わずかな照明だけが頼りのBAR…そこに黒い歪みが生じ、『ワープゲート』が展開される。腕を撃ち抜かれ、頬を殴られた死柄木がボロボロの状態で出てきて床に倒れ込む
「オールマイト…全然弱ってないじゃあないか…DIOの息子も何が弱いだ、ほとんど1人で脳無を無力化された……」
ずるずる這いずり、ブツブツ呟き、死柄木は恨みがましく見上げる。視線の先は、カウンターの上に置かれたモニター画面の人物
「平和の象徴も邪悪の遺産も健在だった……話が違うぞ先生……ッ!」
『違わないよ』
先生、と呼ばれた人物は諭すように言う
『オールマイトはたしかに衰弱している。そして、ジョルノ・ジョバァーナも彼の息子とは思えぬほど弱い。ただ見通しが甘かったね』
『うむ…舐めすぎた。ヴィラン連合なんてチープな団体名でよかったわい。ところでワシと先生の共作脳無は回収してないのかい?』
「クソガキに奪われた」
先生のセリフに返したのは年老いた老人の声だ。そんな老人の質問に、不機嫌にそう言い捨てる死柄木
「…そういやあ、1人、オールマイト並みのパワーを持った子供がいたな……」
『…………へえ』
「あいつがいなけりゃあジョルノ・ジョバァーナは殺せたのに………ガキがッ……ガキィ……!」
本来の捕獲という目的も忘れて、ジョルノの殺害を邪魔された事に不当な怒りを沸きあがらせる死柄木
そんな様子を見ていた先生は、パン!と手を叩き、死柄木に言い聞かせる
『悔やんでも仕方ない!今回だって決して無駄じゃあなかったはずだ。精鋭を集めよう、じっくり時間をかけてッ!我々は自由に動けない!だから君のようなシンボルが必要なんだ…死柄木弔ッ!!次こそ、君という恐怖を世に知らしめろッ!』
「ドクター。正直あの脳無、ジョルノ・ジョバァーナに対しては捨て駒のつもりですらあったんだ。父の『力』を引き継いでいるなら脳無くらい秒殺するだろうと考えてね」
「秒殺とは聞き捨てならんのォ。ワシと先生の共作じゃぞ?」
死柄木との通話を切った直後、先生はいきなりそう話を切り出す
モニターの光だけが光源の暗い部屋の中で、老人ことドクターの心外と言わんばかりの言葉に、先生は答える
「事実だよ。何せ、僕はかつて…DIOとの一騎打ちで
先生は……目と鼻のない顔で邪悪に笑いながら、着ていたスーツのジャケットを脱いだ
「『時を止める』という能力は」
露出した左胸には、拳大の空洞の中で心臓が脈動していた
雄英高校 校長室内…
そこにネズミなのか犬なのか熊なのか、珍妙な生物の根津校長が、特徴の薄い顔の男性“
「生徒たちの救助はついさっき終わったのさ!腕と手をそれぞれ骨折した生徒2名を除いて、残り19名は軽傷で済んでいたよ。大怪我を負った2人も今頃リカバリーガールのところで治療しているはずさ」
「さすが根津校長です。事情聴取が楽に進んで助かります」
「こちらこそ、君のような優秀な警部がいて大助かりなのさ!」
そう、この男の正体は警察関係者なのであった。今回のUSJ襲撃事件にあたってチンピラヴィランと脳無の確保、そして主犯格を捕らえる為の事情聴取に来たのである
「さて、ここからが本題!…ヴィラン連合の主犯格、死柄木弔が最後に爆弾発言を残していってね。生徒たちにも箝口令を敷いているから、内密にして欲しいんだ」
「爆弾発言?一体何を」
「襲撃を受けた生徒たちの中に『DIO』の息子がいる」
「!!」
「DIO」、そのワードを聞いた塚内は驚愕に顔を染めた
「最初は負け惜しみと思ったさ!だけど生徒たちからちょっと聞いた話によれば、死柄木たちはオールマイト殺害のほかに彼のスカウトも目的としていたらしい。拉致する為のヴィランも用意していたとの事だ。ここまで周到な計画を用意してる連中が本気で彼を引き込もうとしていた…ただの勘違いならどれだけいいか!でも、そうじゃあなければ、事態は思っている以上に深刻だよ」
「…DIOの影響がそれほど計り知れないから、ですね」
「うん」
グイッ、と紅茶を飲みながら肯定する根津校長
「今の世代の子供は誰もが知っているでしょう。世界を揺るがした稀代の
「だけど、オールマイトを除いた全員はDIOの元にたどり着くことすらできなかった。みんなはDIOの部下に痛手を負わせるも重傷ゆえに撤退するか、無惨に殺されたかのどちらかだったのさ…」
かつて行われた大規模な作戦。当時のDIOが拠点としていたエジプトのカイロに包囲網を仕掛け、DIOの配下を含め、全員を逮捕する計画であった
しかし、DIOの配下には、裏で名の知れた暗殺者や危険人物なども存在していた。その配下から不意打ち・妨害を受けた事で作戦は根元から頓挫。唯一、強行突破できたのはオールマイトのみ
ティーカップを置いて一拍置く。塚内は眉をひそめて根津校長の話に耳を傾ける
「そしてオールマイトも、DIOとの戦いで腹に穴を空けられる重傷を負い、撤退せざるを得なかった…平和の象徴の実質的な「
「しかし、『DIO』は15年前に突如消息を絶ったはず…」
「いいや、こう考えるべきさ……「
確認するように、塚内は問いかける
「…その、彼の名前は?」
「『ジョルノ・ジョバァーナ』」
「ジョルノ…ジョバァーナ…」
噛みしめるように、その名をつぶやいた