「!」
ズアアア!
2度目の攻撃が緑谷の眼前から迫る。最初よりもさらに巨大な氷塊が空気を押し出して近づく中、緑谷は冷静に左手薬指に「ワン・フォー・オール」の100%のパワーを込め…
「スマッシュ!!」
グシャアア!
先ほどと同じように、超パワーの余波でコナゴナに破壊した
「まだだ…!!」
「…! スマッシュ!!」
変わらないパワーで生み出された凍える波を小指を犠牲に粉砕する
「ぐ…もう1度ッ!」
「スマッシュ…!!」
同じく人差し指で
「しつけェ…!!」
「スマァ────……ッシュ!!」
5回目の大質量も、左手の親指を弾き、暴力的な風圧で押し返す
『レンッ!ゾク!苛烈なまでに連続で攻め立てる轟とそれをガンガン防いでく緑谷ッ!ド派手なぶつかり合いだ──!!しかしコレ、緑谷ジリ貧じゃあねーか!?もつのか!?』
『いや、「もたない」……………
ガクンッ
相澤がそう口にした直後、轟は崩れ落ちて膝をつく
「ハァ ハァ ハァ…!?ハァ──ハァ───」
ガチ ガチ ガチ
全身に霜が降り、真っ白な息を吐き、ガタガタ震えるその姿は、まるで轟の周囲だけが真冬になったかのような異常な光景だった
『「最大火力で速攻で倒す」こと自体は合理的だ…しかし連発し続けるのはあまりにも不必要なこと…「砂場で作った山のトンネルを掘るのにダイナマイトがいる」か…?轟は致命的な『ミス』をした』
その言葉は轟の
「緑谷など敵ではない」という油断が、何より勝つことに
ダッ!
そうして動けない轟に向かって、緑谷は迷いのない瞳で走り出す
「くッ…!」
反射的に氷で防御する
バキャァ!
だが、先ほどの猛攻と比べれば、あまりにもろく、小さい氷壁は調整したワン・フォー・オールの一撃で簡単に砕かれる
「な…!」
「うおお──ッ!」
ドッカァ──ン!
「ガッ!」
そして…完全に接近した緑谷の頭突きが轟の顔面に直撃する
「うがぁああああっ!」
思わず白目を剥いて気絶しそうになるのを必死にこらえる轟だが、緑谷はお構いなしに、個性を使わず轟を殴り続ける
『さっきとは打って変わって、緑谷が轟を殴りまくるゥ──────ッ!!ラッシュ〜〜〜!!』
「ウオォォオオ──ッ!」
ドガ!ドガ!バキ!ドガ!バキ!ドガ!
普段は内気で臆病な緑谷が、人が変わったみたいに雄叫びをあげながらひたすら殴る
「君がッ!」
バン!
「炎を出すまで!」
ボガ!
「殴るのをやめないッ!」
グオオッ!
そして細くも筋肉質な右腕が振り上げられ
ドッガァァァン!
血飛沫と共に轟を殴り飛ばした
「ぐぁッ…!!」
派手な音を鳴らしながら地面に落下する轟。しこたま殴られ、整った顔は所々腫れあがっており、鼻血も出ていた
『轟ダウ─────ンンン!いい勝負するかもたァ思っていたが想像以上に緑谷が有利だ!!このまま決着つけちまうかァ!?』
「うぐッ……く…くそ……!」
鼻を押さえながら立ち上がる轟
それは、
もっとも………父親を心底嫌悪している轟本人からすれば、皮肉な事この上ないが
「焦凍オオオー!!何を躊躇している!「
その時、轟が今1番聞きたくない男の声が
「うるせェ…!!」
苛立ちを含んだセリフを吐き捨てる轟。緑谷は、そんな轟の体についた霜を指差す
「その『霜』…」
「………!」
「…君は触れた物から伝うように冷やして凍らせることができる個性だ…問答無用で相手を行動不能にできる強い能力…でも、個性は身体能力の延長線上の力。必ず『肉体』との綿密な『つながり』があるものなんだ…手で触れる必要があったり、使うたびに体のどこかに影響が出たり…」
すでに緑谷の中では結論が出ていた
「「氷」を出せば出すほど体の「温度」も一緒に下がっていく。そして限界が来ている…それが今の君の状態の理由ってわけだ」
「でも」と前置きし、続ける
「もうひとつの「炎」を出して体温を上げれば、君は再び「氷」が使えるようになる……いや……その理屈なら、炎を使って上がった体温を氷で冷やすことだってできるはず。互いのメリットとデメリットが見事にかみ合っていてほとんど『弱点』がない。『完璧な個性』……なるほど、エンデヴァーがそう力説するのも納得がいく」
「だから…なんだ…!!」
同じセリフを常日頃から言われているのだろうか?緑谷の推測を聞き終えた轟は血が滴るのも無視して、溜め込んだ怒りを爆発させる
「
「轟くんッ」
「俺が清算させてやるッ!オールマイトを越えるために生み出された俺がエンデヴァーを否定することで───」
轟が言えたのはそこまでだった。なぜなら緑谷が轟に歩み寄り…
「オラァ!!」
バキ!
「ぐお!?」
そのほおに拳を叩き込んだからだ
「…さっきから右側だけで勝つなんて言っているけど………僕を見てみろッ!僕はまだ君に、傷ひとつつけられちゃあいないぞ!」
地に伏せる轟に、緑谷は叫ぶ
「父親を否定したいだけならヒーローになる必要なんてどこにもない。でも…それでも、君がヒーローを目指すのは、純粋にヒーローになりたい君自身が、自分の中にいるからだろッ!?」
「違うッ!!」
「違わない!!」
轟の反論を即座に返し、さらに言い続ける
「ジョルノくんは自分がDIOの息子だって認めていたけど…ジョルノくんはDIOそのものじゃあないじゃあないか!『轟くん』だって同じだ!君はエンデヴァーの子どもだけど…『君』は『君』だッ!」
「ッ………俺はッ」
緑谷出久は14年間“無個性”だった
齢4歳の頃から始まった絶望の日々だったが、親から受け継いだ
だからこそ…怒鳴るような音量で叫んだ
「君の力じゃあないか!!」
ドクンッ
『なりたい自分に、なっていいんだよ』
脳裏によぎったのは……優しい母との昔の会話
ボワァッ!!
その瞬間、轟を隠すような火柱が立つ
「うわ!?」
飛び散る火の粉、強い熱風
「…ぶん殴るとか言っておいて敵に塩を送るって…どっちがふざけてるって話だ…」
「───…!」
…そして、火柱の中から現れたのは……
「俺だって…ヒーローに…!!」
心を凍てつかせていた氷を解かし、それを涙にして目尻から流す…薄くも笑みを浮かべる轟焦凍の姿だった