スゴロクガンダム戦記(旧潜水艦) 作:ハトメヒト(ヒットマン)
眠っていただろうか、出てきたカードを見てみると、そこに書いてあったのは――
『近くでワームホールが開きマザーバンガードが出現! 2マス進む』
なんと! 俺は驚いていた。あのマザーバンガードが現れるとは、そう思い静かに見守っていたが、隣の操縦席に座っていた女医が騒ぎはじめた。
「何だアレは!? 次元が歪んでいるだと! まさか……ワームホールでも開いているのか!? この目で現象を見られるなんて素晴らしい。近づくぞ! 捕まっていろよ」
など言って興奮のあまりシャトルの操縦がアクロバティックになって激しい動き始める。
そんな操縦を体感して少々吐きそうになっていた。それでもワームホールには近づかせないようにしなければならない。マザーバンガードが現れるとなるなら、出てきた瞬間に勢い余って衝突して死ぬ可能性があるからだ。
「おい! ワームホールから離れろ」
「離れろだと? 私の探究心を邪魔するつもりか!?」
「そんなこと言っている場合じゃないんだよ! とにかく危ないんだよ」
俺はそう言うと女医は舌打ちして機嫌が悪くなったようで……。
「そうか危ないか……だが危ないなんていうのはな、こういう事を言うんだよ!」
そう言って猛スピードでワームホール目掛けて突っ込んで行った。
「お、おい普通の奴よりスピード出ているんじゃないか? ゲー気持ち悪い」
「当たり前だろ、私が開発した特殊エンジンのプロトタイプ積んでいるんだぞ! 理論上マッハ50は出せる。吐くなよ楽しいだろ!? もっと楽しくなるのはこれからだ!」
そう言って時折『ヒャッハー!』とか世紀末めいた事や卑猥なことを叫んだりしていたが、女医さんのアクロバティック操縦による吐き気やらその後に起こった意識が若干飛ぶになどによって止める事が出来なかった。
結局は止める事が出来ず最終的に意識が飛んだのだった。
「おい、お……きろ」
声が聞こえたが知った事ではない。楽しい夢なのだ、邪魔しないで欲しい。
夢の中の自分は、クルーとこの中で一番怖い物を言い合い、お化けとか色々な怖い物を出してくるが、俺は全部怖くないと言い張り、何が怖いのか? 聞かれたらスパイシーチキンが怖いと言ってクルーを騙した。
そうしたら、山盛りのスパイシーチキンが来たけど、怖くないのがバレて鬼の形相をしたサバスに、こう言ったんだった。
「そ、そうです。す、スパイシーチキンではなくて、まんじゅうが怖いんです。それにお茶も怖い――」
「そんな事知るか、起きろって言っているだろ!」
よく分からないが、あの後寝ていたらしい。無事だったみたいだが、何故か股間が痛いし、なにより吐き気でヘルメットのガラスが汚れていて前が見えない。外そうとしたら、女医さんに今度はスネを蹴られた。
まだ機嫌が悪いらしい。あれだけシャトル(ジェットコースター)をかっ飛ばしていたのにまだストレスが発散できていないのか? 先が思いやられる。
「ふん、愚か者が! 空気が無いかもしれないのに良くヘルメットを外せるな、まぁ言ったとしても前が見ないんじゃあ仕方が無いか」
「ああそうさ、汚物まみれのヘルメットじゃ前があんまり見えないし気持ち悪いよ。それより股間が痛いんだがどういう事だ? まさか蹴ったんじゃ!?」
「そうだ、その通りだ。あまりにもふざけた寝言を言っていたのでな、思わず股間を蹴っちゃった」
マジか、あの寝言が出ていたとは、おー怖い怖い。
だがその後もっと怖い物を見てしまった。
女医さんは舌を出して頭に拳を置くと変なポーズをぎこちなく、しかも恥ずかしそうにやっているのを薄っすら見えたからだった。言うならば、自分のSAN値が異様に削られていくような気がした。
精神状態が疲弊した表情が見えないにも関わらず、女医さんには分かった様で……。
「わ、私が一生懸命誠意を見せてやったのに……な、何なんだこのクソ艦長っー!」
そう叫んで走ってどっかに行ってしまった。普段ならあんな事をしないのに変に感じる。
それに、ここがどこだか分からないが、一応仮定するなら、マザーバンガードにほぼ間違いないだろう。
だがあのアクロバティック操縦で良くぶつからなかったよな、除隊したらレーサーにでもなるつもりなのか、など考えていたが、今後について考えることにした。
「さてどうしたものか……?」
そうどうするか思案していても、ノーマルスーツの首回りが汚物だらけだと、気持ち悪いし締まりも悪い。それより汚物の臭いによりまた吐き気が来ていたが、なんとか胃に戻した。
臭いはキツイが、空気が無い可能性などを考慮すると迂闊にヘルメットを外すべきではない。なら安全で空気がある場所を探すしか無い。
そんな時だった。いきなりこの一帯を変な気配が近づいてくるのを感じた。
だが、それに気が付いた瞬間あっさりと消えた。
「おーい誰か居るのか?」
そう叫んでみるが、返事は無く。ただ声が反響するだけ……? おかしい空気が無いはずなのに反響するのは、どういうことなのだろうか? もしかすると、酸素があるというのだろうか!?
もし酸素があるなら汚物まみれのヘルメットから解放されるし願ってもみないことだ。
しかし、これは一種の賭けになる。あまり博打は得意じゃないが、やるしかないだろう。
俺は意を決して、ヘルメットを脱ぎ去った。
だが異常は無く、賭けは成功した。薄暗いがよーく辺りを見回すとそこはMS格納庫だった。少々薄いが酸素はあるようだ。
「格納庫なら宝探しもアリだが、まず女医さんを捜しに行かないとならないな……それより暗いし、何だか寒気がする。ここは電源を探すべきか……」
いろいろ考えた挙句、まずは懐中電灯を探すことにした。まぁ女医さんなら電子煙草でも吸って陽気に過ごしてるだろうという希望的観測も含めた行動なのだが……。
そんなこんなで当ても無く、格納庫内をしばらく辺りを見回していると、宙に浮いていた用具入れの中に、壊れかけの懐中電灯を探し当てた。
光が付いたり消えたりするが、シャトルがどこにあるのか分からないからな、まぁ一応これで我慢するしかなかったわけだが……。
格納庫を出る途中、所々痛んでいるのを発見したが現状では何とも言えないのでスルーした。
懐中電灯を片手に廊下に出るが暗い中を一人で歩くのはやはり怖い。
少しは戦場を駆け抜けて、何とか生き残ってきたとは言え、所々壊れている所を見るとやはり幽霊が出る廃墟みたいで――
『ここから~立ち~去れ~!』
といった女医さんの声に似たような叫び声を耳にしたのだった。
なんだ!? 今の声……まさか女医さんか? ま、まぁどうこうしようと思っても、ただ怖くなるだけだ。
まぁ考えるのはやめよう。あのクソ女医の策略になんか乗りたくない。むしろ願い下げだ。
あれだけマッドでクレイジーなサイエンティストだ。必ず俺を貶めようとしているはず。いやそうに違いない。
後で会ったらギャフンと言わせてやると心に決めた時だった。片手に酒瓶を抱えて寝ているお爺さんが薄っすらと見えた気がした。俺は、恐る恐る近づいてみた。
「…………」
俺は終始無言になってしまった。何故ここにマザーバンガードの技術長さんが寝てらっしゃるんですかね!?
まさか漫画だと自沈後に姿を見せないと思っていたら、ここに居たんですか……へ、へー。
俺は固まっていた。死んでいるようにも見えるが、まるで生きているようにも思える。
しかしそれなら、なぜこの整備長がここにいるのか? なぜ所々壊れかけなのか?
多分このマザーバンガードは自沈後によるものなのだろう。
よく見えなかったが、格納庫が所々痛んでいたのはそのせいなのだと思う。しかしおかしいのは、なぜ現存しているかだ。はっきり言って完全に自沈したはずだ。それなのに残っているという事は――
ここで2つの仮説を立てた。ワームホール自体がパラレルで、そこからの来たのではないかという事だ。
漫画だと自沈するはずだが、上手く行かずにクルーはそのまま脱出。副艦長と整備長は置き去りにされ、ワームホールに突入という線。
もう1つは、最初は同じだがあの二人のクルー(副艦長と眼の前にいる整備長)は死んでさまよっているのではないかという線だ。
だがそれを証明するには、どうなろうとこの整備長を起こすしかない。
たとえ死人であっても――
数分が経っただろうか、俺は意を決して、整備長を起こしたが「うるさいやめろ!」と言われ蹴られ、整備長はまた眠りについてしまった。
って実体があるということは生きてるってことか、良かった安心した。でもどうやって起こそう?
いっそのこと笛でも吹いて起こそうかな? などと考えた挙句に、酒瓶に入った酒を整備長の頭から掛ける事にした。やはり一番効果的なのは、水を頭から掛ける事だ。とはいっても今回は酒だが……。
抱いていた酒瓶を引きはがすと、勢い良く頭からぶちまけた。
すると、むくっと起き上がると
「なにすんだテメェ、おいベラ艦長はどこだ? それより何で照明が落ちてるんだ!?」
などと、言って突っ掛ってきたが、整備長が俺のノーマルスーツを見ると驚いていた。
「お前、連邦軍か!」
そう言ってきて睨んできた。
どうしようすごく睨まれているんですけど……。
はたしてこれからどうなるんだろうか?
途中のは、饅頭怖いです(笑)