黄金体験のヒーローアカデミア   作:ジャギィ

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遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。今年もこのジャギィの小説をよろしくお願いしますね


騎馬の上の攻防 その5

ビシリ!ビシリ!ビシリ!

 

ジョルノの騎馬の真下にある植物のクッションに恐るべき氷結が迫る

 

ツタは表面に霜が降り、植物の芯まで温度を奪い、細く萎びた白い何かに変貌していく

 

『ゴールド・エクスペリエンス』ッ!」

 

凍結が本体(塩崎)に届く前に、ジョルノは手刀でツタの伸びた部分を切り離し、生命力が無くなり始めているツタから騎馬を離す

 

「なんつースピードで凍ってんだよ………ハァ──ハァ──……い、息が白い。俺たちの周りだけ真冬みてーに(さみ)いぞ…」

 

「スティール」を解除しないまま、ジワジワと白く染まっていく地面を踏みしめながら鉄哲は呟く

 

「俺は金属化すれば熱や冷気には強くなるから良いけどよォ………そっちは大丈夫なのか…?」

「いえ……ゴールド・Eが生み出す生命も『ツタ』も、ヤツ((轟))の氷とは極端に相性が悪い…」

 

チラリと騎馬の後方を見る

 

「そして…」

「ハァー………ハァー、ハァ、ハァ…ゲホッ」

 

髪であるちぎれたツタの先端が白く凍えている塩崎が、寒さに震えながら咳き込む

 

彼女()が戦闘不能寸前まで追い詰められているのが最悪なところだ。ただでさえ茨は大質量のツタの操作で消耗しています………ツタの大部分を凍らされた上、()()()()()()()()()()()()()()で周囲の空気を「冷却」された…今の彼女は「咳ぜん息」と似た状態になっています」

「咳ぜん息」?」

「急激に冷え込んだ空気を体内に取り込んだ時、気道が(せば)まることで起こるぜん息の事です…俗に言う「エアコン咳」ってやつですよ」

 

背後から聞こえる、ところどころ途切れる息。今の塩崎は戦力として数えられないほど消耗していた

 

「轟さん!絶縁体のシート、完成しましたッ!」

「絶縁体のシート……………!」

 

正面に陣取っていた轟チームの騎馬は大きなシートを覆いかぶっていた……唯一「上鳴」だけを除いて

 

「徹鐡!足元の『イバラのツタ』を!蹴り上げるんだ!!」

 

何をしてくるか察したジョルノは、即座に鉄哲に指示を出す

 

「シーツみたいなのをかぶりやがった…!何をする気だヤロ────!!」

「『前方に蹴り上げる』んですッ徹鐵!『ツタ』が完全に凍り切っていない今のうちにッ!」

 

急かすような言葉に反応して、表皮が白くなっている植物に鋼鉄のシュートをブチこむ。砂煙と植物が空に舞う

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!」

 

次々に宙に飛ぶツタの塊にゴールド・Eのラッシュを打ち込み、生命力を与える

 

グ グ グ……

 

だが、そのツタの塊から新たに生まれる生命の成長は著しく遅い

 

「ダ…ダメだ!空中だろうが周辺が冷え切ってることに変わりはねェンだぜ!?…間に合わない!」

「喰らえッ!!」

 

バリ バリ バリ!

 

直後、轟チームを中心に電撃が(ほとばし)り、周辺の騎馬全てに襲いかかる

 

ビシビシビシッ!

 

さらに電撃を食らって硬直している瞬間を狙っての凍結。電撃を食らった全てのチームが動きを封じられる。砂煙で影しか見えないが、確かに6本の脚を捕らえた

 

「これでジョバァーナのポイントを…」

 

だがその瞬間、轟の左側面から黄金の人型が突如姿を現す。紛れもなくそれは『ゴールド・E』だ

 

「なにッ!?」

「うェ〜〜い…」

 

轟の左後ろの騎馬は『帯電』を全開で使ったことで頭がショートし、一時的にアホになっている上鳴…防御は期待できない

 

(左側面…俺の氷の防御が遅れ、かつ個性の反動で動けない上鳴がいる側を狙って…!捨て身でハチマキを取りに来たのか!!マ、マズい!氷の防御が…ま、間に合わ……)

「無駄ァァ!」

 

鬼気迫る表情のゴールド・Eを見て、轟の思考が加速する。その時、脳裏に映ったのは………

 

 

 

涙を流す母さんと、あきれた表情でコチラを見下ろすクソ親父(エンデヴァー)の姿

 

 

 

ボワァァ!

 

するとゴールド・Eが殴り抜く直前、轟の()()()()()()()火炎がゴールド・Eを包む

 

「ぐああああ!!」

「ジョ、ジョルノ!?」

「やった!ダメージを与えましたわ!チャンスです轟さん!」

 

だが、八百万の言葉の返事が返ってこない

 

「轟さん?」

 

思わず轟の顔を八百万は覗き込み…そして驚く

 

「ハァー ハァー ハァー」

 

なぜなら、反撃をした轟の方が息を荒くしていたからだ。焦点の合っていない目で、自身の左手を見つめる

 

「轟さん!?どうしたのですか、轟さん!!」

 

異常に気付いた八百万は大声で呼びかけるが、轟は返事はおろか、反応すらしない

 

「八百万くん、それよりも周りに注意するんだ!!常に冷静な轟くんのことだ、すぐ元に戻るはずッ!ボクたちはそれまでにこのチャンスをものにする準備を…」

 

そこまで口にして、飯田は違和感に気づく

 

(待て…なにか変だ………おかしい!なぜ「影」の脚があんなに『細い』!?それにジョルノくんたちの騎馬が妙に高く見えるような…)

 

人の脚として見るには細い影。脚というより、まるで()()()()()()()貧弱さ…

 

「…き…『木の枝』……だと…?」

 

思わず出した例え………もし、それが『例え』でないのだとしたら?

 

「ま……まさかッ」

 

そして土煙が完全に晴れた先には……

 

「…徹鐡、作戦は分かっていますね…君には…負担を強いる事になりますが…」

「おう、ジョルノ…俺は『覚悟』を決めたぜ!!」

 

───1本の横倒しになった木の上で乱雑に伸びた枝のクッションに乗り、全体をツタで隙間なく、そして分厚く被ったジョルノの騎馬があった。その木を支える6本の枝は氷漬けになっている

 

「やっ…やられた!氷漬けにしたのは騎馬の脚じゃあない!ゴールド・Eで生み出した植物だ!」

「なぜ植物が…!?轟さんの氷結で、ジョバァーナさんは個性が使えないはず…!」

「ぼくの『ゴールド・E』」

 

動揺する2人にジョルノは語る

 

「君の言うように「適温」がなければ生命を生み出す事も成長させる事もできない…しかし、言い換えれば適温であればどんな生命も生み出せるということ」

 

そして2人は気づく。ツタのシェルターの中から見える、発目の手にある、背負ってたはずのジェットパックの噴出口が

 

「『サポートアイテム』ッ!」

「火力が高いのは本来考えものだが、今回はイイ感じに利用できましたね。周囲を温めることができました。もっとも…」

 

そう言うジョルノは轟を見る。未だ動揺してる様子が見て取れる轟は、荒い呼吸を続けながらジョルノを睨みつける。まるで、ナワバリを荒らされて怒り狂う、野生動物のように

 

「君のおかげで、ぼくは体を温める必要なんかなかったわけだが」

「ハァ ハァ ジョルノ…ジョバァーナァ……!!」

 

制限時間は残り1分

 

最後の攻防が始まる


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