「子供を殺せば…来るか?オールマイト」
死柄木の言葉に多くの生徒が背筋を凍らせる。それは初めて感じる命の危機だった
「
そう叫ぶのは上鳴だ。上鳴の言うように、多くのプロヒーローが教鞭を振るう学校に攻撃をしかけるということは、即ちその学校全てのヒーローと戦うことに他ならないからだ
「余計なことを考えるのは後だッ!13号!避難開始!学校に連絡試せ!『侵入用センサー』が反応しない以上、センサーの「対策」も頭にあるヴィランだ。電波系の奴が妨害している可能性もある。上鳴、お前も個性で連絡試せ!」
「ウ、ウッス!」
カリカリ グシャッ!
「『ゴールド・エクスペリエンス』!!」
それを見たジョルノは懐からメモとペンを取り出すと「USJ ヴィラン襲撃」と走り書きをし、メモを握りしめてゴールド・Eのパワーで真上に投げる
すると生命エネルギーを流されたメモは、全長20cmほどのツバメに生まれ変わり、そのまま凄まじい速度でUSJから離れるように飛翔する
「ハリオアマツバメは時速170キロの水平飛行が可能なギネスブックにも載っている鳥だ。雄英のヒーローのところまで最速で飛ばす!」
1秒にも満たない間に、ハリオアマツバメはUSJの外まで出て
ガッシィ
…突如空中に現れたもやの中から出てきた手に掴まれる
「な、何ィー!?」
広場を見れば、死柄木が黒霧のもやの中に手を突っ込んでいる。射程距離外の為、イレイザーヘッドの“抹消”も間に合わない
ボロ ボロ ボロ
手の中でボロボロに肉体が崩壊していき、ハリオアマツバメから元に戻ったメモは宙でチリになった
「くっ!あのもや、あんなに早く出す事ができるのか!」
(いや、そうだとしても時速170キロで移動する物体を、パスタをフォークで巻き取るかのようにたやすく掴んだ!そしてあの、おそらく
見れば、眼下ではもやから出した手をぷらぷらさせながらジョルノをじっと見る死柄木の姿があった
「あ〜…手がしびれるぜ。目的は
「チッ…!」
相澤は首にかけたゴーグルで視線を隠し、捕縛布を操作して臨戦態勢に入る。イレイザーヘッドの姿に変えた相澤を見た緑谷は必死に止めようとする
「まさか1人で戦う気ですか!?無茶だ!イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛だッ、あの数相手に正面戦闘は……」
「緑谷………ヒーローは一芸だけじゃあ務まらん……13号!生徒を任せたぞ!」
それだけ言うと、イレイザーヘッドはセントラル広場にいるヴィランの集団に跳び込む
「マヌケがッ!」
「ど真ん中に突っ込んできやがった!」
「蜂の巣ゥゥ─────ッ!」
それを見た射撃系の個性を持ったヴィランが、宙を跳ぶ相澤めがけて個性を使用する
シ──ン……
「アレ?でねえ…」
ドヒュバ───ッ ガシ!
「ふっ!」
「「「ウゲェッ!」」」
しかし「抹消」で個性を消され唖然としている間に捕縛布に捕まり、地面に叩きつけられ気絶した
「ばかやろう!アイツは個性を消すっつーイレイザーヘッドだッ!」
「「消すぅぅ」〜〜?俺らみてェーな異形系もかァ〜?無理だよなァ────!!」
次に異形系個性のヴィランがイレイザーヘッドの背後から殴りかかる
「無理だ。発動系や変形系に限る…」
その攻撃を、背中に目があるようにさっと躱す
ドヒャアア──ッ バシィ!
「ウッ!」
「だが、お前らみたいなヤツの旨みは統計的に近接戦闘で発揮される事が多い…だから、その辺の対策はしてる」
そして捕縛布でがんじがらめにして、異形系のヴィラン同士頭を打ち付けさせる
「「ギニャァ──ッ!」」
倒れるヴィランをよそ目に、イレイザーは次々とヴィランをなぎ倒していく。しょせんは裏路地で燻っていただけの木っ端ヴィラン、プロヒーローにかなうわけがない
(とはいえ、この数…そしてあの男…)
しかし、イレイザーの中にあるのは焦燥だ。あまりに用意された数と脳みそが剥き出しの大男は、イレイザーの警報を鳴らし続けた
(…かなり分が悪い……)
「す、すごい!先生の個性は、多数相手の近接戦闘でこそ本領を発揮するのか!」
「感心してる場合ではありません!みんな、僕の側に…」
ズズズ…
「!! いえ、後ろで固まっていてください」
近くに湧いてきたもやを見た13号はすぐに生徒達に指示を飛ばす。生徒の前に出る13号に対面する形で現れた黒霧は、ペコリとお辞儀をしながら口を開く
「初めまして、我々は「
(…ッ!?なんだって?…今、なんて言った?オールマイトを……殺す?)
緑谷はその言葉の意味が一瞬理解できなかった。オールマイトは誰にも倒せない、それはヴィランにとって当然の認識だ
(でも、事実としてヴィランは雄英に攻撃をしかけてきた!まさか、オールマイトを殺せるだけの根拠があるんじゃあ…)
「そしてもう「1つ」が…彼」
スッ…と指を指した先にいたのは、生徒達の中からゆっくり黒霧に近づくジョルノの姿
そして……黒霧は言う
「ジョルノ・ジョバァーナを、我らが敵連合に勧誘する為です」
「………え?」
誰が呟いたのか?誰にも分からないが、生徒も教師も黒霧の言葉に大きく動揺した
「ジョバァーナくん!近づいてはいけません!」
ジョルノを止めようとする13号だが、ゴールド・Eのパワーで押さえつけられる。名指しで指名されたジョルノは顔が影で隠れたまま静かに黙りこくりながら、黒霧の前に立つ
「……あんたはぼくの『父』の関係者ってことか」
「そうです。私、というわけではありませんが、大変お世話になったそうです………
何かを察した様子で黒霧と会話するジョルノに、全員が得体の知れなさを感じた。それほど、今のジョルノは普段にはない
「あなたの父親には相当してやられたらしく、なので今度は確実に敵対しないよう、その「息子」であるあなたをこちらに引き入れようってわけです……なにせ、あなたの父はあの」
「無駄ァッ!!」
その「名」を口にする直前、『ゴールド・エクスペリエンス』の拳が黒霧の顔面を突いた
ブワァ
否、突いていない。顔を傾けた黒霧の横には、もやに包まれたゴールド・Eの左腕があった
「あぶないあぶない…ジョルノ・ジョバァーナ、あなたの個性は知っています。鋼鉄をも砕くパワーと目にも見えぬスピード…だからこそ、物理攻撃の効かない私がこの役目に選ばれたわけですが」
「だろうな。だがお前の個性、無敵ってわけじゃあない」
もやで見えないが余裕のある表情だろう黒霧にジョルノが言う
「…今なんと?」
「実体がある。なけりゃあ「あぶない」なんて言葉は出てこないし、服を着る必要なんてないからな…」
ゴールド・Eは左の握り拳をゆっくり開く。すると手の中にあった
「!! な、サソ…!」
服の上でカサカサ蠢くサソリが、服の上から黒霧に尾の針を突き刺そうとする
ブワッ ブッヂィ!
しかし黒霧はとっさにもやでサソリの胴体を包む。すると胴体がちぎれ、サソリは真っ二つに割れた石ころに戻りながら地面に落ちていく
「こ、このガキ…!」
「お前達がぼくの『夢』を阻むというのならば、父の因縁だろうが関係ない。ここでお前達を倒す!」
「仕切ってんじゃあねえぞコロネ野郎!」
「てめーは俺らがぶちのめす!」
ジョルノが言い切ったタイミングで爆豪と切島も黒霧に突撃するが
「散らして!」
黒霧は生徒を逃さないように前方にもやをバラまき
「なぶり殺すッ!」
もやに包まれたジョルノ達は、その姿を消した