「う…」
背中からレイピアで突き刺されたジョルノ
「き…きさま……!!こ…この個性は…!!」
ジョルノは突き立てられたレイピア、
「『ゴールド・E』で防御しろッ!ジョルノッ!」
切島は攻撃されたジョルノにそう言いながら、助けようと走り出す
ガオンッ
しかし、その前にジョルノの体が敵によって下の階層に引きずり込まれる
そして引きずり込まれた穴の底には……ジョルノの靴が片っぽだけ落ちていた
「バ…バカなッ!」
切島は目を疑った。たった1秒程度の時間でジョルノの姿が消えたことに
(何なんだ………!?ジョルノに自分の個性を出して防御する間髪も与えずに、ジョルノをどこかへ隠し切るなんて……)
「ジョルノッ!どこだッ!!」
手当たり次第に探そうと穴に近寄り
ガシィッ
しかし、その肩を爆豪が掴んで止める
「そこの穴には
そのまま爆破でもしそうな剣幕に切島は冷や汗をかきながら、2歩後ろに下がった
「俺はコロネ野郎を信用してるわけじゃあねえが、
下の階層を遠目に見ながら爆豪は警戒する
「あの野郎………万が一、
「…………?
「察しろやクソボケッ!!」
理由が分からない切島が聞くと、察しの悪さに「チッ!」と舌打ちをしながらも爆豪は答える
「広場でモヤ野郎が言ってただろうが。コロネ野郎を勧誘しに来たってよォ。そして、アイツはヴィランどもが
「イヤイヤ!仲間にならないくらいなら殺すって可能性も十分あんだろ!?だいたい、そうだとしてもなんで自分から捕まりに…」
その時、切島は穴の下の部屋…正確にはそこに落ちていたジョルノの靴の変化に気づく
グニュゥゥゥ…
圧縮されるようにどんどん靴が小さくなり、やがてそれは、小さなハエに姿を変える
ブウウウウウウ…
「く、靴がハエに…これはジョルノの個性!」
「だからイカれたヤローだっつってんだろうがッ…だがアイツはまだ生きてる。そしてこのハエの動きが、自分から捕まりに行った最大の理由ッ!」
ブウウウ─…ウウ──ン
そしてそのハエはジョルノが消えた地点から離れ、扉から外に出て行った
「ハエがッ!逃げるように部屋から出ていくぞッ!」
「生物には『帰巣本能』っつーモンがある……多分、コロネ野郎が生み出した「生命」は、元となった物体の持ち主に帰っていく習性がある…生命エネルギーっつうヤツじゃあ細かい位置はわからねえとコロネ野郎は言ってやがった。だが、隠れて奇襲をしかける敵の持ち物なんざ手に入るわけがねえ。だから自ら捕まりに行ったッ!
BOOM!
すると爆豪は落ちていたソフトボールほど大きい瓦礫の破片を掴むと、『爆破』の勢いを乗せて高速投擲した
それはハエが追いかけてる地点に直撃して、コンクリートを破砕する
バゴオッ!
…しかし、破壊した場所には誰も存在せず、ハエはそのまま見えない敵を追いかけていく
「あの地点じゃあない!敵もジョルノもいない!やはりジョルノの言うとおり、敵は姿を消すだとか、どこかの物陰にただ隠れて攻撃して来たんじゃあないぜ!」
2人は穴から下の階層に降りて、廊下に出る
ブウウウ────ン
ハエはどんどんビルの中を2人から離れるよう移動していく
「おい……ハエが離れていくぞ…」
「ジョルノを連れて逃げる気だッ!だがおかしい…どこを移動してるんだ!?敵はどうやって!?どこに隠れているんだ!?」
「この敵の能力に関しては……仕方ねェ──クソッ、アイツの言ってる事を認めるしかねェようだなァ……クソ髪!敵を追うぞコラ!」
爆豪と切島は、付かず離れずの距離を保ちながらハエを追いかける。時々、焦るようにハエが速く離れたり、逆に爆豪たちに近寄るように移動してくるが、2人は一定の距離でハエを追いかける
やがてビルの出入り口までたどり着く。しかし、そこで奇妙な事が起きる
「…なぁ、爆豪…あいつ、ずっと入り口でとどまってるぜ」
「うっせェ」
そう、ジョルノを抱えて逃げ続けていたハエが、出入り口あたりでピタリと移動をやめたのだ
何か変な感じがする。違和感を覚えた爆豪は背後の切島をチラ見し
ピンッ
切島の後ろで、カッターの刃で覆われた「グレネード」が天井から栓と一緒に落ちてくるのを目撃する
「『
反射的に絶叫する爆豪。ドッと汗が吹き出した体で切島に掴みかかり、側面の壁に向かって投げつける
「うおおおおッー!?」
切島は爆豪の言葉に反応はできなかったが、壁に投げられたことによる危機感から全身を
頑強な肉体は厚い壁を砕き割って隣の部屋に移動する。割れた壁の穴に向かって、両掌の爆破によるターボで即移動する爆豪
ボッ ボッ ボボッ
その瞬間、グレネードが
ビス!ビス!ビス!
爆豪と切島は壁が『盾』になったおかげで刃は飛んで来ないが、それ以外の場所には破裂地点から広がるようにカッターがそこらに食い込む
刹那の攻防の中、ようやく切島が床に落ちる
「イッデェ!」
ブッ
「……えッ?」
だが、痛みに悶えている暇はなかった。突き刺さったカッターの刃で傷ついた地面や壁が、まるで猫の爪で切り裂かれた布団ような傷口へと裂けていく
ブシゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…
そして傷口から吹き出す空気を見て、爆豪たちは理解した
「こ…これは…!?空気がぬけるように………!!壁や地面…ち、違う!
今、この周辺が空気の抜けた風船のようにしぼんでいってるのだという事を