「かっちゃん……!」
緑谷は殴られて膝をついた幼馴染の名前を呟く
爆豪勝己は、緑谷にとっていじめっ子であり、嫌な奴であり、スゴイ奴であり、越えたい壁である
その爆豪が苦渋の表情で眼前の敵を殺すと言わんばかりに睨め付けている。眼前の、巨悪の息子で緑谷たちの友達の、ジョルノを
「爆豪の奴、スゲェ顔してんな。ありゃ猛獣だぜ」
「まさしく修羅よ…」
「でも、さっきと違って爆豪はあっちこっち動き回れねえ。ジョルノもそうなんだが…こりゃあ、ガチに我慢比べってやつになるな」
(違う…)
クラスメイトたちは眼下の状況を素直に捉えるが、ジョルノと爆豪の両方をよく知る者だけは違った
(かっちゃんは僕らの中で1番突出したスタミナを持ってるけど、決してタフネス任せの考えなしで行動しない。詰め将棋みたいに、正確に、確実に、相手の手を潰して弱点を狙って攻撃してくるはずなんだ…!そんなこと、騎馬戦の終盤で追い詰められていたジョルノくんが気づかないはずがない…ッ!!つまり………)ブツブツブツブツブツブツ
「デ、デクくん…!?」
「アー、放っておいた方がいいぞ麗日」
オタクモードになった緑谷の姿を真横で見ていた麗日はビックリして、そんな麗日に助言する鉄哲
(つまり…!)
(狙いはスタミナ切れ
一方、ステージの上で爆豪は、緑谷と同じ結論を出していた
「ウラァ!」
ドヒャァ
座った状態から繰り出したとは思えないほど鋭い蹴りがジョルノに迫る
「無駄ッ!」
ジョルノが構えた左腕から飛び出たゴールド・Eの左腕の裏拳が、まるでボウガンから射出された矢弾のような蹴りを迎え撃つ
バッシィィィ!
「チィ!」
「……!」
バチ バチッ
スゥ…
距離を取れない代わりに威嚇する猛獣めいて、両手から爆発の火花を散らす。対するジョルノは右側を前面にした半身の姿勢で爆豪と向き合う
(ヤローはモブどもと違って頭はいい。だがとんでもねェバカだ。少なくとも、よく知らねー俺と切島に
ジョルノの優しさや心の強さをよく知っているのが緑谷や鉄哲たちだとするのならば、そのハングリー精神や自己犠牲の具合をよく知っているのは爆豪と切島の2人と言えよう
爆豪の脳裏に、見えない敵に向かって突っ込み、背中をブッ刺されたジョルノの姿が浮かぶ
(言い換えれば、勝てる手段を必ず実行しようとするのがコロネ野郎だッ!しかし俺が持久戦で負けるわけがねえ!ンなことはコロネ野郎も分かってる…ならこの、
一瞬の油断もできない
グィン
それが破られる
「!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!」
膠着を破ったのはジョルノだ。ゴールド・Eで強化された腕力で爆豪を引き込み、近づく爆豪にゴールド・Eのラッシュを打ち込む
ボッ!
爆豪はこれを迎え撃つのではなく、爆破の勢いを利用した動きで回避する。並外れた反射神経がなければ爆豪は容赦なく滅多打ちにされていただろう
そして爆豪は一定の距離を保ちながら攻撃する…のではなく
「!! 何…!」
逆にジョルノに向かってさらに接近した!
そのままジョルノに飛びかかり
ガッギィィィィン
その左腕に全身で絡み付いた
『う、腕ひしぎ十字固め!?関節技ァ!?あの爆豪が!?』
『なるほど…植物のロープで距離を取れず、中途半端な近距離はジョバァーナの独擅場。ならばむしろ密着するほどの距離であれば、ロープが弛み右腕が自由に動かせる分、爆豪の有利に働く。しかも関節をしっかり
重みで仰向けに倒れるジョルノ。お互いに体を地面に打ち付けるが、爆豪は意に介さず、左腕をへし折らんとばかりに関節をさらに極める
ギリギリギリギリギリ…
「ぐ、ううう…!コ、コイツ…!!」
『普通の増強型ならば、この時点で勝負は決まりだが…』
そうはさせないのが「ゴールド・E」だ
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!」
もはや拳の雨と表現できるラッシュが爆豪の真上から降り注ぐ
その拳撃を見ても爆豪は離れようとしない…それどころか、腕を固定したまま器用に両掌をゴールド・Eに向け…
BOOM!!
絨毯爆撃を浴びせる
「ぐあぁぁッ!!」
ブシャァ!
爆撃をモロに受けたゴールド・Eの上半身が一部ひび割れ、ジョルノの体も同じ箇所から出血する
このまま攻撃を続ける…そう思考する爆豪だが、そう上手くいかないのが現実というものだ
「ぐっ……無駄!!」
バッキャァァ!
砕かれるコンクリート。その破片が爆豪の体に落下し…与えられた生命エネルギーによって姿を変える
ウネ ウネ ウネ
姿を変えたその虫を見て1番大きな反応したのは…実況者であるプレゼント・マイクだった
『ギイヤァァアアアアアア!!?』
『うるせーぞ山田』
『本名はやめてェ!!』
あまりにも大袈裟な反応…とは誰も言えなかった
「ムカデ…!」
爆豪の体に這い回るのは全長10㎝はあるトビズムカデ。見ているだけで不快なその見た目と動きは、観客席の口田が奇声を上げるレベルだ
数匹のトビズムカデは決してジョルノを咬まず、敵対者である爆豪めがけて飛びかかる
「クソが!!」
バッ BBBOM!
これにはさすがの爆豪もたまらず拘束を解いてムカデを振り払い、爆発による高熱で焼き殺した
しかし爆豪の関節技が外れたということは、その者の反撃を許すということに他ならない
ドォォォォォン
「はっ!!」
「
ドゴ!ドゴ!ドゴ!ドゴ!ドゴ!ドゴ!
「ぐぎィ………!!」
黄金の嵐が爆豪を飲み込む
「ッ───ガアアアアアッ!!」
常人ならば間違いなく気絶している「ゴールド・E」のラッシュを爆豪は耐え切り、獣のような雄叫びを上げながら爆破でジョルノを狙う
BOOM!!
「……………!」
ビィ───ン…
「ぬァ!」
爆風と衝撃で吹き飛ばされるジョルノだが、根っこのロープに繋がった爆豪が思わず踏ん張ったことにより、場外に飛ぶことは避けられた
ハァ ハァ ハァ
ハァー ハァー ハァー
この試合を見ている観客や視聴者たちは目が離せなかった。一進一退の激しい攻防、知略を尽くした戦い、真正面からのぶつかり合い。まさに、決勝戦に相応しい大激突がそこにあった
2人揃って肩で息をし、体操服は砂と血で汚れ、ボロボロに破れてもいる
「ハァ…なるほどなァ〜〜〜…ハァー…」
爆豪が右腕を上げる。手首にはあれだけの攻防に巻き込まれながらも未だ表面が削れた程度のジャイアントセコイアのロープがある
「コイツぁ、俺を縛る首輪であると同時に、文字通りテメェの命綱っつーわけかよォォォ〜……」
「……!」
「ならよォォォォォッ!!」
すると爆豪は自分の右手首を左手でがっしりと掴み
BOOM!
「!!」
「ぐっ……オォォッラァ───!!」
そして右手首を覆う爆炎の中から、輪っか状のロープが、敵を逃さない手錠が飛び出す
今まさに、縛られたケモノが解放された瞬間だった
次回 決着