「え……?」
「バカな…!」
「な…!」
「ケロ…!」
その戦いを見ていた4人はそれぞれの反応をする。中でも1番大きな衝撃を受けていたのは峰田だった
「なんだってえええエエェェェェェッ!?」
眼前には丸太のように太い右腕がジョルノの首に伸び、押さえつけるように首を絞めつける
「…こッ」
ギリ ギリ ギリ
「こいつ……!」
捕獲目的なのが幸いして、脳無は首の骨を折るほど力を込めてはいない。しかし、このままではジョルノの意識が落ちるのは時間の問題だった
「無駄ァ!」
「ゴールド・E」を呼び出し、左手で脳無の頭部に狙いを定める
ガシッ!
「!!」
だが、残った左手がゴールド・Eの攻撃を防ぐ。巨大な掌が黄金に輝く左拳をスッポリ覆い尽くす
そして脳無はなんの感慨もなく拳を掴んだ手を握りしめた
グシャァ
リンゴのように握り潰された音が2人を中心に響く
「うぐあああッ!」
「ジョルノくん───ッ!!」
ゴールド・Eのダメージがフィードバックした事でジョルノの左拳もプレスで潰されたように粉々になる
それを見てるしかできない緑谷は他の人の顔を見る。爆豪は忌々しげに、轟もオールマイトも悔しそうな表情で脳無を睨みつけている
(早く救けないとッ!でもどうする!?僕じゃあ脳無にダメージを与えられないッ!かっちゃんも轟くんもオールマイトも、攻撃すればジョルノくんを巻き込んでしまうから攻撃できないんだッ!何か…何か手は!?)
「残念だったなァ────ジョルノ・ジョバァーナ。とりあえず両腕をつぶせばお前はもうどうしようもない。再起不能になってもらう……が、一時的にだ。ウチには優秀なドクターがいるんだ、しっかり治すだろうよ」
死柄木は嗜虐的な目を隠さずに見下す
ガッ
「おおおおおおおおおおお!」
死柄木の視界には、ジョルノが悪あがきと言わんばかりに残った手で、自身の首を掴む脳無の右手首に触れるがもはや力を込める余裕もない
そして脳無の左手が、ジョルノの右前腕部を掴む
「やっ」
緑谷は手を伸ばすが、死柄木は止めない
「やめろォォォォォ!!!」
「終わりだァ─────ッ!腕をヘシ折れ脳無ウウウ───────ッ!!」
シ────ン………
「………うン…?」
しかし脳無は…ジョルノの右腕を掴むとピタリと動きを止めた
「…オイ……なんで動き止まってんだ…ソイツを再起不能にしろ脳無ッ」
パッ ぶらん…
死柄木が指示を出すが命令通り動かない。それどころか、ジョルノを捕まえていた手すらも離して、
「何手放してんだテメ───ッ!?早くそのガキを捕まえろ───ッ!!何をやっ」
「脳無に…お前の命令は
子供のように駄々をこねる死柄木の叫びを遮ったのは、満身創痍のジョルノだった
「脳無は、お前が命令して「一定時間」経った後、まったくと言っていいほど動かなかった………だが命令を飛ばせばすぐさま行動に移した……だから分かったんだ。脳無の命令には「持続時間」があり、命令がなければ自分からは動かないと…!」
「だからなんだってんだ!?肝心の脳無には傷1つついてねェし、『超再生』で回復もする!どうやったって止められねえッ!」
ガリガリ首をかきむしりながら、苛立ちを隠さない死柄木。そんな死柄木を見ながら、ジョルノはゴールド・Eを呼び出し、脳無に触れながら言う
「ぼくの『ゴールド・エクスペリエンス』には1つの能力がある…『生命エネルギー』を操るという能力が…物体に生命エネルギーを流し込めば、それは生命へと生まれ変わる」
脳無に生命エネルギーを流しながら、ジョルノは問いかける
「なら……すでに「生きてる生物」に生命エネルギーを流し込めば、どうなると思う?」
「……!!」
ガリガリ ガリガリ
ありえない、という感じに目を見開く死柄木。ジョルノが何をしたのかを理解したからだ
「
「死柄木?」
死柄木の突拍子もない発言に黒霧は疑問符を浮かべる。しかしジョルノはその言葉を肯定する
「そうだ。ゴールド・エクスペリエンスの生命エネルギーを流し込まれた人間は感覚がより鋭敏になり、すべての動きが超スローに見える。今、脳無は…超スローの世界に居続けている。お前の言葉もすさまじく遅く聞こえるから、命令として…いや、言語とすら認識できていない」
「どこだ…!一体どのタイミングで流し続けてやがった…!?」
死柄木は必死にさっきの攻防を思い出す
『目の前のやつだけは特別だ脳無。
『逃すな、ガキどもを殺れ、脳…』
『無駄ァ!!』
(あの時か…!だから脳無はこのガキばかり狙い続けていたのか!ダメージがないと分かって殴り続けていたのも生命エネルギーを流し込む為にッ!)
「さあ…どうする?ぼくも動けないが……脳無は完全に無力化したぞ…」
「このクソガキがアア─────死ねッ!」
お気に入りのおもちゃを取り上げられた子供のように激昂した死柄木はジョルノをバラバラにしようと走る。完全に視野が
だからこそ、生徒の急接近に気づかなかった
「SMASH!!!」
ドゴ!
「うごがァッ!?」
“個性”を使った(しかし個性を使用した腕も脚もボロボロになってない)緑谷に横っ面を勢いよく殴られた死柄木は、顔につけた手が外れながらフッ飛ぶ
「緑谷くん」
「ジョルノくんに……手は出させないぞ!」
ファイティングポーズを取りながら前に立つ緑谷
一方死柄木は、錯乱したような、怯えたような様子で落ちた手を拾って顔につける
「ごめんなさい、ごめんなさい、お父さん…!」
お父さん、と呼んだ手を再び顔につけると、落ち着きを取り戻した死柄木は緑谷を憎悪の目で見る
「どいつもこいつも、ヒーロー気取りのクソカスどもが…!」
ヒーローに対する、並々ならぬ憎しみをさらけ出す死柄木。感情の赴くままに緑谷をチリに変えようと手を伸ばす
ドスッ
「ぐお…!」
が、その腕に弾丸が2発撃ち込まれる。痛みに悶える死柄木は、守る為に近づいてきた黒霧のワープゲートに包まれながら、USJの入り口を見た
「すまないみんなッ!先生たちを呼び出すのに時間がかかってしまった…ッ!」
「ヒーローッ……!」
「1ーAックラス委員長、飯田天哉!!──ただいま戻りました!!!」
そこには…多くの
先頭にいる、テンガロンハットをかぶった西部劇のガンマンといった出で立ちの『スナイプ』が、銃身の長い銃を構える
ガァーン! ガァーン!
再び死柄木に銃弾が撃ち込まれるが、黒霧のモヤが死柄木を覆い、銃弾を別の方向へワープさせる
「死柄木弔!!撤退を!」
「…今回は失敗だったけど……今度は殺すぞ、平和の象徴…オールマイト」
ズズズズ…
ワープゲートで逃げようとする死柄木は、呪詛の言葉を吐く。最後にジョルノを見ながら死柄木は告げる
「そして……おまえはどうあがいたところで、その血のさだめからは
「『
「え…」
ズズズズズ…ズプン……
そう言い残して、死柄木弔と黒霧は姿を消した
だが、緑谷は…否、誰もが逃げたヴィランに対して考える事ができなかった。勝利の余韻に浸ることもなかった
「………」
静寂の中…ジョルノ・ジョバァーナは普段と同じように、何を考えているのか分からない無表情のまま、脳無のそばで佇んでいた