スゴロクガンダム戦記(旧潜水艦)   作:ハトメヒト(ヒットマン)

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第10話 逃げるが勝ち (作:K-15さん)

「深度現状維持、速度2ノットまで下げ」

 

レーダーだかソナーだかは知らないが敵が近づいているらしい。

それも3隻、真正面から戦えば負けるのは目に見えている。

けれどもただの一般人の俺にこの潜水艦の動かし方なんてわからないし、起死回生出来る一発逆転の名案なんてのも思いつくはずもない。

艦長シートに座わり顎に手を当てて考えているように見せかけているが、実際は頭の中が真っ白でとてもじゃないが作戦を考えるなんて無理だ。

怖い、体が恐怖で震えてくる。

視界のピントはズレてボヤけるし、体中から汗が止まらない。

そもそもが俺に潜水艦の艦長なんて務まる筈がなかったんだ。

 

「距離1500、目標は速度を維持したままこちらへ向かっています。艦長、如何なさいますか?」

 

「う~ん」

 

「戦況はこちらの不利。ここは無理に行動するのは控えるべきかと」

 

「う~ん」

 

「艦長、聞こえてますか?」

 

「う~ん……はっ!?」

 

マズイ、意識がなくなりかけてた。

隣のラックスの声を思わず聞き流してしまったが、ヤツは一体何を言っていたんだ?

大事な話を「聞いていなかった」なんて言ったらアイツ多分怒るだろうな。

いや、多分じゃない。絶対怒る。

だってここ軍隊だし、知識のない俺にだってそれくらいはわかるさ。

体育教師なんて目じゃないくらい鬼の形相でさ、竹刀じゃなくてライフル銃でも振り回して来るんじゃぁねぇの?

冷たい廊下で腕立て伏せ200回やれとか命令されるに決まってる。

俺そこまで体力ないし、限界は50回がいい所だぞ。

今も吊り上がった鋭い目つきで俺の事を睨んでくるし、感付かれる前に答えないと厳罰だ。

そこは想像で補うしかないが、どうやって誤魔化せばいいんだ!?

どうるす?どうする!どうする!?

 

「き……聞いているにきまっているだろ。艦長なんだから」

 

「で、どうなさいますか?下手には動けませんが」

 

「動けないなら動かなければいいだけさ。無理に動く事はない」

 

「敵をミスミス逃がす事になりますがよろしいので?」

 

咄嗟に思いついたにしては最高の返しだと思ったんだが、俺は頭の回転はそこまで早くないつぅの。

敵が逃げる? そんなの俺に言うなよ!!

って言っても今は俺が艦長なんだよなぁ、言わば最高責任者ってヤツ。

勘弁してくれ、俺は学級委員にもなったことのないような男だぞ。

もう嫌だ、逃げ出したい。

でもこんな何にもない海のド真ん中で死ぬなんてもっと嫌だね。

ならどうするか?

俺はその答えを掴みかけているきがする。

偶然でも、俺はモビルスーツと戦って戦って勝つ事が出来たんだ……ほとんど他の船員のお陰だけど。

この場面で俺がやる事だって前と変わらない、適当に言ってあとは祈るだけだ!!

敵がどこへ行こうとも知るもんか、俺は自分が生き残る方法を選ぶね。

 

「戦って勝ち目はあるの?」

 

「敵戦力は現状では未知数です。これからの基地襲撃作戦の事を考えれば、余計な消耗や被害は避けたいです」

 

「ならやる事は決まっている。俺達の任務は敵基地への襲撃だ。ソレ以外の事は他の部隊に任せておけばいい」

 

「しかし、友軍が被害にあう可能性も」

 

「それはぁ~~」

 

し、しぶとい。

ラックスのヤロウ、この前はコロっと騙されたのに何で今日は素直に話を聞かないんだ!!

でもどうすればいいんだ。

友軍の被害とか言われても、だからって3対1で戦えとでも言うのか?

無理だね、勝てる訳がない。

偉い人が言っていた、戦いは数だと。

ろくに作戦指示も出せない俺が軍隊相手に戦ったって、勝てる可能性は何パーセントくらいある?

ここは何としても俺の言い分を通して敵から逃げるしかない!!

 

「今は戦争はしているんだ。戦場で戦う兵士として、負けてしまったのはソイツ自身のせいだ」

 

「…………」

 

「今は俺達に出来る事をするべきだ。違うか?」

 

どうよ、この渾身のセリフは!!

今の俺スッゲェ艦長ぽい、まるでどっかのアニメや映画のセリフみたいにバッチリ決まったぜ。

理由だってそれっぽいしさぁ。

でもこれが限界だ。

脳みその中身を雑巾みたいに絞り尽くして、もう何にも思いつかない。

 

「自分は……自分は間違っていました!!」

 

「へっ!?」

 

いきなり大声を上げたかと思うと、ラックスは汗ばんだ手で俺の両手を握ってきやがった。

しょうじき、気持ちが悪い。

こんな筋肉質な男じゃなくて、もっとこう可愛くてキレイな女の子は居ないものか。

って居る訳ないか、ここ潜水艦だし。

 

「艦長のお言葉が身に染みました!! 打倒ジオンの為に、自分はどこまでも艦長に付いて行きます!!」

 

「わ、わかってくれればいいんだ」

 

「はい!!奇襲作戦、必ずや成功させましょう」

 

説得に成功したのはいいが、さっきまでと打って変わって暑苦しく鬱陶しい。

ともかく、戦いなんてせずにここは静かに隠れてほとぼりが冷めるのを待つだけだ。

 

「深度下げ、スクリュー停止!!」

 

隣でラックスが俺の変わりに大声で指示を飛ばしてくれている。

レーダーに映る敵の影はゆっくりと俺達の艦に近づいていた。

 

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