黄金体験のヒーローアカデミア   作:ジャギィ

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寒さがまだまだ続きますが私は元気です


焦凍 孤独の青春

轟炎司こと『エンデヴァー』という男は上昇志向の塊である。常にNo. 1を目指し、そのための努力・研鑽は一切厭わず、年間の事件・事故の解決数もトップ。まさにNo. 1ヒーローにふさわしい実績を持つ者と言えただろう…

 

『オールマイト』という存在がなければ──

 

エンデヴァーはいくら努力を積み重ねても超えることができぬ壁の存在に絶望した。彼は…ある1つの結論に思い至った。「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()」という結論に……………

 

『個性は親から子に遺伝して、引き継がれていくもの。エンデヴァー自身の能力「ヘルフレイム」の弱点を補う個性を持った女性と子を成せば、「ヘルフレイム」を上回る能力を持った子供が生まれる…』…この考えは「個性婚」と言われ、いわゆる血筋と能力に固執する前時代的な思想であった……しかしエンデヴァーの執念は凄まじかった。(れい)と呼ばれる女性の個性を得るために、彼女の親族を自身の名声と金で丸め込み、冷と婚約した

 

冷の意思はあったのか?それは当人以外には分からないことだ…

 

そしてエンデヴァーと冷の間に4人の子供が生まれた。そして4番目に生まれた子供こそが、エンデヴァーの望む能力を宿した『轟焦凍』であった

 

『兄さんたちなど見てどうする?見るな。あれ(兄と姉)はおまえとは違う世界の人間だ』

 

常にエンデヴァーはそう言い聞かせ、胃液を吐くほど壮絶な教育を幼い焦凍に対して行った

 

『もう5つだ!邪魔するな!!』

 

冷は必死に止めたが、エンデヴァーはその度に殴って黙らせる。子供が父親に恐怖を抱くのにそう時間はかからなかった…

 

 

そんないびつな日常が永遠に続くものなのか……?焦凍は、運命の『その日』をきっかけに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

その日、焦凍はリビングで祖母と電話している冷の姿を見つける

 

『お母さん…私ヘンなの…もうダメ。子供たちが…日に日にあの人に似てくる…焦凍の…あの子の左側が、時折とても醜く思えてしまうの。私…もう育てられない。()()()()()()()()()…!』

 

それは焦凍の知る儚さの中に美しさと優しさがある母親ではなく、今にも崩れ落ちそうなほど追い詰められた幽鬼のような母親であった

 

そして焦凍は、不幸にも扉の隙間から『顔の左側』だけをのぞかせて彼女に声をかけた

 

『お…母さん…?』

『───』

 

焦凍の左側を見た事で精神に限界が訪れた冷は…

 

 

バシャアアア!

 

 

 

手元にあったやかんの熱湯を、焦凍の左側に浴びせたのだ!!

 

 

 

冷は精神疾患を患ったとして強制的に入院することになった…

 

『焦凍にとって大事なこの時期に余計な事を…』

(よけい…?お父さんがお母さんをいじめてたからあんなことになったのに…『おまえ』のせいでお母さんが…!)

 

この日、母を苦しめた父に復讐することを、焦凍は5歳という若さで強く決意したのだ

 

恨みというエネルギーは時にすさまじいパワーを生み出すものだが、それを、10年間絶えず燃やし続けた執念が、皮肉にもエンデヴァーが望む優秀な力を(はぐく)んでしまったと言えよう…

 

轟焦凍にとって、自らの『個性』は、父親からもたらされた忌々しい呪い(『炎』)であると同時に、呪いに立ち向かう為の(『氷』)でもあるのだ

 

 

 

「…これが、俺の「過去」であり、誰が相手だろうと負けられない理由だ…」

「……………」

「……」

「…記憶の中の母さんは…いつも泣いてる。あんな男のくだらない「夢」の為に、今も病院で1人でいる…孤独だッ。だからこそ、()は使わねえ…母さんの()で1番になって、あいつを真っ向から否定してやるんだ…!」

「轟くん…」

 

轟の壮絶な過去を聞いた緑谷は絶句する

 

プロヒーロー、それもNo.2の子どもでさらに周囲とは一線を画す強個性を持つ轟。普通に考えれば順風満帆な人生そのものだ

 

だが轟が語ったのは、勝利に執着したエンデヴァーを否定するための人生を歩んできたというコールタールのようにドス黒い決意だった

 

(想像もつかないほど過酷な過去……ジョルノくんもそうだけど、まるで漫画の主人公のような…無個性で、諦めかけていて、ただただ周囲に恵まれていた()()の僕が…2人やかっちゃん、みんなよりも見せつけられるのだろうか?「僕が来た!」って…)

 

どう返せばいいのか、どう答えればいいのか分からず、頭の中をぐるぐる動かしていると…

 

「無駄だな」

 

突如、ジョルノは一言漏らした

 

「…なんだと?」

「そんな決意は無駄だと言ったんだ。あんたの人生のために言うけど……無駄はやめた方がいい」

「無駄だと…?どういう意味だ…!」

 

今の人生を形作っている決意を無駄の一言で片付けられた轟は怒りをにじませた表情で問いかける

 

「ぼくにさっき「DIOの息子」だと言ったのと同じさ…どこまで行ったって、何をやったって、あんたは「エンデヴァーの息子」だ。炎を使わずに1番になったところで周りはこう受け取る…「炎を使わずに勝つとは、さすがNo.2ヒーローの子どもだ」と」

「……!!」

「本当に復讐したいならヴィランになれば良かったんじゃあないか?最高傑作だと信じた子どもが、その“個性”で多くの人間を殺せば」

 

ガシィッ!

 

『それだけでエンデヴァーが築き上げた地位も信頼も全て失墜する』というセリフの続きをジョルノは言わなかった

 

なぜなら、轟が怒りを灯した目でジョルノの胸ぐらを掴んだからだ

 

「てめえッ………!!」

「まっ、落ち着いて轟くん!」

 

今にも殴りかかりそうな轟を緑谷は止める

 

「ジョルノくんも!今のは流石に…」

「熱情中学にいた時の担任の言葉なんだが…」

 

ジョルノに対しても叱責しようとする緑谷だが、遮るようにジョルノは言葉を口にする

 

「『『侮辱する』という行為に対しては殺人も許される』だったか?なるほど……本当に為になる言葉だ」

 

そしてジョルノは…轟を強く睨め付けた

 

「おまえはこの体育祭に全力で臨むぼくたち全員を『侮辱した』」

「ッ!」

 

その瞬間、ジョルノから凄まじいプレッシャーを感じた轟は思わず手を離す。言葉には強い重みを感じ、冷や汗が一雫垂れる

 

「あんたが復讐をするのはあんたの勝手だ」

 

服のシワを伸ばし、2人に背を向けて暗い通路の先を歩いていくジョルノ。最後に顔を轟に向けて言う

 

「でも、ぼくたちに簡単に勝てるとは思わない事だな」

 

最後にそう告げると、ジョルノは闇の先に消えた




ジョジョの擬音にピッタリなフォントが見つかんない…誰か心当たりありませんかね?

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