーティーで挙げるので、このパーティーの役に立ちますので、どうか私をこのパーティーに置いてください…」
そしてまた一礼。今度はすぐに姿勢を戻すこともなく、ジッとその姿勢のままで静止していた。どうやらカズマ達の答えを待っているようだ。
少女の決意を最後まで黙って聞いていたカズマだが、徐に席を立ち、少女の元へと向かう。そして…
「…」
「はにゃっ!?」
少女と視線が同じになるくらいにまで膝を落とし、少女の後頭部と背中を包み込むようにして抱きしめる。すると少女は顔を真っ赤にして離れようともがこうとするが…。
それはカズマから放たれる言葉によって大人しくなった。
「…よく頑張ったな」
「…え?」
「お前はよくがんばったよ、その小さい身体と頭で、よくがんばった」
「…慰めなら要りませんよ」
「慰めじゃないさ、これは労いだ」
「…労い?」
「あぁ、リーダーが“パーティーメンバー”を労うのは当たり前だろ?」
「!」
そのカズマの言葉に、少女は目尻に涙を溜める。初めてかけられた労いの言葉、それだけで少女の心の中の闇は少しずつ消え去っていく。
今まで数々のパーティーに入ってきた少女だが、その力を目の当たりにしたメンバーは揃いも揃って酷評するばかりだった。「威力が強すぎる」、「もっと抑えろよ」、「役に立たねえ」と、およそ十代前半の少女に掛ける言葉ではない言葉を少女は浴びせられ続けてきたのだ。
少女の中で蓄積されていく闇は、その言葉を投げつけられるだけで増加していく。「私は要らないのか」、「私の魔法は使えないのか」、少女は何度も何度も自身に問いかけ、言い聞かせ、今まで冒険者生活を続けてきた。
それが、その努力が“今日”という日を産んだのだ。明日を共にいられる仲間を見つけられた“今日”を。
「…こんな私を、仲間と呼んでくれるのですか…!こんな私を、労ってくれるのですか…!」
「当たり前だろ、俺はパーティーのリーダーなんだ」
「…!っ…!」
「頑張ったな、___
___お疲れさん。
その言葉を皮切りに、少女は目から涙を止めどなく流した。カズマの肩に顔を埋めて、声を出さないように必死に泣いた。今までの闇を全部取っ払うかの如く泣いた。
カズマはそんな少女を大事にするかのようにギュッと抱きしめ、背中を撫でる。その光景をそばで見ていたアクアは、確かに幻視して、思った。その姿は、自分の後輩であるエリスと被る、と…。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
数分ほど経ち、少女はようやく泣き止む。カズマから離れ、煌びやかなルビーのような
「そういえば、私はまだ名乗っていませんでしたね」
「あぁ、そういえば…じゃあ、名前を教えてくれないだろうか、偉大な魔法使いよ」
芝居掛かったカズマの問いかけに、少女はニヒルな笑みを浮かべ、マントを翻しながら高らかに名乗る。
「我が名は“めぐみん”!偉大なる魔法使いにして、真の魔法、『爆裂魔法』を操る者!」
紅い目を燦々と煌めかせながら、少女、めぐみんは名乗りあげる。そしてカズマは両手を広げながらめぐみんと同じよう、ニヒルな笑みを浮かべて歓迎の言葉を送る。
「ようこそめぐみん、俺たちはお前を歓迎しよう!」
「___はい!」
杖を両手で力一杯握って、めぐみんは最高の笑顔で返事をする。ただの厄介者だった少女が、ここから先、英雄と並ぶ『最狂のアークウィザード』と恐れられ畏怖されるのは、まだまだ先の話…。
ふぅ…かなり無理やりになってしまいました…。近々めぐみんを虐げてきたパーティーを出そうと思います。目安としては…十話までお待ち下さい。
修正が終わり次第、次話投稿に向けて頑張ります…。