ヴィラン連合…正確にはその中核である死柄木と黒霧が拠点としている薄暗いバー
ガリ ガリ ガリ
気だるそうな雰囲気でイスに座る死柄木の目の前にあるテレビ……そこには雄英体育祭の様子が生放送されていた
ガリ ガリ ガリ
そして、最後の競技であるトーナメント戦で今現在戦っているのは、自分の恩師が気にかける金髪の子供と、USJ襲撃の際に邪魔をしたオールマイト並みのパワーを持つ緑髪の子供…
バキャァァァン!
直後、カウンターの上にあった酒瓶やグラスを裏拳で殴り壊す。“崩壊”で破壊しないことからかなり心が荒れ狂ってるのが理解できる
巻き添えを食らった他の酒瓶やグラスも宙を舞って床に落下する──
パッシィィィ
…のを、黒霧がギリギリでキャッチする
「随分と荒れていますね。死柄木」
「…ああ…なんだろうなぁ…」
テレビの中で歓声を受けているあの2人を見ると、海水の底で沈澱したヘドロのようなドス黒い狂気が湧き上がってくる
体を掻きむしる手が止まらない。奴らを見れば見るほど、不愉快なかゆみと奇妙な感覚が体に表れる
「あいつらを見ているとムカつくなぁ……」
首の後ろをより強い力で掻きむしりながら呟く
「あの、いかにも「希望」に満ち溢れている顔を…ゲドゲドの恐怖面に変えて」
ガリ ガリ ガリ
──壊したいなぁ…
そんな、あらゆる者が目を背けたくなるほどの闇を垣間見せる死柄木の背後にある大きなモニター
『いいね…成長している。楽しみだよ…』
そこに映る『口元以外の顔が潰れた』男は、明日のピクニックを待ちきれない子供のような気持ちで、しかし邪悪に唇を歪ませながら嗤った
教え子を、邪悪の血筋より生まれた者を見ながら…
『君の息子の成長が楽しみだよ………DIO』
その手のひらの上の黄金の『矢』に触れながら
一方、雄英体育祭会場では…
『ラストのトーナメント戦もいよいよ大詰めとなってきたぜ!勝ち上がった4人ッ!その中から決勝に進むのはいったい誰か!?それを決める戦いが今から始まるゥゥゥゥゥ!!』
ワアァァァァァァ!!
マイクの言葉で会場は盛り上がり、湧き立つ観客たちの前に2人の生徒が入場する
『さあ〜準決勝開幕だァ!選手はこの2人!ジョルノ・ジョバァァァァーッナ!!VSゥ!塩崎ィィィ茨だァァァー!!』
ステージ上に上がり、友と対面するジョルノ。少しすると体を半回転させて、ヒーロー科が集まっている観客席の方へ目を向ける
「ジョルノさん」
「………」
塩崎が目を閉じて語りかける。首だけ動かして振り向き、静かな姿勢で彼女の言葉に耳を傾ける
「私、あなたの事を、出会って短いですが大切な友人と思っています」
「ぼくも…君や徹鐵や峰田には感謝しています」
ジョルノの素直な気持ちに笑みを浮かべる塩崎
だが次の瞬間、おっとりとした彼女には似つかわしくないほどの闘志が、開かれた眼の中で燃え上がる
「
シュルル シュルルル
「「
髪のイバラが伸びて彼女の周囲で波打つ
その時、ジョルノは違和感に気づく
(…?なんだ?特に変化があるわけではないはずだ…でも、雰囲気や言動などの内面的な事ではない。いつもの彼女とどこか違うということだけが感覚で分かる。これが「策」ということか…)
この違和感の正体を暴けなければ負ける。そんな奇妙な確信がジョルノにはあった
『みんな早く見たいか〜?見たいよなぁぁぁ〜?俺もだッ!だから…』
そして…その時がやってくる
『準決勝……スタァァァ───ットォ!!』
ドバアアア!
開幕と同時に前面から薄い緑色の波が押し寄せてくる。それに対してジョルノが取った行動は……
「『ゴールド・エクスペリエンスッ』!!」
──迎撃ッ!!
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!」
ドゴォ! メキョ! メキィ!
分厚く、長いツタの壁をゴールド・Eのラッシュが押し返し、ブチ抜き、吹き飛ばす
道が開けたことでゴールド・Eと共に塩崎の方へ一気に突き進むジョルノ。その動きを封じようと側面からツタが数本伸びるが
ガシィ ブヂィ!
周囲に漂っていたジョルノの分身がそのツタを掴み、腕力に任せて引きちぎった
「無駄ァ──!!」
そしてそのまま、ちぎったツタを握りしめた右手で、塩崎に攻撃すべく大きく突き出した
しかし、それを想定していない塩崎ではなかった!
ズッボォォォ
「! ツタの盾…」
ゴールド・Eの拳を防いだのは、塩崎を覆うほど大きなツタの盾だった。ただ大きいだけではなく、自動車を瞬く間にスクラップにできるゴールド・Eの一撃を防ぐほど分厚い盾であった
ギュウウウウウ…
そして、同時に捕らえたゴールド・Eの腕を、イバラのツタで強く圧迫する
「ぐッ…!」
痛みのフィードバックを受けたジョルノは、急いでゴールド・Eの腕をツタの盾から抜き出した。圧迫された腕はイバラの棘によって傷を負い、本体の右腕からも出血が起こる
見れば、本体まで切り拓いた道は膨大なツタで塞がれ、試合前と同じ状況に陥ってしまっている
(いや…右腕の負傷、そして茨の消耗具合を考えれば、こちらが不利な状況になったといえる…何よりツタの物量で迫られれば、時間が経つほど形勢を覆せなくなっていく…)
冷静に分析するジョルノ。思考の果てに至った結論、いかに効率よく彼女のツタをダメージを抑えて消耗させるか…それが肝要だった
ドビュゥ!
直後、緑色のツタが束になって叩きつけるようにジョルノに襲いかかってくる
「無駄!」
ドン! ドン!
その束にゴールド・Eのパンチが直撃し、同時に生命エネルギーをツタに流し込む。すると…
グググ…ボロ ボロ ボロ…
急激な速度でツタが成長を始め、しかし次第にそのツタは老いるように活力とツヤを失い、やがて減速しながら朽ち果てていった
「『ゴールド・E』…どんな生命も成長の果てに老いて死ぬ…君のツタに生命エネルギーを流し続けて枯れさせた。髪がツタの君には申し訳ないことをするが……今から襲ってくるツタは、すべて枯らして朽ちさせる」
ビュオォ!
さっきより細いツタが高速で側面から迫る
「無駄ッ!」
ズギュン! ズギュン!
それを同じように「ゴールド・E」の拳を介して生命エネルギーを流して枯れるまで成長させる
グググ…
「………」
しかし、さっき以上に生命エネルギーを流し込んでいるはずなのにツタのイバラは枯れるどころか…
「な…」
グオオオ!
「なにィイイイイイ!?」
より太く、頑丈に成長してジョルノに襲いかかる!
ドグシャァァ!
「うぐァッ!!」
天然の鞭でゴールド・Eごとしたたかに打ち付けられたジョルノは、勢いよく吹っ飛ばされ、コンクリートの上に倒れる
『うおおお!?信じらんねェモン見ちまったぜッ!まさかのジョルノがダウゥゥーン!!』
「く…!」
ハァー ハァー
吐き出された息を取り込みながら、ジョルノは塩崎を守るツタと、攻撃してきた太く成長したツタを観察し…そして理解した
「そ…そうか…!」
なぜ、ツタが最初と違い、枯れず成長を続けたのか
「どんな生命も、生まれた時は皮膚が厚くなかったり色素が薄かったりする…人間や動物の赤ん坊が赤みの強い体色をしているのは、皮膚が薄く血の色が表面に出やすいから…植物も体内の葉緑素が少なければ、それだけ葉や茎の色も薄くなる…成長につれて光合成に必要な葉緑素が増え、それだけ色濃くなっていく…」
目の前の大きく成長したツタは鮮やかと言えるほど『濃い緑色』に
「普段から彼女を見ていなければ気づけないほどの些細な変化!」
一方、塩崎を中心にうねるツタの色が…ほとんど『薄い緑色』であった
「そうだ…茨の髪のツタの「色」が薄くなっている!」
それはつまり…
「今の彼女のツタは、枯らすには多量の生命エネルギーが必要な『若葉』のツタだということだ!!」
「ゴールド・エクスペリエンス」の能力にとって有利に立ち回れるはずの「ツタ」の個性
それが新たな『天敵』として、ジョルノの前に立ちはだかるのであった