まあ、深く考えないで「この作品はジョルノがヒーローを目指す物語だ」とだけ再確認して、本作をお楽しみください
相澤消太は内心驚きを隠せないでいた
(あの混乱を一気に鎮めた……DIOが
解説席から見下ろす先には宣誓台から降りて列の中に戻るジョルノの姿。宣戦布告をしたジョルノは、当然周囲の生徒から注目を浴びていた
そして宣誓台の横では、恍惚とした表情で「うっとり♡」してるミッドナイトの姿が
「ヤバイ…トンデモナイもの…見ちゃったわ〜〜〜……あっ!こりゃたまらん!ヨダレずびっ!」
『ヤベーのはオメーだぜミッドナイト』
『放送禁止になりそうなそのツラなおして早く戻ってこい』
「……ハッ!」
プレゼント・マイクと相澤のダブルツッコミを受け、トリップしていたミッドナイトは正気に戻る
「…さ、さて!開会式も終わった事だし、早速第1種目に行きましょう!いわゆる予選よ!」
気を取り直してミッドナイトは進行役を行う
「毎年ここで多くの選手が
全員が巨大スクリーンに目を向ける。そしてそこに映った文字は…
「
『障害物競走』だった
「計11クラスでの総当たりレースよ!コースはこのスタジアムの外周、約4km!我が校は自由さが売り文句!コースさえ守れば何をしたって構わないわ!さあさあ、位置につきまくりなさい……」
約220人ほどの選手がゲートの下にあるスタートラインに集まっていく
そしてレース開始の時間が近づく。スタートラインには220人近くの生徒が密集しており、普通に動く事すらも困難だったスタートをどう切るか、それが最初の関門となるだろう
3つ赤く点灯するスタートシグナルの内、1つが消える。短い間をおいて2つ目のシグナルも消え…
最後の光が消えた直後、青い3つの光が灯る
『スタアアア────トォッ!!!』
ビシッ ビシッ ビシッ
ミッドナイトの気合の入った宣言と同時にスタートライン前後の地面が凄まじい早さで凍りついていく
「うおおお!?足が凍ったァ!?」
「あ、あたしのもッ!?」
「あいつだッ!ヒーロー科の、A組の野郎だァ──!」
連鎖的に足も凍りついて動けない生徒が指差した先には…足元から氷を出しながら疾走する轟がいた
『ついに始まったぜ、雄英体育祭1年部門!実況はボイスヒーロー、プレゼント・マイク!解説は抹消ヒーロー、イレイザーヘッドの2人でお伝えしていくぜ!解説のミイラマン、アーユーレディ!?』
『無理矢理呼びやがって…』
ミイラマンこと相澤は不機嫌を隠さずつぶやく。そして露骨にため息を吐いた
『スタートダッシュを切ったのは轟ィ!「地面」ごと後続組を凍らせて最初のトップにッ』
『いや……
解説の言葉に思わず轟は後ろを軽く見る
グググ…
「…………!!」
すると視線の先には、ゲートの一部を束ねた植物のツタに変え、一気に轟の前に出ようとするジョルノとゴールド・エクスペリエンスの姿があった
『ジョルノ・ジョバァーナ!!スタートラインのゲートを成長の早い植物に変えて轟に迫るぜ──ッ!つーかあのゲート、コース外にはみ出てるよな!?アリなのか!?』
「本人が外に出てないからセーフよ!」
ミッドナイトのセーフ判定をもらったジョルノはそのままトップに躍り出ようとする
ピキ…ピキピキ…
だがその時…ジョルノのツタに異変が起こる
「!」
急成長を続けていた植物の成長が著しく遅くなり、やがて止まった。振り向いて植物の根元を見ると、地面から広がる氷結がゲートを介してツタを凍らせていたのだ。もはやツタには人間を運ぶだけのパワーは残っていない
「なるほど…俺の初手の動きを「読んでいた」というわけか……しかし、俺が何の対策もしていないと思っていたのか?」
途中で地面に着地したジョルノは凍った地面を避けるようにコースの端に移動
「『ゴールド・E───ッ』!!」
ドン!ドン!
地面にゴールド・Eの生命エネルギーを殴って流し込む
ビシィ!ビシッビシッ…
が、氷に覆われた植物はたちまち成長を止める
「…………………」
「植物や生物には」
轟は語る
「生まれるとき、成長するとき、適温が必要だと本で読んだことがある。お前の「ゴールド・E」はあくまで実際の動植物を『生み出し』『成長させる』個性…俺の氷で止まる以上、俺の敵じゃあなかったってわけだ」
『クレバ────ッ!轟、接近するジョルノの動きを止めたァ─!!』
『こればかりは相性の問題だな…轟の“個性”は「炎」と「氷」を生み出すこと。直接、極低温の環境を作ることはできないが、対象を凍らせることができれば同じこと……今のジョバァーナの状況ではツンドラの地面のように短い草しか育たない』
相澤の言葉通り、ジョルノが生命エネルギーを流した箇所には霜が降りた雑草のように短い草しか生えていなかった
「
『ジョルノの能力を封じた』。そう確信した轟は地面を凍らせつつ走り出す
ブチン ブチン
その直後、何かがちぎれる音が聞こえた
ブチン ブチン
轟は無視して前に進むが、ちぎれる音は
「………」
(なんだ……?ジョバァーナの能力は封じた………妨害もしている……追いつけるわけがねェ………)
クルッと首を曲げるとヒーロー科の面々が氷結を予測して避けて追いすがってくる。想定内だ
「ヤツが追いつけるわけがねえッ!しかしなぜ
だが、そこにジョルノ・ジョバァーナの姿はない
(俺があいつを恐れているとでもいうのか……!DIOの息子だからか……?それとも……)
「はッ!」
轟は思考の最中、隣を通り過ぎる気配を感じて、その気配の元を見た
パリ パリ パリッ
「…な、なんだと……!?」
『うお────────!!喜べリスナーたち、初っ端からお前ら好みの展開だッ!』
ドシュウウ────ッ!!
「み…短い草を集めて……凍らせて………や…野郎…「そり」を…」
そこには、凍った地面の上を「スノーボード」のようなものに乗って滑走するジョルノの姿があった
「い…いや、野郎、俺の冷却を利用して「ボード」を作りやがったッ!し…しまった!クソッ…!」
「おまえが何に執着していようと」
轟の表情が悔しさに歪む中、ジョルノは宣誓の時と変わらぬ決意に満ちた瞳でゴールを見据える
「ぼくのやるべきことは依然変わらないッ!あんたがよそを向いてる間に……ぼく
レースは、まだ始まったばかりだ