緑谷の予想外の反撃。それは観客を騒然をさせて、実況のプレゼント・マイクも困惑する
『なんだぁぁあああああ──!?轟がとどめを刺したかと思ったら緑谷反撃ィ!!つーか動きもエライ速くなってるしなんかバチバチしてねえかァ!?』
『今まで緑谷は…指だの腕だの、一部の部位だけに“個性”の
(もっとも…緑谷の様子からして、土壇場で思いついて、実行したみたいだがな…)
窮地をひっくり返す爆発力。個性把握試験でも見たそれは、緑谷の最大の武器なのだと相澤は思った
一方、緑谷も自分の体の変化に驚きを隠せずにいた
(で、できたッ!!成功したッ!!ジョルノくんはいつも「ゴールド・E」を自分の体から分身するように発動していた…「ゴールド・E」を体に重ねることで肉体の強化みたいなこともしていた…前例があったからイメージしやすかった!)
しかし、同時に全身からあふれる
(でも、フルカウルのコントロールが難しい…!全力を100%とするなら、フルカウルの出力は1%に届くかどうか…!)
「手加減をしていた」
不意に、轟がつぶやいた
「…ってわけじゃあなさそうだな…もっとも、おまえがそんな奴じゃあないってことは、この試合を通して理解できる…」
「……………!」
「しかし、勝つのは俺だッ…!」
炎と冷気のふたつがうずまく。もはや試合前の一方的な因縁はどうでもよく…
ゴバァァアアア!
先制を仕掛けたのは轟だ。炎が一直線に緑谷が立つ氷の柱を飲み込むが、回避した緑谷は別の氷塊の上にのる
(疲労もある…だから!倒れる前に倒すッ!)
ダンッ
稲妻のように緑谷は直進し、轟を
「オラァ!」
「ぐお…!」
しかし轟は腕でガード、体を反転させて敵を足元から一気に氷結させるが、すでにそこに緑谷はいない
「また逃がした…!」
「まだ…ッだァ!」
ヒット&アウェイに徹する緑谷は、再び轟を殴るべく距離を詰めようとし…
「ハッ!」
ゴアァァァ!
その直後、波のように広範囲に押し寄せる火炎が緑谷を覆い尽くす
「炎のコントロールはうまくねえが…単純に範囲を広げるだけの大雑把なものならできる…」
これならば殺傷力のある火力にはならないと轟がとった方法。緑谷はなす術なく酸欠状態になる…
「
「!」
いや、緑谷は無事だった。幾度と繰り返した攻防でボロボロになったステージ、その巨大なコンクリートの塊を盾にすることで、難を逃れたのだ
「チィ!」
ビシッ ビシシッ
しつこく耐える様子に苛立ちながらも、すかさず追撃の氷を地面に走らせる
ダッ!
緑谷は氷を避けながら轟の右側に回り込み
「オラッ!」
バキ!
「ぐう!」
その顔を殴り抜いた
『テレフォンパンチがヒット────!!』
マイクの実況が響き渡る
だが、緑谷にそれを聞いているヒマはなかった
「ううっ!」
ピキッ ピキキッ
なぜなら轟を殴った右腕が凍りついていたからだ
「右を使った直後なら凍らせる
ガシィ
そして今度は全身を凍らせようと、向き合う形で対峙する緑谷の左腕を、轟が右手で掴む
『轟、緑谷を掴んだァ!』
「そのまま凍りや」
ブォン
「オラァァ!」
「がぁ!?」
しかし、緑谷は残っていた、凍りついた右手で再び轟の顔を殴る。衝撃にやられ手を離す轟
(こ、凍った腕で…!?芯まで凍り切ってないとはいえ…イカれてんのかコイツ…!)
腕の氷が砕ける。破片が皮膚に食い込み、あるいは凍結した皮膚ごと破片が砕けて、緑谷の右上腕から血しぶきが飛び散る
そんな緑谷の状態を見た轟は、氷でステージの表面を覆う。冷気の行使が轟の体に霜を下ろす
「ハァー!ハァー!ハァー!」
「…無理やり「
左半身から吹き出す強い炎が空気を、轟の体を無理やり熱する
通常の体温を「ゼロ」とするなら───通常の体温よりも
それは轟にとっても捨て身の行動だった。いかに体温調整ができるようになったとはいえ、体温を高温・低温状態に繰り返し切り替えていては、人間の肉体はもたない
「だから───これで終わらせるッ…!」
再び眼前一面に広がる炎の
「く!」
緑谷はフルカウルで強化された脚力で高く跳び上がる
(必ず追撃が来る!でもこれほどの炎を使ったなら、次は氷ッ!「ワン・フォー・オール」で砕いて足場にすれば…)
ズアアアッ!!
だが、そんな緑谷の予想通り放たれた氷は…今までのどれよりも冷気のエネルギーが凝縮された特別な氷塊だった
「そ…そんな!?」
下を見れば、轟はすでに左半身を緑谷に向けられるよう攻撃の構えをとっている
例えどのように対処されても、確実にトドメをさせるように
(し、しまった…!これほどの氷のパワー………フルカウルで殴っても凍らせるスピードの方が早い!ワン・フォー・オールのフルパワーで砕いても、氷を足場に避けても、姿勢が崩れたところを炎で追撃される!!の…逃れられないのか…!?)
敗北の足跡がヒタヒタと聞こえてきたような気がした緑谷は、それでも何か方法がないか考えて…
(…いや待て!フルカウルで殴れば凍らされる…でも『凍らなければ』?氷結のスピードをも上回る速度で殴ってこの氷塊を掘り進めれば…逆に彼の懐に飛び込める!)
しかもその方法ならば、大出力の氷塊が緑谷と轟の間にあるため、追撃の炎の盾にもなり、緑谷が懐まで近づく時間を稼げる
(でも、今のフルカウルのパワーじゃあ足りないッ!!少しでも強く、少しでも速くしないと!4%…5%…いいや…)
グッ!
(
拳を握り、パワーを上げると悲鳴を上げる肉体の痛みをこらえて、緑谷は轟に立ち向かう
ワン・フォー・オール フルカウル
緑谷のパンチが氷塊の先端に触れ…
バッキャァァ!
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」
バキャア!バキン!バキャァン!
「な、なんだとォォ──────!!?」
それは普段、冷静で物静かな轟からは想像もできないほどの絶叫だった。それほどまでに轟は、緑谷の爆発力に驚愕していた
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ」
鬼気迫る表情で氷の中を砕き進み…やがて、砕けた氷壁が粉となって轟の体に降り注ぐ
「ッ───くらえ!!」
それでも轟は、冷静に体を動かし、炎を緑谷に向かって伸ばし…
「オラ───ッ!!!」
雄叫びと共に100%の右腕が、地面に向かって放たれて、炎をかき消す
「うおおおおおおお───っ!!」
パンチ1発で天候すらも変える「ワン・フォー・オール」のパワー…その余波に轟は耐えきれず吹き飛ばされ、
「あっ…」
審判のつぶやきがやけに耳に残る
「ハァー…ハァー…」
ぐぐぐ………ばっ!
全員が唖然と見守る中、緑谷は決して崩れ落ちず、拳を握りしめ……左腕を突き上げた
ワアアアァアアアア!!
瞬間、全観客席が湧き上がり、拍手が鳴り響く
決着がついたのであった
緑谷 出久──勝利。1回戦突破
轟 焦凍──敗北
winner 緑谷出久!
というわけで戦いを制したのは緑谷になりました。感想でどっちが勝つか分からないとありましたが…まあ勢いで書いたとこあります
実はもともとこの勝負、轟に勝たせる予定だったんですよね。でも書いてるうちにこっちもだんだん興奮してきちゃって…緑谷が勝った方がなんか熱い!って思ってたらこうなっちゃいました。それならそれで主人公対決でおいしいですからね
でも完全に燃え尽きた感じです…正直残りの試合をこれ以上熱く書ける気がしないです
書きたいこと書いたんでまたかなり間が空くかもしれませんが、楽しみに待っていてください
ではっ!