第2次スーパーロボット大戦J   作:YSK

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追加シナリオ 雪山編

──はじめに──

 

 

 これは、シロー・アマダが参戦したことにより生まれた新しいお話である。

 

 シローとアイナが雪山でヨロシクやっている時、同じようについてきちゃって雪山に落ちた統夜達もコックピットの中で一晩過ごすことになったというイベントである。

 

 時間的にはクド=ラ登場前なので、当然クド=ラはいないしロゼ=リアはバシレウスのメインパイロットを務めているため雪山へは来れないのでご注意ください。

 ゆえに統夜と一緒に雪山ですごすヒロインは四人。その中でも前作初期からいる3人の場合は前作雪原の時も一緒だったことになります。

 

 

──雪山への経緯──

 

 

 空に浮かび、そこから一方的に高威力のメガ粒子砲を放つモビルアーマー。アプサラスⅡ。

 その砲撃の威力はすさまじく、何度も放たれれば第13独立部隊もただではすまないほどであった。

 

 シロー・アマダは隙をつき、アプサラスを屠るべく陸戦ガンダムを飛び上がらせ、飛びついた。

 

 その巨体にビームサーベルを突き立てようと、振り上げる。

 

 

シロー「っ!」

 

 

 千載一遇のチャンス。

 だが、それが振り下ろされることはなかった。

 

 なにかに気づいたのか、彼はそれを振り下ろすのをためらってしまった。

 

 その隙に、アプサラスⅡはメガ粒子砲を放とうと、その砲身にエネルギーを集中させる。

 

 

統夜「アマダ少尉!」

 

 

 とっさに統夜が飛び上がる。

 

 

統夜「それは撃たせない!」

 

 

 グランティードが手刀を振りかぶる。

 このタイミングならば、あれが撃つ前に統夜の手が届く!

 

 

シロー「っ! ダメだ、統夜!」

 

統夜「っ!」

 

 

 本来ならコックピットの中で叫んでも声は聞こえない。

 

 だがそのシローの強い想い。

 シローの叫びに、サイトロンが答えた。

 

 統夜はサイトロンを通じ、シローの意思を感じ取り、とっさの理解を示した。

 

 しかし相手はすでに発射態勢に入っている。これを防がないと地上側に大きな被害が出るのは確実だった。

 

 

統夜(ならっ!)

 

 

 統夜は攻撃する場所を変えた。

 機体を手刀で貫くでなく、その手刀を砲身に突っこんだのだ!

 

 

統夜「オルゴンクラウド全開! 防御を固めろ!」

 

アイナ「うそっ!?」

 

統夜「頼む。これで!」

 

 

 どんっ!

 

 砲が光った瞬間、その場所が大きく輝く。

 

 

 衝撃が、アプサラスⅡ、グランティードに走りぬけた。

 

 

統夜「ぐうっ!」

 

アイナ「コントロールが!」

 

 

 アプサラスはそのまま、砲身に手をつっこんだグランティードをシローを身につけたまま、ふらふらと飛んで行く。

 

 あまりの衝撃に、統夜達は意識をとばし、一時コントロール不能となったグランティードはそれから抜け出すことがかなわなかった。

 

 

甲児「やった!」

 

豹馬「やったか!?」

 

 

 空で瞬いた光を見て、親友二人が声を上げた。

 

 

十三「いや、まだや!」

 

ドモン「まだ飛んでいるぞ」

 

チボデー「おい、逃げるぞ!」

 

健一「いや、コントロールが効いていないようだ」

 

鉄也「紫雲、アマダ少尉、離れろ!」

 

統夜「ぐっ、う……」

 

甲児「ダメだ。衝撃で意識がとんでやがる」

 

シン「なら、撃ち落としてやる!」

 

アスラン「今の状態で落ちたら大惨事だ。やめておけ!」

 

 

 誰かが追おうとするが、その時ジオン軍の援軍が現れ、そんなことをしている暇はなくなってしまった。

 

 誰も手を出すことができず、アプサラスⅡが飛び去るのを見逃すしかなかった。

 

 

甲児「統夜、シローさん、無事でいろよ!」

 

 

 彼等は信じている。

 統夜がこのくらいで死ぬわけがないと!

 

 

 こうしてこの後、シローとアイナ。そして統夜達は雪山へと墜落する。

 

 アプサラスⅡに乗るアイナとシローは同じ場所に。

 

 統夜達は少し離れた場所に落ちた。

 着地などは統夜が意識を失っている間、先に目を覚ましたヒロインがなんとかしたようだ(なんとかアプサラスから離れて着地するので精一杯だった)

 

 近い二か所の通信は可能だったが、吹雪く山外への通信はできなかった。

 不時着の衝撃で目を覚ました統夜はシローへ連絡をとる。

 

 隊にはつながらなかったが、シローの反応が返ってきた。

 

 

シロー「統夜、無事だったか!」

 

統夜「はい。こっちに怪我はありませんし、機体のダメージも腕以外ありませんから大丈夫です。俺達より、そっちの方こそ大丈夫ですか?」

 

シロー「そうか。なら、安心だ。こっちも自分達だけなら問題ない。ただ、陸戦型ガンダムはもう動けない」

 

統夜「なら、吹雪がやみ次第むかえに行きます。こちらはコックピットから出なければ一晩過ごすのも問題ありませんから」

 

シロー「吹雪の今むやみに動くのも危険だしな。わかった。互いに無事すごせることだけ考えよう」

 

統夜「はい」

 

 

 ここから個別シーンがはじまる。※五十音順

 

 

──カティア──

 

 

統夜「ふう。あとは吹雪が収まるまで待つしかないな」

 

 

 通信のスイッチを切り、統夜は後ろにいるカティアへ振り返った。

 カティアは統夜がシローと通信している間に、コックピット内の気温調整など、ここで吹雪をやり過ごせるための準備をしていた。

 

 

統夜「ありがとな。俺が意識を失ってる間に、ちゃんと着地してくれて」

 

カティア「ええ。統夜君ほどでもないけど、私だってサイトロンを操れるもの。落下しはじめたあの機体から離れて着地するくらいはできるわ」

 

統夜「カティアがいなかったら、全員がまずかったかもしれないから、本当に助かったよ」

 

カティア「そう言ってもらえるのはうれしいわ。でもね、統夜君?」

 

統夜「……」

 

 

 にこりと自分に微笑むそのカティアの笑顔。

 それは笑顔だというのに、なぜか統夜の背筋が震えた。

 

 きっと外が吹雪だから、寒く感じたのだろう。きっとそうだと、統夜は少し現実逃避をした。

 

 

統夜「や、やっぱり怒ってるか?」

 

カティア「さて。それは理由を聞いてからになるわね」

 

統夜「理由……?」

 

カティア「ええ。理由よ。一歩間違えれば大変なことになったとはいえ、そうせざるを得ない理由があったんでしょう? じゃなきゃ、あなたはそんなことしないわ」

 

 

 それは、信頼だった。

 統夜が命の危険をかけてまでなにかをする。それは、命をかけるだけの理由がある。

 

 それをカティアは知っている。

 

 ゆえに、まずはその理由を聞いてからだった。

 

 

統夜「実は……」

 

 

 統夜はバツが悪そうに頭をかきながら、アプサラスⅡを貫かず、砲身をダメにするだけにした理由を語る。

 

 

統夜「あの時、感じたんだ。あの機体に乗っていたのは、前にアマダ少尉の言っていた人だって。だから、ああして一撃をとめる方法しか思いつかなかった……」

 

 

 地上にも被害を出さない。

 かつ相手パイロットも助ける。

 

 その両方を両立させる方法が、あの砲身に手をつっこむという無茶だったのである。

 

 

カティア「そう。そういうことだったのね……」

 

 

 カティアは統夜の言葉を聞き、どこか納得したようにうなずいた。

 彼女も統夜ほどではないがサイトロンを感じとれる。あの時、彼女の方もシローの必死な想いを感じとってもいたのだ。

 

 

カティア「ならしかたないわね」

 

統夜「え?」

 

 

 あっさりとうなずき、怒りを解いたカティアを前に、統夜はどこか間抜けな声を上げてしまった。

 てっきりコックピットに正座でもさせられて叱られると思っていたからだ。

 

 

統夜「怒らないのか?」

 

カティア「理由が理由だもの。ちゃんと考えがあってやったのなら、怒る理由もないわ。こうして私も、シローさんもその女の人も無事だし」

 

統夜「でも、俺一人だと最後でみんな地面にたたきつけられていたかもしれない。今回は、叱られても仕方がないと思うよ」

 

カティア「そうね。統夜君だけならダメだったかもしれないわね。でも、そういう時のために私が乗っているの。そうしてなんとかなったんだから、今回はそれでいいのよ」

 

統夜「……いい、のか?」

 

カティア「ええ。いいの。だから統夜君。あなたはそのまま自分の信じる道を進みなさい。きっとそれが、一番よ」

 

統夜「え? 本気か?」

 

カティア「何度も言わせない。そりゃ心配よ。自分のことは二の次だし。いつも無茶するし、考えなしだし」

 

統夜「こ、言葉もない……」

 

カティア「でも、それが統夜君だもの。人のために、自分を投げ出せる。そうした無茶を少しでも成功に近づかせてあげる。背中を支えてあげる。それが後ろで背中を見てる人の役割でしょ。それに、本当に失敗しそうになったら私達がとめてあげる。だから、いくらでも無茶していいのよ」

 

統夜「……」

 

 

 にこりと微笑んだ少女を見て、少年は一瞬、その姿に見惚れてしまった。

 

 

統夜「……無茶していい。か。毎回毎回カティアには迷惑をかけるな」

 

カティア「いいのよ。それが今、私のやりたいことなんだから」

 

統夜「わかった。これからも、頼りにしてる」

 

カティア「ええ。任せて」

 

 

 二人は顔を合わせ、笑いあった。

 

 

 くー。

 そして、二人同時にお腹がないた。

 

 

 二人で苦笑しあう。

 

 

カティア「恥ずかしいわ……」

 

統夜「さすがに戦いからずっと飲まず食わずだし、仕方ないさ。確かこのへんに……」

 

 

 統夜はコックピット内のスペースをごそごそとあさった。

 するとパカリと隠しハッチが開き、たくさんのお菓子が飛び出してきた。

 

 

統夜「やっぱり、あった」

 

カティア「メルアの隠したお菓子。あの子、また……」

 

統夜「でも今は助かるから、今回は見逃してやろう」

 

カティア「そうね」

 

統夜「とりあえずこれを食べて、吹雪が収まるのを待とうか」

 

カティア「そうね。いくら空調が効いたコックピットの中とはいえ、寝てしまうのも危険だし」

 

カティア(それに、二人きりで話をするなんて、ひさしぶりだもの)

 

 

 雪降る中、二人は他愛のない話をとめどなく語りあうのだった。

 

 

──シャナ=ミア──

 

 

統夜「あとは……」

 

 

 シローとの通話が終わった統夜は、コックピット内の設定をいじる。

 戦闘中と違い、吹雪の中快適に過ごせるよう内部の温度設定などを変えたのだ。

 

 その行為は、雪の中どうすればいいのか。わかっている手つきだった。

 

 

統夜「これでよし。あとは吹雪が収まるのを待つだけだな」

 

シャナ=ミア「手慣れていますね」

 

統夜「前に一度、雪山で遭難したことがあってね。そのおかげさ」

 

シャナ=ミア「そうなんですか」

 

統夜「そうなんだよ」

 

シャナ=ミア「……」

 

統夜「……」

 

シャナ=ミア「ぷっ」

 

統夜「ははは」

 

 

 流れた空気に、二人は思わず笑いあう。

 

 

シャナ=ミア「冗談を言うだけの元気があれば、もう大丈夫ですね」

 

統夜「ああ。色々心配かけてごめん」

 

シャナ=ミア「いいえ。それがトウヤですからね。それをどうにかフォローするのも、サブシートに座っているものの役目でもあります」

 

統夜「悪いな。無茶ばかりで」

 

シャナ=ミア「本当にですよ」

 

シャナ=ミア(だからこそ、もっとトウヤをフォローできる体制があった方がいいでしょうね)

 

 

 そう感じたシャナ=ミアは、月の同胞に連絡し必要な物資を送ってもらえるよう手配する決意をする。

 

 

統夜「どうかしたか?」

 

シャナ=ミア「いいえ。なんでもありません。二人きり。というのはひさしぶりだと思って」

 

統夜「ああ、確かにね」

 

シャナ=ミア「トウヤ、隣に行ってもいいですか?」

 

統夜「え? かまわないけど……」

 

 

 シャナ=ミアは、統夜の隣にむかう。

 

 一体なにかと、統夜も少しドキドキしてしまう。

 

 

シャナ=ミア「ああ、やっぱり。こちらの方が、外がよく見えます」

 

統夜「ん? ああ、そうか。そういうことか」

 

シャナ=ミア「綺麗……」

 

 

 ひと時吹雪が収まり、静寂の時間が訪れた外を見て、思わずつぶやいた。

 

 舞い散る雪を見て、シャナ=ミアは思わずつぶやいた。

 

 統夜の色々複雑な気持ちに気付かずに。

 それはある意味、統夜にとっては幸運だったということか。

 

 

統夜(このまま収まって朝になってくれればアマダ少尉も助けにいけるな)

 

シャナ=ミア「トウヤトウヤ。風に舞い上がった雪がキラキラ光ってます!」

 

統夜「ああ。俺もはじめて見た」

 

シャナ=ミア「地球は、本当に美しい星ですね。いろんな表情を見せてくれます……」

 

 

 彼女はフューリーという種族がこの地球に来てから生まれた存在だ。

 彼女は月の中で生まれ、ずっとそこで生活し、そこから外を見てきた。

 

 こうして彼女自身の目で自然を見るのは、あの日統夜が外へ連れ出してからなのだ。

 

 ゆえに、こうして自分の目で見る地球の美しさは、人とはまた違った感動を生むのである。

 

 

統夜「俺も、綺麗だと思うよ」

 

シャナ=ミア「はい!」

 

 

 しばらくすると、また吹雪がはじまってしまった。

 先ほどとは打って変わった力強ささえ感じる雪の嵐。

 

 それはそれで、彼女には新鮮な体験だった。

 

 前面に展開されたモニターに張り付くようにして、「おおー」「わあー」と声を上げている。

 

 

 そうして無邪気にはしゃぐ彼女の横顔を見て、統夜は思わず……

 

 

統夜「ホント、綺麗だな」

 

 

 思わずぽろりと、口に出してしまった。

 

 

シャナ=ミア「はい。綺麗ですね!」

 

統夜「……っ! あ、ああ」

 

 

 一瞬、自分の言葉を聞かれ、焦った統夜だったが、彼女は自分の言葉を聞いて地球が綺麗だととってくれたと悟り、安堵の息をはいた。

 

 

統夜(あ、危なかった。なに考えてるんだ俺は……)

 

シャナ=ミア(い、今の、地球のでよかったのよね。まさか、私なわけ……)

 

二人「は、ははは」

 

統夜「あ、そうだ。確かこのあたりに……」

 

 

 誤魔化せといわんばかりに、統夜はコックピットのスペースを探る。

 ぱかりと隠しハッチを開き、そこからお菓子を取り出した。

 

 

統夜「やっぱり、あった」

 

シャナ=ミア「なぜ、そんなところにお菓子が……?」

 

統夜「メルアがこっそり隠してるんだよ。水は作れても、食べ物はないだろ。今回は非常時だ。もらおう」

 

シャナ=ミア「そういえば、そうですね。あとでメルアさんにお礼を言わないと」

 

統夜「お礼はどうかと思うけど、まあ、カティアが叱ってくれるだろう」

 

シャナ=ミア「ならお礼を言うのも問題ありませんね!」

 

統夜「そのあと俺達も怒られるかもしれないけどな。今回の件で主に俺が……」

 

シャナ=ミア「それは仕方がありませんね。皆さん心配しているでしょうから」

 

統夜「だよなぁ……」

 

シャナ=ミア「さ、さあ。今はそんなこと考えず、楽しみましょう! 私これ食べてみたいです!」

 

統夜「そうだな。今は今を切り抜けることを考えないと」

 

 

 そうして、二人はお菓子を広げ、他愛もない話で盛り上がった。

 

 

──フェステニア──

 

 

統夜「ふう。アマダ少尉も無事みたいだし。あとは……」

 

テニア「こっちの調整も終わったよー」

 

 

 統夜がシローと話している間に、テニアはコックピット内の温度設定など、吹雪をやり過ごす設定を終えていた。

 

 

統夜「お、早いな」

 

テニア「そうだね。さすがに二回目だから、だいぶ慣れたもんだよ」

 

統夜「なら、あとは吹雪が収まるのを待つだけだな」

 

テニア「だねー。しっかしまた雪山で遭難なんてね」

 

統夜「前は北欧だったけど、今回はヒマラヤか。けっこう雪に縁があるな」

 

テニア「まあ、今回は機体も腕以外万全だから余裕だけどね」

 

 

 その気になれば帰れる。ただこの吹雪の中でシローを発見できないだけだ。

 わざわざ一度帰って探しに戻るより、ここにとどまり吹雪が収まり次第シローも回収して帰る。それが統夜達がここにとどまる理由である。

 

 

統夜「確かに余裕だ。ただ、帰ったら間違いなく怒られるな」

 

テニア「そりゃ怒られることしたからね。なんであんなことしたのさ?」

 

統夜「あの時、アマダ少尉の声が聞こえたんだ。そして、あの機体に乗っているのが、前に言っていた人だって気づいた。だから、ああして一撃を遮るしかできなかったんだ……」

 

 

 地上にも被害を出さない。

 かつ相手パイロットも助ける。

 

 その両方を両立させる方法が、あの砲身に手をつっこむという無茶だったのである。

 

 

テニア「そっかー。なら仕方ないね。それを素直に言えば、ちょっとは軽くなるかもしれないよ」

 

統夜「言った方がいいか。ならそれに従おう。二人共怒らせると怖いからな」

 

テニア「特におっかないのはメルアの方だよね。滅多に怒らないから、怒らせると……」

 

統夜「ああ。あの時は怖かったな……」

 

 

 二人で思い出し、ぶるると背筋を震わせた。

 

 

テニア「そもそも二人共心配しすぎ。アタシと統夜なんだから、そんな心配いらないってのに!」

 

統夜「……ふむ」

 

テニア「ね!」

 

統夜「いや、正直心配されて怒られて当然だと思う」

 

テニア「なんでさー!」

 

 

 自分のやらかしていることを色々思い返し、統夜は自分の意見に大きくうなずいた。

 

 

統夜「だって無謀なことを平気でやる俺と、同じく深く考えずに行動するお前だぞ。甲児だって豹馬だって心配する」

 

テニア「あの二人にまで心配されるって心外だよ! あっちだって心配させる側じゃん! 統夜と同じレベルだよ。アタシも同じってことそれ!?」

 

統夜「そうだろ」

 

テニア「そうなの!?」

 

 

 あっさり統夜にうなずかれ、テニアはショックを受けた。

 

 

テニア「なんかショック……」

 

統夜「けっこう失礼なこと言ってるぞ。まあ、俺はかまわないけど」

 

テニア「その余裕、なんかむかつくー」

 

統夜「そうかな? 割と妥当だと思ってればそんなもんだろ?」

 

テニア「なんか納得いかない……」

 

統夜「……俺はさ、テニアと一緒にいるとなんでもできる気がするんだ。テニアと一緒なら、どんな状態でも生きて帰れると思える。テニアはどうだ?」

 

テニア「そ、それはアタシだって! 統夜と一緒ならなんだって平気だよ!」

 

統夜「だから、どれだけ心配されても俺は平気なのさ。だって、必ず生きてみんなのところに帰るんだから。それなら、いくら心配されても平気だろ?」

 

テニア「……それ、言ったら絶対火に油だと思う。無根拠すぎ」

 

統夜「え? これ言ったらまずいか?」

 

テニア「うん。絶対怒られる。統夜は平気でも待ってる方は平気じゃないよ。セイザ追加される。うん。絶対」

 

統夜「そうか。なら、これは主張しないでおこう」

 

テニア「うん。アタシと統夜だけの秘密にしとこう」

 

統夜「そうするか」

 

テニア「だって、アタシ達だけが知ってれば大丈夫だもんね!」

 

統夜「そうかもな」

 

テニア「えへへ」

 

統夜「どうした?」

 

テニア「なんか楽しくなってきちゃった」

 

統夜「心配してるみんなが聞いたら怒られるな」

 

テニア「いいじゃん。誰かに話すわけでもないんだし。帰れるのは絶対だし。楽しまないと損だよ!」

 

統夜「テニアらしいな。でも、おかげで俺も気が楽だ」

 

テニア「だよね! 暗くなってもしかたないし。あー、これでなにか食べ物があればもっといいんだけどなー」

 

統夜「ああ。お菓子なら多分……」

 

 

 統夜はコックピット内のスペースを探る。

 するとパカリと隠しハッチが開き、たくさんのお菓子が飛び出してきた。

 

 

統夜「やっぱり隠してたか。意外に入ってるな」

 

テニア「メルアまたやったなー。でも、今回は許してあげよう。ついでにこれでメルアのお叱りも回避できる!」

 

統夜「……その発想はなかった。なんてことを考えつくんだ」

 

テニア「まるでアタシが悪知恵が働くみたいに! もっとちゃんと頭いいって褒めてよ!」

 

統夜「いや、これ褒めるのどうかと思う」

 

テニア「褒めてよー」

 

統夜「えらいえらい」

 

テニア「褒め方雑!」

 

統夜「すごいすごい」

 

テニア「全然褒めてないー」

 

統夜「あはは」

 

テニア「あははははは」

 

 

 二人は笑いあい、取り出したお菓子を食べはじめる。

 

 

テニア「でさ……」

 

統夜「ああ。あれは……」

 

 

 他愛もない話題がポンポンと出てくる。

 二人はそのまま、吹雪がやむまでとりとめのない話を繰り返すのだった。

 

 

──メルア──

 

 

統夜「あとは吹雪がおさまるのを待つだけだな」

 

メルア「はい。こちらも調整終わりましたよ」

 

 

 コックピット内の温度調整などを終えたメルアが微笑む。

 外は吹雪だが、これで凍えて死ぬということはない。

 

 

統夜「ありがとな。無茶に付き合ってくれて」

 

メルア「いいんですよ。あの機体にシローさんの知っている人が乗っていたんでしょう?」

 

統夜「ああ。わかったのか?」

 

メルア「なんとなくですけど。私だってサイトロンあつかえるんですよ?」

 

統夜「それはそうだ。説明の手間が省けて助かった。その人も無事だそうだ。なんとかなってよかったよ」

 

メルア「そうですね。わたしも着地がんばったかいがありました!」

 

統夜「ああ。それも感謝してる。毎回、メルアには助けられてるな。ホント、メルアは凄いよ」

 

メルア「えぇっ!? い、いきなりなんですか!? 凄いと言うなら統夜さんの方ですよ! わたしより何倍も凄いです!」

 

統夜「いや、メルアの方が凄い。その何倍もだよ」

 

メルア「なら統夜さんはその何十倍です!」

 

統夜「いやいや、メルアはその百倍だ!」

 

メルア「むー。なら、千倍です!」

 

統夜「……」

 

メルア「……」

 

二人「ぷっ」

 

 

 あはは。と二人は顔を見合わせ、笑いあった。

 

 

統夜「じゃあ、二人共凄いということで」

 

メルア「はい!」

 

統夜「まあ、いくら凄くても俺は帰ってから二人に叱られるだろうけど」

 

メルア「あ、あはは。否定できません。でも、テニアちゃんもカティアちゃんもそれだけ統夜さんのことを心配して、大切に思っているからですよ?」

 

統夜「それはわかっているさ」

 

メルア「だから、叱ってもらえるのはむしろ喜ばしいことだと思います! よかったですね統夜さん!」

 

統夜「なんか、それ、言い方……」

 

メルア「?」

 

統夜「まあいいや。確かにその通りだ。そうやって俺を気にかけてくれてるわけだし、俺を叱ることで気持ちの整理ができるならそれでいい。そう考えれば、帰るのも苦痛じゃないな」

 

メルア「はい。そうです!」

 

 

 よし。と統夜は意識を切りかえた。

 

 

統夜「さてと」

 

メルア「ふふっ」

 

統夜「ん? どうした?」

 

メルア「いえ。統夜さんだな。と思って」

 

統夜「俺だな?」

 

メルア(みんなのことを考えて、自分が損をしてもいいなんて。そんなところが、統夜さんなんですよ)

 

メルア「わたしはそんな統夜さんの味方ですから。応援していますよ!」

 

統夜「あ、ありがとう?」

 

メルア「今回も一緒に謝りますし!」

 

統夜「う、うん」

 

メルア「時間を潰すためのお菓子もこうして用意してあります!」

 

統夜「おおー。飲まず食わずだったから、助かる……って、また隠してたのか!」

 

メルア「ふふっ。今回も共犯ですね」

 

統夜「ったく。ちゃっかりしてるな」

 

メルア「さ。統夜さん。これおススメですよ」

 

統夜「はいはい」

 

 

 ぱくりと、差し出されたお菓子を口にした。

 

 

メルア「……」(食べさせるの、なんか、いいですっ!)

 

統夜「へえ。メルアが勧めるだけあって美味しいな」

 

メルア「はい。こっちも美味しいですよ!」

 

 

 ぱくり。

 

 

メルア「こっちも!」

 

 

 ぱくり。

 

 

メルア「これも!」

 

統夜「ちょっ。メルアストップ。自分で食べられるから!」

 

メルア「え? あ、そっ、そうですね。すみません!」

 

統夜「いや、いいんだ。ただ、ほら、な?」

 

メルア「はい。子供じゃありませからね!」

 

 

 恥ずかしさのあまり、二人して顔を赤くし、改めてお菓子へ手を伸ばすことになった。

 どう恥ずかしいのか。その基準は二人の間に差はあるが、ここではあえて説明しない。

 

 

統夜「しかし、こうして食べてみると、メルアの手作りも全然負けてないのが凄いな」

 

メルア「そうですか? えへへ。嬉しいです」

 

統夜「本当に店を出せるかもな」

 

メルア「本当ですか? 本気にしちゃいますよ」

 

統夜「本気でやったらきっと凄いことになるかもな」

 

メルア「そっかー。えへへ」

 

統夜「ははは」

 

メルア「あ、ところで統夜さん。この前……」

 

統夜「ああ、あの時のことか……」

 

 

 はにかんだ空気に双方なごみ、他愛もない話が続く。

 そのとりとめのない会話は、そのまま吹雪が収まるまで続くのだった。

 

 

──そして朝になった──

 

 

 翌朝、吹雪もおさまり、晴天が広がった。

 

 統夜はグランティードを飛ばし、シロー達の落ちた場所を目指す。

 すると、同じ場所を目指し飛ぶ、ドダイに乗ったグフ・カスタムがいるのに気づいた。

 

 どうやらこの機体も、昨日のうちに近いところまでやってきていた機体のようだ。

 

 互いの存在に気付いた双方の間に緊張が走る。

 

 

ノリス「むっ、おのれ。このようなところで……!」

 

統夜「待ってくれ! そちらも昨日の仲間を探しに来たんだろう? なら、ここは互いの仲間を助けるということで休戦しよう!」

 

ノリス「……いいだろう。ここで無駄に戦い、助けられるものも助けられなければ本末転倒というものだしな」

 

 

 統夜はノリスと合流し、二人の待つ場所へむかった。

 グランティードとグフは離れた場所に着陸し、別れた二人をそれぞれ回収する。

 

 シローとアイナ。二人は別れを惜しみながらも、互いの仲間のもとへと帰ってゆくのだった……

 

 

 こうして、雪山遭難リターンズは幕を閉じた。

 

 

 追加シナリオ おしまい


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