2週間後…雄英体育祭当日
体育祭の主役であり、選手である生徒たちは、体操服に着替えてクラスごとに控え室で待機していた
開会式まで時間がある中…轟は緑谷に声をかける
「緑谷、ちょっといいか」
「轟くん、どうしたの…?」
普段話しかけられない相手に話しかけられて困惑する緑谷に、轟は続ける
「客観的に見て、実力は俺の方が上だ」
「え、あ…うん…」
開幕から失礼な事を口にされるが、事実なのと緑谷自身喧嘩っ早い性格ではなかったおかげで、余計なイザコザは生まれなかった。これが爆豪なら即掴みかかってるところだろう
「でもおまえ、オールマイトに目ェかけられてるよな」
「…!」
「そこんとこをどうこういうわけじゃあねェが…おまえには勝つぞ」
次に、首を横に向けてジョルノの方を向く
「そしてジョバァーナ、おまえの「あの話」が本当なのかはどうかは
「No.2がNo.1に宣戦布告かよ!緑谷巻き込まれてるし」
「オイオイオイオイオイオイオイオイ!やめろよ轟、クラスメイトだろ!?」
「仲良しこよしじゃあねえんだ。別にいいだろ」
なだめる切島に轟はそっけなく返す。そのやりとりの中、緑谷は小さくうつむきながら肩を震わせていた
「そりゃあ……僕よりは轟くんの方が実力は上だよ。ジョルノくんがいなかったら、君に勝てる人が本当にいるのかも分からなかった」
………そして、顔を上げる
「──けど、他の科の人も本気でトップを取りに行こうとしてるんだ……だから、僕も“本気”で獲りに行く!」
「……おお」
気弱な気質である緑谷の強い意志がこめられた言葉は、轟の中の何かを揺さぶった
「ジョバァーナ、おまえはどうなんだ?」
次にジョルノの答えを聞こうとこちらを向く轟を、ジョルノはジッと見つめる
「……この体育祭にはぼくの『夢』がかかっている。だからぼくもみんなと同じ気持ちではあるが、ひとつ言っておく。…戦う相手もろくすっぽに見ていないあんたじゃあぼくには勝つことはできない」
「なんだと……?」
「あんたとは無駄な戦いになりそうだな」
そう言うジョルノの顔を見た生徒たちはギョッとする。それはあまりに冷酷で残酷な眼光だった。何人かは分かった。あれは激情がにじみ出ている目だ
ジョルノの言葉に轟は眉間にしわを寄せる
「言ってくれるじゃねえか…!」
「入場しましょう、みんな。雄英体育祭がはじまります」
入場口に歩き出すジョルノの背中を見ながら緑谷は思った
(ジョルノくん、怒ってる…?)
なぜジョルノが怒っているのか、緑谷には皆目見当もつかなかった
暗い通路、目の前には光の入場口。その入り口から歓声が反響し、やがてプレゼント・マイクの声が響き渡る
『遂に来たぜ!!年に一度の大バトル!ヒーローの卵と侮んなよ!!つうかお前らの目的はこいつらだろ!?ヴィラン襲撃を乗り越えた鋼の卵共!!』
そして光を越えた先には……目いっぱいに広がるドームのフィールドと席を埋め尽くす観客たちの姿
『───A組だろぉ!!』
歓声と共に入場していくA組一同。続けてB組、普通科のC組、D組と、サポート科、経営科と選手が並んで歩き続ける
やがて全員がフィールドの中央に集まったところで、宣誓台の上に1人の女性が上がる。ヒール・ガーターベルト・ボンテージ・ムチとSM嬢の女王みたいなヤベー容姿が特徴の18禁ヒーロー「ミッドナイト」である
「開会式を始めるわよ!」
「『18禁』なのに高校にいて良いものか?」
「良い」
常闇の当然の疑問に対していっそ清々しいほど迷いなく答える峰田。ちょっぴり成長してもエロ葡萄なことに変わりはないようだ
「選手宣誓!!選手代表!!1ーA“ジョルノ・ジョバァーナ”ッ!!」
「ハイ」
呼ばれたジョルノは静かに壇上に上がる。マイクの前に立ち、右腕をあげて宣誓する
『宣誓!!…我々、選手一同はヒーロー精神に則り、正々堂々、戦い抜く事を誓います。選手代表、1ーA“ジョルノ・ジョバァーナ”』
ジョルノの立派な宣誓を聞いたミッドナイトは、しかしどこか不満そうにつぶやく
「普通ね………まあいいわ!それじゃあ、さっそく最初の」
『──そして、無駄な前置きはここまでにしておきます』
しかし、進行しようとするミッドナイトの言葉を遮って、ジョルノはマイクの音量を最大にする
『ッ!ジョバァーナ、待てッ!』
ジョルノが何をしようとしているのか察した相澤はマイク越しに声を荒げるが、それで止まるわけもないジョルノは──ハッキリとこう告げる
『ぼくはDIOの息子です』
「「「!?!?!?」」」
それを聞いた生徒、観客、そしてテレビ越しの民衆は驚愕する。動揺が見て取れる会場の様子を見たミッドナイトは、ジョルノを止めるべく“睡眠香”の個性で眠らせようとし
「くっ!」
『止めるなッ!』
そのミッドナイトの行動を相澤は静止する。ミッドナイトが止まりそうになかったら、解説席から飛び降りて『抹消』を使ってでも止める腹づもりだった
(今ジョバァーナを無理やり止めれば、観客やこの中継を見ている民衆に雄英への不信感を植え付けるハメになる…!だが、このままでは誰もかれもが混乱するのは目に見えている。何をする気だジョバァーナ…)
ジョルノの行動を雄英教師は誰も止める事ができない。本当にマズい、何かをしでかした時に備えた方が合理的だと考えた相澤は、いつでもミッドナイトに合図を送れるようにしながらジョルノを見る
『…ぼくは子供の頃、自分はこの世のカスなのだとずっと信じて生きてきました。そんなぼくにたった1人、対等に接してくれた人がいました…「ヒーロー」と呼ばれている男でした。ぼくは彼のように『自身とこの世に絶望している者』に希望を与えられる存在になりたいと思った』
会場は驚くほど静まり返っている。太陽の下に分厚い雲が通り、辺りを薄暗くする
『ぼくがヒーローになる事を…ぼくの存在そのものを認めない者は多くいるだろう……父であるDIOはそれだけの事をしてきたのだからな…でも、ぼくは必ずヒーローになります。ぼくの事を認め、友だちだと言ってくれた彼らの為にも』
「ジョルノさん…」
塩崎が小さくつぶやく
そして、太陽を覆う雲が通り過ぎ……ジョルノを中心に眩しい光が降り注がれ、広がっていく
『このジョルノ・ジョバァーナには『夢』がある!その夢の為にも、なんとしてもぼくはこの体育祭で優勝して、のし上がっていかなくっちゃあならないんだ!』
生徒も、観客も、テレビ越しで見ている市民も、止めようと警戒していた先生たちでさえ、ジョルノの確固たる「決意」と「覚悟」に目を奪われていた
『ぼくは1位をとるッ!君たちがぼくの前に立ちはだかるというのならば……全力でブチのめさせてもらうッ!』
そしてマイクから離れたジョルノは緑谷を、爆豪を、轟を、目の前にいる全ての生徒を指差すように手を前に出し
「覚悟はいいか?ぼくはできてる」
そう宣戦布告した
『………………』
ジョルノから発せられる威圧感に誰もが閉口する…否、選手たちは心の中が燃え上がっていた
(ジョルノくんの覚悟が伝わる…!でも、僕だって勝ちたいんだッ!勝つんだッ!)
(上等だぜコロネ野郎…!!デクも半分野郎もテメーもねじ伏せて、俺がてっぺんを取るッ!)
(俺は右の力だけで勝つ…!そして、あのクソ野郎の人生を否定してやる…!)
(ダチだからって手は抜かね─────!勝つぜ、ジョルノッ!)
(すみません、ジョルノさん……しかし、貴方の意志を聞いて決めましたッ!私、絶対に勝ちたくなりました…ッ!)
スタジアムの外に伝わるほどの静寂が長く続き…
パチ… パチパチ… パチパチパチ…
最初に誰が鳴らしたのだろうか?1つの拍手が鳴ると、その近くで拍手が鳴り、さらにその近くでも拍手が鳴り響く
衝撃と情熱の宣言の元、雄英体育祭が開幕した
実はちょっと前にメッセージが届いて、その内容が「雄英体育祭の選手宣誓でジョルノがDIOの息子だということを暴露するのですか?」ってのが届いたんですよ
全く同じ内容を考えてたんで唖然としました