「死ィィィねェェェッ!」
ヴィランみたいに物騒な絶叫と共に爆豪は物間に襲いかかる
「真正面からなんてバカだね!」
ビュルルルルル…
物間と円場、2人が作った空気壁が進行方向を防ぐ
BBOM!
「!」
だが、それを事前に予測していた爆豪は爆破による衝撃を利用した姿勢制御でアクロバットのように空中を舞い、物間の背後を取る
そのまま爆発の慣性を利用したローリングソバットを後頭部に向けて放つ
「マヌケはテメ─────だッ!」
ガキンッ
しかし、爆豪の蹴り抜いた脚に伝わったのは、硬い金属のような感触。鉄哲からコピーした「スティール」による防御だ
「ッつ…………!
「アッハッハ────!!やっぱりマヌケはキミだねェ──!こっちの手札も知らないのに無策で突っ込むなんて────!」
ガシィ!
「何!」
「一名様ごあんな〜〜〜……」
そして止まった爆豪の脚を、手首から先だけの手がガッチリつかんで勢いよくぶん回す
このバラバラになる個性『トカゲのしっぽ切り』の持ち主であり、物間チームの騎馬でもある女子……
「──いいいいい!!」
「ぐおおおお!!」
女にぶん投げられるという屈辱を怒りの咆哮で表現しながら明後日の方向へと飛ばされる爆豪。しかしすぐ爆破で体勢を立て直すと、瀬呂が出してきたテープを使って騎馬まで戻る
「ありゃ、場外までふっ飛ばそうとしたのに失敗した」
「いい調子だよ取陰。そのままネチネチ攻め続けてやってくれ」
「攻めるのはいいけど、ネチネチの部分は完全に物間の私怨でしょ」
クラスメイトのB組と言えど、物間の凄まじい嫌味っぷりには引くところがあるのだ
一方、爆豪は想像以上に攻めあぐねている事実に苛立ちを隠せないでいた
(パクリ野郎の能力は『個性のコピー』……本人の戦闘能力までコピーできるわけじゃあねえ。現に『爆破』も俺の方が数段使いこなしてる…だが…)
思い出すのは、「空気凝固」を使ってたはずの物間に「スティール」で綺麗にガードされた瞬間
(個性の切り替えが異様に
しかし、同時に
(それだけ個性の切り替えが上手いならもっと最適解の個性が使えたはずだ……やらねェっつー場合はこの俺をナメてるって事だからただじゃあ済まさねェが、できねェっつーンなら答えは2つ。「
「どっちにしろぶち殺すがよオオオ…………!」
敵意を一切隠さず唸りを上げる。だがそんな爆豪の状態を見ても、物間は飄々とした態度を崩さない
「おお、怖い怖い、本物のヴィランみたいだ……でもその程度だね。動物園の檻の中の
「なめやがって…」
「違うねッ!考え無しなキミたちが悪いのさッ!」
物間は腕を…どういった原理か分からないが、ドリルのように高速回転させながら前に出る。最後のメンバー、
「黒目ェ!弱めの溶解液を正面ンッ!」
「芦戸だってば!」
呼びかけに応じた芦戸は掌から『酸』によって生成した溶解液を物間の騎馬にバラまくが、物間と円場と回原によって防がれる
物間の個性切り替えの速度では、爆風で攻撃したところで別の個性に変えられてガードされるだけ。そう考えた爆豪は徒手のみで物間に対抗する
しかし、いかに爆豪が高い戦闘センスを持っていようと、個性の「ある」と「なし」の差は埋め難いものがあるのだ
ギャルギャルギャルッ!
「クソがッ!」
「障害物競走だけでは全ての能力を測れない!だからもうひとつ、ふるいにかける競技があるってことにはすぐ予想できた!そこがボクとキミの違いさ…力をセーブしないでバカみたいに目の前の
ビュォォ!
「! チィッ!」
短い攻防、その間を縫うように取陰の腕が爆豪に狙いを定める。爆豪は条件反射で体を反らして攻撃をかわしたが、その隙が攻め手に欠けていた物間にチャンスを与えてしまった
ドグシャァァ!
個性によって底上げされた威力のコークスクリューが、生々しい音を立てながら爆豪の体にメリ込む
「ガハ……!」
「ここでおまえたちは
そして勝利を確信した物間は、トドメの攻撃を振り下ろした
「勝ったッ!」
ガクン!
しかし直後…物間の視線が一段下がった。まるで階段を踏み外したかのように
「えッ」
ボギャァァァ!
「ぶべぁッ!」
そこにすかさず爆豪が肘鉄を物間の顔面に叩き込む
「!? え………!? !? !? ブガッ」
「さっきから黙ってきいてりゃあよ〜〜〜〜………てめー…」
爆豪が話し始めるが、物間は頭の中が混乱して半分も聞いていない
(何があった…!?ボクに何も起きてないということは騎馬か?しかし騎馬狙いはルール違反のはず!そうだとしたら、何故
「はっ!」
血が垂れる鼻を押さえながら下をチラリと見る……そこで物間は気づいた。この状況を引き起こした原因が何かを
ジュゥゥゥゥ……
(地面がッ!地面に穴が空いて、円場が片脚を踏み外している!)
「わ、悪い物間!いったい、いつこんな穴を…!」
(地面が溶け落ちている…!さっきやたらめったらに酸をばら撒いたのは、ヤケになったからじゃあない!!地面に穴を作るためだったんだ…ボクたちの騎馬が足を踏み外すために!そして逃げられなくするために!)
そう、すでに物間チームの周囲には囲むように穴がぽっかり空いており、脱出できない状況が出来上がっていたのだ
「力をセーブするだァ?ナメプ野郎みてーなこと言いやがってよォパクリ野郎………」
「3人とも!急いでコイツから離れ…」
シュバァァ──────ガッシィ!
「うっ!」
逃げようとするが、突如伸びてきたセロハンテープに物間の全身が拘束される。そして物間がストックしている個性では、この拘束から抜け出す手段は……皆無だ
「本気で1位ィ狙わねえ野郎がよ───…」
「や…やばいッ!」
そして目の前までやってきた爆豪の姿に、青ざめた物間は『スティール』で鋼鉄になる
だが………
「
「オラララララァァ───!!!」
BBBBBOOOOOM!!
「ぷぎょろばああああああッ!!?」
爆豪の苛烈な攻撃が空中に放り出された物間を襲い、その攻撃自体に耐えられても衝撃そのものが精神的に耐えられない
物間は即「スティール」が解除され、生身でラッシュと共に繰り出される爆破の嵐を受けた
ドグシャアッ!
「物間ァ───────!?」
2つの騎馬がすれ違った時には決着がつき、地面に叩き落とされた騎手の姿に円場が絶叫した
そして爆豪はぶちのめしたついでにブン奪った2つのハチマキを首にかけると、1位のジョルノを倒すために、振り返らずに騎馬を進めた
爆豪チーム──665Pと240Pを獲得。現在2位
物間チーム──