『待たせたなァァァァァリスナー共ォ!!さっそくだが対戦カードを紹介してくぜ───!!』
マイクの熱狂的な実況に湧き上がる歓声。人々が見下ろす、コンクリートの正方形ステージの上には、金髪と緑髪の少年2人が対峙している
『ジョルノ・ジョバァーナ!VSゥゥゥ、緑谷出久!どっちも予選で1位取ってるヤツらだァ!どんなバトルになるんだろーなー!?みんな気になるか!?俺も気になるぜ!!』
爆音が会場の外まで響き渡る中、ジョルノは緑谷を静かに見つめる。それが緑谷にとっては非常に不気味だった
(朧げに覚えているのは…………リカバリーガールに治してもらう前に、だれかに触られた感触。そして
今の自身の不思議なまでに快調な肉体、その理由は、目の前の対戦相手なのだとなんとなく理解していた緑谷。だが、その理由までは思い至らない
(ダメだ。余計なこと…じゃあないけど、それでも今は考えるな!彼に勝つ…ジョルノくんに勝つ!)
その思考を頭の隅に置いておき、“ワン・フォー・オール”のパワーのコントロールに集中する
(フルカウル…!)
出力は………3%
バリ バリ バリ!
「ム…」
『そんじゃあ、レディィィィ…!』
全身に赤いラインが入った緑谷の姿にジョルノが反応する中、スタートの合図が出されて
『───ゴオオオオオッ!!』
ビュォ!
「スマッシュ!!」
開始と同時に、一気に距離を詰めた緑谷の先制パンチがジョルノに向かって放たれる
バシィィィンッ
「な…ッ!?」
「………」
そしてその攻撃は、“ゴールド・エクスペリエンス”の右手で容易くキャッチされた
『おおっとぉ!緑谷が先制攻撃を仕掛けるも、これを軽く受け止めるジョルノ!余裕って感じだぜ!』
「く…!オラァ!!」
ビュ!
もう1度渾身の拳を打つも、ゴールド・Eは軽く顔を動かして避ける
「オラ!」
ビュォ!
避ける
「オラオラオラッ!」
ならばと両腕を振り、パワーとスピードを兼ね備えたラッシュで攻撃を試みる
「フ!」
ガーン!ガーン!
だがジョルノはゴールド・Eを操作して、凄まじい速さでラッシュを見切り、2発の拳で緑谷のスピードラッシュを止める
「ぐぅ!?」
「
直後───黄金の弾幕が緑谷の視界を埋め尽くす
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無無駄無駄駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!」
「ッ─オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」
ガン! ガン! ガン! ガン! ガン!
ゴールド・Eに対抗するために緑谷も全身を使って腕を動かす。大きく、激しく、拳のぶつかり合う音が数秒続き…
「無駄ッ!」
バッキィィィィ
「ぶぐぅ!?」
ラッシュ対決を制したのはゴールド・Eだ。現時点でパワーもスピードも大きく劣っている緑谷ではゴールド・Eの攻撃に対抗できず、なおかつ反撃が一瞬遅れたこともあって、ラッシュの合間に打ち込まれた左ジャブが緑谷の右頬を捉えたのだ
2回ほど地面の上を転がる緑谷。痛みに悶えながらも起き上がり、膝立ちの状態で敵の姿を見据える
「ゲホッ、ゲホッ」
『圧!倒!激しい攻撃をさばき、反撃のラッシュを制したジョルノのパンチが緑谷にクリーンヒットォォ──────!!』
『一見、生身で戦わないという点でジョバァーナが有利なように見えるが、「ゴールド・E」のダメージは本体に帰ってくる以上、この戦いはある意味「増強系個性」同士の殴り合いとも言える。つまり…今の攻防で、ジョバァーナがどれだけ緑谷より上をいってるのかがよく分かる』
『真正面から勝ててるってことは、それだけ個性が強く、個性の練度も高いってことだからな!』
そう、「ゴールド・エクスペリエンス」は能力頼りの個性では決してない
パワーとスピードがあるということはそれだけ本体が「ゴールド・E」の動きに慣れておかなければならず、生命を生み出す能力も、その多様性を遺憾なく発揮するにはジョルノ自身の広く深い知識が必要になってくるのだ
「なるほど……脚だけじゃあなく全身を強化したのか…それなら
(ダメだ、今の『ワン・フォー・オール』のパワーじゃあ勝てない!でもこれ以上出力を上げて、轟くんの時みたいにコントロールできるのか…!?や、やるしかない…!)
決意を決めた緑谷はさらに多くの
(ワン・フォー・オール フルカウル……5%!!)
バリ バリ バリ!
(機動力!それだけが唯一ジョルノくんに対抗できる要素だ!でも轟くんが出した氷がある時と違って、平坦な今のフィールドじゃあそれもうまく活かせない…!とりあえず距離を取──)
その直後である。攻撃モーションに入った『ゴールド・E』が緑谷の目の前に現れたのは
「!? まず──」
「無駄ァァ!!」
無駄のない体捌きから放たれたパンチが緑谷の右足に直進する
「ウ」
このままでは足がやられる……そう悟った緑谷だが、その時彼は避けるそぶりを一切見せず…
「オオオオオオ!!」
ドッギャァァァァァ!
人が日常的に使用している「筋肉」は「
蹴りは拳の一撃の約3倍のパワーを持っているとされ、足の骨を砕かぬよう加減していた「ゴールド・E」のパンチは、緑谷の必死のキックによって押し返されたのだ
「…!!」
拳が右足の甲から離れる。思わぬ反撃にジョルノ自身の手に痛みがやってくるが、手痛い反撃を受けてなお、緑谷に近づく
緑谷は一定の距離を保とうと足を動かし
グィィー
「う!?」
しかし、足は地面から離れることができなかった
ガシィ! グググゥ…
「く…靴が!」
(植物のツタになって…コンクリートをも貫通して、足を地面に縫い付けている…!)
そう、ジョルノの真の狙いは足を負傷させることではなく、緑谷の靴に生命を与えることで動きを封じることだった
完全に混乱した緑谷は無理やりツタを引きちぎろうと足を引っ張るが…「二手」遅かった
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!」
ゴールド・エクスペリエンスのラッシュ突きが緑谷の全身を打ちつけた
「ッ───!!」
強烈な痛みが宙を浮く感覚を上書きし、そのまま緑谷の肉体をステージの外に叩きつけた
『決まったァ───!!勝利したのはジョルノ・ジョバァーナだァァ!!短いがケッコー白熱とした試合だったぜ!!勝ったジョルノにも健闘した緑谷にも拍手ゥ───!!』
ワアアァ────!!!
拍手と歓声を最後に、緑谷の意識は遠のいた
試合が終わってから10分後…
「ハッ!」
ガバァ!
「あ、起きた!」
(あれ、なんかデジャヴ…)
保健室の清潔なベッドで起き上がった緑谷は奇妙な既視感を感じた
「大丈夫?デクくん」
「う、麗日さん…」
違うところがあるとすれば、リカバリーガールの代わりに麗日お茶子がいることだろう
「リカバリーガールは…?」
「薬を取りに行くって」
体を動かせば、鈍い痛みが残っている。そしてなぜ自分が保健室にいるのか、その理由を理解する
(そっか、僕はジョルノくんと戦ったんだ…そして負けた…完璧に負けたんだ…)
そう思い返していると、そんな緑谷の顔を見た麗日は、あることに気づき驚く
「デ、デクくん、大丈夫!?もしかして、まだどこか痛かったりする?」
「え…?き、急にどうしたの麗日さん?」
「だって」
明らかにオロオロしている麗日の姿に疑問符を浮かべるが、麗日はその答えを口にする
「だって……デクくん、泣いてる…」
「えっ」
ボロ ボロ…
緑谷はそう指摘されて、ようやく自分が涙を流している事実に気づく
「な、なんで…おかしいな、アレ…?」
手で流れる涙を拭うが、大粒の雫は止めることなくポロポロとこぼれ落ちる
「ゴ、ゴメン麗日さん、僕なら大丈夫…」
顔を隠しながら緑谷は謝る
ギュ…
その時、麗日が緑谷の頭を胸に抱えるようにそっと抱きしめた
一瞬何が起きてるのか、女の子に抱きしめられているというとんでもなくあり得ない現実に思考停止しかけるが…
「大丈夫。私にもその気持ち、分かるから…」
「………!」
そう優しく言われて、抑えていた感情が溢れ出た時…緑谷は自分がなぜ泣いていたのかが分かった
「う、うう」
全力でぶつかって、真正面から戦って、それでも完膚なきまでに敗北した
「ううううう」
それは、緑谷出久が人生で初めて味わった、「挫折」でも、「諦め」でもない
「うああああああ!!」
「悔しい」という思いだった
ジョルノ・ジョバァーナ──勝利。2回戦突破
緑谷出久──敗北。