思い付いたネタ放置所   作:竜人機

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書いてて長くなり過ぎたので分割。前後編になりました。
後編はほんの冒頭部分しかないので投下には時間かかりそうです。


シンフォギア二次:転生オリ主・オリライダー龍騎編 そのさん

 

 

『 戦騎龍唱シンフォギアO 』

 

 

 

 

 序章Ⅲ-a

 

 

 覚醒の火 Ⅰ

 

 

 

 

 

 

 

「だから死亡フラグの建つ都会暮らしには戻りたくなかったんだ! ノイズ的に考えてぇっ!!」

 

 あれから無事小学校を卒業し、現在中学二年の14歳になった俺、一文字 巧は自身のした選択を棚上げして叫びながら街中をノイズに追い掛け回されるという主人公も経験(ビッキーも第一話で)した命懸けの多対一鬼ごっこを繰り広げていた。

 

 

 

 じっちゃんの武家屋敷の蔵で見つけた隠し部屋を見つけてから、ご先祖の遺した手記に記されていた通りに屋敷に隠されていた隠し部屋の鍵の在りかを見つけ出し、無事に鍵を確保した俺は自由にあの隠し部屋へ出入りできる術を手に入れた。

 それからは錬金術や聖遺物からなる異端技術を貪欲に吸収していった。

 まあ、隠し部屋に備わった機能か部屋にある本を始めとした物は皆すこぶる保存状態は良いものの、100年ほど前の古い物だから現在の異端技術研究の最先端と比べたら基礎や基本レベル程度に考えていた方がいいだろうけれど。

 

 そうして暇さえあれば隠し部屋に入り浸たった結果、小学校高学年となった頃には隠し部屋にある異端技術知識は学習しきって予習復習から『完全聖遺物〝無銘〟(カードデッキ)』の解析までやり出していた。

 我がことながらIQ600のチート学習能力パネェわ(遠い目)。

 

 ん? 小学校の思い出? 先々のもしものことを考えて長く早く走るための体力作りで成長を阻害しない程度に色々身体を鍛えてはいたけれど、悪目立ちしないよう体育の授業や運動会なんかはバレないように手を抜いてやり過ごしていたし、強いて目立ったと言うことで上げるとしたら科目問わずテストで毎回満点取ってたくらいか? 

 なんというか、前世からの人嫌いもあって今生の俺って奴は基本かなでちゃんが絡まないと無口無愛想な上、他人とは一歩引いて事務的に接して周りへ能動的に関わることはしなかったから、これといった小学校の思い出は特にないな。

 

 ボッチ? 確かに友達はいなかったが、友達欲しいけど友達作りが下手(コミュ力不足)で一人ぼっちの人間と周りがどうだろうと独りで居たいから煩わしい不要な友人を作らない人間とを一緒にしないでもらおうか。

 大体小学校時代にちゃんと友達はいた。かなでちゃんとの幼馴染みの友人関係は遠距離ながら続いていたんだぞ。

 電話とメールのやり取りが大半だったけれど、夏休みなんか「はじめてのおつかい」よろしく妹ちゃんと二人だけで遊びに来てくれてじっちゃんの武家屋敷( ウ  チ )に泊りがけで夏休みを一緒に過ごしたことだってあるんだ。

 

 中学へ上がって最初のGW後に天羽家の訃報が届いてからはかなでちゃんとは音信不通になったけれども………

 

 そしてツヴァイウィングの(かなでちゃんのアイドル)デビュー初日でマッハでデッドヒートしてチェイサーにファン1号になりましたが何か?

 

 

 

 閑話休題(それは兎も角として)

 

 

 

 俺は小学校卒業後の進路としてじっちゃんから都会にある中等部から寮住まい可という初等部から大学部までの一貫教育が受けられる私立の名門共学校への進学を勧められた。俺の頭の良さから将来を慮ったじっちゃんの親心からくる提案だったのだろう。

 田舎ではダメだというわけじゃないが、最新の優れた知識を学ぶなら発信地かそれに近い都会へ出た方が良いということなんだろうけれど、俺としては都会暮らしは死亡フラグが建ちやすそうで少々抵抗があった。

 

 第一期ラスボス(終わりの女)の暗躍的に考えてそろそろ特異災害頻発期とでも言うようにノイズがほぼ連日湧く時期だ。というか小学校高学年当時すでにTVでは特異災害のニュースが増えていたし、政府(恐らくは特異災害対策機動部の表を担う一課)主導での避難先や避難時の注意事項などがニュースや情報番組の特集で何度も流されていたし、前世の知識から(原作では)現場へ装者をヘリで運んでいたからリディアン音楽院付近じゃなければ大丈夫だろ、などと安易なことは到底思えなかった。

 

 しかし俺はしばし悩んだ末にじっちゃんの勧める進学を受け入れた。

 死亡フラグがと色々危惧していたのになぜか?

 

 答えは二つ。

 

 一つはカードデッキ、『完全聖遺物〝無銘〟』の解析がおおよそ終わっていたことと無事? 適合を果たし、ノイズ出現を数分から数十分前に感知できるようになっていたから(あの龍騎でお馴染みの自分にだけ聞こえる『キィイイイィインキィィイイィィイン』という甲高い耳鳴りみたいな音を警告音として発し、音の大きさで彼我距離を知らせてくれるようだ)。

 

 もう一つは、天羽 奏(幼馴染み)への気がかり………

  彼  女 (かなでちゃん)へ降りかかる悲劇をどうにかしようなんて己惚れた何様視点なことは考えてはいない。そういうものだからと理解したくはないが、必要な悲劇と納得してはいたから。

 大体、かなでちゃんに発掘現場には行くなと警告しようと何故どうしてと問われれば返答に窮するし、説明のしようがない。出来たとしてかなでちゃんと妹ちゃんとおばさんは兎も角、発掘現場で働いているだろうおじさんをどうやって発掘現場から遠ざけるというのか。

 〝無銘〟の力を使って助ける? 適合できただけで俺を認ていないのか、どんなに調べてもカードすら一枚も引き出せず、〝無銘〟は高性能ノイズ警報器以外の力を示さない。相変わらず俺はノイズに対して無力なままだ。

 

 だから、仕方がない。

 

 せめておじさんとおばさん、そして妹の□□□ちゃん。家族を失ったかなでちゃんの心の支えとかにでもほんのわずかで良いからなれればなどと烏滸がましいことを考えて、ことがあればなんとか駆け付けられるだろう都会の学校へ進学を決めた。

 

 まあ、フタを開けたら特異災害のニュースとじいちゃん経由で届いた天羽家の訃報からかなでちゃんとは音信不通、連絡取れないままで無事な姿を確認できたのはアイドルデビューした時だったけどねぇ。

 ほんのわずかどころか、1ミクロンの支えもできずに進学を決めた決意じみたものが無意味に終わったよ………

 

 ………

 

 ……

 

 …

 

 笑え……笑えよ………(やさぐるま並感)

 

 

 

 いや、分かってはいるんだ。機密情報の漏洩防止とか諸々の理由があるんだろうってことは、あるいは単純にかなでちゃんの今まで使ってたケータイが損失して連絡着かないとかいうオチなんだろうなってことは。

 かなでちゃんの方から連絡が来ないのも置かれた状況と心境的に掛けずらいんだろうかと勝手ながらそう推察している。

 

 というか天羽家の訃報を聞いてから俺の記憶が一週間ばかり飛んでる。気が付いたら一週間以上経ってたって言うな。

 ちなみに周りからはその間の俺は人形めいた光のない目と顔色の悪い無表情で、問いかけたら機械的に応対してきて非常に怖かったとかなんとか。怖がられて距離を置かれたところで学校に友人なんていないし、必要ともしていないからどうでもいいけれど。

 ともあれ、知識として知っていて覚悟はできていたはずなんだが、随分と強く衝撃を受けたようだ。

 

 ………薄情者のくせに、な。

 

 そんな自嘲を顔に張り付けながら過ごす中学時代は中学二年のとある日曜日。俺は大型書店へ予約していたツヴァイウィングの特集記事が載ったアイドル情報誌数誌を受取りに街へと出ていた。

 しかし何ごともなく書店へ辿り着くことは叶わず、その道すがらで唐突に〝無銘〟の高性能(キィィイイン)ノイズ警報の(キィイインと)耳鳴りが今までにない大きな音で聞こえて思わず狼狽えてしまい、続き遅れて特異災害警報が鳴り響いてさらに狼狽えてしまった。

 

 何のための〝無銘〟の高性能ノイズ警報機能か。聞き慣れていた遠方での出現を知らせる極小さな音と違う特大の警告音に狼狽えて、すべき行動の期を逃すなぞありえない。一年間の寮暮らしで周辺地域、自身の活動範囲内に一度も特異災害が起きてなかったとはいえ平和ボケも甚だしい。

 

 そう自分を罵りながら、警報に慄き逃げ惑い出した周りの人々に嫌な既視感と不快感を感じつつ、俺は〝無銘〟の警告音へ意識を割きながら走り出した。

 

 少しでも音が小さくなる方向を探し求めて。

 

 もっとも、それを見つけられぬ内に「ここはもう特異災害(ノイズの群れ)の中心地、もはや意味はない」とでも告げるように〝無銘〟の警告音は消え、普通に逃げ惑い逃げ遅れただけとなってとうとうノイズに出くわし、冒頭の有り様となったわけだが。

 

 

 

「ちぃっ!? こっちもか!

 雑魚で物理攻撃無効だけでもアレなのに、遮蔽物完全無視とか! ズ ル(チート)にもほどがある!!」

 

 逃げた先、正面に目に痛い極彩色(ノイズの姿)を認めてすぐに右へ伸びる道へ逸れ、進んだところにあった丁字路で待ち伏せよろしく壁や建物を透過して湧いてくるノイズに回れ右とばかりに背を向けて今更な悪態を吐く。

 

 このまま道なりに逃げ惑っていてもいずれ積むのは容易に想像できる。かと言って下手に壁を乗り越え家屋の屋根へ上って、なんてのは逃げ道を自ら狭める下の下の愚策。

 さりとて第一期第一話(ビッキー)よろしく川に飛び込むのも逃げ道を塞がれて追い詰められた状況でもない限りは同じく愚策だ。着衣のままで泳ぐのは普通に走り続けるよりも体力を消耗し、川から上がれば水分を吸った着衣が重しとなり体温を奪ってさらなる消耗を強いてくる。余程の強運がなければ、運よく川の流れる先がノイズの感知圏外と発生地域の外へ抜け出られる物でなければ普通は積む。

 

 俺にできることはシンフォギア装者のかなでちゃんたち二人(ツヴァイウィング)がノイズ殲滅に駆け付けるまで何としても逃げ延び、生き長らえることだけだ。ノイズと戦うことはおろか抵抗することさえ許されない無力の俺に、他にできることなどありはしない。そんな余裕もない。

 

「あうっ!?」

 

「ッ!? ママ!」

 

 不意に聞こえた他者の声。ノイズから逃て走り続けながら、現実逃避に在るかもわからないノイズからの完全逃亡(現状打破)に巡らせていた思考が止まる。

 

 

 

 声の聞こえた方へ自然に目が向いて捉えたのは6歳ほどの女の子を抱えたまま倒れている女性 ――

 

 

 女性は女の子を抱えたまますぐに立ち上がろうとするも、足を挫いたのか痛みを訴える呻き声が出るだけで立ち上がれない ――

 

 

 そのそばへと極彩色の影たち()近づいて来ている ――

 

 

 それ気付いた女性抱えていた女の子逃がそう突き飛ばすように手元から手放し ――

 

 

 極彩色の影たち()よう伸ばし女性女の子飛び掛かり ――

 

 

 

や、め

 

 

 

 失った世界 ――

 

 

 女性女の子から視線外せぬまま視界知らず伸ばされた ――

 

 

 自分右手入り込む ――

 

 

 全てゆっくり動く中極彩色の影たち()女性女の子 ――

 

 

 

 

 

 

  ――

 

 

 

「あ………」

 

 

 

 数秒前まで生きた女性女の子だった母娘だったモノ ――

 

 

 人の形した崩れてなる ――

 

 

 その光景見たはずない両親の最期(姿)想起させて消えていく ――

 

 

 伸ばされたまま自分の手弱々しく虚しく空を掴み ――

 

 

 世界に色が戻る ――

 

 

 

「ッ………」

 

 目の前で起きた()()()()()()()()()が頭の中を埋め尽くす。

 

 弱々しく空を掴んだままの手が震えていた。

 

 こんなところで足を止めている場合じゃない。()()なりたいのか? 違うだろ。だから動け! 足を動かせ! 早く逃げろ!

 

 そう冷静な自分が自分へすべき行動を示すのに身体を支配する感情的な自分が胸中で渦巻き襲う苦痛に叫びを上げ続けてその場を動けない。

 

 この痛みはなんだ? この苦しみはなんだ? なんだ!? 何なんだ!?

 薄情者が、何をいまさら。他人の最期を目のあたりにした程度で喚くな。

 

 感情的な自分の疑問(言葉)を冷静な自分が自嘲と共に否定するが、それでも感情的な自分は変わらず叫び続ける。

 

 自分の思考が次第にグチャグチャになっていく中――

 

 

 

―― 手が届くのに、手を伸ばさなかったら死ぬほど後悔する。それが嫌だから手を伸ばすんだ ――

 

 

 

 そんな言葉が頭に浮かんで消えた。

 

 この言葉はどこで聞いた、誰の言葉だったか………

 

 そんな些細な疑問に思考が一瞬止まり、一本に纏まり出して記憶を探り始める。

 

 あぁ、これは前世の……

 

 だから、俺は………

 

 心を苛む痛みが何かを理解した。記憶の中のヒーロー(人物)とは抱いた感情も想いも違うけれど、受けた痛みは似たもので。

 もしもを起こせた力が手元に在るために、無力だから仕方がないでは目を背けられない(終わらせられない)。どうしようもなく燻り続ける想いが心に宿り出す。

 

 震え続ける空を掴んだ手に次第に力が込められて、握り拳へ変わっていく。

 

「ッッッ!!」

 

 手が届くのに、手を伸ばせなかった。この日この時、死にたくなるほどの後悔を………

 

 

 俺は抱え込んだ。

 

 

 

 

ク ッ ソ ッ ッ ッ た れ が ぁ あ あ あ ー ー ー ッ ! ! !

 

 

 

 

 

 近づいて来るノイズどもなど知らぬとばかりに天を仰いで喉が引き裂けそうなほどの声で叫びを上げる。

 

 ふつふつと止めどなく湧き上がってくる。変わらず続くはずだった日常を非日常へ塗り潰し、恐怖と絶望を振り撒くノイズ(モノ)への ――

 

絶対にッッ………」

 

 (さか)しく理由を付けては逃げて目を逸らし、力を持ち得ながらそれを使えずに何もできない自分自身と不条理と理不尽を押し付けて来るモノ全てへの ――

 

ゆ゛る゛さ゛ん゛ッ!!

 

 怒りと憎しみが!!

 

 

  GyuaAoooooOOOOOOOOOunn!!!

 

 

 瞬間、懐に入れていた〝無銘〟が服をすり抜け(透過し)て飛び出せば、耳を劈く怪獣の咆哮のような鳴き声が響いて、すぐそこまで迫っていた周囲のノイズが弾き飛ばされ光の粒子となって消えた。

 

「起動、した」

 

 その言葉が聞きたかったというように悠然と宙に浮き、淡く輝く完全聖遺物〝無銘〟(カードデッキ)

 

「そういう、ことか」

 

 足りなかったのだ。〝無銘〟を起動させるための必須条件が。俺はそれを満たしていなかった。賢しい頭で諦める理由を並べて目を逸らして来た、逃げて来た今までの俺では満たし得なかった条件。

 

「ノイズへの敵意……

 いや、誰かを守ろうと、助けようと降り掛かるノイズ()へと立ち向かう戦意、か」

 

 解析して答えはわかっていたはずなのに俺は何もわかっていなかった。わかった気になっていただけだった。

 

 自分の馬鹿さ加減に嫌気がさしながら宙に浮く〝無銘〟へと俺は左手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 つづく?

 

 

 

 




発掘現場発ノイズ天羽家襲撃の時期は適当です。GWより夏休みの方が時期的にらしい気もしますが、拙作では訓練期間と家族の復讐からアイドルデビューを提案するほどの奏の心境の変化を考慮して時間的にこれくらいじゃなかなぁと。

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