『 戦騎龍唱シンフォギアO 』
序章Ⅱ
別離と転機
「……………」
幾ばくかの時が過ぎ、俺こと一文字 巧が小学2年生は8歳となって間もなく、ぽつりぽつりと小雨が降り出した生憎の天気と黒い喪服に身を包んだ人々の中、特異災害被災者の合同葬儀の場に、俺は居た。
それは、今から20日ほど前の休日に家族3人で遠出した際に特異災害に被災したから。
別段聖遺物がどうのとかで
「…………………」
――今生の両親、父さんと母さんが死んだ。
何もかもが突然すぎて、よくは覚えていない。
ただ覚えているのは「さあ、
そして、父さんと母さんが、いくら待ち続けても帰ってくることがなかったことだけ。
後々で知ったことだが、この当時は特異災害の発生、ノイズ出現の感知には地域差が激しかったようで、俺たち家族の出かけ先は二重で運悪く、ノイズ出現の数秒前に警報が鳴る程度の感知性能しかなかったらしい。
「…………………」
そんなことを思い浮かべて、ぼんやりと突っ立て時が過ぎていく。
ただただ寒かった。身体の底から冷えていくように寒くて寒くてどうしようもなかったけれど、俺の手に指を絡ませて強く握って父さんと母さんの死を悼み泣いてくれているかなでちゃんの手が熱いほど温かくて、ありがたかった。
これが平時の俺だったら内心で「かなでちゃん奏さんそれ恋人繋ぎ! や、め、て! 君のファンに刺される、というかSAKIMORIな片翼の娘に切り伏せられちゃうからぁ!」とか冗談交じりに慌てふためいていたのだろうが、この時の俺にはこれっぽっちも心の余裕というやつがなかった。
それはかなでちゃんとの別れの時も、その後までもしばらく続くくらいに本当に欠片もなく、唯一の肉親となった田舎暮らしの
思えば前世の良くも悪くも放任主義だった両親と違って、今生の両親は愛情深く、子供らしくない子供の、ともすれば気味の悪い子供だったろう俺に親バカが過ぎるというほど無類の愛情を注いでくれていた。俺の中で知らず知らずにその存在が大きく、代えの利かない物になっていたのだろう。
まあ、それでも、涙一滴流しはしかったのだが。
俺には前世から人嫌い気があった。今生では新しい両親の愛情深さと
だから、きっと、俺という人間は薄情なのだろう。
大体、前世の記憶を持とうが何の力もない、ただ他人よりも
突然のことでなかなか理解が追い付いていなかったが、父さんと母さんが死んだのは、仕方がないことだ。原作の天羽 奏のように聖遺物目当てに
そう、まだ、マシだ。
そしうて
「え゛。もしかして、これが特典……」
――現在、あれから1年ほどが過ぎた
「龍騎のカードデッキ、のようで違うカードデッキってなにさ(遠い目)」
見覚えのある〝ソレ〟、ドラゴンの顔を模した金色のエンブレムがある漆黒のカードデッキケース。
ただし、ドラゴンはドラゴンでもお馴染みの東洋龍の顔のエンブレムではなく、額にも角が生えているらしい西洋竜の顔のエンブレムだが。そんなカードデッキが大小無数のパイプが繋がった円筒形のそこそこ大きい細身のカプセルの中、淡い翠の光に満たされたその中でフワンホワンゆらゆらと浮いていた。
「まさか、だよな。
そんなまさかなことが……」
盛大に頬を引き攣らせつつ、現状隠し部屋唯一の光源となっているカプセルから漏れ出る淡い翠の光を頼りにしてこのカードデッキについて記されているだろうはずの資料や書類らしき紙やら羊皮紙やらの束や本を手の届く範囲内ながら片っ端から手に取って読み漁る。
「は、はは、ははは………
……嘘だと言ってよバぁあニィぃいッ!!」
そして、膝と手を床に突いたorzポーズで思わずそんなネタに走った現実逃避の叫びを上げた俺は悪くない、はずだ。
手にしていた古びた羊皮紙の紙切れ? にはこう記されていた。
と。………いやいやいや、完全聖遺物ってどういうこと。聖遺物ってことは物々しい安置のされ方してるからまさかと思いつつも予想してたけど。完全聖遺物ってなに? 資料には一度として表舞台で使われたことがないゆえに一切の逸話等を持たない名も無い低位の聖遺物だとか、名高い由緒正しい聖遺物と比べたら欠片にすら劣りうるとか書いてあるけれどもさ。
いやまあ、完全聖遺物の定義が何百何千年もの時を経ても『風化せずに完全な状態で現存している聖遺物』だから間違いではないちゃぁ間違いないけれどもさ。俺を転生させた『存在X』はなに? 俺に特撮ヒーローやらせたいの? 百合百合でハイパーヒロインタイムなシンフォギアの世界で、男独りのスーパーヒーロータイムを俺にやれと?
……………………
………………
…………
……
無茶振り過ぎるわどチクショー!!!
「……………47、53、59、61、67、71、73、79、83………
1と自分の数でしか割ることができない孤独な数字、素数を数えて心を落ち着けることしばし、俺は大きく息を吐いて気持ちを切り替えて立ち上がるとカードデッキ(資料に書かれたことが本当なら低位の完全聖遺物らしいけども)を無視して隠し部屋を調べることにした。
ぱっと見で広さは軽く30畳くらいはあるだろうか? 光源はカプセルからの光だけな上、壁は資料を納めた本棚や何某かの装置やらがびっしりと埋めているのに始まり作業台や異端技術によるものだろう大小様々な機器やらがあり、古めかしい筆記用具と書類や手帳などの置かれた執務机にと、色々と物が置かれているから正確なところはわからないが、雑然としているようで整理が行き届いているし、天井の高さが10m近くはあるしで、地下室だろうこの隠し部屋が閉塞感を感じないくらいには広いのは確かだった。
兎も角は光源をどうにかしなければ本格的に調べるのは難しい。どこかに明かりになる物があるはずだ。さすがに電気照明や電灯はないにしてもランプなり何かあるはずだ。
まあ、懐中電灯を取りに戻るというのが一番手っ取り早く正しい選択ではあるんだが、この隠し部屋の隠し部屋たる
扉が勝手に閉まったことと物音から気になって部屋に入ってすぐに出入り口の扉を調べたが、出入りごと以外にも日ごとか時間ごとにも
そんなこの部屋、多分だが俺が入れたのは
もしくは
明かりだ明かり、あかりちゃんはどこじゃろなっと。
そんなじじくさいことをつぶやきながら俺は部屋を物色していく。久しく湧いた物事への小さな興味、些細な好奇心から蔵へと足を踏み入れた時から心を、身体中を満たしていた鬱々とした暗いモノが晴れてきていたことに気づかぬまま。
「なるほど、大体わかった」
などと呟きつつ、見つけた電灯みたいに明るく光る燃料不要の不思議ランプの明かりの下、扉の
「錬金術、いや異端技術か………面白いな」
特典の一つであるのだろう『IQ600』は伊達じゃない。俺の学習能力は半端ないのだ。乾いたスポンジや砂に水どころか砂漠の熱砂に水というように瞬く間にどんな知識も吸収できる。さすがに技術的な物は身体で覚える必要があるから訓練が必要だけれども。
前世の記憶を思い出してからは「勉強が楽しくてしょうがない」、なんて前世では凡人の身にはついぞ感じたことのないことを実体験して、その勢いのまま小学校に上がる頃には大学入試レベルの問題をサラッと解いて行くのが一人遊びのひとつになっていた。
多分、かなでちゃんに構い倒されて引っ張りまわされてなかったら小学校に上がる前の幼稚園児で大卒レベルの問題まで行ってたな。
だからだろう、前世を思い出す前の俺は普通の幼い子供とは違う異質に見える言動行動が目立ち、随分と父さんと母さんを心配させたようで、最終的に父さんたちは伝手を辿って有名大学病院に行き着き、そこで俺に検査を受けさせた。結果として知能指数が600もある天才児だと判明したわけだが、あそこからだったかな。父さんと母さんの親バカっぷりがひどくなったのは。
まあそれでも二人は俺の将来を危惧するくらいには冷静だったようで、検査に携わったお医者先生始め、大学病院へ頼み込み、なんとか俺の名前が公にならない様に秘匿してもらえる運びとなった。
守秘義務があるから頼み込むまでもないと思うのだが、しかし鼻の利くマスゴミがいたようで、どこから嗅ぎつけたのか『IQ600の天才幼児』を探して検査を受けた有名大学病院を始め、あちこち嗅ぎまわっていたらしい。結局は個人情報保護法さんも仕事してくれたのか身バレせずに助かったが。
そんな俺だから入門書レベルの物から高等専門書レベルの物までの異端技術関連の様々な書物や資料が取り揃えられた
とりあえずまあ、当面の暇つぶしになる一人遊びができたし良しとしよう(カードデッキから目逸らし)。
幼稚園でもそうだったが小学校の授業は程度が低すぎて話にならないのだ。これがアメリカとかなら飛び級でさっさと大学卒業まで行けたんだが、日本の教育制度上難しい話だ。仕方がない。
もう義務教育が終わったらさっさと大検、高卒認定受けて大学に行ってしまおうか? そうすれば後はここで習得した異端技術の知識を使って博士号なり取って、悪目立ちしない範囲で需要のある技術で特許でも取れれば将来安泰だろう。
懸念は
そんなことを考えながら、俺はもういい時間だと今後入り浸るだろう隠し部屋を後にする。
またわずかな時を挟んでカードデッキ、『完全聖遺物〝無銘〟』と共に新たな転機が訪れるのを予期できぬまま。
つづく?
オリ主の名前は『立花 響』の名前が仮面ライダーから来ているということで、仮面ライダー2号、一文字 隼人から姓の「一文字」を、放映当時に響の中の人子役出演のあった555、乾 巧から名前の「巧」を取ってみました。
ちなみにビッキーの名前と父親の名前を合わせると絶唱の設定元だという『勇者ライディーン』の主人公の名前になるのも知ってはいたんですが、良いネタが思いつかなかったのでそっちの方のは諦めました。
ついでにオリ主の転生特典の一つである『IQ600』は仮面ライダー1号、本郷 武の設定からきてます。