真・失恋王   作:ランプライト

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「行かないのか?」

「うん、大勢で話すのとか、未だちょっと無理だから、」

 

「そっか、」

「それより、明後日の12時、横浜西口改札、忘れないでよね、」

 

「おう、」

 

木曜日の放課後、先に帰ると言う早美都を見送って、俺はクラスの懇親会に参加する事に、場所は駅の南、上野グループの女子、御堂志保の実家の居酒屋の個室を借り切っての鍋パーティである、

 

俺だってこの手のパーティは気が向かなくて出来れば目を瞑って帰りたいのだが、せっかく誘ってくれた木崎に義理があるのと、何よりも有人が意味深に言っていた、このパーティで時任の相田に対する気持ちが聞けるかも知れない、と言う言葉の真偽を確かめる為にも、敢えて今回だけは参加する事にしたのだった、

 

教室を見回すと、既に相田は上野とクラス会の仕切りの準備の為に一足先に店に向かっていて、他に連む奴も居なくて俺は一人舌打ちをしながら席を立つ、

 

今になって嫌になるくらい怖気付いている、

 

こうやって見ると改めて俺ってクラスでは浮いているのだと分かる、……とある価値観の下に引き摺り出された自分がこんなにもちっぽけな存在なのだと言う事に気付かされる、

 

 

 

ーーー

「おつかれ、」

 

俺は宴会場の入り口で会費を集金する相田に一言掛けて、

 

「お疲れ様、会費3000円です、」

「高いな、」

 

「これでも御堂さんのご両親のご好意で、随分安くしてもらったんですよ、」

 

一寸呆れたふりをしてニヤける相田の顔を見て、何故だろうかホッとする、

 

今回集まったメンツは20人、クラスの7割位、

神崎グループの6人、上野グループの6人、有人達グループの4人、いつも孤高に誰とも連まない和田兵庫、それから相田と俺と、そして主賓の時任と言う面子だ、

 

襖で仕切られた和室の座敷タイプの個室にはテーブルが2列、5人に一つ合計4つの鍋が設置されて居る、一体何処に座れば良いのやら、と悩む程のことも無く、殆どの席は大体いつものメンツで固まって埋まっていて、

 

俺は有人達のグループに混ぜてもらって、一番隅っこに腰を下ろす、

 

相田はと見ると上野と並んで幹事席、反対側の相田の隣は誰の配慮だか主賓の時任真斗、

 

何気無い二人の会話が、離れた席から見ていてもとても自然でとても楽しそう、

 

心配そうにチラリと俺の事を見る相田の視線が返って痛い、居た堪れない、

 

 

 

ーーー

最初は上野からの開会の挨拶で、

なんのマネなんだか皆んなでジュースで乾杯、

 

料理のスタートはサービスの唐揚げとポテトフライ、それにお刺身の舟が4台運ばれてきて思わず歓声が上がる、その内に鍋の具材がどんどん運ばれてきて、

 

「最初どれから入れる?」

「鶏肉で良くね?」

 

ウチのテーブルは流石に飲食店でバイトしてるだけの事はある佐脇が奉行を担当、

 

俺は心ここに在らずで相田と時任の様子を伺う、

 

どうやら鍋の事はあまり詳しく無い時任の為に相田が世話を焼いているらしい、

 

遠くから眺める相田美咲の笑顔がこんなにも窮屈だって事に改めて気付かされる、

 

なんでだ?

 

まさかこの俺が相田美咲が他の男と仲良くする事をいやがっている? 傷ついている? 頭ではそんな馬鹿な事は有り得ないと何度も繰り返しながら、それなのに不愉快な疼きが胸から剥がれない、

 

食い物が喉を通らない、

 

「よ、楽しんでる?」

 

と、そこへいきなり木崎が無理やり俺の隣に割り込んで来た、

 

「一寸詰めてくんない?」

「どぞどぞ、」

 

俺の隣に座っていた中川清が畏まって座布団をずらす、

 

「木崎さん、いらっしゃい、」

「いぇーぃ、」

 

何故かのハイタッチ、

 

「京もっち食べてなく無い?」

 

そう言って、俺の小鉢にどんどん具材を入れていく木崎、

 

「良いって、そんな食べないから、」

「遠慮しないの、会費払ってんだから、なんならアーンしてあげようか?」

 

「良いって、」

 

「あ、良いな、俺やってほしい、」

「駄目ー、本日京もっち専用ー、」

 

「木崎さんって最近京本と仲良いよね、」

「そ、マブダチだかんね、」

 

太腿が当たってる、なんか香水の良い匂いする、

 

「あんまベタベタすると誰かさんに誤解されんじゃ無いのか?」

「ちょっと位刺激与えた方が良いのよ、」

 

そう言って無理矢理俺の口に鳥のモモ肉を突っ込む木崎、

 

「て言うか、誘った手前、責任感じちゃってさ、」

「なんの責任だよ、」

 

木崎がチラ見した視線の先には、

 

「あの二人良い雰囲気だねぇ、ホント、殿上人カップルって感じしない?」

 

見ると、神崎も何だか一寸いつもよりもしおらしくしてる様に見えるのは、気のせいか?

 

「お前、神崎んとこ行った方が良いんじゃねえのか?」

「んー、良いの良いの、」

 

全く、こいつは何を考えてんだ?

 

「木崎さんって趣味とかあるの?」

 

有人からの質問、

 

「んー、今はバイトかなぁ、」

「何それ、どんなバイト?」

 

「エロい系?」

「こいつ、しっつれいだなぁ、」

 

「普通のヘアメイクサロン、将来そっち系の学校行こうかなってね、」

「趣味と実益が一致とか、凄いじゃん、」

 

「でしょ?」

 

「そこって俺ら行ってもやってくれんの?」

「全然、カットとか、カラーとか余裕っしょ、ま、私は未だ手伝いだから何にも出来ないけどね、」

 

「なんだ、意味ないじゃん、」

「あ、シャンプーだけなら出来る、」

 

「いいな、シャンプーだけやってもらいに行こうかな?」

「まじか、シャンプーだけ指名とか、聞いた事ないわ、」

 

隣で楽しそうに有人達と会話する木崎の声すら今や雑音の様に耳を通り過ぎて、

 

つまんねえ、……

 

 

 

ーーー

鍋の中身も大方片付いた後半45分、

 

「はい、じゃあ此処で懇親会名物、質問コーナー!」

 

いきなり立ち上がった上野が声を張って今一度仕切る、

 

「よ、エロ同人作家!」

 

「まあまあ、それは置いといて、今日は時任くんの歓迎会という事もありますので、先ず最初は時任くんから一言挨拶、と、誰でも良いので指名して、一つ質問をお願いします、」

 

女子の嬌声が湧き上がる、

 

「質問された人は必ず正直に答える様に、それでその人が次の誰かを指名してリレー質問して下さい、では、時任くん、張り切って宜しくお願いします!」

 

身長180cmの王子が立ち上がっただけで、再び湧き上がる歓声、

 

「みんな、今日はありがとうございます、」

 

一瞬で静まり返る個室内、

 

「普通イギリスでは、この様なパーティを開く場合は主催者がゲストをもてなすのですが、日本では皆んなでお金を出し合って楽しむんだって聞いて、一寸びっくりしています、」

 

「そっちの方がびっくりだ!」

 

野次で盛り上げるのは神崎グループのひょうきん者、釜石達也、

 

「皆んなの優しい気持ちで全員が主催者になって皆んなで楽しむこのスタイルは、とても素敵だと思いました、……今日この場に参加出来なかった人も何人かいますが、その人達も含めてこのクラスは皆んな親切で、仲が良くて、最高だと思います、私はこのクラスの一員になれてとても嬉しいです、」

 

湧き上がる拍手、

 

「では、時任さん、誰かを指名して、一つ、質問をお願いします、」

 

上野太郎からのリマインド、

 

「それは、プライベートな質問でも良いんですか?」

「勿論OKです、なんなら付き合ってくださいの告白でもOKです、」

 

「きゃー!」

 

割れんばかりの女子の嬌声、……

って、女子って相田を除くと5人しか居ない筈なんだが、

 

「それじゃあ、此処に居るみんなに質問します、」

「おおー、」

 

涼しげな目と爽やかな声で時任、

 

「今日のお返しに、簡単なホームパーティを開きたいと考えています、参加して頂ける人はいらっしゃいますでしょうか?」

 

「はい! はい!」

「私も!」

「えー、絶対参加するよね!」

 

再びの大歓声、……

 

「すげーな金持ち、」

 

有人がボソリと呟く、

 

「美咲さんはどうかな?」

 

いきなりの時任からの名前呼びに、

 

「きゃー!」

 

何故かまたまた割れんばかりの大歓声!

って、女子って相田を除くと5人しか居ない筈なんだが、……

 

「はい、それでは、お言葉に甘えて、」

 

おずおずと照れ笑いしながら手をあげる相田美咲、

 

それで再び三度割れんばかりの大嬌声!!

って、女子って相田を除くと5人しか居ない筈なんだが、……

 

 

 

ーーー

「では、続いて相田さん、質問お願いします、」

 

静々と行儀よく立ち上がる相田美咲、

 

「質問ですか、何だか照れてしまいますよね、」

 

「相田さん、可愛い!」

「ラブリー美咲!」

 

って、一体誰だ?

 

「では、斎藤さんに質問です、」

「はい!」

 

上野グループの地味子が声をひっくり返して返事する、

 

「斎藤さんはよく教室にフラワーアレンジメントを持ってきて下さいますよね、」

「あ、ウチ花屋なんで、自分の練習用に作った奴を持ってきてるだけです、」

 

「とっても素敵なアレンジメントで、毎回見惚れてしまいます、」

「いやぁ、お恥ずかしい、」

 

「それで、質問です、今週持ってきてくださったアレンジメントに、とても可愛らしい赤紫のお花が有ったのですが、あの花は何という花なんですか?」

 

「ああ、あれはデンファレです、」

「デンファレ?ですか、」

 

「はい、デンドロビウムの一種で、ウチでは9月の誕生月のお花としてアレンジメントに取り入れています、」

 

「へー、そうなんですね、」

「因みに花言葉は、お似合いの二人、です!」

 

「きゃーーーー!」

 

三度世度、割れんばかりの大歓声! 大嬌声!

 

花言葉がだからなんだってんだ?

相田も相田で、そんなんでいちいち照れた顔してんじゃねえ!

 

って、何考えてんだ? 俺、

 

二人見つめ合って苦笑いする相田と時任は、これ以上無い位にお似合いのカップルにしか見えない、それはもう誰が何と言おうと認めざるを得ない、

 

それはきっと、良い事で、

 

時任真斗が言っていた通りに、相田は相田なりの恋愛をして、相田に相応しい相手と結婚するに違いないのだ、俺が出来る事は、だから心配する事では無くて、友達として祝福してやる事なのだと、

 

ちゃんと分かっている、

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