黄金体験のヒーローアカデミア   作:ジャギィ

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ジョルノVS心操 その2

スパァン!

 

最初は誰もが何が起きたのか分からなかった

 

手刀を振り下ろした姿勢のゴールド・E…勢いよく飛び散る血潮…そして、汗を流しながら顔を歪めるジョルノ

 

『キャアアア!!』

 

観客席から聞こえる悲鳴がその答えだ

 

「何やってんだテメェェ────!?」

「ぐううッ……!」

 

いきなり自傷行為を起こした痛みにうめくジョルノの姿を見て、心操は走り出そうとした脚をピタリと止めて絶叫する

 

『リストカットだアアアァッ!?何を血迷ったのかジョルノ・ジョバァーナ、開幕と同時に自分の手首を自分の“個性”で切り裂いたー!!い、いや、マジに何やってんのアイツ!?放送事故じゃあねえかこれ!』

『あのバカッ…!!』

 

これにはさすがの実況サイドの2人も…否、相澤は頭の中のどこかで、ジョルノが勝つ為に無茶をするのではないかと懸念はしていた

 

だが、その方法がリストカットなど、いったい誰が思いつくというのだろうか?

 

「君の個性は…強い衝撃か痛みが解除のきっかけとなる……………」

「…………!」

「これで『洗脳』は無力化された…」

 

ビチャ ビチャ ピチャ…

 

徐々に悪くなってゆく顔色の素を左手首から垂れ流し、コンクリートの床を赤く染めながら、ジョルノはゆっくりとした足取りで敵との距離を詰めてゆく

 

カツン…カツン…

 

「うッ…」

 

カツン…カツン…

 

「ううう………!」

 

目の前の、理解不能な行動を起こした敵に恐怖を感じた心操は、ジョルノが歩を進めるたびに後ずさる

 

そして………

 

ピッタァァァ────

 

『い、今にもッ!砂漠でさまよって枯れ果てた遭難者みてーにブッ倒れそうなグロッキー状態のジョルノが!!心操をステージの角まで追い詰めたァ!』

『人は未知の恐怖を体験すれば本能的に恐れる。…それを狙っているわけではないようだがな…』

 

マイクの解説通り、心操はステージ角ギリギリのところまで下がっていた

 

「ハァー ハァー ハァー」

 

そしてダメージを自ら負ったジョルノと、負傷こそしていないがその焦燥し切った心操の表情を見れば、どちらが追い詰められているのかは会場のだれが見ても明らかだ

 

「ハァー…クソッ…!何のつもりだおまえ…!」

 

いよいよ逃げられなくなった心操は、この状況を生み出した元凶に問い詰める

 

「わざわざ自分を傷つけなくても返事をしなければそれでいい…俺の“個性”はそういう能力なんだからな…!そうだ、テメェが手首を切る必要なんざ微塵もないことくらいッ!」

『返事』…」

 

ジョルノはボソリと呟く

 

「たしかに…君は敵だが…それと同時に、何かヤケになっているように感じた。目の前の断崖を前に諦め、捨て鉢に飛び込もうとする感覚…そして『返事』………」

 

確信するジョルノ

 

()()…「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「!!」

 

その言葉は、追い詰められた心操が心を乱すには十分すぎる確信だった

 

「普通の会話もできない洗脳の力を疎んだ」

「だまれッ………」

「だから「こんな“個性”を持った自分が悪い」のだと心の奥底で納得させた…」

「だまれェ!!」

 

やがて、その隠し続けていた醜い心を見たかのように語るジョルノへと、心操は羞恥と嫉妬と羨望がない交ぜになった心を爆発させ、右拳でヤケクソに殴りかかった

 

ガッシイィィ

 

「ぐっ!」

「……」

 

ブシッ! ポタ ポタ

 

それをゴールド・Eを使わずに左手で受け止める。吹き出た血が両者の間の床を濡らす

 

「勝つなら手首を切る必要なんて存在しない。君の言っていることは間違ってはいない…」

 

ここで心操に負ければ、ヒーローへの道は大きく遠ざかるだろう。ジョルノの道はそれほど険しく、過酷なものなのだから

 

しかし

 

「だが、このジョルノ・ジョバァーナには、正しいと信じる夢がある」

「………!」

 

ここで、自分ではどうしようもない痛み(個性)に苦しむ人間を救けなければ、永遠にジョルノが目指す「ヒーロー」にはなれないと、直感で理解していたのだ

 

だからこそ、彼に「希望」がある事を示さなければならないのだ

 

「ここにいる以上、君にも「夢」があるんじゃあないのか?」

「…うっ…うう…!」

 

右手が解放される。心操は小さく唸りながら拳を震わせて…

 

「うわあああ────────ッ!」

 

強く握りしめた右拳を振りかぶり、ジョルノを倒そうと決意した

 

「夢」を諦めたくなかったがゆえに

 

(いい目だ…)

 

それを見たジョルノは心の中で薄く微笑みながら

 

 

 

「無駄ァ!!」

「ぶがァ!?」

 

 

 

『選手宣誓通り』全力でブチのめした

 

『ゴールド・エクスペリエンス』の一撃を受けた心操は、軽い浮遊感を味わって間もなく背中から地面に落下した。コンクリートの「ステージ」ではなく、「地面」に

 

「………ハッ!し、心操くん、場外!!ジョルノくんの勝ち!!」

 

そのミッドナイトの宣言に、静まった会場が熱を取り戻すかのように沸き上がった

 

『決まったァァァー!!トンデもねースタートを切ったが、最初の勝者となったのはジョルノッ』

『オイ、ジョバァーナ…』

 

マイクが実況を続けようとしゃべるが、ドスのきいたA組担任の声がそれを遮る

 

『とりあえず早く保健室に行ってばあさん(リカバリーガール)から治療と輸血を受けさせてもらってこい。…それとこの体育祭が終わったら説教だ。覚悟しとけよ…!』

 

相澤の声音には、無茶をしたジョルノに対する「怒り」がありありと表現されていた

 

それをどう受け取ったのか、ジョルノはさわやかな笑顔を実況席に返し、そんなジョルノを見た相澤は両目の間を指で押さえながらため息を吐くのだった

 

次の試合に備えるべく保健室に向かおうとステージから降りようとすると

 

「なあ…」

「!」

 

左頬の痛みも気にせず心操が話しかけてきた

 

「なんですか?」

「おまえは…なんで『ヒーロー』になりたいんだ?」

 

ジョルノは「きっと君と同じですけど」と前置きし

 

「1人のヒーローにあこがれたからですよ」

 

そう伝え、今度こそジョルノはステージから去っていった

 

心操は澄み渡る青空…まるで今の自分の心のような…を眺めながら、ポツリと呟く

 

「…俺もだよ…」

 

 

 

ジョルノ・ジョバァーナ──勝利。1回戦突破

心操 人使──敗北。()()()()




単行本でジョルノのプロフィールに書かれているのですが「希望さえあればどんな所にでも たどりつけると決心している」とありました

だからジョルノは、心操に「希望」を与えたくて、あのような行動を取ったのです
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