スゴロクガンダム戦記(旧潜水艦) 作:ハトメヒト(ヒットマン)
「さぁて、逃げるか!!」
リュックを背中に背負った俺はこんな危ない場所から一目散に逃げる。
いつ敵が襲って来るかもわからないし、早く安全な所へ行って心を落ち着かせたい。
そもそも俺なんかが、何で生身で戦場のド真ん中に放り出されなきゃならないんだ?
まぁ、ガンダムの操縦が下手な俺が悪いんだけどさ。
無理に決まってるじゃん!!
素人だし、モビルスーツも乗りたい訳じゃなくて見るのが好きなんだからさ?
こんな俺がこれだけやれただけでも良しと――
「動くな!!」
これは俺の声ではない。
と、言う事はさっきの美人の女の人ってくらいは俺でも想像は付く。
いきなり『動くな!!』って言われてもすぐに止まれる訳ないし、無視して走り抜けようとしたんだけどそう簡単には行かない。
破裂音が響いたと思ったら右足に急に痛くなって。
いや、痛いって言うよりも激痛って感じか。
もう走る所か立っても居られなくて、無様に草むらの上に転げ落ちた。
「いっ!?」
見たら右足がもう真っ赤に染まって、ズボンにも穴が開いてる。
女の方を見ても右手に黒い何かを握ってるしさ。
ほらアレだ、拳銃。
それを理解した瞬間に俺は血の気が引いたね。
「ぐぅっ!? はぁ、はぁ、はぁ!!」
痛みを我慢して息をするのもやっとで、それ以外は何にも考えられない。
撃たれた痛みにのたうち回っている俺に、ジオンの女は容赦なく蹴りを浴びせてくる。
泣きっ面に蜂ってやつ?
それはもう痛いの何のって。
「ふん。連邦の士官の癖にアタシを見逃したのはどういうつもりかは知らないが、それがお前のミスだ。背中の荷物は見させて貰う」
抵抗しようとしたって無理、今の俺では何にも出来ない。
銃で撃たれてなかったとしても勝てない自信があるね。
肩に引っ掛けてあるヒモごとナイフで切られて簡単に取られちゃったよ。
返して……くれる訳ないよな。
「中身は手持ちの武器だけか。後は……コレは何だ?」
AIを入れたチップがバレたか!?
それは本当にマズイ、今の時代ではアレはまだオーパーツだ。
連邦がジオンに勝てなくなる。
でも今は先の心配をするよりも、足の痛みと生きて帰れるかどうかの方が重要だ。
だんだんと目も霞んで来て良く見えない。
服も汗でビチャビチャだ。
動く事も出来ない。
これはもう、祈っておくしかないかな?
諦めた俺はゆっくりと瞼を閉じた。
「子供のオモチャだと? 訳がわからん。もういい。使えそうなモノは持っていないな」
ラッキーとしか言う言葉が見つからない。
とにかくこれで戦力差が入れ替わるなんて事はなくなった。
それでも女は握った銃を手放さない。
パイロットスーツの内側にてを突っ込んで何か探してる。
もしかして俺にトドメを刺すのかと心配したが、アイツは紫色をした円柱状のモノを銃口に取り付けて空へ向けた。
円柱状のソイツは発射されると紫色の煙を出しながら大空まで飛んて行ってしまう。
「救難信号を出した。お前はアタシと一緒に来てもらう」
「な、何で?」
「捕虜の扱いは条約に従う。だがそれ以外では手を抜くつもりはない。連邦内部の情報を吐き出して貰う
」
捕虜と言ったのか、この女は?
殺されずには済むかもしれないが、ゴツくていかついゴリラみたいなヤツに拷問させられてマズイ飯を食わされる。
そんなのゴメンだね。
でも今からではどうしようも出来ないのが現実か。
女は俺が持って帰るつもりだったリュックを投げ捨て、持っている銃で撃った。
耳鳴りがするくらいデカイ破裂音が響いて、俺は思わず耳を塞いでしまう。
リュックが穴だらけになったと思ったら突然爆発した。
多分、俺が持ってきた爆弾とかが爆発したんだろう。
折角取り戻したコマンドガンダムのデータが無駄になっちまった。
スゴロクだって今や火の中、あともう少ししたら燃やし尽くされて灰に変わっちまう。
呆然と眺めているしか出来ない俺。
そうしたら女の言っていた救難信号に呼ばれてなのか、ドップが俺の真上を飛んで行った。
「来たか。おい、立て!!」
「そう……言われても」
「チッ!! 軟弱なヤツだ。連邦はみんなこうなのか」
足を銃で撃たれて機敏に動ける筈もないだろうに。
女は俺の右腕を強引に掴むと地面を引きずりながら俺を運んで行く。
何も出来ない事も、言い返せない事も、女に引きずられるのも情けなくて涙が出そうだ。
そして向かった先には緑色の軍服を着た男が待っていた。
「少尉、ご無事ですか?」
「何ともない。コイツも一緒に運び出せ。連邦の士官だ、何か情報を握っているかもしれない」
「了解しました」
このままじゃジオンに連れて行かれてしまう。
俺は一体どうなるんだぁ?