主はやてとニートな守護騎士達   作:Vitaかわいきつら

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とりあえず更新。



第0.5話 シグナム、パチンコと出会う

街中を歩く守護騎士の姿。

後頭部でまとめた髪をゆらゆらと揺らしながら歩いている。周りには他の守護騎士だけでなく、主である八神はやてもいない。

 

「さて、どうするか……」

 

彼女の呟きは、行き交う車の騒音に消されてしまう。

彼女の現在の悩みは、はやてから言われた「お金を渡すから好きなことをしてこい」との命令(はやてとしては休暇を出しただけだったのだが)を、どう消化すべきかどうか、ということだ。

永き時を「戦う」ことだけで過ごしてきた彼女には、こうして時間があったとしても何をしたら良いのか、何をしたいのか、なんてことは判断がつかない。

好きなことなど無い。したい事など無い。

ただ、自身を戦いの場に置かなければ落ち着かない。その程度。

手元を見れば、1がひとつ、0が4つ並んだ紙が一枚。

これがどういうものなのかは理解している。だがこれで何をしたいかなど、無い。

 

――仕方ない。ヴィータが好きそうなアイスでも買って帰ろう。

 

アイスが売っているような店を見つけるために駅近くへ向かう。せっかくだから有名な喫茶店にもよってケーキを買って帰ろうとすると――。

 

途中、奇妙な光景を見た。

 

コウコウと光を放つ建物。

ガラス張りの店内は、人が椅子に座り、ジッと何かを見つめている。

何をしているのだろうか。

不思議に思った彼女が建物の中に入ると。

 

「むっ……」

 

凄まじい騒音に、僅かに顔を歪める。タバコの匂いがあたりに充満しそれも彼女を不愉快にさせる。

このような環境下で、何を見つめているのだろうか。

 

「少々よろしいですか?」

 

シグナムは近くに座っていたスーツを着た男性に声をかけてみた。

突如、テレビの中でしか見たことのないような美人に話し掛けられ、男性は少し萎縮してしまう。

 

「何をしているのですか?」

 

「あ、はい、パチンコです」

 

「パチンコ?」

 

「えぇっと……」

 

パチンコについて軽く説明を受ける。

 

「それで、ここにお金を入れて、ボタンを押すと玉がでるんで。ここをひねって玉を打ち出して、ここに玉が入れば画面が動くので。数字が揃えば当たりです」

 

「なるほど……ありがとうございます」

 

「いえ……」

 

 

男性の説明を受け、隣に座って、言われた通りに玉を打ち出す。

画面が目まぐるしく移り変わるが、数字は一向に揃う気配を見せない。やがて。

 

「む?」

 

ボタンを押しても玉が出てこなくなった。強く押しても、弱く押しても、出てこない。

 

「む? む?」

 

「あー、お金切れちゃったみたいですね」

 

「なに?」

 

玉が出てこない理由は単純明快、金切れである。

 

「もう終わりということですか?」

 

「そうみたいですね。残念ですね、お姉さん。負けちゃったみたいです」

 

「負け……っ!?」

 

パチンコをする人達はしばしば、入れた分のお金に対し、帰ってきた分のお金が少ない、あるいは無い場合、「負け」と称す。

そして、負けということは……。

 

「私が、負け……?」

 

誇り高きベルカの守護騎士のプライドを、大きく傷つける。

 

 

 

 

気が付けばシグナムははやての元へ走っていた。

その速度は100m走であれば軽く世界記録を打ち建てるほど。

やがて、家にたどり着くと。

 

「主!」

 

「うわっ! なんやシグナム、どうしたん?」

 

「申し訳ありません。先ほどのお金、もう一枚いただけませんか?」

 

「え……かまへんけど……何に使うん?」

 

財布から一万円を取り出し、彼女に手渡すと同時に問うと、嬉しそうに笑った。

 

「久々に、熱くなれる戦いに身を投じられそうなのです」

 

そう言って、諭吉一等兵を天に掲げた。

 

 

彼女はベルカの守護騎士。

そう、彼女は戦の申し子。

 

「一対一ならば、ベルカの騎士に負けはない!」

 

「ようわからんけど、気をつけてなぁーー」

 

 

気合いを入れると、全速力で再びかけていったシグナム。後に残ったのは、彼女の主の台詞だけだった。

 

 

 

 

 

夕方。

 

 

「ただいま戻りました」

 

「お帰りシグナム。楽しかった?」

 

「はい主。それとこれをお返しします」

 

ポケットから取り出したのは、5枚の一万円札。

 

 

「え、これどうしたん?」

 

「少しばかり、熱い戦いがあったのです」

 

戸惑うはやてにお金を渡し、買ってきたアイスをヴィータに渡しにリビングへ向かう。

 

 

――たまには、こんな戦いがあってもいいだろう。

 

 

 

こうして、シグナムは生涯の好敵手と出会ったのだ。




パチンコにはまらないコツは、初めの一回目に負けることです。
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