真・失恋王   作:ランプライト

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上野が虐め被害に遭っているらしい、

具体的に言うと「相田美咲に付き纏っている」と言う噂をSNSで拡散されて、周り中から白い目で見られているらしいのだ、

 

上野は本当にそんな危ない奴なのかと言うと全然そんな事はなくて、中学生の頃は成績学年トップの優等生でクラスの人気者で面倒見の良い真面目な生徒会役員だった、今でも同中の奴らからは慕われている、

 

しかし高校に入ってからは最早抜きん出て成績が良いと言う訳でも無く、ぱっと見はイケメンでも無く、かといって他に特技がある訳でも無く、スポーツが得意な訳でも無い、

 

要するにスクールカーストで言う所の典型的な二軍の立ち位置、漫画で言う所のモブ、一軍を引き立たせる為の背景の一部という訳である、

 

それなのに出しゃばって学級委員長に立候補したり、それなのに良い気になって相田美咲を副委員長に任命して独り占めして連れ回したり、

 

一体何様のつもり、空気読めよ、うざい、目障り、邪魔、果てはキモい、居なくなれば良いのに、と囃し立てられてる訳だ、

 

神崎達が相田を誘う様になったのも、元はと言えば上野に付き纏われて困っている相田を救済するのが目的だったらしいが、その神崎グループのひょうきん者、釜石達也と席替えの件で言い争いになって以来、上野太郎は体調不良で学校を休む様になってしまった、

 

 

 

ーーー

「一体どうしたら良いでしょうか、」

「何故それを俺に相談する?」

 

放課後、二人きりの部室で、学園のアイドル相田美咲が可愛らしく首を傾げてキョトン顔する、

 

「何だか変ですね、私の知っている宗次朗くんは困っている友達を放っておける様な人ではない筈なんですが、」

 

俺はやれやれと溜息を一つ、こいつお淑やかなフリをしていて相当にあざとい、可愛ければなんでも許されると思ってるその根性はいつか矯正してやらねばなるまい、が、

 

「問題を整理しようか、」

「はい、」

 

嬉しそうにニコニコ微笑む顔を見てると仕方ないかと思えてくるのが憎々しい、て言うか狡い!

 

「それで、釜石は何か上野が学校に来れなくなる様な酷い事を言ったのか?」

「分かりません、聞いてみたのですが、本人も分からないと言う事でした、」

 

「じゃあ、お前は実際に上野から被害を受けているのか? 」

「宗次朗くんからお前と呼ばれるのはちょっと嫌です、美咲さんか美咲ちゃんが良いです、」

 

学園のアイドル相田美咲が口をとんがらせて頬っぺたを膨らませて変顔で抗議する、

 

「じゃあ、みいちゃ、で、」

「お前でがまんします、」

 

「例えば上野に委員会の仕事以外でも連れまわされて困っていたりするのか?」

 

「それはありませんが、委員会の仕事自体が面倒臭くて嫌です、」

「いきなり素直だな、だったら何で引き受けたんだよ、」

 

「だって頼まれたら引き受けるのは当たり前の事かと、厄介事が降りかかるのは世間が私に救いを求めているのだと、そして私が厄介事を引き受けて解決した分だけ成長出来るのだと父から教わりました、」

 

「上流社会の常識は計り知れんな、」

「でもその所為で新たな厄介事を引き寄せてしまうとは思ってもみませんでした、」

 

学園のアイドル相田美咲がホトホト困り果てた顔で深く溜息を吐く、

 

「それで、実際、上野に何か嫌な事を強制されたりとかはあったのか?」

「ほんの少しだけです、」

 

「例えばどんな事?」

 

「夜とかお休みの日に迄LINEを送られてくるのは困ります、いつでもスマートフォンを持っている訳では無いので、届いてからずっと放置しておくのは申し訳ない気分になってしまいます、」

 

 

 

ーーー

「まあ、有りがちな付き纏い初期症状だな、」

「付き纏い、ですか、」

 

「お前の上野に対する気持ちを無視して上野のお前に対する好意が一方的に突っ走ってるんだ、この状態が続くとお前にとっては面倒臭くなるし負担になるし嫌になるし挙句の果てには恐怖になる訳だ、一方で上野はお前につれなくされればされるほど何とかしようと躍起になってどんどんエスカレートする、お前が豊田に対してやってたのと同じ事だよ、」

 

豊田の名前を出した途端にどんよりと分かり易く落ち込む相田美咲、

 

「どうしましょう?」

「豊田がやったみたいにハッキリと自分の意見を言ってキッパリと諦めさせる、それも事態が悪化する前にだ、」

 

「なんて言えば良いですか?」

「中学の時はどうしてたんだ?お前の事だから似た様な揉め事は前からあったんじゃ無いのか?」

 

「中等部の頃は、こんな事はありませんでしたから、」

 

恐らくそうなる前に相田父が裏から手を回して何らかの圧力を加えていたとみるのが妥当だろう、このまま行くと、もしかして上野の親の勤めてる会社が倒産するとか家が全焼するとか一家全員行方不明になるとか、そんな恐ろしい事件に発展したりするのだろうか、

 

「兎に角、上野は下心あってお前に纏わり付いてるんだから、家が厳しくて学生の内は付き合えないとか、メールのやり取りは禁止されてるとか、釘を刺しておけば良いんじゃ無いのか?」

 

「でも、実際には男性とのお付き合いを禁じられている訳では無いので嘘になってしまいます、嘘を吐くのは心が痛みます、」

 

「そうなの?」

 

相田の親は一体何を考えてるんだ?

 

「一応念の為に聞くのだが、上野と付き合うと言う可能性は有るのか?」

「それは無理です、好きでも無い方とお付き合いする事は出来ません、」

 

「なら神崎はどうだ?例えば神崎とお前が付き合えば上野も諦めるんじゃ無いのか?」

「神崎さんも優しくて親切な方ですが、将来結婚したいと思える程ではありません、」

 

「恋愛と結婚は全く別物だろう? 所詮結婚は費用対効果で打算的に決定される経済活動なんだ、そこに自己主張を無理矢理押し付けようとする恋愛をごっちゃにするから余計に上手くいかなくなるんだよ、」

 

「何だか宗次朗くんと話してると乙女心が台無しになりそうです、」

「そっちから相談してきたんだろ、」

 

「でもどうしてそんな事を聞くのですか?」

 

「お前が誰かと付き合っていると言う事になれば、言い寄ってきたり付き纏ったりする奴も減るんじゃないかと思ったんだが、他に誰か好きな奴とか気になってる奴は居ないのか?」

 

ちょっと間の沈黙、それから何かいい事思いついたみたいに、

 

「じゃあ、私と宗次朗くんがお付き合いしている事にしてはいかがでしょう?」

「却下だ、お前、嘘は嫌なんじゃ無いのか、」

 

「私は宗次朗くんの事、結構気になっていますよ、」

 

「それは俺がお前に興味が無い素振りをしてるからだろ、お前はお前に靡かない男に惹かれる癖が付いてるんだよ、それに今は失恋の寂しさで弱気になっててそんな事言ってるんだろうが、立ち直った途端に俺の事なんか見向きもしなくなるのは火を見るよりも明らかだからな、」

 

「美咲はそんなに酷い女の子じゃ無いです、」

 

「大体、スクールカーストにも属さないぼっちの俺が相手じゃ世間が納得しないだろう、上野以上の嫌がらせが始まるだけで根本的な問題は解決しない、それにお前の親父さんに社会的にも物理的にも抹殺されるのは御免だからな、」

 

「びっくりです、宗次朗くんは思いの外に腰抜け野郎です、」

 

クラスでは徹頭徹尾お上品なお嬢様の相田美咲が恐らく俺にだけ見せるこのコロコロと変わる表情を見ていると、何だか妙な優越感にも似たモヤモヤした気分になってくるのだが、

 

「お前の言う通りだよ、俺は前に、自分の独り善がりな思い込みで突っ走って自分が一番大切にしていた筈の女の子を悲しませた事がある、多分それが怖いんだ、」

 

瞬間ぞわっと怖気が襲う、俺の耳から西野敦子の泣き声が離れない、それはトラウマであると同時に、それは確実に俺が西野敦子に承認されていた証でもある、嫌われても良い、それでもいいから俺は彼女と会えなくなってしまう前に、特別な絆の証が欲しかったのだ、

 

其処には、彼女の都合とか不安とか気持ちとかは一切考慮されてはいなかった、恋愛とはつまり、大抵は自分の欲しいモノだけを相手に求め、本当の「貴方」には大して興味も無いものなのだ、

 

「恋愛は生き物を狂わせるんだ、雄は雌を取り合う為に命懸けで争うし、中二病は好きな女の為なら世界中を敵に回しても戦えるとか思っちまうんだぜ、そんな風に正常な思考を失ってまた大切な誰かを傷付ける様な事はもう二度としたくない、だから俺は恋愛はしない、」

 

そして学園のアイドル相田美咲がちょっと照れた様な顔で口元を隠してニヤける、

 

「やっぱりです、宗次朗くんは、思ってた通りおかしな人です、」

 

 

 

ーーー

席替えの結果、俺は最前列窓際から二番目の席、俺の隣の窓際最前列が相田で、相田の後ろが早美都、という並び、相田美咲が副委員長特権で何か仕込んだと見るのが妥当と思われる、大体あのクジ引きの日は早美都とギクシャクしてすっかりクジを引くのを忘れていたのに、俺と早美都の分のクジを代わりに引いて置いたからと手渡してきたのは誰でも無い副委員長の相田美咲なのだ、

 

そして再びの偶然か、俺の後ろの席になった有人が昼休みにソーセージパンを齧りながら話掛けて来る、何でもGW明けの涙の早退事件以来、一部で俺と相田が実は付き合っているのではないかと言う噂が流れているらしい、

 

「と言うか、一方的に宗次朗が付きまとってストーカーしてんじゃないかって噂の方が多いけどな、ほら、お前ら結構仲よく喋ってる事あんじゃん、どう上手い事やったのか知らないけど、男子の中ではお前の事やっかんでる奴多いんだぜ、」

 

「相変わらずイチイチ面倒臭いな、恋愛至上主義者っていうのは、」

 

「で、本当の所、相田さんの事どう思ってるんだ?」

「友達だ、それ以上でもそれ以下でもない、」

 

「勿体無いお化けが出んぞ仕舞いに、こんなチャンスもう2度と無いんじゃ無えのか?」

 

何故、誰も彼もそこまで恋愛に必死になろうとするんだ? 

まあ、かくいう俺自身が中学の頃はそうだったんだが、だから誰もが何時かは気づく筈なのだ、

 

所詮、恋など時間の浪費に他ならない事は、冷静に考えれば誰の目にも明らかだ、

愛が世界を救い、恋が人生を豊かにするなら、

愛や恋が巷の面倒事を何とかしてくれるのなら、義務教育の科目に恋愛が有ってもよさそうなものだが、そんな事は有り得ない、

 

今日も、早美都と上野は学校を休んだままだった、

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