この世界のチビとハゲは強い。だがチャオズだ 作:カモミール・レッセン
人間、がむしゃらになっていると時間がすぎるのは早いものだ。
この世界に来てから全く変わらない──ごく僅かに身長はのびた──自分の姿形に、本当にチャオズは人間なのだろうかと疑問を感じつつ、額に汗した俺は空を見上げた。
ああ、今日もカリン塔は高く聳え立っている。そろそろその頂上に手が届くかな、と考えつつ、地面で尻餅をついている筋骨隆々の男性へと手を差し伸ばす。
「手合わせありがとうございました」
「ああ。……驚いた、もうわたしでは勝てない」
男性の名は、ボラ。この聖地カリンを守護する番人たる戦士である。
……『俺』がチャオズとなってから、一年の月日が経過した。ドラゴンボールの世界にチャオズとして転生(憑依?)した俺は鶴仙人の下を離れ、カリンさまに会うことを目的として一人で行動を開始している。
肉体労働を中心にアルバイトをして旅費を稼ぎながらカリン塔を目指したのが一年前。ここに辿り着いたのは、半年ほど前だろうか。俺はここでボラと手合わせをしながら、カリン塔へ挑戦する日を待っている。
始めは警戒されたものの、武術家として真摯な姿勢で接してわかり会えた今、ボラは良い修行のパートナーだ。
始めは勝てなかったが、今では十回やれば十回勝つことが出来るだろう。その成長度は流石というほかない。チャオズもまた、腐ってもZ戦士というわけだ。
「わたしはダメだったが、お前ならもう塔の頂上、たどり着くことが出来るかもしれない。近いうち、挑むのだろう?」
「そのつもりです。体力の方は、自信がついてきましたから」
その急激な成長は、かつてカリン塔に挑んだがダメだったというボラに、可能性を期待させるほどのものだったようだ。
ここでも一つ努力が報われて、俺は表情を綻ばせた。
走り込み、筋トレ、そしてボラとの組み手。現在九歳ほどの小さな肉体には過ぎたオーバーワーク──しかし、この小さな身体はその全てを血肉とするように詰め込み、日々躍進を遂げていた。
ドラゴンボールの世界において『負荷』というのはかなりの確率で成果に直結する、強くなるための近道だ。界王星をはじめとした重力修行がその最たる例だろう。
努力さえすれば、と頭につくが、この世界では専門的な知識がなくても身体を強くするのはさして難しいことではないのである。
ともあれ、日々自分の体が強靭になっていくのが感じて取れるというのは、とてつもないやりがいを感じる。修行は辛いが、日々強くなっていく実感を得るのは楽しくて仕方がない。
しかし──失礼だが噛ませにもなれないと思っていたチャオズもまた、大天才だったというわけだ。俺は、この世界に来たばかりの頃を思い出し、チャオズに申し訳ない気持ちになる。
聖地の番人としての使命があるボラは筋トレこそほどほどだが、俺と組手をしているため僅かながら強くはなっている。にもかかわらず俺の方が強いというのは、チャオズの身体の成長率が関係しているのだろう。
それでも、鶴仙流の修行をロクに受けず投げ出してきた俺は、武術に関しては素人である。
ボラとの組み手は最低限の戦闘勘こそ養えるものの、武術を学ぶことはできない。腕っぷしだけは強いが、それではそこらの喧嘩自慢とさほど代わりない、というのが俺の現状である。
重力トレーニングも、精神と時の部屋も使えない今、これ以上強くなるにはやはり技術が必要だ。
「そのためにも──」
やっぱり、この天まで続く塔を登らなければならないのだろうなあ。
現実の地球でいえば、エベレストを登るほうがよほど簡単だろう。なにせ成層圏まで続くような高さを垂直に登るのだ。正気の沙汰ではない。
だが、それに手が届きうるようになっているのも、今の俺なのだ。
舞空術も使えない今、高くから落ちれば命はないだろう。だからこそ、肉体を研ぎ澄まして機会を待った。
いくら腕っぷしが強くなったと言っても、今の俺には桃白白に破れた直後の悟空ほどの力はないだろう。
その分、コンディションを整えていく。天候、そして体力。もはや、ボラと戦っても消耗は殆ど無い。
挑戦の時が、そこまで来ていた。
現在の戦闘力
チャオズ:100
ボラ:80
日々の肉体的重労働、ボラとの組手により。
武術の知識がない分、同程度の戦闘力を持つ原作キャラクターよりは弱い。
チャオズとの組手により、ボラもこの時点で原作よりやや強くなっている。