緑谷と八木の間に謎の共通点を見つけながらも答えが出ないまま、ジョルノは観客席にたどり着いた
「お、ジョルノが戻ってきた!」
「おかえりー!」
そこにはA、B組に分かれるように集まっているヒーロー科の面々がいた。切島の言葉に反応した芦戸が手を振って呼びかける
「ずいぶん戻ってくんのが遅かったな?」
「『治療』に時間がかかりましたからね」
「輸血だけでかァ?」
わざとぼかす言い方をして緑谷の治療を誤魔化すジョルノ。別にウソはついていないし、追及されれば面倒なことになると予想しての判断だった
「それで………勝ったのは彼ですか」
ジョルノの視線の先。そこには担架で運ばれていく疲労困憊な麗日と、珍しくも唖然と突っ立っている爆豪の姿があった
ステージの破損状況、しかし石片の数がかなり足りないこと、そして麗日の怪我が軽症なことから、“無重力”で大量に浮かせたガレキを隕石のように降らせたが“爆破”の圧倒的火力で全て粉砕され、その直後に麗日は力尽きたのだとジョルノは考えた
「おやおやおやおやおやァ〜〜〜?誰だと思ったら初戦でいきなり手首を切り裂いたジョルノ・ジョバァーナくんじゃあないかァァァ?」
「…どうも」
そう考え事をしていると、ねちっこくイヤミたっぷりな声でジョルノに話しかける物間がいた。どうやら挑発するためだけに話しかけてきた様子だ
返事をしながら彼の顔を見る。そして気になったので問いかける
「ところで、爆豪につけられた騎馬戦のキズ、さらにひどくなってませんか?」
「昼休み時にさらにボコられたんだよ!アーアーッヤダヤダ!ホンのちょっぴり何か言われただけで暴力なんてキミらってホント倫理観が欠けてるよねェ!特に目立つためにリストカットするキミとかと一緒くたにされると困るんだよねボクらァ!ボクらまでクレイジーな集団だと勘違いされたらぜーんぶキミのせ」
「あて身」
ドスッ
その時、1人の少女が物間の背後に立つと首筋に強烈なチョップを打ち込んだ
煽り製造機を物理的に黙らせると、白目を剥いた物間を「巨大な手」で端っこに放り込んで、長いオレンジ色の髪をサイドテールにした少女がジョルノに対して謝罪する
「あー、
「いえ、助かりました。君は?」
「
拳藤の自己紹介を聞いて、以前のマスコミ騒ぎの時に鉄哲が言ってた人のことだと理解した
『これで全ての第一回戦終了ゥー!!試合はご覧の通りだ!』
そんな中、プレゼント・マイクが巨大モニターを観客たちに見るよう促す。そこに記された結果は…
第一試合 ジョルノ⚪︎VS心操×
第二試合 緑谷⚪︎VS轟×
第三試合 塩崎⚪︎VS上鳴×
第四試合 飯田⚪︎VS発目×
第五試合 芦戸×VS瀬呂⚪︎
第六試合 常闇⚪︎VS八百万×
第七試合 鉄哲×VS切島⚪︎
第八試合 麗日×VS爆豪⚪︎
(だいたいは相性で勝てたようだな…例外があるとすれば第二試合と第五試合か…轟の“個性”の出力は言うまでもなく高い。となると、その攻撃を回避し続けたことになる…つまり「脚を増強した」と見ていい。芦戸さんの『酸』も、瀬呂の『テープ』を溶かせる以上、相性は良いのだが……全身から酸を吹き出せば自身の服を溶かすことにつながってしまう…ましてや服の上から拘束されれば…)
ジョルノはその試合結果を見て考え込む。まるで実際に見たかのような考察通り、芦戸と瀬呂のバトルはかなり白熱していたが、芦戸は女子故に恥を気にしてテープへの対処に躊躇した
結果、体操服の上からがんじがらめにされた芦戸は瀬呂に投げ飛ばされ、場外負けしたのであった
ちなみに切島VS鉄哲は策がカケラほどもないガチンコステゴロであったことをここに明記する。最終的に腕相撲で決着がついた
『さあ、次の試合は15分後だァ!!トイレ済ませんなら今の内にしとけよぉ!!』
「15分後かぁ」
「ジョバァーナくん、緑谷くんは試合に来ることができるのか?」
「体力が残っていれば」
飯田はジョルノに聞くが、望んだ答えが出なかったことからなんとも言えない表情をするが、ありがとうと礼を言うと席に座り直した
ザッ
「ジョバァーナ…」
直後、ジョルノの前に立つ者がいた。轟だった
「………」
静かに、しかし重みのある雰囲気で轟をジッと見るジョルノ
それを見たA組の面々は体育祭前の2人のやりとりから内心ヒヤヒヤとしており、事情を知らないB組もその雰囲気に緊張感が高まる。その場所だけ“個性”で時が遅くされたかのように、1分がとても長く感じる
そしてその膠着を破ったのは…轟の言葉だった
「スマなかった、ジョバァーナ」
申し訳なさそうに目線を下げ、轟が謝罪の言葉を告げる。A組のみんなが驚く中、言葉を続ける
「俺は確かにおまえを…みんなを『侮辱』していた。緑谷との戦いで激しく痛感した。思い知らされたんだ…本当にスマなかった」
「……ぼくには緑谷くんとの試合で何があったのかは知らないが…」
ジョルノはどこか優しげな眼差しで言う
「少なくとも、あんたにとって無駄な戦いではなかったようだな」
「…ああ………そうだ。…そうだな…」
それだけを伝えると、試合に向かおうとみんなに背を向ける。鉄哲や塩崎、A組のみんながジョルノに声援を送る
「頑張れよォジョルノ!!」
「悔いのないよう戦ってください」
「どっちも応援してるからねー!」
「ベストを尽くせ」
ジョルノは声援に対して振り返らず、観客席から離れながら、一言だけ呟いた
「グラッツェ」
「ハッ!」
ガバァ!
「おや?起きたのね」
同時刻。保健室にて緑谷出久は目を覚ます
清潔なベッドから跳ね上がるように覚醒した緑谷は、好調な自分の肉体に疑問を抱く
「怪我が治ってる…」
(保健室……ということは、リカバリーガールの“
ガララ…
その時、保健室の扉が開き、少女が1人入ってくる
「アッ…デ、デクくん…」
「!? う、うらら…」
麗日さん、と言おうとした緑谷は視線を入り口に向けて…そして硬直する
声の主である少女…麗日お茶子の全身にすり傷や見覚えのある焼け焦げた痕のようなものが多数あり、着ている体操服も同様の痕跡によってボロボロの一歩手前な状態であった
「そ…その傷…」
「アハハ……作戦通り戦えたんだけど、真正面から負けてしまった…強いなぁバクゴーくん」
その言葉から、自分が気絶してからかなり時間が経っていたことと麗日が爆豪に完膚なきまでに負けたことを理解した
「デクくんはすごいよね。あの轟くんと戦って勝っちゃったし、騎馬戦の時もデクくんがいたから私も決勝に進めた…」
「そんなことッ」
「1人じゃあ何もできんかった…悔しいなぁ…」
最初は愛想笑いを浮かべていた麗日も、徐々に顔をうつむかせる。そんな彼女の姿を見ると、なんだかイヤな気分になると感じた
そんな時、リカバリーガールが緑谷に言う
「そろそろ次の試合が始まる頃だよ緑谷」
「え?」
「……早く出て行ってあげな。あたしもちょっと用があるから、ここでゆっくりしてなさい」
「………!」
そこまで言われて、リカバリーガールが麗日を気遣ってやりなさいと伝えていることに気づいた
心配そうな視線を麗日に送るが、緑谷は「ありがとうございます!」とリカバリーガールに礼を言うと一緒に保健室から退室し、緑谷は待合室に、リカバリーガールは反対側の通路を歩く
「…うッ…うあぁぁ…ッヒグ……!」
保健室の中からうっすらと聞こえてくる嗚咽
慰めてあげることができない自分自身に歯痒さを感じながらも、緑谷はとにかく通路を進むのだった