黄金体験のヒーローアカデミア   作:ジャギィ

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お待たせ


騎馬の上の攻防 その3

ジョルノと轟の騎馬が対峙した同時刻…

 

「!? オ、オイ……爆豪…」

「アァ?」

 

今にもジョルノに飛び掛からんとする爆豪に瀬呂が声をかける

 

いいところを邪魔された爆豪はドスの効いた声で返事し、しどろもどろな瀬呂に苛立って罵倒しようと口を開こうとした時、瀬呂は問いかける

 

「お…おまえ…()()()()()()()()()()()?」

「ハ?」

 

「何言ってんだテメー?」とでも言いたげな表情で爆豪は頭につけたハチマキを確認して…

 

「………?」

 

だが、いくら触っても、いくら確認しても…自分のチームのポイントであるハチマキの感触がない

 

「…アア!?」

 

それを気づいた爆豪は即座に周りを見渡す。すると背後、正確には左後ろの方向に、爆豪のハチマキを握ったそのチームがいた

 

「クソがァ!」

「爆豪!?」

 

一気にキレた爆豪は切島の驚く声を無視して『爆破』で飛ぶ

 

「モブ野郎が!ブッ殺す!」

 

ハチマキを奪い返すことよりも、相手をぶちのめすことに決めた爆豪は爆破する右手を振り下ろし…

 

ガン!

 

───その直前、爆豪は空中でへばりつくように何かにぶつかった。まるで、『見えない壁のようなもの』があるかのように

 

「てっ!ンだッ」

 

バキィ!

 

「ガッ…!?」

 

そして、透明な壁に直撃した隙を突いて、宙に浮いた()()()()()()()の握り拳が爆豪の右頬を殴り抜ける。続け様に左拳も追撃を仕掛ける

 

BBOM!

 

しかしそこは並外れた反射神経と戦闘センスを持つ爆豪。即座に爆破でその場を離れ、追っかけてきた切島たちの騎馬に着地する

 

「うお…!爆豪、先走り過ぎだッ!もうちょい俺らも頼れッ!」

「ルセェ!!」

「あーヤダヤダ、注目されてるからって見下してさァ…特にキミは野蛮だね、爆豪クン?」

 

単純な挑発だが無視するのは爆豪的にあり得なかった

 

爆豪が睨みつける先…そこにいたのは、ヒーロー科B組に属する男、物間(ものま) 寧人(ねいと)のチームだった。彼の手首から先には手が存在せず……代わりに物間の周囲でふよふよ浮いていた

 

「「ヴィラン」を撃退して一躍有名人になった気分はどうなのかなァァァァァ────!?…いや待てよ。そう言えば爆豪クン、キミは前から有名人だったねェ…」

 

挑発を続ける物間は…爆豪にとって忘れられない、屈辱の黒歴史を口にする

 

「ヘドロ事件で()()()()()()『爆豪クン』?」

 

プッツ──────ン

 

その時、その場にいた誰もが「決定的な何かが切れる音がした」とのちに言う…

 

「ば、爆豪ッ!?おちつけ……明らかな挑発だ!!キレるんじゃあねえぜ!!」

「…安心しろ…切島ァ…」

 

地獄から響き渡るような底冷えする声。今にも大噴火しそうな怒りを抑えて…爆豪は凶悪ヴィランよりも凶暴に笑う

 

「俺ァ今…………史上最高に冷静だ………!!」

「見えねーぜッ!?その「(ツラ)」はよォ────!」

「どうすんのさ切島!?」

「やるしかねえ!このまま独断で動かれてもハチマキは取り返せねえ…全力で爆豪をサポートするぜ!」

 

芦戸の迷いに、全身を硬化させながら切島は男らしく断言する

 

「足引っ張んなよォォォォッ!切島!しょうゆ顔!黒目!」

「オウ!」

「瀬呂だっつーの!」

「ア・シ・ド・ミ・ナ!」

 

真正面から突っ込む爆豪チーム。それを見た物間は鼻で笑いながら、分裂させてた両手を元に戻した

 

「ヨユウぶっこいてスカしてんじゃあねえクソモブ!」

 

怒りを爆発させ続ける爆豪が振り下ろした右腕

 

ビュルルルルル…

 

それを正面の騎馬である円場(つぶらば) 硬成(こうせい)が『空気凝固』の個性を使い、口から吹いた息で吐息を固めた盾を作る。先ほど爆豪を妨害した透明の壁の正体がこれなのだ

 

BOM!

 

「効かねェ!」

 

ガシャァン!

 

その空気壁を爆破で難なく粉砕し、そのまま物間に爆破を浴びせる

 

ガシャァ!

 

「!?」

 

だが、聞こえてきたのは物間に攻撃が命中した音ではなく、2()()()()()()()()()()()()()

 

しかし円場が作った壁はすでに破壊した。2枚目を作る暇もなかった。ならば何故?

 

ビュルルルルル…

 

その答えは、円場と同じように空気を吐く物間の姿にあった

 

(コイツの能力は手を切り離して操作するモノのハズ……いや、(ちげ)え!ヤローのこの『能力』はッ!)

「お返し…するよ!!」

 

そして息を吐き終えた物間は腕を振り上げ……

 

BBBOM!

 

爆豪に叩きつけながら「掌を爆破」させた

 

「な…!?あ…あり得ねえ…今のは爆豪の「爆破」の個性!コイツはいったい!?」

「なるほどなァ…クソモブ…いや、()()()()()()

 

かろうじて腕で爆破をガードした爆豪は、物間の能力を理解する

 

「『他人の個性をコピーする』…それがテメーの能力か」

「さすがに(わか)っちゃったか。まあここまで見て解ってなかったら、キミは頭もオソマツな不良クンってことになるんだけどね」

 

随所随所で相手を煽ることを忘れない物間だが、みみっちい爆豪はさっき鼻で笑われたことを思い出し、同じように鼻で笑う

 

「テメーの能力、コピーする個性の「持ち主」「触れねえ」と使えねえんだろ。しかも複数同時にも扱えねえ」

「…へぇ…証拠もないのによく言うねェェェ?」

 

それを聞いた物間は嘲笑う。だが、それが演技だというのに爆豪は気づいている

 

「さっき俺の爆破を防いだ時、空気の壁を作ったわけだが…防御するなら切島の個性(硬化)も使っときゃあ、より完璧に防御できた。俺に不意打ちした時も他の個性を併用すりゃあもっとダメージを与えられた。だがわざわざ手を戻してから別の個性を使い始めた…そしてテメェ、俺らの個性で使ったのは………()()()()()()()()()()()()()()だ」

 

粗暴な印象の爆豪には似ても似つかない論理的な説明。最後まで拝聴した物間は、嫌味ったらしい表情でパチパチと手を鳴らす

 

「スゴイねえ!ヴィランみたいな顔つきとは真反対のしっかりした良い説明!!でも………それを肯定してあげる義理なんてボクにはない。だってキミのポイント、もう取っちゃったし」

「取ったハチマキよりよ〜〜〜〜〜〜〜…テメー(自分)のハチマキの心配でもしろ……」

 

逃げる態勢の物間の騎馬とは対照的に、今からでも突撃しそうな雰囲気の爆豪の騎馬…

 

掌の上でボボボボと火花を散らしながら…爆豪は叫んだ

 

「──ブッ殺し()ってやっからよォッ!!」

 

再び飛びかかってくる爆豪に、物間は挑発的な笑みを浮かべた




本当は「その3」、ジョルノVS轟の騎馬戦の予定だったのですけど、そうなると爆豪の介入がすごく難しくなったんですよね。だから急遽内容を変更して、爆豪VS物間を間に差し込みました

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