スゴロクガンダム戦記(旧潜水艦)   作:ハトメヒト(ヒットマン)

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6400文字越えバンザイ


第30話 女医さんと将軍

 上陸後に感じたのは、何とも言えない混沌とした雰囲気だった。俺は、コンペイトウ(ソロモン)に上陸したのだなと、感慨にふけってボーっと立ち尽くしていたのだが、後ろから女医さんに無言で一発蹴りを入れられた。後ろを振り向くと、女医さんは凄みを利かせて睨んでいた。

 

 心の中で早く行けと言っているのだろう、そうに違いない。

 しかし俺の方が艦長で階級も上なのに、暴力を振るうのだからたまったものではない。

 それにあの騒動の後、日付はいつなのか分らないままになっている。

 

 それよりも最も重要なのは、すごろくのカードのアレを打ち消す女医さんの事だ。

 あの人ってどんな超人なんですかね。女医は神と同義なのか?

 などと疑問に思いながら進んでいると、ふと女医さんから声を掛けられた。

 

「一応言っておくのを忘れていたが、追加で第二調整を行うからな、その5時間後に第三調整を急ピッチで行うから覚悟しておけ!」

 

 え、まだあれで完成じゃなかったの? 調整ってもしかして、俺って強化人間って事なんですかね? 良く分らないままなんだが、どうなんだろうか……。

 

「思ったんだが調整っていう事は強化人間って事なのか?」

「強化人間か……あんな出来損ないの失敗作にして欲しかったのか? それがお望みなら今からでも遅くはないからやってやらんでもないがな」

 

そう女医さんは言っていた。しかしその言葉の真偽が分からない。それに強化人間を失敗作と言ってしまうとは、女医さんはやはり神なのか? 疑問は尽きないが、ここはこう言っておくことにした。

 

「いや止めておくよ。あんな精神に変化をきたすのは、ちょっと嫌だな」

 

 そう言うと、女医さんは若干機嫌が良くなった様だった。

 

「患者の意見は尊重するさ、それに強化人間になってしまったら、面白い艦長が見られなくなるのは少し辛いからな、それに調整と言っても機械の調整かもしれないんだからな、だがそこは女医機密に関わる事だ。あまり詮索はされたくはないのでな……」

 

 そう話していると、向こうから誰だか知らない奴が話しかけてきた。

 階級章を見ると少将みたいだったが、なんだか嫌な気配や匂いがする。もっと言うと、醜い豚小屋みたいな……。

 などと考えていたが、いきなり向こうがキレて罵声を浴びせてきた。

 

「おい聞いているのか!? 無視するな、このうすら間抜けめがッ! お前に散々痛めつけられた挙句に、一度は一番下まで落ちたが、今日までで一番最高な日になったよ。だってお前は、窓際に左遷されるんだ。憐れに思わないが、祝福だけしてやるよ」

 

 そう俺に向かって、左遷だのあーだこーだ言われても実感は湧かない。左遷って言われても多分トリントン辺りだろう。まぁこの戦争終わったら対デラーズフリートの準備をやるのもアリっちゃアリなんだよな、それに考え事をしていたんだ、別に無視していた訳じゃない。それに記憶喪失なんだし、あんたの事なんざ何にも知らないって事を軍関係者に伝わっていないのか?

 

「はぁ……? そうですか、左遷って言われても私は海の中なんで、海で左遷されるって言われても解隊されない限りできないんですがね。それに散々痛めつけられたと言っても、私自身が記憶喪失なもので覚えが無いのですよ。」

 

 などと俺自身がふざけた事を抜かしたのだが、向こうはもっとキレた。

 後ろでは、女医さんが「ヤレヤレこれじゃ火に油を注ぐようではないか」と言って呆れていた。

 

「き、貴様タダでは済まさんぞ! このまま上官不敬で軍法会議にかけてやる所だが、そうだな後ろの女医に償いをして貰らえるならこの件を許してやっても良いがな――」

 

 などとふざけた事を抜かしていたが、女医さんは俺に対して耳打ちをした。

 

「ここは穏便に済ます為にあいつの策に乗ってやる。豚みたいに肥えた体をしているんだ。いじめがいがあるじゃないか、まぁこの代償は痛く付くぞ艦長――」

 

 そう言って女医さんは、目からギラリと光り輝き口から涎を垂らしそうになっていた。女医さんの標的になった少将はいろんな意味で死ぬ事は明白だった。

 

「おい! 聞いているのか?」

 

 少将はしびれを切らしたのか怒鳴りだしていた。

 俺はそんな彼を見て、心の中で少々哀れんでいた。

 

 おいおいそんなにガッツくと、自分自身が危うくなるだけなんだぜ知ってたか?

 ほら、隣のマッドは準備万端でいつでも倒せるって顔だぜ。

 

「ごめんなさい少将さん聞いてますよ。じゃ、じゃあ……それはもちろん楽しませてくれるんでしょうね? 少将さん」

 

 上目使いで色っぽく演技をする女医さんのギャップで、俺自身が笑いを堪えていた。

 もうすでに噴出しそうになっていたのだが、ここは穏便に済ませなければならないので水際でせき止めていた。

「もちろんだとも、おいフレア! お前の女は私がいただいた。せいぜい泣きわめくんだなアッハッハッハ」

 

 そう言って女医さんと名も知らぬ少将は、どこかへと向かっていった。

 その後ろ姿を見ていると勝ち誇ったかの如く、少将の横で分からない様にサムズアップしていた。

 女医さんの姿が見えなくなると周りをウロウロし始めた。

 

「暇だな……」

 

 女医さんが去ってしばらく、時間をつぶす為にフラフラ歩きながらボーっとしていた。

 そこであることを耳にした。俺が通ると、自身の陰口が耳に入った。

 内容はやれ昇進コースから外れただの、MSに乗れない無用論者めだのと、聞いていて少々気が滅入った為に、一度ここを離れて艦船ドックに足を入れることにした。

 もしかしたらホワイトベースが見れるかもしれない。

 それに、まだ充分時間はあるのだ。もし見れなくとも気にする必要はない。

 

 

 俺は艦船ドックのあるスペースを近くの兵士に教えてもらった。

 艦船ドックに入ると、ちょうどMSや物資をマゼラン級戦艦に積み込んでいる真っ最中だった。ホワイトベースを探していたが、出港後だったのか見ることさえ出来なかった。

 俺はそんな光景を見ながら艦船ドックの欄干(らんかん)に、もたれ掛ってのんびりしていた。

 それよりすっかり忘れていた(当初の目的じゃない)のだが、バーニィ助けてあげたいな……やっぱり、あのシーンはアルにとっても悲惨だからと、感慨にふけっていると横から声をかけられた。

 

「よう元気そうじゃないか?」

 

 まさか……この声どこかで聞いた気がするが、誰だったかは思い出せない。アンドリュー・グラハムはGガンだから違うし、などと考えて振り向くとそこに居たのは、サウス・バニング大尉だった。

 

「た、大尉がなぜここに?」

「何を言ってるんだ? 大尉じゃない、中尉だ。良く見てみろ!」

「あ、本当だ。すいません中尉、どうしたんです? こんな所で油売ってると上に怒られますよ」

 

 そう俺が言うと、気にするなと言った感じで肩を叩いてきた。

 

「ハハハッ! 記憶を無くしたそうだが、元気にやっているのが分って良かった。しかし何でここに居るんだ。もしかしてサラミスで指揮でも采るのか?」

「さぁ、俺には分からないのですよ。何やら辞令がどうのだとか、左遷されるだの、まだ良く分らないんですよね」

 

 俺は少々不安なのかもしれない。今までのことを考えるとパイロットのトムが死んだり、コマンドガンダムの破壊で敵に捕まって拷問受けて、片足と片目がダメになったりと散々だった。その上、絡んできた少将には左遷だの色々言われていたしな……。

 

「そうか、それよりお前丸くなったな、記憶を無くすことはたまには良いのかもしれないな――」

 

 などとバニング中尉は皮肉めいて言っていたが、俺には何も感じる事さえなかった。やっぱり憑依転生ってこんな物なのかと改めて噛みしめていた。前の俺なんて想像できない。そんな俺はごまかしながらも思い切って聞いてみることにした。

 

「前のことなんて副官から話に聞いていただけで、ほとんど覚えていないのですけど、いつもカリカリしていたんですか?」

 

 そう聞くと、何やら懐かしむように遠くを見据えてこう呟いた。

 

「まぁそうだな、今思えば何かに囚われて生き急いでいた節があったな、それに何か野望みたいなものを抱えていたような……」

 

 バニング中尉がそう言うと後ろから整備員が「整備終わったので出撃お願いします」と中尉のことを呼んでいた。

 

「という訳だ。じゃあなまたどこかで会おう」

「待ってください今日は何月何日なんですか?」

「今日は12月23日だ」

 

 そう言うと去って行った。12月23日か、俺が見ていた時と若干早まっているが場合によっては助けられるかもしれない……。

 そう思った俺は急いで元居た場所に戻ってみると、女医さんはご機嫌で電子シガレットを吹かしていた。

 

「ようやく戻ってきたか、死地へ向かう準備は済んだか?」

「まぁな……それよりあの少将はどうした?」

 

 俺は、あの哀れな少将のことについて聞いてみた。

 まぁ聞かなくても結果は自ずと分かるが――。

 

「ああ、私の従順な豚野郎に成り下がったが、それがどうしたんだ?」

「いや何でも無い。むしろスッキリしたよ」

「それは私も同感さ、さぁルナツーで指示された通りに向おうか、レビル将軍の元へ」

 

 そういうと女医さんは地図を手に歩いていく、俺は後を追いかけ進んでいった。

 何も怖気づく事は無いと思っているが、やはり緊張する。

 結局思案を巡らせ、そうこうしているにうちに着いてしまったらしい。

 

「ここだ、着いたぞ艦長。どうやらここみたいだ」

「そ、そうか……今さらだが俺は逃げたいよ……」

 

 レビル将軍に会いたくはない。

 やっぱりあれは画面越しだったし、沖〇艦長やオ〇ジみたいだって思っていた。

 だからこそ気が楽だった。よく考えると目の前にアニメでしか見ることが出来なかったに顔を合わせることになる。

 それに加えて少々前線に送られるのではないかという恐怖と緊張で逃げたくなっていた。

 

「ふむ……逃げたいか、確かにそう思うのは無理はないだろうな……」

「正直緊張して上手くしゃべれるか心配なんだ」

 

 そう俺が言うと、女医さんはワンクッション置いてこう言い始めた。

 

「良いか良く聞け、これだけは言える。今から会おうとしているのは将軍じゃない。ただの戦術やら軍を率いることが出来るじいさんでしかない!」

「それは何でもひど過ぎるんじゃ……?」

 

 女医さんの言ったことは意外だった。

 もっと違う事を言ったり暴力を振るうと思っていたからだ。

 

「いやひどくないさ、むしろ艦長……いや一人の人間としては、お前は一緒なんだよ。私に例え、魔改造されようとも、泣いたり笑ったりすることが出来る一人の人間なんだ!」

 

 そう言われてハッとして、気が楽になった。

 確かにそうだ。俺は俺であって何者でも無い、ただの人間でただ偉い役職が有るだけだって事を。

 

 

「そうだな、じゃあ行ってくるよ女医さん!」

「そうではなくては艦長じゃないな、行って来い」

 

 そして俺はノックを加え大声で叫んだ。

 

「クレイム・フレア大佐入ります!」

 

 ドアを開けて入っていくと、神妙な面持ちでレビル将軍は両手を組んで座っていた。

 部屋の周りは戦いの後だからだろうか、少しだけ痛んでいた。

 レビル将軍を見ると、チェンバロ作戦の後だからか……少々ピリピリというか、レビル将軍は疲れているような気がした。

 そして俺を見ると、にっこりしながら。

 

「やっと来たか、ルナツーからここまでたらい回しにしてしまったが、よくここまで来てくれた」

「いえ、それより将軍。私を呼んだのは良いのですが、なぜ呼ばれたのか良く分からないのですが……」

 

 なぜ俺が呼ばれたのか分からなかった。

 俺は今まで悪いことなどしていないはずだと思うが……。

 

「実はな、まぁこれは彼女に聞いた方が良いだろう」

「彼女とは? 誰のことですか将軍――」

 

 将軍は一つ間をおいて、真剣な顔でこう言った。

 

「フレイム大佐、君の後ろに居るじゃないか?」

「まさか、エイダ女医の事ですか?」

「そうだ。入ってくれ、エイダ・マクレガー()()()()

 

 と、特務大佐ってどういうことなんだぁ~?

 普通っていうかマッドな女医さんってはずだ。

 俺はこの状況が、うまく飲みこめないでいた。

 心の中で慌てているのをよそに、女医さんは失礼しますと言って入ってきた。

 

「という訳で、すまない艦長。ウソを付くようだがそういう事だ」

「どういう事なんだ女医さん! 女医さんは天才マッドサイエンティストのはずだろ――」

「おい艦長! 私の事をそう見ていたのだな、まぁ仕方が無いだろうがそれは仮の姿でしかない」

 

 おいおい仮の姿ってどういう事だ。

 もしかして、映画とかである諜報員って奴なのか?

 しかし腑に落ちない。仮の姿とは言ったが、人体実験のことはウソなのか?

 

「仮の姿ってどういう事なんだ。それに人体実験の話はウソなのか?」

「仮の姿と言っても半分だけだ。艦長、一応言っておくが人体実験の話は本当だ。それに海の底にポイされたこともな――」

 

 何が何なのか良く分からなかった。

 元ニートの知識をもってしても、今の俺に考えられるのは小手先だけの事だった。

 続けて女医さんはこう言った。

 

「それに、レビル将軍から特務を受けていたからだ。艦長いやフレイム大佐のお目付け役としてな……」

 

 どうしてお目付け役なんか付けられなきゃいけなけないんだ?

 いや心当たりが無い事もないけど……。

 その心当たりは、レビル将軍の発言で当たっていることを知るのだった。

 

「ということだ。私が君にお目付け役を付けたのは、記憶喪失だから職務を全うできないと言って、送ったはずの教科書で勉強もせずに、ゲームで遊んでいた事。もう一つは部下に厳しかった君が、何故か病院で運ばれた後に性格が変わってしまったことだ」

 

 レビル将軍の眼光が鋭くなっているのを感じた。

 俺自身の全てを見透かられているように……。

 

「さて結論を聞かせてもらおうか、エイダ特務大佐」

「はい結論から言いますと、報告書にも書いた通りまだまだ様子見といったところです。記憶を無くしていても敵軍に対して口を割りませんでした。加えて初めてでありながらMSを操り、ザク数機とイフリートを撃破しているのを確認しています」

 

 報告を聞いたレビル将軍は、驚いた顔をしていた。

 それはそうだ、フレイム大佐は極度のMS嫌いだと聞いていた。

 船乗り一筋で、部下には厳しい鬼教官と呼ばれていたから……。

 その報告を聞いて、直感でレビル将軍はおかしいと感じた。まるで別人じゃないかと。

 

「ほう……それはすごいな、まさかフレイム大佐はニュータイプだとでも言うのか?」

「確証はありませんがそうなのかもしれません。本人は自覚してないようですが――」

 

 それを聞いていた俺は、心の中ではひやひやしていた。

 MSを倒せたのは、MSに搭載されていたAIとすごろくのおかげで勝てただけだし。

 それに加えて、たまたま自分の運が良かっただけだと……。

 

 そしてこのまま、俺自身の核心である俺がある意味で別人であるという事について聞かれるのではないかと思った。

 俺には目の前にいる。女医さんもとい特務大佐と、レビル将軍を目の前にしてウソを押し通せる自信がなかった。

 

「なるほど……エイダ特務大佐は現状維持のまま潜水艦で女医を続けてもらうことにしよう」

 

 そうレビル将軍は言うと、なぜか女医さんと秘書らしき人を下がらせた。

 レビル将軍の行動に、俺にとって嫌な予感がした。

 

「さて……本題に入ろうかフレイム大佐。君は一体何者なんだ? 返答によっては君を拘束しなければならない」

 

 俺の嫌な予感は図らずとも当たってしまったのだった。

 だがここで三つの選択肢がある。選択肢によってはバーニィを助けるという願望を果たせない。

 ①ここで俺は転生者だとしゃべって、レビル将軍はアニメの中の人物だと説明してすごろくを見せる。

 ②俺のウソスキルで何が何でもウソを押し通すこと。

 ③口を割らない。

 

 1番をもし言ったとしよう。その場合待っているのは、頭のおかしい人という烙印を押され、すごろくは没収。精神病院に入れられる。

 2番は、ばれた場合のリスクは大きい。最悪何かをされる。

 3番の場合は結果が未知数だ。

 

 

 この状況をどうしようか……。




K-15さんにバトンタッチします。
K-15さんよろしくお願いいたします。


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