ダンジョンで妖精王に出会うのは間違っているだろうか   作:さなわかた

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1話 ギルド

「エイナさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん‼」

 

「ん?」

 彼女の名前はエイナ・チュール。ダンジョンの管理を行っている『ギルド』の窓口受付嬢だ。種族はハーフエルフ。ほっそりと尖った耳と、透き通った翠眼をした女性。眼鏡をかけているので、より一層ギルド職員っぽさを醸し出している。エルフ、ハーフエルフの容姿と妖精族のそれは似ている。エルフやハーフエルフと妖精族は何が違うんだ、と疑問に思う人もいるだろう。明確な違いは羽を持っているか持っていないかぐらいのものだ。妖精族には背中に羽が生えているが、エルフにそれはない。妖精族は羽があるが故に空を飛べるそうだ。また、羽根が立派であればあるほど魔力に高い補正がかかるそうだ。英雄譚『七つの大罪』によると、妖精族は、人と人ならざるものの世界が分かたれていなかった古の時代に存在し、3000年前の聖戦によって魔神族、女神族とともに絶滅した種族であり失われた血族(ロスト・ブラッド)とされていた。しかしそれらの血は途切れることなく脈々と受け継がれてきて、10年ほど前、のちに最強の冒険者と呼ばれるようになる3人の失われた血族(ロスト・ブラッド)がここオラリオにやってきたのだ。

 

 閑話休題。エイナは、ベルの声が聞こえて今日も無事であることを確認でき安堵したのもつかの間、モンスター?のどす黒い血を全身に浴びている少年(ベル)がこちらを向いて走ってきているのを見て、思わず

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉」

と叫んでしまった。ベルはすかさず

「グロキシニアさんの情報を教えてくださぁぁぁぁぁぁああいっ‼」

と聞いてきた。

 

 

 

 

 

ベルside

 

「ベル君、キミねぇ。どうしたら全身血まみれで人の目も気にせずここまで走ってこれるのよ。さっきの、モンスターの血でしょ?とても生臭かったわよ?私ちょっとキミの神経疑っちゃうなー。」

「ぐっ、そ、そんなぁ…。」

エイナさんにそんなことを言われてしまって、僕の心はズタボロになり項垂れた。仕方がないんだ。僕の頭はあの人のことでいっぱいだったんだ。僕はそうやって心の中で自分を正当化した。そんな僕を見たエイナさんは、苦笑しながら僕の鼻をちょんと指で押さえると、

「しょうがないなぁ。今度から気を付けるんだよ⁉」

と言って微笑んでくれた。エイナさんはやっぱり可愛い女性だなと思う。だから、僕は首をブンブンと大きく縦に振って応えた。

「それで…グロキシニア氏、の情報だっけ?どうしてまた?」

「えっと…、その…。」

 僕はエイナさんに、いつもはダンジョンに潜るのは2階層までだが今日は調子に乗って5階層まで潜ったこと、そこでいるはずのないLV.2にカテゴライズされるモンスターであるミノタウロスに遭遇したこと、必死に逃げ回ったが道が行き止まりになって追い詰められて死を直感したこと、その時赤い長髪の妖精族の彼女:グロキシニアさんに助けてもらったこと、そして、お礼を言わずに逃げ出してしまったことを伝えた。僕が話していくうちに、エイナさんの表情が険しくなっていき、僕が話し終わった途端に

「もぉぉ!どうして君は私の忠告を無視するの?ベル君はほかの冒険者とは違ってソロでダンジョンに潜っているんだからね⁉それだけ危険度が増しているんだよ⁉不用意に下層へ行っちゃだめ!冒険しちゃダメだって何度も口を酸っぱくして言ってるでしょ⁉」

と叱咤してきた。また怒られてしまった。これも僕の所為なのだが。

 

 

 『冒険者は冒険しちゃいけない』

 

 エイナさんの口癖だ。つまりは、不用意に危険を冒さず、常に安全を第一にして行動しろということだ。特に、僕みたいなLv.1の駆け出しの冒険者はこの言葉を肝に銘じていなければならない。事実、駆け出し冒険者は自分の実力を過信して下層の潜り、命を落とすケースが多いそうだ。実際に、僕も理由は違えどいつもより下層へ潜り、あの人が助けてくれなければ間違いなく命を落としていた。ただ、誰が5階層でミノタウロスと遭遇すると予想できるだろうか?改めて考えるとゾッとする。だから、これからはエイナさんの言いつけをしっかりと守っていこう。

 

「それで…あの…、グロキシニアさんのことなんですけど…。」

「プライバシーの問題もあるから公然になっていることぐらいしか話せないけど…。なぁに?もしかしてベル君、グロキシニア氏に惚れっちゃったの?」

「はいぃ!」

 僕はデレデレになりながら答えた。

 

「グロキシニア。【アテナ・ファミリア】所属のLv.7の霊槍使いの妖精族の女性。オラリオでもトップクラスの実力者。中でも彼女の魔力はオラリオ最強と言われているね。Lv.7以上の冒険者は彼女含めて4人しかいないんだ。彼女が所属している【アテナ・ファミリア】は、オラリオ三大最強派閥の一つだけど、在籍者数はたったの3名。団長は、【憤怒の罪(ドラゴンシン)】メリオダス・リオネスでオラリオ唯一のLv.8の冒険者。彼を怒らせてはいけないのは周知に事実だね。10年以上前、【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】が黒龍の討伐に失敗してその二大派閥が解散した後、オラリオでは闇派閥が力を増していって、遂には当時駆け出しだった【アテナ・ファミリア】に手を出したんだ。それに怒ったメリオダス氏は反撃を行い手を出してきた闇派閥は壊滅。彼を英雄と呼ぶ人もいるけれどこれが彼に【憤怒の罪(ドラゴンシン)】という二つ名がつけられた副団長は、【聖女】エリザベス・リオネスでLv.7の冒険者。彼女は誰にでも優しくて私の憧れだなー。この二人は結婚していて、オラリオ最強夫婦と言われているね。そして最後に【妖精王】グロキシニア。妖精の王の凛とした佇まいから多くの人はグロキシニア様と呼ぶ。巷では【安息】のグロキシニアとも呼ばれているみたい。」

 

 英雄。僕が一番好きな単語で自分の目標。グロキシニアさんはメリオダスさんのような人に惹かれるのだろうか。僕も彼女のピンチを救えるくらいに強くなりたいと改めて感じる。

 

「そのくらいは僕でも知っています。そうじゃなくて、趣味とか、好きな食べ物とか、あと…その……。」

「特定の相手がいるのか…とか?」

「そ、そうです‼」

僕はつい声を荒げてしまった。

「そうだねぇ…。そういった噂は聞いたことがないけれど…。」

「本当ですか⁉」

やった!僕はその言葉を聞いて思わずにやけてしまう。だがそれもつかの間、次の言葉を聞いて、僕はとてつもない衝撃を受けてしまった。

「でも、現実的に考えて難しいと思うよ?」

 

 

 「え゛……。」

ガーーーーン!!!!僕の脳天に雷が打たれた。

「彼女はあの強さと美しさから狙ってる人はたくさんいるんだよ⁉第一、君はもう神アルテミスの恩恵を受けたアルテミス・ファミリアの一員なんでしょ⁉アテナ・ファミリアの幹部(3人しかいない)も務めるグロキシニア氏とお近づきになるのは色々と問題があるの!わかるよね?」

「はい…。」

僕の心はマシンガンで何百発も打たれた感じにボロボロだ。僕はトボトボと歩く。

「この話はこれで終わり!ほら元気出して。今日稼いできた魔石、換金していらっしゃい!」

「はい…。」

 

 

 

「はいよ、1,200ヴァリスだ。」

「どうも…。」

ミノタウロスと遭遇して助けられて、そのまま地上へ上がってきたから今日の稼ぎは少ない。今日のこの低い収入も僕の心に追い打ちをかける。仕方のないことなんだけど…。そんな沈んでいる僕を見かねたエイナさんは

「ベル君。あのね、女性はやっぱり強くて頼りがいのある男の人に魅力を感じると思うんだ。だから、Lv.7かそれ以上になるのは大変だと思うけれどめげずに頑張っていればグロキシニア氏も強くなったベル君に振り向いてくれるかもよ?」

と、ギルドの職員としてではなくエイナ・チュール個人として応援してくれた。

「はいっ‼ありがとうございます、エイナさん。僕、めげずに頑張りますっ!!」

 

 

 

 これまでは出会いという漠然としたものを求めてダンジョンを潜っていたが、これからは違うんだ!グロキシニアさんに振り向いてもらえるように強くならなくちゃ‼

 

 僕はそう心に誓った。

 




読んでくださってありがとうございます。テストが近づいてきて更新が遅れてくると思いますが、今後もよろしくお願いします。

ε‐δ論法むずいです…。
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