霊夢に手を引っ張られた私は玄関の手前まで連れてこられていた。
霊夢「ねぇ、かくれんぼしよ~?」
??「かくれんぼ?」
首を傾げて頭の上に?が出てくる。
かくれんぼ?初めて知る単語だ。もしかして、寺子屋の子たちがやってた遊びかな?
霊夢が期待の眼差しを向けるようにキラキラした目で私の顔を覗いている。
霊夢「そうだよ。知らない、かくれんぼ?」
??「…うん…ごめんね。」
私は申し訳なさそうに、霊夢に謝った。
記憶が無いって本当につらい、最低限生きるために必要なことは覚えているけど
こういったことは、まったく分からない。
霊夢「しょうがないなぁ~♪」
霊夢は自分がお姉ちゃんであるかのように振る舞って、私にかくれんぼのことを教えてくれた。
実際に霊夢は私の年上に当たるらしいので、それ相応の呼び方をしたほうがいいのかな?
霊夢「あのね、かくれんぼっていうのは見つからないように隠れる遊びだよ」
霊夢
つまりは、隠れてる人を探して、制限時間内に見つけたら探し手の勝ち。見つけられなければ、隠れてる方の勝ちといった、シンプルなルールだ。
私は霊夢お姉ちゃんとじゃんけんして、隠れる方と探す方に分かれる。
霊夢「じゃあ、私が隠れる方ね!」
??「私は,目を瞑って10数えたら霊夢お姉ちゃんを見つければいいんだね!」
私が霊夢お姉ちゃんとと呼んだら、少し恥ずかしいのか頬を赤らめて喜んだ。
霊夢「そうだよ、えへへ、実は私は隠れる方が得意なの~!」
霊夢お姉ちゃんはそう言うと、どこか走り去っていく。
といけない、私は目を瞑らなければいけなったと慌てて、両手をクロスにして目を塞ぎ10数える。
??「い~ち、に~…」
私は人の気配を靄のような者で見ることができる。しかし、それを使うと一週間の間、無意識の内に靄のようなものが見え続ける。それに、聞きたくもない声が私の頭の中をノイズのようにひどく煩く駆け巡る。そのせいで頭痛や目眩を起こし奈々さん達に心配されたことがある。
だから、この力はできるだけ使わないようにしようと決めている。幸いにも、使うまではオンオフのようにはっきりしているため、使わなければ普段の用に過ごすことができる。
??「…きゅ~う、じゅう!も~う、い~か~い」
……
返事がない、ということは、既に隠れたのか。
そういえば、ここに来るまでに周りをキョロキョロしてたから、既に隠れる場所に見当がついていたのだろう。私は数えるまでに隠れられそうな場所に絞り、まずは台所を探す。
??「いない…」
台所にはいないようだ、というよりそもそも隠れられるスペースが限られてるので、そこまで難しくない。次はもう一つの居間にいってみよう。
??「あれ、ここにもいない…」
ここにもいない、もう一つの居間は、奈々さんたちが話している居間より少し小さいぐらいだが
障子の向こう側に縁側、部屋の隅に戸棚と結構、隠れられるスペースがあるので可能性は高いように思えたけど…いない。となると…
??「う~ん…後はここだけ…」
私と奈々さん達が寝ている寝室だ、ここには、隠れられるスペースは一つしかない。
布団がしまってある、押し入れだ。しかし、押し入れの扉は一向に開かない。何か鍵でもしてあるかのように頑なに戸を閉ざしている。
ここだ、ここに間違いない、しかし、この扉をどうやって開けよう?
わたしが試行錯誤してから、立ち尽くしていると頭の中にイメージが浮かぶ。私が、鍵型の剣を出現させ目の前に
すると、突然、手から光を放ちながら、鍵型の剣を出現させる。色は手元から先端にかけていくにつれ青から白になっていて、形は傘程のリーチ。先端が雪の結晶のようになっており、柄の部分は鳥の羽のようなもので六角形に形作っている。
??「綺麗…」
見た瞬間に思った言葉が口から出ていた。
わずかに鍵型の剣が光っているような気もした。
キーブレード———
??「え?」
突然、頭の中に声が聞こえた。
??「う、うわっ!」
そして、キーブレードが意思を持つように、目の前の押し入れの扉に向かって、突き刺すように動いた。私は引っ張られるように躓きかけながらも耐えて、キーブレードを両手で抑えた。
その瞬間、頭の中でイメージした光景と同じように、先端から光線のようなものが押し入れを貫いた。私は慌ててキーブレードを投げ捨てると。キーブレードは光を放ちながら消えていった。
霊夢「あちゃ~…見つかっちゃった…」
押し入れの扉が勝手に開き、霊夢が驚いている。得意と見栄を張ったが見つかった上に、何やら開けられないようにしていた扉が開いたのだ。色々複雑な気持ちだろう。
霊夢「すごいね、それ、私の結界を解いちゃった」
霊夢は私の手の中の
霊夢「今までは私が隠れるところに結界を張ることで誰からも見つからないから、皆、降参するんだ~」
??「へ、へぇ~…へ?」
あれ!?さっき、確かに投げ捨てたはずなのに!手の中に戻ってる!?
それに、結界って何!?それ反則じゃない!?隠れてる場所は見つけても、出てこなかったら見つけたことにならないよね!?
霊夢「ねぇ、今度は鬼ごっこしよう〜?」
霊夢の関心は鍵型の剣よりも私と遊ぶことのほうが興味があるらしく、私は内心、助かったと思った。あれ、なんで助かったって思ったんだろ?
暫くするとキーブレードは光を放ちながら、消えていった。役目を終えたかのように…
??「鬼…ごっこ…?」
私と霊夢お姉ちゃんは縁側から外に出ていた。
私は険しい顔をしながら、霊夢お姉ちゃんの言葉を繰り返していた。
自分の大切な人を傷つけた者の単語にひどく反応してしまい、嫌な予感が頭を掠める。
霊夢「どうして、そんな怖い顔するか分からないけど、鬼ごっこは追いかけっこみたいな遊びだよ」
よかった、どうやら思い違いをしていたようだ。私は「そうなんだ…」と言い安堵しながら胸に手を当てた。
紫「あら、楽しそうね、霊夢」
霊夢「あ、紫だ~!」
??「っ!?」
誰!?一体いつの間にいたの!?
紫「あなたとは、初めましてかしら?私の名前は
髪は金髪で腰のあたりまでの伸びており、紫を基調としたドレスを見にまとい、中央には白と黒が混ざり合うような模様があって、風で飛んでいきそうな帽子を被った女性が、手に小傘をさしながら私に声をかけてきた。見た目は、妖艶な女性で、美人だが、どこか怪しく感じさせられる。
私は警戒して霊夢お姉ちゃんを庇うように手を回してその女性を睨む。
紫「そんなに警戒しなくていいわ。その子の保護者みたいなものよ。」
霊夢「そうだよ、紫
空気が変わった、今、ピリッてした。それに紫って人は眉をひくひくさせている。
暫く、警戒していると、その人は、手を額に持っていき、言った。
紫「はぁ…霊夢、いい加減、おばさんはやめてほしいのだけど…それに呼び捨て…まぁ、いいわ
それで今から何か遊ぼうとしてたんじゃないの?」
霊夢「そうだった!」
霊夢お姉ちゃんが紫って人に楽しそうに何かを話している。本当に悪い人ではないみたいだ。
ううっ…そう考えると、罪悪感に際悩まれる。
??「…あの…」
紫「…?」
私は紫さんの裾を掴んで、声をかける。
??「その…さっきは、睨んじゃって、ごめんなさい!」
私は、綺麗にお辞儀して、紫さんに向かって謝った。
紫「(へぇ~…)」
紫はしばらく目の前の娘を見てから、頭を撫でた。
紫「いいのよ、それが普通の反応だわ。その子がおかしいだけだから」
??「ほんとに…?」
私は涙目になりながら上目遣いで紫さんに怒ってないか確かめた。
紫「ええ、だから気にしなくていいわ(何この小動物可愛い!)」
??「よかった!ありがとう!紫お姉ちゃん」
私は笑顔でそう言った。そしたら紫さんがプルプル震え出した。また怒らせるようなことしちゃったかな?
そんなことを考えていると両手で霊夢お姉ちゃんが何かを急かすように私の手を引っ張りっているが、急に奈々さんの声が聞こえてきた。
霊夢「ねぇ、はや「霊夢ちゃ~ん!優衣ちゃ~ん!こっちにいらっしゃ~い」
霊夢お姉ちゃんと顔を見合わせてから、「ゆいって誰だろう?」とお互いに首を傾げながら思った。
霊夢「は~い!」
奈々さんに真意を聞こうと思って不意に紫お姉ちゃんのほうに振り向くと、そこには誰もおらず
私は疑問に思いながらも、奈々さんの下に霊夢お姉ちゃんと向かった。
***
??「優衣って…私の名前…?」
不安になりながらも、私は淡い希望を持って、奈々さん尋ねた。
奈々「そうよ、これから大事な話をするからよく聞いてね…」
神妙な面持ちで正座をして、私に話しかけた。
そんな空気だからか、私も思わず正座して聞く態勢を取る。
??「うん…」
奈々「もし、あなたが良ければ、私達と一緒に暮らさない?」
??「暮らす…?暫らくってこと?」
何を言っているのだろう。一緒に住んでいるのだし…いや、住んではいない、泊まっているだけだ。一緒に暮らすとは帰る場所がここになるだけで、居候の身としては変わらないことを言っているんだろう。それで、名前を付けたほうが都合がよかったのかな…。変な期待をしてしまったな…。
そっか、私はこの人たちと一緒にいたかったんだ。居候でも奴隷でもいい、この暖かい家族の傍にいて一緒にご飯を食べて、いろんな話をして、一緒に寝て…でも、それは叶わない私は赤の他人で、この家族に甘えていい存在ではない、それに本当の家族がいるかもしれない。私のことを探しているかもしれない。それに、あの時の鬼の言葉…
(「化け物!」)
あの言葉が、私は本当は化け物なんじゃないかと思わせる、人外な力、謎の武器の出現、普通とは違うとこばかりだ…
奈々「そうじゃなくて、私とあの人(良太)の子供としてってこと」
??「え……?」
奈々「一緒にご飯を食べて、一緒に色んな話をして、一緒に寝て、思い出をいっぱい作ってーー
??「…いいの?…私は赤の他人で…化け物かもしれないよ…?」
私は下を俯きながら涙声で問い掛けた。
奈々「あら、こんなに可愛い顔した化け物なら大歓迎よ、それに、赤の他人なんて言ったら怒るわよ」
??「本当の家族が…現れるかも…」
奈々「なら、その家族も一緒に住んでもらいましょう」
??「あはは…」
頑固だなぁ…私は、涙を流しながら嗚咽を漏らさないようにすすり泣く。
すると奈々さんが私を抱きしめて言ってくれた。
奈々「優しい衣に包んでくれるような温かい笑顔で、優衣って名前よ、気に入ってくれると嬉しいけど…」
奈々さんが不安そうに私の顔を覗き込んだ。
優衣「…うん、すごく嬉し…いよ!お母さん…大好き…!」
私がお母さんと呼んだことで納得してくれたと判断したのか奈々さんは私のことを強く抱きしめてくれた。それに返すように私も奈々さんの胸に顔を埋めて泣いた。
暫く私たちがそうしていると…
霊華「よ~し、今日は宴会よ!食べて食べて食べまくるわよ~~」
霊夢「えんかい~!」
雰囲気ぶち壊しかよ…
奈々「いいけど、その代り、食費は全部あなたが持つのよ、霊華」
霊華「ええーーー!」
奈々さんの辛辣な言葉に霊華さんは財布を覗きながらぶつぶつ言って青ざめている。
私と奈々さんはお互いに向き合ってその様子に微笑んだ。
それから、霊華さんが本当に食費を全て負担してくれた。なんか一回神社に戻って賽銭箱を見てくるとか言ってた。私に初めて……なのか分からないけど、家族ができた。私はその日の興奮で疲れたのか宴会を楽しんでいたら、いつの間にか眠っていた。
***
奈々たちが子供たちの布団を敷いてる間に夜風にあたり月見酒を嗜もうと縁側に出てき腰を下ろした時…
霊華「あら、珍しい、人里になんの用かしら、スキマ妖怪」
嫌な奴に会った。
紫「そんなに、邪見にしなくてもいいじゃない、あの娘の様子を見に来ただけよ、それと、誰かさんにお金を貸したせいで、私の式が怒ってるから抜け出してきたのよ」
紫が私の隣に腰を下ろし熱燗をお猪口にそそぐ。
霊華「うぅ!…そ、そう、それで、あなたの目から見て、優衣はどうなの?」
紫(話をすり替えたわね)
霊華(仕方ないでしょ!)
お互いに目だけで語り合う。
紫は、溜息をしてから、月を眺めながら話した。
紫「そう…、あの娘、優衣って名前なのね…」
霊華「正確には、違うかもしれないけどね…でも、私は優衣は優衣であってほしいと思うわ」
霊華は両手を後ろにおき、背を倒すようにして話す。
あの子が、純粋でお日様のような笑顔を振りまく、普通の女の子であってほしい、そう思っていた。
紫「私の見解…だったわね、正直言って、まだ詳しくは分からないわ。そういえば、霊華…今日、あなたの
霊華「力?…ああ、霊夢が結界を張っていたわね、またかくれんぼでもしてたんでしょ?」
霊華はお酒を飲みながら考えていた。
ま~た、あの子が結界を張って誰からも見つからなければ勝ちとか言ってたんだろう。
霊華はそう思っていた。
紫「…問題はその後よ、あの娘…優衣は霊夢の張った結界をいとも簡単に破ったわ」
霊華「は?」
呆けた顔をしながら口を開けていた。
結界を?人が?一体どうやって?
紫「確か、鬼を退治したとも言ってたわね…」
紫は顎に手を添えながら何か思考するように俯く。
霊華「ち、ちょ、ちょっと待って!じゃあ、優衣は何の力も使わず霊夢の結界を破ったというの?」
子どもといえど、一応は私が教えている、博麗の巫女の跡継ぎ、生半可な鍛え方はしていないから、そんじょそこらの結界とはわけが違う。それを破った、普通の女の子がいとも簡単に…あり得ない。私はまたこの胡散臭いおばさんに揶揄われていると思っていた。
それに私は【あらゆる力を変換する程度の能力】を持っている。何かの力が働いたら、すぐに感知する。霊夢が結界を張り、解けた感覚はあったが、別の力によって結界を破ったようには思えない。
紫「いいえ、あれは破ったというより——」
奈々「霊華~、何一人で飲んでんの~?一緒に飲みましょうよ~」
奈々が私を呼んだと同時に紫は消えていた、いつものことだ…
きっと紫の勘違いだろうと、この時の私は思っていた。
霊華「はいはい、今行くわ~」
***
紫は霊華が縁側から居間に戻るのを見届けた後、もう一度、月を眺め心の中でつぶやいた。
紫(そう、あれはまるで、破ったというより開けたようだったわ)