先にビルの中に入ったジョルノと峰田の2人は、核(ハリボテ)の前で作戦会議をしていた
「作戦を立てる前に確認したいんだが、君以外には強力に接着する髪の球体が君の“個性”だね?」
「お、おう。正確にはオイラが“もぎもぎ”に触れたら跳ねるんだけどな」
ふむ…と考え込むと、ジョルノは峰田に言う
「峰田くん、君のもぎもぎとやらを1つ、地面にくっつけてくれないか?」
言われるがまま、もぎもぎを1個頭からもぎ取って地面に置いた。ぶよんと音を立てながらコンクリートの床にくっつく
それを見たジョルノは、すかさずもぎもぎに触れた。確かにピッタリとくっつき、簡単に離れそうにない
「な、何やってんだよジョルノー!?1度くっつくとオイラでも外す事はできないんだぜー!」
「大丈夫。君から離れた以上、元が君の一部だろうと、それは物体だ」
ジョルノの言うように、物体となったもぎもぎはゴールド・エクスペリエンスの生命エネルギーによって形を変えていき
「カァー」
「うおおおッ!?オイラのもぎもぎがカラスに!」
「ぼくのゴールド・エクスペリエンスで生命に変えた物体は、生命に変わった時点でその性質を失う。これを使って彼らを分断する」
「分断?そのカラスを元に戻せばもぎもぎに戻るんなら、たくさんカラスに変えて突っ込ませればもうオイラ達の勝ちじゃあねえか!」
興奮して勝利宣言する峰田だが、ジョルノはかぶりを振る
「残念だがそうはならない。口田くんの生き物を操る個性は、ぼくのゴールド・Eの能力を制限させる天敵だ。常闇はある意味ぼくと同じタイプの能力といえる。君が戦闘を行う事が難しい以上、必ずこの2人をぼくが同時に相手する事になる。そしてそうなれば、流石のぼくも確保されると思う」
「じゃ、じゃあどうすんだよォー!?」
ジョルノと一緒なら余裕と思っていただけに取り乱すのが早い峰田。そんな峰田に落ち着かせるように、ジョルノは冷静に言う
「それはぼくが1人で戦った場合の話だ。峰田くん、この戦いに勝つには君の力が必要なんだ」
「口田、2人の様子はどうだ?」
「………!」(※「2人とも、核を1階の1番隅の日が差してない大部屋に移動させてるらしい」と言っている)
「1階…?今まで核は全部が上階に配置されてきたから、裏をかいてきたということか?」
一方、常闇と口田はスタート時間までの間、口田の“生き物ボイス”で操った鳥で、ビルの中の様子を見張っていた
「峰田の方は俺の“
「………!」(※「彼の個性で生まれた動物達は、僕が操れるから大丈夫」と言っている)
「ならば問題は、奴の亡霊をどう対処するかだな。勘だが、あいつの亡霊は俺の
常闇の出した提案に口田は頷いて答える
カサカサ…
2人が作戦会議を行うその時、口田の視線の先に
「ッ!!!」ビクゥ!
「むっ、どうかしたか?」
口田の明らかに狼狽えた様子に常闇は視線の先を追いかける。そこにいたのは…
「…蜘蛛か。もしや口田、お前は蜘蛛が苦手なのか?」
「………!!」(※「昆虫はほとんど苦手」と言っている)
頭を縦にブンブン振る口田の姿に、どれだけキライなんだとちょっぴり思う常闇だった
『10分経過!これより最後の戦闘訓練を開始する!!』
「時間か。行くぞ、口田」
「………!」コクコク
オールマイトによるスタートの合図が出たので、常闇は口田から距離を取りつつ、先にビルの通路を歩いていく
そして常闇が曲がり角を曲がって少し進んだところで、通路の奥から複数の黒い点が接近する
バササッ バサーッ
「カァーッ!!」
「カラス!ジョルノが個性で生み出したものか!
『アイヨ!』
突っ込んでくるカラスの群れを視認した常闇は、即座に
「? カラスが
しかし迎撃したカラスは
グニュウ グニュリ
「な…!」
その瞬間、常闇の目の前でくっついたカラスは翼を閉じて丸くなり…もぎもぎの状態に戻った
「何イィ────!!?これはッ!?」
(なぜ奴が生み出したカラスが峰田の粘着玉にッ……まさか!ジョルノの能力はまさか!)
その時、常闇は個性把握テストのことを思い返していた。あの時、ジョルノはスターターピストルを動植物に変えていた…!
「口田ッ!!ジョルノの個性は「物体に生命を与える」能力だ!!奴は峰田の粘着玉をカラスに変え、迎撃した俺達を動けなくする気だ!」
それを伝えている間にも、カラスの軍勢は列を成して突撃してくる
「マ、マズイ!口田、離れろ!!」
「飛び立つ者どもよ、地に降りなさい!」
常闇の危機を感じ取った口田は言葉を発し、それをカラスに伝える。するとカラスは自ら地面に降り立ち、そのままもぎもぎに戻った
口田の援護で攻撃を避けられた常闇は、少し先に進み距離を取る
「すまない!今だ
『アイヨ!』
このチャンスを利用して、常闇は
するとくっついていたもぎもぎは影に戻った
「これで
危機を脱して安心する常闇
「ピャアアアァ──────ッ!!!?」
「!?」
しかし、口田の悲鳴を聞いた常闇は、真の危機が去っていなかったことに気づく
「まさか!俺ではなかったというのか!?狙いは!」
「うッ…こ、これは…!」
するとその先にいたのは、泡を吹いて倒れる口田とそんな彼を確保テープで捕らえる峰田と臨戦態勢のジョルノ。その足元には…
「きょ、巨躯な闇の眷属…!」
「アシダカグモ……日本にいる最も巨大な蜘蛛で、その大きさとは裏腹にネズミ並みに素早く動きゴキブリを好んで捕食する食性から、益虫の1匹として認知されている」
床、そして口田の体には無数のアシダカグモが這い回っていた
「でも、見た目から一般的に受け入れられない蜘蛛でもある。だからか、どうやら虫嫌いな彼には効果抜群だったってわけさ」
「そうか…入り口にいた蜘蛛もお前が生み出した生命か…!」
「ご名答」
ジョルノがゴールド・Eの能力を解除すると、アシダカグモは砕かれたコンクリート片へと戻った
『口田少年、確保ォ!』
「くっ…!」
「一応警告しておくけど、無駄な事はやめておいたほうがいい。何故なら抵抗したところで、結局無駄になるんだからな…無駄無駄」
冷徹なジョルノの言葉に常闇が体が震えた。ジョルノの堂に入った演技は、これがヴィランなのかと錯覚させたほどだ
「『
だがこの程度で諦めるなら、そもそもヒーローなど目指していない。発動させた
「無駄ァ!」
石つぶてをゴールド・Eで弾くが、すでに常闇は核を取りに1人駆けていた
「……ベネ」
そんなジョルノの呟きを知る由もない常闇は、必死に核の部屋を目指す
(口田を捕まえる為に2人で行動してくれたのが不幸中の幸い!このまま核を手に入れる!)
そして核の部屋の扉が見えた
「扉を開けろ!
『アイヨ!』
バァン!
ドアを突き破った常闇は部屋の核を探す
「バ、バカな…ッ!?なぜ核がない!!」
だが、核はどこを探しても見つからなかった。あれほど大きなもの、小さくでもしないとすぐに運ぶ事など…
(…小さく、だと……!?)
バッ!
真っ暗な部屋の奥から唯一あるドアの方を見ると、そこには追いついたジョルノがいた
「ここに、俺をおびき寄せるまで、全て計算だったというのか…!」
「そう。口田くんの『生き物を操る』能力を考えれば、こちらの索敵をしてくるのは確実…だから
「
『シャアアアー!!』
自分の個性でジョルノに攻撃を仕掛けるが、光がほとんどない部屋の為、暴走気味に
「無駄無駄無駄無駄!!」
それを『ゴールド・E』のラッシュでいなす
「やはり、同じタイプの個性ッ!」
「ゴールド・エクスペリエンス!!」
今度はジョルノが常闇にゴールド・エクスペリエンスを仕向ける
『ウオシャァァ───!!』
「この部屋のおかげで、今の
だが、凶暴な
ガッ!
首元を掴まれギリギリと押さえつけられるゴールド・エクスペリエンス。ダメージがフィードバックし、ジョルノの首にも同じ手の跡ができる
「こ……こいつ…!」
「少し分かったぞジョルノ。お前とゴールド・エクスペリエンスは文字通り一心同体、片方がダメージを受ければもう片方もダメージを受ける。そして
「ムダダァ──ッ!」
押さえつけられながらも蹴りで反撃するゴールド・E。しかし強化された
カァー カァー
ジョルノは壁際に追い詰められ、
「今度は俺が言わせてもらおう。無駄だ、この
「たしかに、今のお前を捕まえるのは本当に骨が折れるだろうな……だが、逆だったら?」
「…何?」
もはや何もできないはずなのに、ジョルノの目から希望は尽きてなかった
「ずっと『時間』を稼いでいたんだ…ぼくが1人で戦う以上、お前の影のモンスターは本当に厄介だった……だから、『ずっと待って』いた!外のカラスどもが鳴くこの瞬間を!」
グググニュゥゥ…
すると、手をつけていたかべが朝顔に変わり、垂れ下がっていく
「壁が…!光を差し込ませる気かッ!だがそれでもッ!
ピカッ!
「ううぐおおおおあああああ!!?」
その直後、目が開けられないほど眩しい光が、崩れる壁から溢れる。思わず常闇は手で顔を隠す
「お前を留まらせる暗闇の部屋を探してたから、5分だけじゃあ集まり切らなかったんだ……だから時間を稼いで峰田くんに集めてもらった!このビルのトイレだとかにある「鏡」をなッ!!」
「オッシャー!作戦大成功だぜーッ!!」
そう、光は「鏡」が反射した太陽光だった。鏡を集めて作った反射板をもぎもぎで角度をつけて光を部屋に送り込む作業を、ジョルノは峰田に任せていたのだった
『ピギュウウオオオオオオッ!!』
「ダ、「
暗黒から一転、太陽の光にさらされた
「か、影…!」
常闇は這いながら必死にまだ暗い部屋の奥に戻ろうとする
ドグシャア!
「ぐおッ!」
伸ばした手をゴールド・Eに踏み押さえられ、抵抗を阻止される
「向かうべき道が「2つ」あるって言ってたが……おまえにはそんな「多い」選択はありえないな」
ジョルノは床の明るい部分を指差し
「峰田くん、日当たりのよさそうな「
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!」
「ゆっくりとあじわいな、日光浴を!」
「たったそれ、
『ピギョオオォォォォー!!』
やがて太陽の光を浴び続けた
『眩シイヨー。クスン』
完全にマスコットサイズまで弱体化された
常闇は峰田に確保テープをつけられて、そこで訓練は終了した
感想で指摘されたので明記しておきます。本作のゴールド・