13号や生徒達を包み、別の場所へ飛ばす『ワープ』のもや…
ドッパァ!
そこから、“ブラックホール”でもやを吸い込みながら退路を確保する13号とついてくる生徒、“エンジン”の高速移動で麗日を抱えながら
「とっさだったので乱暴に運んでしまった!大丈夫か麗日くん!」
「私は大丈夫!でも、デクくん達が…!」
「2人とも、早くこちらに!」
13号の声を聞いた2人はその方向に走る。13号以外に残っている生徒は飯田天哉、麗日お茶子、瀬呂範太、障子目蔵、芦戸三奈、そして糖分を力に変える個性を持った
「こんなにも生徒を遠くに離してしまった…!」
「いいえ、これだけの生徒を守った…と言うべきでしょう。これだけの数の生徒を残してしまうとは思わなかった…さすが雄英ヒーロー科、金の卵ですね」
「きさま…ッ!」
飯田が睨みつける先には、この状況の元凶である黒霧がこちらに歩を進めていた
「ジョバァーナくんをどうするつもりだ!なぜ彼をヴィランであるおまえ達が勧誘しなくちゃあならないんだ!?」
「答えて差し上げてもよろしいですが……そんな事を考えてる暇があるのですか?死ぬのですよ、今から」
黒霧の無関心な、しかし必ず生きて返さないと言う態度に生徒6人は口を閉じる
すると黒霧はスマホを取り出し、画面をタップして耳元にスマホを近づける
「死柄木は1番にオールマイトを殺したいのでしょうが、
とぅるるるるるん……ぴっ
「ジョルノ・ジョバァーナを火災ゾーンにワープさせました。あとはあなたの『仕事』です…
それだけ言うと黒霧は通話を切ってスマホを懐にしまった。その様子を見ていた障子は疑問に思う
「…13号先生、今、このUSJ内は妨害電波を流されている可能性があると相澤先生が言っていましたが…」
「ハイ。彼は確かに連絡のやり取りをしていました。これだけの準備をしている連中が外への連絡を許すとは思えない……つまり、
「なら、あれを奪って電話すりゃ助かるんじゃあねーか!?」
瀬呂の提案に13号は首を振る
「それはダメです。奴に近づけば必ずワープさせられる。そうなれば詰みなのです。絶対に『触れない』ように逃げ続ける、これが絶対です。そして…」
13号は飯田を見る
「飯田くん、君の能力は奴から逃げおおせるスペックがある。君がUSJの外に出て、救援を呼ぶのです!」
「そんな!?俺は「委員長」です!みんなを置いて俺だけ逃げるなど…!」
「そのみんなを救ける為に必要な事です!君だけが唯一あれから逃げられる!」
「う、うう……!」
飯田は苦悶の表情で悩む。しかし黒霧は飯田が決断を下す事を待ってはくれない
「敵の前で作戦会議など阿呆ですね!邪魔しないとでも思っていましたか!?」
「敵の前で電話してたあなたが言いますか!」
襲いかかってくるもやを指先の『ブラックホール』で吸い取る13号。命がけで戦う13号の姿に決意を感じ取った飯田は、息を吸って大声を返事をする
「──分かりましたッ!!学級委員長「飯田 天哉」、職務を全うします!」
「みなさんは回避を大優先でお願いします!決して「倒す」だとか「撃退する」なんて考えてはいけません!逃げ切るのです、なんとしてもッ!」
13号を指示を聞いた6人は、もやの魔の手から逃れる為に走り出した
一方、ジョルノが飛ばされた火災ゾーンでは…
「無駄ァ!!」
「死ねェ!!」
「オラァ!!」
ジョルノは他にも飛ばされた爆豪、切島の2人と一緒に、炎で照らされたビルの中、床に大穴が空いた部屋でヴィラン達を蹂躙していた
ジョルノは窓からセントラル広場の方をチラリと見るが、もう1つのビルが視界を防いでいたため、様子を見ることは難しかった
「お、おれ達の相手は、ガキのはずだろ!?」
「こ、こいつら、強過ぎるッ!特に金髪のガキ2人がッ!」
数で押し潰せると思っていたチンピラ達は、3人…特にジョルノと爆豪の化け物じみた強さに、完全に萎縮していた
そして3人が戦う中、カメレオンの異形型“個性”を持つヴィランが天井に張り付いて薄ら笑いを浮かべる
(ウケケケケ、バカめェ〜!他の奴らに気を取られて誰1人気づいてねえ。俺の無敵の個性に勝てる奴はいねえッ!ぶっ殺してやる!)
そう考えたヴィランは長い舌を伸ばして、ジョルノに向かって振り下ろし
(死ねェェェェー!!)
「無駄無駄無駄無駄ッ!」
「ぶげぇッ!?」
──振り下ろし切る前に、天井まで移動していたゴールド・エクスペリエンスの片腕のラッシュを受けて、そのまま気絶して地面に落ちた
「「ゴールド・E」には生命力を探知する能力がある…お前が天井に張り付いているなんて最初から分かっていたことだ」
そしてゴールド・Eを使って、ジョルノはヴィランの掃討を再開した
それから3分…
「倒した敵はこれで全部か…」
「モブ風情が俺に勝てるわけねェだろーが」
3人の周囲には、死屍累々といった感じにヴィランの集団が倒れていた
切島は窓から広場の様子を見る。広場全体をよく見渡せたが、遠いため様子が分からない
「そんじゃあ、早く広場のところに…」
「待ってください切島…そのまま…穴から離れるんだ…」
「え?」
とりあえず広場に行こうと扉に近づく切島をジョルノが制止する
「爆豪……」
「わかっとるわボケ…「敵」がいやがる」
その言葉に切島は疑問符を浮かべる
「いや、そりゃあヴィランはそこら中に倒れて…」
「違います。新手のヴィランが既にいるんです…この部屋の下にッ」
「な、なんだとッ!?」
「ぼくのゴールド・Eでは、敵がいることがわかっても、そこまで正確な位置は掴めない……せいぜい、どの方角にいるのかくらいしか」
ゴールド・Eで床に触れながらジョルノは周囲を警戒する
「
「…………」
「ぼくの言いたい事、わかりますか?」
ジョルノに聞かれた切島は言葉を絞り出す
「よくわからんが、つまり………その……敵の能力の『謎』を見きわめない限り、うかつに近づいたらやられるって事か?」
「ええ!しかし、隠れて襲う能力という事は、逆にそれが短所!『謎』さえわかればヤツを倒せるという事です」
「ハッ!謎なんざ解かなくったってブッ殺しゃあいいんだろうがよ」
だが、爆豪はそんなジョルノの提案を一蹴する
「何言ってんだよ爆豪!敵の謎を解かなくちゃあ俺達は皆殺しだぞッ!」
「判断材料もねェのに謎もクソもあるかよ。だいたい、それはコロネ野郎の推測じゃあねェか。臆病な想像だけで見たわけでもねェーのによォ。敵は下の部屋のどこかに隠れているだけだ。今、見つけ出して…………俺がブッ殺してやる!」
それに対して反論するジョルノ
「判断材料があれば、謎が解けると解釈させてもらいます……その上で言います。謎を解かなければ、近づいただけで確実にやられます」
「うっせェンだよ!!ア?このクソが〜〜〜…!」
爆豪は、ジョルノが自分を格下と見てるから当然のように命令するのだと思っている。そんなことを絶対に認めるわけにはいかない爆豪は、ジョルノをギロッと睨みつける
長い沈黙が続き………
「このジョルノ・ジョバァーナには夢がある」
そして、ジョルノが沈黙をやぶった
「何言ってんだおまえ?」
あまりに突拍子のないジョルノの言葉に思わず真顔になる爆豪
ザン!
「!?」
「!!」
するとジョルノは急に脚を前に出して走り始めた
「「謎」を!!
「ジョルノ!?いったい、おまえ何を!!」
最短で扉に近づく為、ジョルノは目の前のポッカリ空けられた穴をジャンプで飛び越え
ズブ
───その穴から飛び出した1本のレイピアが、ジョルノの無防備な背中に突き立てられた
「ジョ…ジョルノ!!」
「う…う…」
切島が声をかける中、ジョルノの体に変化が起きる。まるで
「あそこに敵がいるぞッ!こ…これはッ!?やばいぞッ!ジョルノがやばいッ!」
居ても立っても居られなくなった切島は、ジョルノを助けようと体を動かし
ドン
しかし、突如目の前に立ちふさがった背中を見て、切島は困惑する
「爆豪…?」
「ジョルノ・ジョバァーナ!!こいつ……クレイジーな野郎だな…証明するためにかァ…?」
爆豪はジョルノの事が気に食わないと思っている。何もかもお見通しだと言わんばかりの態度も、自分の行動が正しいという自信も、爆豪の心をイラ立たせるばかりだった
だが、そんなジョルノが自分の身を呈してでも、『謎解きと敵を倒す』ことを自分達に任せたのが
だから爆豪は心のムカつきを一切隠さず
「どうかしてんじゃあねーのか!」
BOOM!
掌を爆破させて叫んだ