ゼウスとオーディンは一キロほど距離を開けて見つめ合っている。
険悪に見えるかもだけど、殺し合うほどの仲じゃない。前に四角関係になった時は共闘してたしね。
その後は互いの傷を舐め合うように酒を交わしていたし。
「今日と言う今日は! 髄までこんがり焼いてやる!!」
迷宮の一部である二人は死んでも蘇生可能。と言う訳で実践を想定したこの決闘では偶にどっちか死ぬ。両方死ぬ時もあるけど。
「はっ! 髪を乾かす程度の風しか送れぬ貴様が余に勝つだと? いつから道化師に職業を変えた? 知っていれば転職祝いを贈っていたのに」
うん、あの時は丁度よかった。ドライヤーが壊れて、魔道具師がいなくて近くにゼウスがいたからやってもらったけど、気持ちよかったなーー。
今日もやってもらおうかな?
「貴様のように何の役にも立っておらん奴とは違って、我は役に立って悔しいのだろう? そう思ってるのなら、そう言えよ」
「余は戦の際に備えて力を温存しているだけよ。その時を迎えた時、万全の状態でことをなすようにいる!」
「あ、そう言えばお茶会に参加してなかったから知らなかったの?」
ウォーロックにしては珍しい。伝達を忘れるなんて。
「侵攻軍――じゃなくて、犬っこたちが遊びにでかけたよ」
「「な――っ」」
あれ? ああ、そう言えば二人とも犬嫌いだったっけ。
◇◆◇
「遂に地上を滅ぼすために地獄の
「いや、あの方のことだ。ただ単に散歩に行かせただけかもしれない」
「確かに、いや、だが、散歩のために外に出させるか? そんなことをセバ=スチャン殿が許すとは思えない」
「そうだな。他の階層守護者に聞きに行くか?」
「いや、辞めておこう。何が起ころうと何も知らなかった。何も聞いていなかった。いつも通りに戦っていた。そうだろ?」
「あ、ああ、そうだな! 我々は毎度の如く殺し合っていた。ああ、そうだ! 殺し合いをしていたんだ! それに意識が行って他のことなんて考える暇なんてなかった」
「これからどうする?」
「我は階層主の間に戻る」
「ならば、余もそうしよう」
共に肩を並べ同じ階層にある階層の間へと入っていった。
◇◆◇
「ヴォン! ヴォン!」
一頭の犬っこが私に気づくと他の犬っこたちも気づいて走って向かってきた。
「おお、いい子いい子」
頭を撫でた後に耳の後ろと顎下を撫でるのが一番喜ぶ。
ちょっと、体毛が赤みがかってるけど、どうしたんだろ? 傷ついたようじゃないし、仲間のイジメに……他も赤くなってる。
何かの遊び場の赤い汚れがついたのかな。