第2次スーパーロボット大戦J   作:YSK

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エンディング2

 

──全員エンド──

 

 

 宇宙。

 そこは、はるかなる星の海。

 

 人の感覚からすれば、無限に広がると言っていいそこに、一人の王を中心とした、六つの氏族を祖とする星系国家があったそうな。

 

 その国は、一族を守る守護龍と、王の座を示す巨人によって守られていた。

 

 空間はおろか時間さえ意のままに操ったというその一族は、数多くの星の民に支えられ、またその王は、その強大な力をむやみにふるうこともなく、穏やかに、健やかに民を見守ったと言われている。

 

 いかなる敵も寄せつけぬ、決して触れることのあたわぬその国は、その王と六つの氏族の庇護の下、その民も、王も、大変幸せに暮らしたそうな。

 

 

 ただ、この星系を作った賢王が、いかなる理由でこの地に現われたのか。

 

 それを知る民は、誰一人としていないそうな……

 

 

 

 ……

 

 

 ある日俺は気づいた。気づいてしまった。

 

 夢でもうぬぼれでもなく、多くの女の子に好かれていると!

 

 今俺は、総勢六人の可愛い女の子から好意を寄せられていると確信がある。

 

 

 だが、そんなバカなことあっていいわけない。

 

 

 あんな綺麗な子達が、平凡普通な俺を好きになるなんてなにかの間違いだ。

 

 きっと戦いの中、吊り橋効果でそれが恋だと勘違いしているんだ。

 そうだ。きっとそうに違いない。

 

 だから、その勘違いを正さなきゃいけない。

 こんな平凡普通。いや、むしろ臆病者に惚れたのは間違いだったと、愛想つかせてあげるのが本当の優しさってやつだろう。

 

 だって、俺よりいい男なんて世界中にごまんと居るといるのだから!

 

 

 さて、誰から幻滅させてやろう。

 

 そうだな、カティアからいくか!(五十音順)

 

 

 カティアはいつも、俺のことを支えてくれている。

 いつも見守ってくれているから、俺も安心して無茶ができるし、その視線に負けないようしっかりしなきゃと意識できる。

 

 そのおかげでいつも助かっているが、それじゃカティアの一生が俺につき従うだけになってしまう。

 未来ある優秀な彼女に、そんなことはさせられない。

 

 ならば、今回はそれを逆手にとってやる!

 

 そう。なんでもかんでも頼ろうとすれば、俺は支える価値もないダメ男だと気づいてくれるはずだ。

 なにせカティアは、聡い人だからな!

 

 

統夜「カティア」

 

カティア「あら、統夜君。どうしたのかしら?」

 

統夜「最近ちょっと忙しくてさ、スケジュール管理とか手伝って欲しいんだ」

 

カティア「お安いごようよ」

 

統夜「あと、食事の管理とか、朝も起こしてほしいんだけど」

 

カティア「いきなりね。急にどうしたの?」

 

統夜「い、いや。ちょっと最近生活も落ち着いてきたから、ちょっと自堕落になっててさ。このままだと忙しさとあいまってダメになりそうなんだ」

 

カティア「なら、かまわないわ。でも、少し厳しくいくからね?」

 

統夜「ああ。そのくらいの方がいいだろう。だから、頼むよ」

 

カティア「ええ。まかせて」

 

 

 くくっ。かかった! 厳しくされたところで、途中で投げ出してしまえば、よりマイナスポイントになる!

 

 こうして頼りに頼って、そして途中で逃げ出す。これで呆れない真面目女子はいまい!

 

 俺は内心成功をほくそえみながら、カティアとの約束をとりつけたのだった。

 

 

カティア(統夜君……)

 

 

 立ち去った統夜を見て、カティアは嬉しく思った。

 

 統夜を支えようと頑張ってきたが、支えるまでもなく彼はいつでもなんでも自分でなんとかしてしまう男だった。

 支えたいと思っていても、いつも支えられるのは自分の方。

 

 でも、今回は違った。

 

 ここまで助けがほしいと言われたのははじめて。

 こんなにも信頼され、統夜君の時間をまかされた。私を頼ってくれた。

 

 やっと本当の意味で彼を支えられる。

 

 こんなに嬉しいことはないわ。

 

 

カティア「えへへ」

 

 

 ちなみにだが、根が真面目な統夜は、与えられたスケジュールをしっかり守り、途中で投げ出すなんてことはないのだった。

 うっかりやりきり、なにやってんだ俺はと頭を抱えることになる。

 

 

 

 さて。カティアに呆れられるのはもう時間の問題だ。

 

 ならば次は、クド=ラに愛想をつかされよう!

 

 あの子にとって思い出したくない過去が一つある。

 それは、『ジ・ヴォーダ』を生み出した研究者の集合体。ハ=カ・セに騙され、復讐に燃えてしまった時のことだ。

 

 俺としてはジュア=ムをうったのも事実だからその復讐は間違っていないとは思うけど、彼女はそうは思っていないようだ。

 

 ある意味トラウマ。

 なら、その復讐のことをつついて刺激すれば、俺は嫌なヤツだと愛想をつかされるはず!

 

 こんなことを考えつくなんて、俺はなんて嫌なヤツなんだ。極悪人と言っていい。

 こんな男嫌われて当然。

 

 家族想いのあの子が、俺みたいなヤツと一緒に居てもいいことはない。地球に来てやりたかったことを、夢をかなえて欲しいんだ!

 そのために俺は、極悪人にでもなんでもなってやる!

 

 

クド=ラ「……」

 

 

 その時彼女は、悩んでいた。

 

 

クド=ラ(ボクはこれから、どうすればいいんだろう……?)

 

 

 復讐することに意味はなくなり、戦いも終わってしまった。

 もう、なにか他にしてすることがない。

 

 やることを見つけなければならない。

 

 

クド=ラ(結局ボクは、なにがしたいの……?)

 

 

 終わってみて、彼女は今、自分がなにをしたいのかわからなくなってしまっていた。

 

 

統夜「いたいた。クド=ラ」

 

クド=ラ「シウン・トウヤ? なにしに来たの?」

 

統夜「なんか悩んでいるみたいだからさ。どうしたのかと思って」

 

クド=ラ「……うっさい。あんたには関係ないでしょ」

 

統夜「なくもないさ。でも、話してくれないって言うのなら、こっちが勝手に話すよ」

 

クド=ラ「……」

 

 

 嫌われる気満々の統夜は、相手の話を聞かず、自分の方が一方的に話すという方法もとろうとしていた。

 聞いてもいないのに一方的かつ勝手なことを話す。これも嫌われる要因だろう!

 

 

統夜「クド=ラ。悩んでいるのなら、最初にやろうとしたこと(復讐)を思い出せばいいんじゃないかな?」

 

クド=ラ「え?」

 

統夜「初心を取り戻すっていうのもいいことだと思うんだ。だから、思い出してみよう。君が最初、なにをしたかったか」

 

クド=ラ「最初にやりたかったこと(地球に来たらやりたかったこと)……?」

 

 

 彼女は、はっとした。

 クド=ラが地球に来てやりたかったこと。それは……

 

 ぼんっ。と、クド=ラの顔が赤くなった。

 

 

クド=ラ「も、もー! なにを言ってんのさ!」

 

統夜(真っ赤になった。どうやら、思い出して怒りに震えたらしい! 俺をじっと睨んでるし)

 

クド=ラ「でも、いいの? ボクが気のすむまでつきあってもらうよ?」

 

統夜「まあ、それはそういう約束だからな」

 

統夜(しまった。復讐するならいつでもこいって言ってたっけ。だが……)

 

 

 ある意味それも好都合と思ってしまう。

 途中でその約束を以下略。

 

 

クド=ラ「ううっ。バーカ!」

 

 

 クド=ラはそう悪態をつき、そのまま逃げていった。

 

 その姿を見て、統夜は心の中で成功の喝采を自分に送る。

 

 

統夜(よし。間違いなく復讐を思い出し怒らせた! これで彼女も、俺に呆れて愛想をつかすだろう!)

 

 

 走って逃げたクド=ラは、物陰に隠れ真っ赤になった頬を両手で押さえる。

 

 

クド=ラ(うぅ。意識しちゃってあいつの顔マトモに見れない)

 

 

 思い出してしまった。

 地球にきてからやりたかったこと。

 

 好きな人と一緒に、色んなところを回ったり、一緒に遊んだりしたかったこと。

 

 それをあいつと……

 

 そう考えたら、頬だけじゃなく心臓も頭も熱くなってきた。

 

 

クド=ラ(ダメだ。もうダメ。完全に意識したっ!)

 

 

 あいつはボクの夢を知ってるんだろうか。

 知らずに言ったことだろうか?

 

 でも、約束した。自分の気がすむまで相手してくれると。

 つきあってくれると!

 

 

クド=ラ「言質、とったからね」

 

 

 ホントに、あいつは、バカなんだから!

 

 

 

 よし。いい調子だ。間違いなくクド=ラは怒りに震え、俺を嫌いはじめるだろう。

 

 この調子で、一気にシャナ=ミアに幻滅されるぞ!

 

 

 シャナ=ミア。

 フューリーの最高指導者。皇女としての地位は失ったが、彼女の影響力はフューリー内では絶大。

 彼女もその誇りを持ち、指導者たろうと努力している。

 

 ならばその努力すべてを否定しよう!

 

 信頼しているだろう俺に否定される。そのダメージは計り知れないはず!

 想像しただけでも俺にダメージが返ってくるのだから、本人にはもっとくるはずだ!

 

 でも、俺を捨てるというのは、彼女には必要なこと。

 もっと優秀で有能なヤツが、彼女にふさわしいはずなんだ。

 

 だって彼女は、本当に指導者として優秀な人なんだから!

 

 

シャナ=ミア「あ、トウヤ。フューリー議会の方から、あなたに一つお誘いがあるそうです」

 

統夜「え? なに?」

 

シャナ=ミア「騎士にならないか。と」

 

 

 この騎士は、意味合い的に地球の騎士とほぼ同じである。といっても、今の場合だと要人の警護をするSPに近いけど。

 どちらかというと、シンのいるザフトの赤服とか、そっちとも言えるかもしれない。

 

 ともかく、あの争乱を二度戦い抜いた俺も、そういうのに呼ばれるようになったのか……

 

 

シャナ=ミア「できれば、引き受けてくださると、私も助かるのですが……」

 

 

 そうか。ここで引き受けると、そのままシャナ=ミアの警護とかに入るわけか。

 まあ、当然かもしれないな。いざという時、グランティードを呼べばシャナ=ミアも一緒に守れるわけだし。

 

 当然と言えば当然の要望だろう。

 

 でも……!

 

 

統夜「俺は、騎士は引き受けないよ」

 

シャナ=ミア「え?」

 

統夜「だって、シャナ=ミア。君はもう、皇女様じゃないんだから」

 

シャナ=ミア「っ!」

 

統夜「フューリーは自分達で選んだんだよ。皇女じゃなく、民のみんなで選択することを。だから、シャナ=ミア。君はもう、これ以上頑張らなくていいんだ。いつまでも君がなにもかもを背負わなくていいんだ。もう、一人の女の子として、堂々とここにいていいんだよ」

 

 

 言った。言ってしまった!

 彼女が今まで必死に努力してきたことをすべて無にすることを!

 

 シャナ=ミアもあまりのことに口に手を当て、唖然としている。

 自分が信頼している男に裏切られたんだから当然だよな。

 

 こんな無責任な男、完全に愛想つかしただろう。

 

 うう。罪悪感で胸が締め付けられそうだ。

 

 もうこれ以上彼女が悲しむ姿は見ていられない。

 

 

 俺はそのまま、この場から逃げるように去るのだった。

 

 

シャナ=ミア「トウヤ……」

 

 

 あまりのことに、どきどきがとまらない。

 

 

 議会も皆、私が上に立つことが当然だと思っていた。

 私もそれが当然だと思って、いままで様々なことを学んできた。

 

 でも、あなただけは違った。

 

 あなただけは、私のことを一人の女の子として見てくれていた。

 

 あなただけは、私のことだけを考えてくれた。

 

 あなたはいつもそうだ。

 

 私に勇気をくれる。

 私に強さをくれる。

 

 そうよね。もう、フューリーもみんなで歩く時が来たんだわ。

 

 

 これで、私も地球の民として生きる勇気ができました。

 

 それに……

 

 

統夜『俺は騎士を引き受けないよ』

 

 

 それはつまり、一人の民として、自分もここにいるということ。

 

 私と一緒にいてくれるということ。

 

 

 トウヤ。

 

 やっぱりあなたは、私だけの騎士様なのですね……

 

 

 

 ううっ。罪悪感で押しつぶされそうだ。

 

 だが俺は諦めるわけにはいかない。

 みんなに愛想をつかされるって決めたんだ!

 

 次は、テニア。

 

 彼女の屈託のなく誰にも物怖じせず話しかける明るさに何度助けられたことか。

 

 だが、そのよく話すというのを、俺は逆手にとらせてもらう。

 話していることすべてに生返事を返すのだ。

 

 まともに話も聞かず、生返事しか返さない。なんて最低な男なんだ!

 

 

 すぐ機会は訪れた。

 

 席に座り、共に勉強することになった。

 

 

テニア「でさ、その時アタシがうっかりしてたみたいでさ。塩と砂糖の入れ物間違えちゃったんだよね」

 

統夜「ん」

 

テニア「そこからもう大変でさ。メルアの作るお菓子がしょっぱくて、カティアの作った焼き魚があっまいの。あの時はホントまいったー」

 

統夜「そうだな」

 

テニア「それで……あ、その前に、統夜、それちょっととってー」

 

統夜「ん」すっ。

 

テニア「ありがと」

 

統夜「ん」

 

テニア「んー。ちょっとこれよくわかんないんだけど、統夜わかる?」

 

統夜「んー? ん」指差し。

 

テニア「あっ、これを使うのか。ところでさ、あれってどうなったの?」

 

統夜「ん」指差し。

 

テニア「あ、カレンダーに丸書いてあった。9日に決まったんだ」

 

統夜「ん?」手が止まる。

 

テニア「あ、それならこれ。はい」

 

統夜「ん」

 

テニア「どういたしまして!」

 

 

 こんな感じで、勉強会は終わりを告げた。

 

 ……ふー。かなり生返事だったぞ。こんなにないがしろにされたら、テニアもきっと俺に愛想をつかすだろう。

 

 後半かなり興奮していた感じだったしな!

 

 

テニア(んー。勉強終わりっ!)

 

 

 伸びをする。

 

 そして、統夜とのやりとりを思い出し、思わず頬をほころばせた。

 

 あれ、これ、それと、固有名詞を使わず統夜の言っていることがわかった。

 統夜は上の空に見えたけど、アタシの言ってることは全部わかってて、全部対応してくれた。

 

 それはまるで、前に憧れた熟年夫婦のような。

 

 アタシと統夜は、通じ合った気がした。

 

 これほど嬉しいことはないと思う!

 

 

テニア「てへへ」

 

 

 そう思ったら、なんか照れくさくなってきた。

 

 でも、とても幸せな気持ち。

 不思議な気持ち。

 

 これが幸せってことなんだろうな。

 

 

 

 テニアを無視したような形で、さらに罪悪感が……

 

 だが、ここまで来たらもう後戻りはできない。一気に行くしかないんだ!

 メルア、覚悟しろ!

 

 メルア。

 彼女は無邪気だ。そして色々無防備だ。

 

 お菓子が好きで、子供っぽいところがコンプレックスだけど、その実、体は誰にも負けず劣らずぽよぽよしている!

 むしろ無自覚になにしちゃってくれてんのって時が多々ある!

 

 俺がどれだけ心を無にして悟りを開こうとしているか。

 

 自分をそんな目で見ている男がいると知れば、一発で嫌われることは間違いない!

 きっと次の瞬間から、俺になんて近寄ってこなくなるはずだ!

 

 

メルア「統夜さーん!」

 

統夜「うわっ!」

 

 

 ぴょーんと、無防備に背中に飛びついてきた。

 この感触。

 

 これは間違いない!

 

 

統夜「こら、メルア」

 

メルア「はい。わたしです」

 

統夜「ちょっとこっち」

 

メルア「はい?」

 

 

 背中から正面に回らせる。

 正面に回った彼女は、小首をかしげ、こちらを見た。

 

 うう、こんな無垢な子に真実を告げるとなると、一気に罪悪感がこみ上げてくる。

 だが、俺はもうとまれないんだ!

 

 

統夜「いいかいメルア。君は自分を子供っぽいというが、実はそうじゃないんだぞ」

 

メルア「はい?」

 

統夜「君のマシュマロみたいなボディと、その無邪気な行動は思春期真っ只中のオトコノコにはとっても危険なんだ。それをちゃんと理解しているのか!」

 

メルア「ええー!?」

 

統夜「いつまでも無邪気でいられちゃ困るんだ。大人になろう!」

 

メルア「お、大人になるんですかー!?」

 

統夜「ああ。そうだ」

 

メルア「ひょっとして、統夜さんも、わたしをそういう風に?」

 

統夜「そ、そうだ!」

 

メルア「わたし、大人の仲間入りできますか?」

 

統夜「もう君は、十分大人だ! 俺はずっと、君のそういう行動にどきどきさせられていたんだ。わかった!?」

 

メルア「わ、わかりました!」

 

統夜「よろしい。わかったのなら、ちゃんと自覚しなさい!」

 

 

 俺はそう言い、そのまま逃げるようにその場を去るのだった!

 

 よーし。言った。言ってやった!

 こんなにストレートに下種な感情をぶつけたんだ。そんな目で見られていると知ったら、メルアだって俺を避けるようになるはずだ!

 

 これでよかったんだ!

 

 

 一人残されたメルアは、しばし統夜の言ったことを反芻する。

 

 そして、唐突に顔を真っ赤に染めた。

 上気する頬に両手を当て、どきどきする心臓の鼓動を感じとる。

 

 

メルア(と、統夜さんも、ちゃんとわたしに興味があったんだ)

 

 

 子供っぽいと思われ、眼中にないとずっと思っていた。

 でも、そんなことはなかった。

 

 むしろ……

 

 

メルア「子供じゃなくて、ちゃんとわたしのこと見ていてくれてたんだ……」

 

 

 どきどきがとまらない。

 

 

メルア「わっ。わっ。どうしよう。大人の仲間入りって、そういうことだよね。そういうことだよね。どうしようー! キスとか迫られたら、逃げられませんよー!」

 

 

 

 ふー。メルアのが精神的に一番きつかった気がする。

 でも、これを乗り越えたんだ。最後のロゼ=リアにだってきっとやれる。

 

 これでみんなに愛想つかされて、ハッピーエンドだ!

 

 

 ロゼ=リア。

 ずっとそれ以上先がないと思って覚悟を決めていたお姫様。

 

 一見ぶっ飛んでいるように見えるけど、実は理知的で多くの人達のことを思っている優しい子だ。

 

 そんな彼女がやっと未来を手に入れたんだ。俺なんて男に縛られずもっともっと広い目で世界を見てほしい。

 

 だから俺は、彼女の未来を縛る悪役となる。

 その未来の可能性というのを、全部否定してやるんだ。

 

 そうすれば、彼女に俺は邪魔になり、自動的に愛想つかされるというわけだ!

 

 

ロゼ=リア「あ、トーヤ。わたくし、これからなにをしようか決まりましたの!」

 

 

 って、否定する前から決まっちゃったー!?

 

 いや、待て。まだ終わったわけじゃない。

 それを否定すればいい。

 

 そうすれば、まだリカバリーできる!

 

 嫌われるのにリカバリーってなんだ。と思うけど。

 

 

ロゼ=リア「ですから、わたくしはこれから一人で……」

 

統夜「ちょっと待つんだ!」

 

ロゼ=リア「へっ?」

 

統夜「それは本当に、君が一番幸せな未来なのか?」

 

ロゼ=リア「そ、そりゃ一番幸せな未来ではありますよ」

 

統夜「たった一人で考えた未来が、か?」

 

ロゼ=リア「っ!?」

 

統夜「なあ、ロゼ=リア」

 

ロゼ=リア「は、はいっ!」

 

 

 このまま、彼女の未来を否定してゆく。

 

 心苦しいが、俺が愛想をつかされるためにはしかたのないことなんだ。

 許してくれ!

 

 そんなことを考えたせいか、勢いあまって彼女を壁際に追い詰めてしまった。

 

 

 壁。

 ドンッ!

 

 

ロゼ=リア(はわわわわ。これって、まさか……!)

 

 

 だが、もうとまれない。

 

 

統夜「一人っきりの未来で、君は満足なのか?」

 

ロゼ=リア「っ!!」

 

 

 ああ。せっかく彼女が答えを出したというのに、それを完全に否定してしまった。

 こいつはかなり効く。

 

 

ロゼ=リア「わたくしの、満足できる未来……」

 

統夜「未来をいきなり決める必要はないと思うんだ。もっとじっくり考えて、それから答えを出してもいいんじゃないか?」

 

ロゼ=リア「は、はい。トーヤの言うとおりですわ。もう少し、考えてみます」

 

統夜「それはよかった」

 

 

 よし。成功した。

 

 間違いなく彼女は俺をうっとおしく思ったはずだ!

 

 

ロゼ=リア「あわっ。あわわわわわ」

 

 

 トーヤが去ったあと、わたくしはへなへなとへたりこんでしまった。

 

 トーヤに言われ、気づいた。

 どんな未来でも、わたくし一人でいるだけの未来に意味はないと。

 

 本当に欲しい未来は、そうじゃないと……

 

 

 わたくしが、本当に欲しい未来は……

 

 

 まだ心臓がバクバク言っている。

 

 壁にまで追い詰めて、それをわたくしに思い知らさせたということは、つまりそういうことなんですわよね、トーヤ?

 

 

 

 ふー。これできっと、全員に愛想つかされたはずだ。

 

 

「統夜君!」

「シウン・トウヤ!」

「トウヤ!」

「統夜!」

「統夜さん!」

「トーヤ!」

 

 

 ずらりっ。

 

 カティア。

 クド=ラ。

 シャナ=ミア。

 テニア。

 メルア。

 ロゼ=リア。

 

 いきなり現われた六人に、俺は囲まれてしまった。

 

 どこか興奮したような、殺気だった雰囲気。

 

 これは……

 

 

 俺は、悟った。

 

 みんな俺に愛想がつき、見捨てにきたんだ。

 

 少し寂しい気もするが、これでみんな、幸せな恋ができる。

 

 

カティア「ねえ、統夜君。一つ聞きたいことがあります」

 

ロゼ=リア「トーヤ、わたくし達の中で一番は、一体誰なのですか!?」

 

 

 そうか。みんな俺に愛想が尽きて、俺の一番を……いち?

 

 

統夜「なんだって!?」

 

シャナ=ミア「トウヤ、私達の気持ちはもうわかっているのでしょう? なら、その答えをお願いしたいのです」

 

 

 なんてこった。

 

 みんな俺に答えを求めに来てた。

 みんな俺の無責任な行動に、愛想をつかしたんじゃないのか!?

 

 

 じっ。

 

 みんなの視線が、俺を刺し貫く。

 やめてくれ。そんな熱のこもった目で、俺を見ないでくれ。

 

 そんな期待されても、俺は……

 

 

メルア「統夜さんは、わたし達のことは嫌いですか?」

 

統夜「違う。そんなことあるわけないじゃないか! むしろその逆だ。大好きだよ。でも、みんな綺麗でいい子だから、大切だから、六人のうち誰かなんて選べないんだ!」

 

 

 ああ、思わずなんてことを言ってしまったんだ俺は。

 

 最低だ。最低の男だ。

 

 でも、これなら間違いなく、みんなの愛想がつきるだろう。

 

 だって、6人全員が好きだなんていう最低野郎なんだから!

 

 

テニア「つまり、みんなが好きってこと?」

 

統夜「ああ。そうだ。みんなが好きで、誰も選べない。俺は本当にダメな男なんだよ……!」

 

 

 だってしょうがないだろう。みんな魅力的なんだから!

 

 だから愛想つかされようと思った。

 みんなを傷つけたくないんじゃなく、俺が傷つかないために。

 

 結局俺は、自分がかわいい、決断もできないクズなんだ……!

 

 

カティア「……」

 

クド=ラ「……」

 

シャナ=ミア「……」

 

テニア「……」

 

メルア「……」

 

ロゼ=リア「……」

 

 

 六人は互いに目をあわせ、うなずいた。

 

 そうだ。これでいい。あとは俺を煮るなり焼くなりして、みんな、この不毛な恋から、開放されるんだ。

 

 

クド=ラ「ならさ、シウン・トウヤ……」

 

ロゼ=リア「ええ。皆を好きだというのなら、いっそ……」

 

シャナ=ミア「私達全員を、愛してくれませんか?」

 

統夜「……え?」

 

テニア「統夜のダメなとこ、ちゃんと知ってるよ。実は臆病だし、戦いから逃げ出したいと思ってる」

 

カティア「でも、いいところもたくさん知ってるわ。怖くても、誰かを守るため勇気を振り絞れること。他人を助けるため、一生懸命になれること」

 

メルア「そんな統夜さんだから、わたし達は好きになったんですよ」

 

統夜「み、みんな、こんな俺でいいのか……?」

 

シャナ=ミア「そんなトウヤだからいいんです。そして、トウヤなら、できます。だってすでに、実践していますから」

 

統夜「……」

 

 

 みんなの提案に、俺は思わず天を仰いだ。

 

 

 そうか。確かにそうすれば、万事丸く……

 

 

 ……いや、おさまんないよ。ダメだろ!

 全然ダメだろ!

 

 みんな恋のせいで倫理観おかしくなっちゃってますよ!

 

 

 こ、こうなったら最後の手段だ。

 

 

統夜「わかった。なら、俺は地球を出て行く!」

 

 

 そうだ。最初からこうすればよかったんだ。

 みんなで命をかけて守った地球を捨てるわけにはいかない。こう言ってしまえば、みんな諦める。

 

 これで俺の目的は……

 

 

シャナ=ミア「それはいい考えかもしれませんね」

 

テニア「うん。さすが統夜。凄いこと考えるね」

 

統夜「へ?」

 

カティア「確かにそれなら、地球のしがらみにとらわれないですむし、邪魔も入らなくなるわ」

 

メルア「みんなと会えなくなるのは少し寂しいですが、統夜さんと一緒になれるなら、些細なことです」

 

ロゼ=リア「わたくしはトーヤがいればそれでよいですわ!」

 

クド=ラ「ボクも!」

 

統夜「……え?」

 

 

 

統夜「……え?」

 

 

 こうして七人は、宇宙の片隅で幸せに幸せに、暮らしたそうな。

 

 

 

 めでたしめでたし

 

 

 

──みんなの提案を受け入れたパターン──

 

 

 『……いや、ダメだろ!』

→『みんなの提案を受け入れる』

 

 

 みんなの提案に、俺は思わず天を仰いだ。

 

 そうか。確かにそうすれば、万事丸くおさまるような気がする。

 いや、俺の理性や倫理観はおさまんねーよ。と言ってるけど、彼女達の幸せという面を考えれば……

 

 

統夜「うん。わかった」

 

 

 ──改めて正面を見据えたその顔は、覚悟を決めた男の顔だった。

 

 

 そもそも、愛想をつかされようとしたのが間違いだった。

 

 みんながここまで言ってくれた。

 みんなから逃げようとした臆病な俺がいいと言ってくれた!

 

 なら、俺はもう、逃げない。

 

 みんなを幸せにする! してみせる!

 

 

統夜「みんなの本気、受けとったよ。本当に、いいんだな?」

 

カティア「ええ」

クド=ラ「うん!」

シャナ=ミア「はい」

テニア「もちろん!」

メルア「はい!」

ロゼ=リア「もちろんですわ!」

 

統夜「わかった。なら手はじめに、この地球から旅立たなければならないな」

 

クド=ラ「どういうこと?」

 

シャナ=ミア「確かに、今の地球圏では、こんな愛の形は認められていませんからね」

 

テニア「だから宇宙で、新しい国を。アタシ達だけの国を作るんだね?」

 

ロゼ=リア「さすがトーヤ。とんでもないことを思いつきますわ。その愛は、地球にはおさまりきらないということですね」

 

カティア「確かにそれなら、地球のしがらみにとらわれないですむし、邪魔も入らなくなるわ」

 

メルア「みんなと会えなくなるのは少し寂しいですが、統夜さんと一緒になれるなら、些細なことです」

 

ロゼ=リア「わたくしはトーヤがいればそれでよいですわ!」

 

クド=ラ「ボクも!」

 

カティア「じゃあ、決まりね」

 

シャナ=ミア「目指しましょう。私達の望む、新しい楽園を求めて!」

 

統夜「ああ。行こう。みんなで幸せになれる場所に!」

 

 

 こうして旅立った統夜達は、宇宙の片隅で幸せに暮らしたそうな。

 

 

 

 めでたしめでたし

 

 

 

 

 おまけ

 ちなみにこのハーレム対応を自分の意思で意図的にやってのけたのが個別エンドの統夜になります。

 

 

 こんどこそ終わり

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