黄金体験のヒーローアカデミア   作:ジャギィ

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なんだが筆がのーる♪のりのりの〜りのり♪


無情なるイレイザーヘッド その1

ジョルノ・ジョバァーナは、再び雄英高校の前に立っていた。ただし、今度は受験生ではなく、新しい生徒としてだ

 

雄英の白い制服を、首元までぴっちりボタンを閉めてもジョルノは平然としているが、その独特過ぎる金髪の髪型が周囲の視線を集めていた

 

「おぉ〜〜〜〜いッ!!ジョルノォ!」

 

するとジョルノに向かって大声で叫ぶ存在が

 

「おはようございます、徹鐡、塩崎」

「おう!会うのは試験以来だな!」

「お久しぶりです、ジョバァーナさん」

 

声の方を見れば、同じく雄英高校の制服を着込む鉄哲と塩崎が一緒に歩いてきた。2人は駅で先に出会っていたのだった

 

合流した3人は校舎の中に入っていく

 

「しかし、ジョルノの『ゴールド・E』って色々できてズリィよな〜〜」

「ズルくないですよ」

「いやいや、普通に破壊力とスピードのある幽霊を自由に操れるだけでもツエーのに、さらに動物や植物を生み出せるってヤバいだろッ。どっちか1つでもツエーのが、2つ合わさったら、そりゃズリーに決まってんだろ」

「確かに、ジョバァーナさんの個性は私の個性と同じ事も出来ますから、強いとは思います」

 

否定するジョルノだが、鉄哲も塩崎もゴールド・Eが強いと主張して曲げない

 

「言っておくけど、ぼくの『ゴールド・E』は、色々できても徹鐡のように耐え続ける事は出来ませんし、塩崎ほど多くかつ早く植物を生み出す事は出来ません。それに、ゴールド・Eにだって弱点があるから、無敵って訳じゃあないんですよ」

「あんなに強いのに弱点があるのか…」

 

『ゴールド・E』にも当然弱点があることを知った2人は意外そうに頷いた

 

「そういえばジョバァーナさん、改めて首席代表、おめでとうございます」

「ありがとう、塩崎」

「お前が俺たちの代表みてェなモンだからなッ!頑張れよ!」

「ええ」

 

雑談をしながら歩いていると、先に鉄哲と塩崎が在籍する事になるB組に辿り着いた

 

「じゃあな。入学式で会うだろうからよォー」

「お互い、学びに励みましょう」

 

別れの言葉を告げて2人は教室に入っていった。見送ったジョルノはそこから少し歩くと、ヒーロー科A組の教室前に着いた

 

まず目についたのが巨大なドア

 

「優に3mはあるな…異形型の“個性”を持つものは200cmを超える者も多い。その為の配慮か」

 

そしてドアを開けて教室の中を見た

 

中にはすでに他の生徒が全員集まっていて、しかし多くが他の者と会話しているから、入ってくるジョルノに気づくのは少数だった

 

「………?」

 

そんな中、ジョルノは教卓の裏側に存在する寝袋に気づく

 

(寝袋…?)

 

寝袋を観察していると、急に寝袋がモゾモゾ動き出し、中から飲料ゼリーのパッケージを咥えた無精髭の小汚い男が出てきた

 

「お友達ごっこなら他所(よそ)でしろ」

 

ヂュッ

 

()()()()()()()()()()

(((なんかいるッ!!!)))

 

教卓の前に立つ謎の男の登場にA組生徒全員(ジョルノなどの数人除き)が驚く

 

「はい、静かになるのに9秒かかりました。時間は有限、君達は「合理性」に欠くね」

(((なんだこの人)))

 

不審人物に急に批評されて、思わず真顔になってしまうA組生徒諸君

 

「………………」

 

しかし、ちょうど不審人物の横にはジョルノ・ジョバァーナがいたのだ。その目は胡散臭そうなものを見る目だ

 

「あんた、誰です?」

(((言った!!!)))

 

ズバッと聞いてきたジョルノの言葉が生徒全員の心の声だった。別にシビれも憧れもしないが、素直に凄いヤツだなと何人かは思った

 

そんなジョルノの質問を、ボサボサ男は責めるような目で返した

 

「口の利き方がなってないな。教師には敬意を払え……それが社会のルールだ」

「教師!?」

 

男の言葉に驚いたのは丸っとした顔が特徴の女子生徒、麗日(うららか)茶子(ちゃこ)

 

「君達の担任の相澤消太だ。よろしくね」

「教師…?てことは、ヒーローって事だよな…?」

「でも、あんな人知らないぞ」

 

雄英高校の教師は、校長を除いた全員がプロとして名の知られているヒーローばかりである

 

しかし、目の前の相澤と名乗った教師の容姿はヒーローとしてまるで心当たりがなかった。この教室一のヒーローオタクも思い出せないレベルである

 

「早速だが、全員これ着てグラウンドに出ろ」

 

そう言って相澤が用意したのは、クラス全員分、21着の体操服だった

 

「男子は隣の空き教室で着替えろ。10分以内に来るように」

 

それだけ言うと相澤は寝袋を抱えたまま教室から出ていった。急な指示に、殆どが唖然としている

 

コツ コツ

 

ジョルノは体操服を1着取ると、そのまま静かに教室から出る。それを見たメガネをかけた長身の男子がジョルノに声をかける

 

「君!一体どこに行く気だ!?」

「隣の教室ですよ。言ってたじゃあないか、10分以内に着替えてグラウンドに来いって。まさかそのまま立ち尽くしてるつもりですか?」

「ム、確かにその通りだが…」

「無駄な事を考えてる暇があったら、早く行動するべきなんだ」

 

忠告だけ残して、ジョルノは教室から出ていった。残りの男子生徒たちも、流れるように教室から出ていくのだった

 

 

 

()()()()()()()ォッ!?』

 

10分後、グラウンドで素っ頓狂な声をあげたのは一部を除いたA組一同だ。色々な器具を用意している相澤は、体操服に着替えたA組全員に対して個性を使ったテストを行う事を宣告したのだ

 

「入学式は!?ガイダンスは!?」

 

抗議の声を出す麗日だが、相澤は取りつく島もない

 

「ヒーローにそんな()()()()をしている時間はない。雄英は“自由な校風”が売り文句………『先生側』もまた然り」

「…なるほど。つまりこれはそっち(学校)が出す、最初の壁って訳ですか」

 

相澤の言葉に1人納得したジョルノが呟く。そしてその呟きで周囲の生徒の視線がジョルノに集まる

 

「そういうことだ。とりあえず入試試験1位のジョバァーナ、こっちに来い」

「ンだとォ…ッ!?」

 

入試1位という言葉に過剰な反応を見せたのは、ヴィランと言っても通用する形相でジョルノを睨みつけている爆豪(ばくごう) 勝己(かつき)だった

 

そんな爆豪の強烈な視線を、興味のないジョルノは無視して相澤の方へ向かう。なお、強烈な視線は爆裂と形容できそうな視線に変わったが相澤も特に気にしていない

 

相澤は近づいたジョルノになにやら特殊なソフトボールを投げ渡すと、地面のサークルを指差し言う

 

「お前、中学の時のソフトボール投げ、記録は?」

「……48mくらいですね」

「あのサークルの中に入って、ソフトボール投げをしろ…ただし、“個性”を使ってだ」

『なッ!?』

 

A組のみんなが驚くが無理もない。“個性”の使用は法律で厳しく定められている。今まで“個性”を縛られて生きてきた者からすれば、相澤の言動は驚きを値する

 

そして相澤に指示されたジョルノはサークルの中に入る。しかし一向にボールを投げるそぶりを見せないので相澤が眉をひそめていると、ジョルノは振り返ってこう尋ねた

 

「先生……「どんな手段で飛ばしてもいい」って事ですね?“個性”を使うということは」

「……サークルから出なければな……」

 

答えを聞いたジョルノは改めて前を向く

 

グニュ グニュウ

 

「え!?」

「クルックー」

 

すると、特殊ボールが縫い目に合わせて展開して、そのまま翼を広げた鳩に姿を変えた

 

「なにあれ!?鳩になったよ!」

「一体どんな“個性”なんだ…!?」

 

20人の生徒が目を疑っている中、ジョルノは指示を出して鳩を空高く飛び立たせた

 

グングン高度をあげて街の向こうへ飛んでいくが、点に見えるようになってもまだ飛んでいた

 

「…ジョバァーナ、あの鳩はどこまで飛ぶんだ?」

「さあ?能力の射程距離を自分で調べた時は限界が分かりませんでしたから……でも、1度3km以上離れた街に飛ばしても全然平気だったので、多分まだ飛ばせると思います」

「………」

 

ピッ

 

相澤は握った測定器を全員に見せる。そこには「∞」と記録されていた

 

「無限ッ!?」

「そんなのあんの!?」

「いきなりヤベェー記録出たぞ!」

「面白そォー!!流石雄英!!」

 

開幕からの圧倒的な記録にほぼ半数以上が沸き立つ。ちなみに、そのほぼに入ってないうちの1人である爆豪は、信じられないといった風に目を見開いていた

 

そして、相澤はそんな生徒達の浮ついた雰囲気を許さない

 

「…()()()()、か。ウチ(雄英)のヒーロー科に入っておきながら、そんな腹づもりで3年間過ごす気か?」

「え?」

 

相澤は少し考えると、掌の上に拳をポンっと乗せる

 

「よし。それじゃあトータル成績最下位の者は見込みなしと判断……「除籍処分」としよう」

『…ハアアァァァァッ!!?』

 

相澤の告げた無情な宣告。それを聞いた生徒たちは、一斉に信じられないといった風に叫んだ

 

「生徒の如何は先生の“自由”……」

 

が、撤回する気はさらさらない

 

「これが、雄英のヒーロー科だ」

 

相澤のやるという『スゴ味』を感じ取ったジョルノは、こめかみに一滴の汗を垂らしながらも、静かに微笑んだ


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