……嬉しいです。でも想像以上の高評価に、プレッシャーで目ん玉からゲロはきそーです
「結果が出ましたッ!」
そこは全試験会場をモニタリングした広い部屋。暗い部屋の中でプレゼント・マイクを含めた数々の『ヒーロー』…即ち雄英の教師達が実技試験の結果を見ていた
「凄いな、この2位の子。敵Pだけでこれほどの点数を取るとは」
「私は8位の子が気に入ったわ。
「思わず「YEAHーッ!!」って叫んじまったぜ!!」
教師陣のメンバーはそれぞれ試験結果を見ながら驚嘆の声を上げる
「だが、とびきり凄いのはやはり…」
「ああ……『彼』だな」
そうして全員が見るモニターには、金髪のコロネを頭に乗せたような髪の少年が、これまた黄金の人型を操って0Pの頭をベコベコにする様子が映っていた
「ジョルノ・ジョバァーナ、熱情中学出身か…」
「ヴィランやヴィジランテの巣窟って言われる学校から
そう呟くのは長く白いマフラーのようなものを口元に巻くボサボサ頭の中年である
「マイクのスタートダッシュには即反応、仮想敵への迅速な対処、救助Pの存在を見破るズバ抜けた考察力、即席チームをまとめ上げるカリスマ、敵の弱点を見つける洞察力に危機的状況でも的確な作戦を組み立てる冷静さ…雄英でもまず見かけない金の卵だな」
「おおッ!イレイザーが絶賛するって珍しいな!」
イレイザーと呼ばれた男が下したジョルノの高評価にマイクが驚くが、イレイザーは目を細くする
「…だが、わざわざ怪我を負うリスクを背負ってまで破壊を選んだのは合理的ではないな。あいつの“個性”なら発電装置を破壊せずとも、生み出した木で関節を雁字搦めにして動きを止める事は容易だったはず。消耗するにしても、怪我をして動けなくなる可能性を考えれば………」
「『安心』してもらうために破壊したのさ!」
そんなイレイザーの考えを遮ったのはV字の金髪と筋骨隆々の肉体、画風が違うレベルで存在感がある男。「平和の象徴」「No. 1ヒーロー」の“オールマイト”だった
「動きを止めただけではまた動き出すかもと不安に駆られる……しかし目の前で倒したならばッ!?彼はそれを特に意識せずやってのけたのさ!!」
「……オールマイト、みんなが貴方のように強いわけではない。我々には我々のヒーローとしての自覚がある…」
「分かってるさ!相澤くん!」
「ハァ…」
相澤くんと呼ばれたイレイザーは、これから未来で起こるであろう受難を想像して、ため息を吐いた
「何にせよ、敵Pは65、救助Pは60、筆記も実技2位の爆豪と同点の1位。ジョバァーナは2位から大幅に点数を離して、ブッち切りで首席決定だ」
(ライバルは多い!しかし君ならやってのけると信じているぞッ!!緑谷少年!!私も全力でサポートする!!)
オールマイトは自身の後継者の姿を思い浮かべながら、これからの教員となる自分を奮起させるのだった
とぅるるるるる…とぅるるるるるん…
ガチャリ
「もしもし」
『よおジョルノ!!合格通知届いたかッ!?俺、合格出来たぜッ!!』
「…合格したのは分かりました。ですから、もう少し声のボリュームを下げてください」
『あ、ワリィ』
電話に出るなり、鉄哲の大音量が鼓膜を大きく振動させたのを感じて、ジョルノは少し顔をしかめた
ジョルノは試験終了後、実技試験をキッカケに鉄哲と塩崎の2人と連絡先を交換していた。他愛のない話をすることもあったが、ジョルノはそれを無駄とは思わなかった
『救助P、マジであったんだな!聞かされた時、俺本当にビックリしたんだ。スゲェーよジョルノは』
「いいじゃあないですかそんな事は。分かっていたところで、徹鐡と塩崎の協力がなければ、0Pの敵は撃破できなかったんですから」
『お前なァ〜〜〜……もっとこう、自慢したってバチは当たんねえと思うぜ。俺や塩崎を動かしたのは、間違いなくお前なんだからよォ』
「自慢したって敵を増やすだけですよ。敵が増えて、それに対する労力を考えれば吹聴するなんて無駄だ。2度も言わせないでくださいよ?」
『…お前って本当に無駄って言葉が好きだよな』
「キライですよ。無駄なんて」
呆れるようにそう言うジョルノに、徹鐡はまた言ってると返す
『先に塩崎に聞いたけど、あいつも合格してたってよォ。これで全員ヒーロー科ってことだ』
「ぼくの合否を聞いてないじゃあないですか」
『1番敵P稼いでたお前が合格してないわけねェーだろうが』
そう言われればそうなのだが、このまま鉄哲の思い通りというのが面白くないと感じたジョルノは、ある事を打ち明ける
「じゃあ合否のついでに教えておきます」
『アン?』
「ぼく、主席合格みたいです」
ガタタッ ガツン
電話越しで椅子が倒れる音と鈍い音が聞こえてきた。どうやら立ち上がった拍子にどこかぶつけたみたいだった
『〜〜〜〜ッ!!』
「大丈夫ですか?徹鐡」
『お前!お前ッ!それマジかよッ!?』
「本当ですよ。ウソだと思ったんですか?」
『逆だッ!!むしろ納得したね!!そっかあ〜〜〜1位合格!やっぱスゲェじゃあねえかジョルノ!』
「ありがとう」
鉄哲の、こうやって素直に祝福してくれる性格は、イイ人だなと思ったジョルノは礼を言う
「クラスですが、ぼくはA組みたいです」
『俺はB組だ。塩崎もB組なんだよな……なんかジョルノだけ仲間はずれにしてるみたいでイヤだな』
「同じ雄英で、ヒーロー科なんだからいいじゃあないか。これから3年間、嫌でも顔を合わせますよ」
『それもそうだなッ。じゃ、また雄英で会おうぜ!』
「ええ、また」
プッ
特に話すことがなくなったため、2人は通話を終わらせた
「……これからだ…ぼくは必ずヒーローになる…」
右手で首の背後に触れながらジョルノは決意を口にする
指先が触れた箇所には、くっきりと星型のアザが浮かんでいた