真・失恋王   作:ランプライト

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次の日の朝学校に来ると、時任と相田が仲良さそうに話していた、

 

二人の会話からは、昨日よりもほんの少し角が取れて、……

二人の距離は、昨日よりもほんの少し近くなって、……

 

傍目から見れば些かのぎこちなさは残るものの文句なしお似合いの美男美女カップルである、

 

昨日のクラス会の後、時任が相田を家まで送って行く事になり今に至る、だから、あの後何らかより親密になるイベントがあったのかなかったのかは定かでないが、一緒に鍋をつついてお互いに満更でも無い関係へと進展したのは確からしかった、

 

何しろ相田父のお墨付きなのだから、恐らく二人は時間をかけてより親密な許嫁的な関係へと発展するのだろう、

 

時任はイギリス育ちの所為なのか、卒なく然りげ無く紳士的で特に相田を困らせる様な事はしていない様に見えるし、友達代表としてはもう、時任の事を相田のパートナーとして認めるべきなんだろうな、と言い聞かせてる、

 

時折見せる相田の照れた様に時任を見る眼差しが、訳わかんないけど俺の気管肢を押し上げるのが気分悪いそれだけの事だ、

 

「良いのかよ、……」

 

お節介な知人代表、鎌塚有人が俺の机を軽く蹴飛ばした、

 

「何が?」

「相田さんと時任がくっついても良いのかって事だよ、」

 

「別に、俺にどうこう意見する権利も義理も無いからな、」

「お前が、それで良いんなら構わないけどよ、」

 

お前何時からそんなに世話焼きになったんだ?

完璧綺麗すぎる時任真斗へのヤッカミか?

凡人代表として、少しでも相田美咲に近い俺に一矢報いろとでも言っているのか?

 

冗談じゃない、

 

恋愛なんて資源の無駄遣い以外の何者でも無いのだ、

関わったって一つも良い事なんて有りやしない、

 

「なんだか一寸残念だね、」

「何が?」

 

今度は早美都が俺の背中に凭れ掛かって来た、

「人の気持ちって、あんなにも簡単に変わってしまう物なのかな、」

早美都は相田が俺の事を好きだと言った事を本当の事だと信じているのだ、あれは相田なりに早美都を元気づけ様として吐いた優しい嘘だったのだけれども、

「アイツが言ってた通りだよ、アイツが誰と付き合う事になったとしても、俺達が友達である事はこの先も変わらないさ、」

ほら見ろ、恋愛なんてこんなもんだ、

失ってみて初めてはっきりと自覚する、

何だかんだ御託を並べた所で俺は相田美咲に惚れていたのだ、と自覚する、

 

全くもって有人や、木崎や、早美都の言う通りなのだ、

 

恋愛完全否定主義だなんて偉そうに言っておきながら、

俺の相田に対する好意は、明らかに恋愛感情以外の何者でもなかったのだと、

 

手に届かなくなってしまってから初めて気付く、

 

全く、……

 

一瞬でも、油断してしまった自分が情けない、

一瞬でも、あいつの事を信じてしまった自分が許せない、

信じると言う事は、独りよがりな都合を承諾なしに相手に押し付ける行為以外の何物でもない、俺が相田を好きになった所で、全くもって時任の言う通り、そんなのは絶対上手くいきっこない事位最初から解っていた筈だったのに、

 

 

 

ーーー

放課後、部活に行く前に購買横の自販機でコーヒーを買う、

そこで、行き成り誰かが俺の背中を叩いた、

「お久しぶりな感じですね、元気でしたか?」

「おう、」

誰でも無い、相田美咲だ、

俺は、当然口籠る、

「何だか元気がないミタイだったから、一寸心配してました、」

「別に、大した事じゃない、もう片付いたし、……」

「そうですか、」

「今日は部活、来ないのか?」

「はい、暫くの間、時任さんのお勉強のお手伝いをする事になったんです、」

「ま、良いんじゃないか、」

「もともとは元彼の為に入った部活だからな、目的が変わったんなら手段が変わったって何もおかしくない、」

 

「もう、その話は勘弁して下さい、」

 

相田が可愛らしく苦笑いする、

 

「時任とは、上手くやって行けそうなのか?」

「未だ分かりませんが、仲良くなれる様に努力します、」

 

「そんなに悪そうな奴じゃ無いし、良かったな、」

「そうですね、少なくとも宗次朗ほど意地悪じゃ無さそうです、」

これは、純粋に生物学的に正しい行動なのだろう、

生き物は少しでも条件の良い「異性」を手に入れようと自分を磨く、どの動物だって鳥だって魚だって、きっと虫だってやってる事だ、スペックの高い「物件」を見つけたら誘い込んで逃さない、その為にはなりふり構わない、それは生命力の強い子孫を残す為のごく普通の行動なのだ、いや、生物的には最優先な行動なのだ、

どう見たって、俺が「時任真斗」に敵う所なんて見当たらない、

て言うか、何で比べなきゃなんないのか、全く意味不明、

「じゃあな、」

「それではまた、」

相田美咲は自分に正直に遺伝子に忠実に生きようとしている、だったら、……

俺は、どうなんだ?

 

 

ーーー

恋愛は、誰かが考えている程に自由では無い、

それは心の問題に留まらず、心と身体は密接に関連しているのだから尚更である、

誰もが、選ばれる訳では無いと、……つまりそういう事だ、

俺は恋愛完全否定主義を標榜しているが、要するにそれは俺が選ばれる事がない事を自覚して諦めているだけの事である、

チンパンジーの群れだってメスを自由にできるのはボスだけだ、

ボスになれないオスはボスの目を盗むか諦めるしかない、

今になって漸く自分で納得できた気がする、

初めから諦めていれば、初めから欲しくないんだと決めていれば手に入らなくても傷つかずに済む、

 

つまり、それだけの事だったんだ、

自分が選ばれない理由を恋愛しない方が良い理由にすり替えていただけの事だったのだ、

 

 

ーーー

「予想外に面白かったね、」

「そうだな、」

土曜日の午後、俺と早美都は横浜にある古い映画をリクエストに応じて上演する小さなシアターを訪れていた、実際の所は、凹んでいる俺を見るに見かねて早美都が気分転換に誘ってくれたのだ、

俺達は昼間に集合して安い中華レストランで昼飯を食って、暫くはゲームセンターで暇を潰し、その後ファーストフードで休憩してから、小さなシアターで難しい映画を観て、漸く解放されて西口の繁華街をトボトボと駅へ向かう20時一寸前、

 

「腹減ったな、飯でも食っていくか、」

「宗次朗、……あれ、」

血相を変えて早美都の指差したその先には、……

私服だが見間違い様の無い、目立つ美貌の時任真斗が立っていた、

 

一緒にいるのはすらっと背の高い美人?……当然知らない女だ、二人はいかにも仲良さそうに密着して女の方から時任の腕に絡まっている、

「兄妹?かな、……」

「まさかな、」

 

「だって、時任くんって、…」

「帰ろう、アイツが何をしてようが俺達には関係ない事だ、」

 

別に、時任に付き合ってる女が居たって何ら不思議な事はない、あれだけのイケメンなのだから居ない方が寧ろ不自然だ、大体相田と時任がいい感じになったのだって昨日今日の話なんだから、未だ身辺整理出来ていなかったとしてもそれ程強く責める気にはなれない、が、

「放っておけないよ、だって相田さんは友達なんだ、」

そして驚くほどの素早さで、早美都は時任真斗の前に飛び出した、

「時任君!」

時任真斗は、一瞬驚いて、それから見覚えのある顔に平静を取り戻す、

「やあ、えっと、同じクラスの人だよね、……こんばんは、」

早美都の登場にも何の悪ぶれる様子も無く相変わらず時任と女は腕を組んだ侭だ、

「この人は?」

冷たく言い放つ早美都に、

 

女の方は一瞬、時任の別の彼女が出てきて修羅場ったのかと勘違いしたみたいだったが、

「彼女の名前は、澪、心理学を専攻している女子大生だよ、」

 

澪と紹介された女は、少し照れくさそうにはにかむ、

「初めまして、……マサトくんのお友達かな?」

「そういう事じゃなくって、二人はどういう関係なのさ?」

更なる早美都の追及に現場は最早紛れもなく修羅場の様相、

俺も何時迄も離れて傍観している訳にもいかず渋々出て行って早美都の隣に並ぶ、

 

「やあ、宗次朗、」

俺は早美都の腕を掴んで、

「早美都、帰ろう、……時任、悪い邪魔したな、」

「時任君、一寸良いかな、……話がしたいんだけど、」

なのに早美都は予想外に、強引で、……

時任は、一寸困った顔で、……

「私良いよ、帰る、」

「ごめんね、何だか、大切な話見たい、」

それで、公衆の面前だと言うのに、時任真斗は女に優しく口づけをする、

女はウットリと頬を染めて、……

「また、連絡するね、」

「ああ、」

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